ファム・ファタール:E (EX)
魅力、カリスマ、その他多数のスキルと宝具が今回の召喚で歪んだ末の姿。
彼女を由来とするあらゆる悪縁が霊基に結ばれており、霊基が悪属性と神性を得ることで、かつての幻想をこの世に降ろす道へと変化する。
本来の彼女にはないスキルであり、これを持つ限りあらゆる言葉は相手を悪しき道へと誘う物になる。
……とはいえ、その誘惑は深夜に夜食ラーメンを食べたくなるくらいのもの。自ら其方に進もうとしない限り、簡単に打ち払える程度の物でしか無い。
【悲報】マスターが
マスターが死んだ! この人でなし!
一体なにが問題だったと言うのか。結構良かったじゃんか。
これから仲良くロンドンを魔霧で覆ってこうぜ! よろしくなぁ! ってなる場面だったじゃないか!
「マスターェ…」
キチゲ発狂が接近する──俺は困惑を隠せない。
そもそも
場合によって無くした心臓を泥が補ってくれたりもするけど、それこそ一人しか確認されてないものなのよ。全ての悪と呼ばれるだけあってなんでも殺しちゃうのね、あなたって!
だから死んだ。
多分旦那の魂の腐りかけ部分が悪さした。ロシア語でなんかぶつぶつ言いながら死んだ。イギリス語じゃないのやめてよー、聖杯で与えられた知識にロシア圏の言語は範囲外なんだよー。
「……仕方ない。あの死に方だとマスター権限はこの大聖杯に移ってそうだし、令呪で急かされない内に働くとしよう」
マジな話、こうなると困るのは俺なのだ。怖いよねぇ剪定。少しずつ忘れ去られていくんじゃなくてパッと消えちゃうんだから。精神的にムリムリ。
幾らか俺の紙芝居が歴史に影響を与えてるっぽいが、その程度で世界は大きく外れない筈だ。
原作通りじゃなきゃ困るってのもあるが、そもそも抑止力が剪定されないように多少は気を回してくれてると俺は思ってる。
なので相手が
やることは簡単! この大聖杯からもくもくしちょる霧をロンドンにばら撒くだけ!
問題は俺に大聖杯に大量の霧を出すように改造する力も、この地下洞窟から霧を外に押し出す画期的な魔術も知らないってことか。
困ったな、多分本来ならマキリの水属性による霧の操作とかで撒いたんだろうけど、俺に魔術は使えない。
一応キャスターではあるのだが、基が魔術回路の一本だってない現代人に魔術が使える訳がない。サーヴァントになってそういうことが出来るようになった創作家のサーヴァントもいるけど、それは俺には適用されなかったらしい。さすが抑止力だ、適切なリソース分配を心得ている。
「……幸か不幸か、マスターは特異点を作るために必要なものを沢山用意してくれた。それこそ、大聖杯というこの流れでは存在しないものまで」
ロンドン特異点は物語において重要な情報が出る佳境だ。それをずらすことはあってはならない。
何が起きたかマキリの旦那は物語以上のトンデモ特異点を作ろうとしてたみたいだが、お陰で俺みたいななんでもない奴でも、やる気さえあれば成立させられる土台を構築した。
「なら…試しで存在しない縁を結ぼうか」
正直大事件を起こすなんて気は進まないが、帳尻は合わせなければならない。
FGOのマキリは、レフ達のせいで本来この時期に出会う筈の御三家チームに出逢えずに終わった哀れな面もある。
楽に過ごす為とはいえ、物語ってやつと一生を共にしたんだ。
平行世界は数あるが、俺なりにこの旦那だけでも助けてやりたいのさ。
「ええと確か……素に銀と鉄 礎に石と契約の大公。我らに……はとうに祖と呼べる者は無く
降り立つ風に壁 四方の門を閉ざし 王冠より始まり 王国に至る三叉路は循環せよ……すぅぅ」
──というのは建前として。
本音としちゃ、折角型月の世界に来て目の前に聖杯があるんだ!
もしもカルデアが失敗しても後悔しない様にサーヴァント召喚ごっこだけはやらせろ!
泥や霧や立地の都合で視界は絶賛暗闇真っ白だが、ここでやらなきゃいつやるんだ!
……まあ、ちゃんと覚えてないのはご愛嬌ってことで。俺からしたらかなり昔の記憶なんよ。
マスターは死んで聞くやつは誰も居ない! 雰囲気で大聖杯にマスター権限が移ってるって言ったが、ノリで言っただけだからいつ消滅してもおかしくないとも思ってる! 悪巧みしたら視線には気を付けないとだし、今がチャンスなんだ!
だったらやるだろ! 男の子だもん!
やべぇ、ここから全く覚えてねぇ。
……なんだっけ?
でも大丈夫。こういう時は主語を大きくすればいいって生前で物語を作る時に学んでるから。
ええとこういう時に使えるのは人類、力、愛、後それから…。
あ、やべ。FGOじゃ割と不吉な事言っちゃったか? うん、縁起悪いからここでやめとこうか。
でも中途半端にやめると気持ち悪いしなぁ……よし、こうしようか。
「後は君達が来たいかどうか──ってことで」
マーリンみたいな徒歩で来れる勢が見てないといいんだけど…まぁ杞憂か、遊びだし。
さあてと、そろそろマキリの財布を持ってスコップとトンカチを買いに行くか。
魔術で霧を外に出せないなら地道に掘っていけばいいじゃない。
マリー・アントワネットだって分かることさ!
なあに、ささやかな目標の為に何年も泥臭く物事を進めるのは慣れてるんだ。霧の道を天井に作っていけばいつかはロンドンだって覆い尽くせるさ。気長に行こう。
ま、最悪大聖杯を転がして外に出せば解決する話だしな! おっきいけど頑張って工夫を凝らせばいつかは出来るだろう!
「さて、買い物買い物〜」
痩せこけた牛の皮みたいな財布を片手にさあ出発〜。
「あ! あの子「キリキリジャック」みたい! 雪みたいな綺麗な髪よ!」
うわ、すれ違った子供が俺の紙芝居の話してるよ。なんかやだなこれ。指差すなし。
てか今の俺、マキリが言ってた「ヨハンナ」じゃなくて「ジャック」に見えるん?
人によって見える姿が違うのかな……どんなサーヴァントだよアサシンか?
「む……人の頭を指差すなんて失礼しちゃうな」
でも「キリキリ」かぁ…なんか召喚された時代を思うと奇遇に感じるな。
話は
丁度白い髪で、手元に小粒で緑色の石が有ったからな。ほぼ全裸な型月ジャックはわりかし作りやすいんだ。
でもあれ到底現物が残らないやり方なんだけどなあ…雪と糸と小石だぜ? 材料。
よくもまあ話とキャラの原型が残ったもんだ。その執着はどこから来たの?
「でも懐かしいなぁ……暇つぶしにやってた小麦モドキ畑の成果が出た時は、キャラを模したクッキーなんて作ったっけ。ジャックはその中でも1番人気だった。髪のパーツに使った染料がほんのり甘かったからね」
うーん…懐かしいし、折角だからジャックみたいに忘れないよう、買いたいものを繰り返し言ってこうか。最終的にどんなもんになるかわくわくするね。
スコップ、トンカチ、スコップ、トンカチ、スコップ……。
「パン硬いなあ…」
「ん? この時計壊れたか? 最近買ったばかりなんだが…」
「まま〜、あのドレス買って〜」
「新聞いかがですかー。夕刊でーす」
スコップ、トンカチ、パン、時計、ドレス、新聞紙、スコプッチ、パン時計、ドレス紙……。
♢
さびしい。
おかあさん どこ?
あいたいよ おかあさん。
わたしたちはここにいるよ。
くらいくらい ちゃぷちゃぷきこえる おかあさんみたいに だけどさびしい つめたいばしょに たまにごうごう なって こわいばしょ。
さびしいよ おかあさん かえりたいよ。
「マザーグースでプッチンバラリ。
トンプラパッパとドレスが時計と一緒に踊り。
壊れたパンがティクトクシチューを茹でている」
そしたらきゅうに あかるいほうから だれかきた。
へんなうたをうたってて へんなおどりをおどってて でも なんだかたのしそう。
「家の柱が尋ねたよ。新聞お一つ如何です? それはいいと
ドレスはまだ時計と踊ってる。トンプラパッパ、もう我慢出来ないと叫んで、パンがシチューに飛び込んだ。
そろそろ美味しいシチューが食べたいな。煤の旦那が手をつけた。
そしたらまっくろ さあ大変。美味しいシチューに旦那が溶けた。
あったか真っ黒シチューの出来上がり。
冷めれば真っ赤なシチューの出来上がり」
しろくて かわいくて かかとをならして わたしたちもなんだか おどりたくなっちゃう。
たのしい さびしくない それならもしかして おかあさん?
「ドレスはまだ時計と踊ってる。トンプラパッパ、あらまステップを間違えた。
机に登って新聞踏んじゃいすってんころりん。
時計は鳴った。踊れないドレスはドレスじゃない! 魔法が解けてよろけちゃう。
よろけた情婦は柱にごっつん死んじゃった。
真っ赤な
あ おわっちゃった たのしいおうた きえちゃった。
たのしいおうた またききたいな わたしたちのおかあさんに なってくれたらいいな。
ほしいな ほしいな わたしのおかあさんにしたいな。
どうすれば できるかな?
「うーん……陳腐でダーディに仕上がっちゃったな。
若さにかまけて遊んでた女の子が足長おじさんと交わって、子供がデキたから遊んでたのがバレて、不貞として家族に殺される話になった」
ずきん。
あれれ? なんだかすごく ずきずきする。
わたしが わたしたちじゃなくなるみたい。
たいへん さびしいのが もっともっとさびしくなっちゃう。
「やっぱり陰鬱な場所だと話も悲しい方に行っちゃうなあ。
でも歌い終わったからには買うまでやらないとだよなぁ。
ごめんください、眼に入った塵で前が見えてないんですけど、多分ここってお店ですよね?
人の声を辿ってきたので合ってると思うんですが……失礼、変な注文ですけど、聞き流してくれて結構ですので」
いたい いたいよ おかあさん やめて ききたくないよ。
わたし どうなっちゃうの? こわいよ おかあさん。
「
──プツン。
……あ なんだ。
みんな いっしょなんだ いっしょでいいんだ。
それならいっしょに
──プツン、プツン、プツンプツンプツンプツンツツツツツツツ──…。
……あれれ?
「ふぅ…さて、遊び終わった事だしトンカチもスコップを……おお、眼が回復して…ここ下水道じゃないか!」
みんなちぎれて ばらばらになって かえっていいって いってくれたから おかあさんにかえろうとしてる。
でも できない。 みんなバラバラだから おかあさんのなかに もどれない。
ちからが たりない からだが たりない。
「…うわ、腐った子供の死体がある。
非道いなぁ、きっと名前も与えられず死んだだろうに。
……名前かあ」
しんだから できない わたしたちじゃなくて わたしだけって みんなそうしたから バラバラになって きえていく。
プッチン バラバラ プッチンバラリ なかよくできない。
おかあさんがほしいのは ひとつだけ だからみんな みんなになれない。
「君にジャックと名付けよう。ついでにキリキリジャックの元ネタって事にもしてあげよう。あの世で誇るといい」
そしたら おかあさんが わたしをゆびさした。
《君はジャックだ キリキリしてるジャックで切り裂きジャック。》
《私の可愛い、
おかあさん。 おかあさんだ。 わたしのおかあさんだったんだ。
わたしのおかあさんだ。 みんなのじゃなくて わたしのおうちなんだ。
そしたら わたしのおくが ぽかぽかして ふわふわして。
「……おいで」
『お" があ" ざん』
「 」
──もう、みんなには渡したくなくなった。
♦︎
う わ あ あ あ あ!!!!?(声にならない悲鳴)
う わ あ あ あ あ!!!!!!?(遅れてジャックちゃんの噂が出た原因の怪異だと思い当たる)
「──お母さん、ただいま!」
う わ あ あ あ あ あ ああああ!!!!!
(なんか力が抜けたと思ったらジャックちゃんそっくりに変身して完全にビビっている)
助けてマキリの旦那ぁぁぁああ!!!(誰か助けて)
一方その頃
抑止力「なんか異聞帯に座の登録迫られる…汎人類史に登録しなければイケそうか?」
????<「あ、条件付きですけど私の噺のモチーフ元って事にしてもいいですよ」(超意訳)
抑止力「お、この英霊が証明の後ろ盾になるなら人類も納得するし、汎人類史への登録も通るな。みなさーん期間限定希望者限定でーす」