ある日のアレクサンドリア。珍しくイプシロンとベータが会話をしていた。
「胸が痛いの?」
イプシロンは不思議だった。
目の前のベータが、胸の痛みを訴えて来たのだ。
「はぁ…。イプシロン。ごめんなさい…。教えて欲しいの。悪魔憑きの症状ではないようだけれど…。」
「アルファ様にはご相談されたのかしら?」
「いいえ、まだ、してないの。」
イプシロンがベータの部屋へ行って、シャドウの話しをする事は多々あった。
だが、今はベータがイプシロンの部屋に来て、なんと相談事をしていたのだ。
魔力操作のスペシャリストの貴方なら、何か分かるんじゃないかと思って…。との事だった。
ベータにはイプシロンに相談した他の理由もあった。
まずは年齢。ベータは15才で、イプシロンは17才だった。
そして、同じエルフ種という点。ベータから見て、同じ七陰に属しており、シャドウを取り合う犬猿の仲。と思われているが、一たび悩みを持つと相談しやすい相手でもあった。
そして、イプシロンから見ると、ベータは第2席と、上位の存在。先輩であるのも確かだった。
ベータがナツメ・カフカとして先陣を切り、芸術家として表舞台にでたから、後続のイプシロンは上手くやる事が出来た。
イプシロンは、ベータがその気なら、お姉さん的ポジションで相談に乗る事はやぶさかではなかったのだ。
既にイプシロンの部屋の人払いは済ませている。
イプシロンは長くなりそうな話に、応接セットのテーブルとソファをセッティングし、コーヒーを入れる事にした。
◆
「それで、いつから胸が痛いの?」
イプシロンが紙とペンを手にベータへ聞く。
「…正直、ずっと前から、たまに痛む程度のものだったのだけど…。はぁ…。今は頻度が多くなっているの…。」
ベータがポツポツと口にする。
コーヒーを口に運んでいる。イプシロンの見立てだと、相談に乗っている今は、胸が痛まない様だった。
「ずっと前とは、具体的にいつなの?」
「…………。シャドウ様。に、助けられてから。」
「だいぶ前からね。」
「えぇ。あの時は悪魔憑きが進行していて、それどころじゃなかったのだけど、その時とは別の痛みなの…。」
「どんな風に痛むのかしら?」
「はぁ…。心臓が、ズキズキ痛むの。」
なるほど、これは深刻だ。心臓。悪魔憑きを治すコツとして、主様に聞いた話。陰の叡智によれば、全身に血液を送るポンプの役割をしている部位だ。心臓を貫かれてしまえば、血液を送る事が出来なくなり結果的に死に至るという、重要な部位だ。
「ズキズキ…?他に症状はあるかしら?」
「息苦しくなって…。動悸がするの…。」
動悸…。と紙に書き込む。
「他に身体に現れる症状はあるかしら?」
「はぁ……。他には、ないわね。イプシロンから見て、私はどう映ってる?」
難しい事を聞かれる。一言でいえば恋のライバルであり、同僚である。
親友、といえるポジションなのかは分からないが、アルファ様を中心に、イプシロンとベータはシャドウガーデン全体を牽引、底上げする役目がある。要は現場の責任者だ。
陰に潜む案件の場合は、不器用なガンマ、戦闘狂のデルタを差し置いて、ベータ、次にイプシロンに責任者を命じられることが多い。
堅実と緻密。アルファの信頼も厚く、バランスの良い2人は、シャドウガーデンの中核と言える。
「ベータ。貴方、溜息が多くなっているわね。」
「溜息?」
「意識していないの?」
「え、ええ。」
「今までの会話で10回以上しているわよ。」
「そんなに?でも、それが何か関係あるのかしら。」
「…。もっと聞きたい事はあるのだけど、まぁ良いわ。魔力の流れを見せてもらうわよ。」
そう言い、イプシロンはベータのお腹付近に手をかざす。
主様から頂いた紫色の魔力を、ベータの魔力の中に入れる。
しばらくベータの中の魔力を見ていたイプシロンは、考え、こういった。
「何も異常がないのだけれど…。あなたの病の正体は推測出来るわ。」
ベータが安堵した。
「すごいわ。流石イプシロン…いえ、イプシロン先生ね」
「まだ推測の域を出ないわ。別の…そう、主人様のことで、いくつか質問しても良いかしら?」
「シャドウ…さま…?」
ベータは動悸が激しくなってきた。
その様子を、イプシロンは真剣な表情で黙って見ていた。
ベータはコーヒーを一口のみ、落ち着いた。
◆
ミドガル王国で、シドは本を探していた。
本は、陰の実力者ムーブに欠かせない存在だ。
分厚い本をカッコよく読み、意味深に頷く。当然足は組んだままだ。
部下が報告に来た時も、忙しそうに読んでいたい。
また、同じ本を読んでいますね。と言われたら、「そうなのか。気付かなかった。面白い本は記憶を消して読むんだ」と言いたい。
ミドガル王国の古書店だ。
そうして、ちょうど良さそうな本を見つける。
分厚さも、謎の言語で書かれているタイトルも陰の実力者ムーブにぴったりだ。
手に取ろうとする。
「あ。」
手と手が触れあってしまった。というか、見たことあるエルフの女性だった。
青い髪に眼鏡をかける、少女。
「シャ…シド様…。」
「久しぶり…。珍しいところであったね。いや、珍しくないか。君は」
作家だ。と言おうとして、シャドウは気付いた。
手が触れ合った時に思ったが、手が冷たかった。
そして、シドが見抜いてしまった。
彼女は、疲れていると。
もじもじするベータに、様子が心配になったシャドウは続けて言った。
「大丈夫?」
「…!?いえ!あの…。」
「…?」
「…だい…じょぶ…です。」
「我に嘘は通じない。ベータよ。こっちに来い。」
シドの声は目の前のベータ以外には、誰にも聞こえなかった。
◆
『恋の病』
ナツメ・カフカとしてシャドウに恋焦がれ、様々なシチュエーションで妄想を繰り返す彼女は、症状の進行が速かった。
今までは、シャドウに会いに行けば良かった。症状は緩和された。
また、七陰は各々、他の七陰には内緒だが、病を緩和する薬を持っていた。
ガンマは人形だし、デルタは気にせずシャドウに会いに行けばよい。
アルファやイプシロン、ゼータはシドの下着やら何やらを盗んでいた。勿論、新しいものをガンマから取り寄せ置いておけば問題ない。
だが、ベータはちょっとやそっとでは緩和できない程、症状が悪化してしまったのだ。
それはシャドウと一緒に異世界まで行き、彼のカッコよさに当てられてしまった代償でもあった。
更に、イプシロンや他の七陰の妨害も増えていた。シャドウへの報告も今はゼータが行っているし、ベータがシャドウに会いに行くのは目を光らせられていた。あなた会いすぎよ。と。
◆
「貸し、1よ。良いわね。」
イプシロン先生から、ベータへ処方されたのは、シャドウに会いに行くときに、七陰の妨害を行わない様協力する事だった。
◆
ぶっちゃけた話だ。
ベータは、我慢できなかった。
夜、1人で致す行為も、彼女の重い病を緩和する事には至らなかった。
なぜなら、常態化してしまっていたからだ。
鎮痛剤がないと歯が痛んでしまう。
歯の神経の痛みが我慢できず、鎮痛剤を買いに行ってしまう。
歯の痛みが、鎮痛剤を超えてしまったらどうなるか。痛いままだった。
だが、直接痛みを取る行為は、止められていた。
なら、痛みと戦うしかない。無理だ。痛いのだから。
客観的に見れば、彼女は『堅実』らしく、真面目に痛みと戦おうと努力をした。
痛みに向き合うのが、彼女のオモテの仕事だったからだ。
それが、痛みを重症化させる行為だと、分かっていたのだ。
否、分かっていなかった。15才の少女は、17才の少女に相談する事で、初めて分かったのだ。
◆
いつもの元気の良いベータではない、塩らしいベータを見て、シャドウは転生前の自分や、同級生の少女と重ねて見た。
孤独の痛み。誰にも理解してもらえない痛み。それを取ることは、ベータを生かし、陰の実力者ムーヴに付き合ってもらった、自身の責任であると。
別にシドは考えなかった。
ただ、放っとけなかった。
そのため、こういう。
「そんな顔の君を、放っとける訳、ないよ。」
彼女と同じく、暗い表情で、同調する。
「シャドウ様…。」
「うん?」
「…私の部屋に、来ませんか?」
「いやそれはちょっと…。」
嫌な予感がした。だが、それは悪い気がする。
だから、彼はベータを別の場所に連れ出すことにした。
「部屋はアレだけど…。そうだな。星でも見に行こうか。」
「…はいっ!!!」
自然とベータの腕が、シドの腕に回される。
2人は歩き出した。
◇
そこはシドおすすめの絶景スポットだった。
ミドガル王国から徒歩15分位の場所にある、小高い山の山頂の崖から、下った先にあった。
そこには陰の実力者ムーブに使える様、ベンチと、雨除けの屋根を置いていた。
「こんな所にこんなものがあるなんて、思わないでしょ?」
ここは崖から落ち、窪みのある洞穴の中を歩かないと見つからない絶景スポットだった。
行き方を知らないと崖から落ちようと思わない。
崖から落ちても助かる見込みがあるシャドウだからこそ見つけられたスポットだった。
「僕は、1人になりたいときにここに来るんだ。」
「…。シャドウ様…。」
ベンチの上には真新しいクッションが敷いてあった。
シャドウが座ったのを見計らって、ベータがシャドウの横に座る。
ベータが、シャドウに寄りかかる。
落ち着く。胸の痛みが取れてくるようだった。
「…。シャドウ様…。私の身体を…触ってくださいませんか…。」
ポツリ。と漏らすベータ。
言葉は不要だ。と言わんばかりの恋焦がれ少女ムーヴ。
シャドウからベータの身体に触れることなどまずなかった。
ベータがシャドウに触れる事は多々あったのだが。
その隙間がベータを狂わせる。なので、ベータはベンチに座った後も、シャドウに寄りかかるが、腕を纏わせることはしなかった。
それはまずいよ。とシドが言おうとして引っ込める。
そこまで空気の読めないヤツではない。
触らなければ、次ベータと会った時、ベータはシドにどんな顔をしているのか。想像が付く。
捨てられた犬の様に。可哀想な表情で、シドを見つめるだろう。
それは、シドがベータを呼ぶまで続けられる。
言わせてしまったら、シドの負けなのだ。
彼女は、恋の駆け引きをしていた。
シドは、その駆け引きに気付かなかったのだから。
そして、シドは返答した。
「すまなかった…。」
「………うぅ…。」
謝りの返答に、ベータの胸が締め付けられる。
拒絶されたという事実が、涙が、溢れて来る。
「主様…。わたしっ!!」
ベンチに座り、下を向いていた。意を決して話そうとしたベータは。
口を塞がれた。シドの、右手の人差し指によって。
シドの方を見る。彼は、左手の人差し指で、自身の口を塞いでいた。
そして、微笑んでいた。
美しい笑顔に、ベータの時が止まる。
断られるのだろうかという不安は、シドの笑みに一瞬でも頭が真っ白になったおかげで、払拭される。
「ベータ。」
「は、はいっ!!!」
「すまなかった。君は、僕にとって高嶺の花だった。どう褒めたら良いのか。分からなかったんだ。」
「………ひ…。ひいいぃぃぇえぃい…。」
変な声がベータから漏れる。顔は赤い。言葉を理解したのかすら怪しい。
だが、シドの表情と、何やら同年代の男の子の儚さを告白され、ベータはなんかとんでもない頭の中になった。
「今日も良い匂いをしている。白檀の香りだな。髪を切ったのか?よく手入れをされていて、凛々しい君には、短髪が似合う。」
「あ…シャ…ひ…ひええええぇえ…。」
「エルフの君は、自然を愛するのだろう。我も、自然が好きなのだ。自然を愛する、君も。」
「あ…あ…あぁああ…」
「高嶺の花は、下から見るのがちょうど良いと思っていたが、高嶺の花は、今日はどこまで下がってくれるのだ?」
「…。…。…。シャ…シャ…。いや、シド様…きょ、きょうは…。」
「ふむ?」
「Bまでなら…よい…と、先生から。」
先生ってだれ!?とシドは思った。
十中八九七陰の誰かなのだろうが…。
というかなにこの状況…。
「あ、でも!主様が望むのならその限りではございません…ですが、こんどーむ…は今日はありませんので、着けずに…その…生で行って頂く必要はありますが…」
「…そ、そーか。」
「あ!でも、Aはダメと言われました…。ので、この、唇に張るアイテムを使えと…。」
ベータがバックから取り出したのは、透明な薄いシールだった。
「お…。おう…。」
シドには良く分からないが、これを使う事で『ノーカン』扱いとして、『先生』とやらとベータは了承したのだろう。
ペタペタと、ベータはバックから取り出した手鏡を見ながら、自身の唇へシールを張っていく。
前髪を整える事も忘れない。ハンカチを取り出し、目元の溢れそうだった涙を吸い取る。
「準備、出来ました。」
「…。」
頬を染め、そう聞いてくるベータを見る。
シドは覚悟を決めるしかなかった…。が…。
そこは、陰の実力者らしく、やりたかった。
シドはテーブルの上に、スライムスーツに隠してあった赤ワインと、グラスを2つと、ブランケットを用意する。
ブランケットを2人の足にかける。
夜は冷え込むからだ。
ベータが赤ワインをグラスに注ぎ、シドへ手渡す。
シドがワインを飲んだのを見計らい、ベータも赤ワインを飲んでいく。
「美味しい。」
「そうだろう?ベータは、ボルドー産の赤ワインが好きだったな。」
「はい、覚えて頂いて恐縮です。」
「今日、買おうとした本のタイトルは、分かっているか?」
「はい。あれは、『ダフニスとクロエー』ですね。」
当然シャドウは知らなかった。だが、雰囲気でカッコつけたくなった。
「そうか…。なら、今日は我がダフニスだな。」
「ふふふ。主様は、さすがですね。」
ふぅ。と息を吐くベータ
大好き…。とつぶやく。
ベータは赤ワインを飲み干すと、グラスを置いた。
そして、おずおずと、眼鏡を外し、ケースに入れて、バックにしまった。
バックはテーブルの奥の方に置いた。
ベータの動作が、ゆっくりと、それでいてスムーズに、彼女自身の胸の鼓動を抑え、彼女自身の心の準備をしているように見えた。
所作が綺麗だった。
そして、恥ずかしそうに、シドにもたれかかった。
ふぅ。と、ベータの吐息が聞こえる。
彼女は下を向いているが、シドとの顔は近い。
シドも、赤ワインを飲み干し、グラスを置く。
いつもなら、グラスが空になる前に、注がれる。盟主のグラスにワインが入っていない状態を許すガーデンの構成員はいなかった。
ここにいる幹部は、主人のグラスが空になっていたとしても、新たなワインは注がなかった。
ベータは、シャドウのグラスに赤ワインを注ぐ代わりに、自身の身を、彼に委ねたのだから。
我が盟主に、赤ワインを飲んでいる場合ではないと、ベータなりの初めての反抗を見せたのだ。
そんな様子を見ながら、シャドウらしくないことを思ってしまった。
かわいいな。と。
シドの右腕が、ベータの右肩に回される。
彼女は火照っていた。熱い。そして、肩に触れて思う。
柔らかい。と。
シドのおでこが、下を向いているベータのおでこと触れる。
シドは、ベータの顔をあげる様に仕向けて行く。
んっ?と、わざとらしいベータの声が聞こえるが、ベータは目を閉じ、なすがまま、顔を上げる。
シドが顔を前に出し、そっと、ベータの唇と、シドの唇が重なる。
雲に隠れていた月が出てきた。
月は、光り輝いていた。
夜空を照らす星々が、くっきりと見える。
シドはキスをしながら目を開けると、目を閉じるベータがいた。
ベータのシドを掴む手に、力が加わったのが分かった。
2人はしばらく、お互いの柔らかい唇を確かめ合った。
残念ながらシドはおっ、唇って意外と柔らかいんだなー程度のものだったのだか…。
事実、シールに阻まれているとはいえ、2人はキスをした。
ベータは、背中に電流が走るのを感じた。
身体の奥底から、熱い物が込み上がってくる。
緊張した。
だが、その後安堵し、幸福に包まれる。
溶けてしまいそう…
病を治すために、先生から診断を下され、処方箋を貰い、シャドウ様に付き合ってもらっているにも関わらず。である。
彼女の動悸は治らなかった。
だが、いつもする息切れは苦しい物ではなく、苦しかった反動が、頭に危ない薬でも投薬されてるかのように、ドロドロに脳みそを溶かされる。
ベータは死んだと思った。
ここが天国であるならば、彼女は納得が行くのだろうが、これは彼女が掴み取った現実だった。
ベータの唇は、シールが貼ってあろうとも、湿っていた。
シドが、もう良いかと思い、唇を離す。
が、シドの左腕を、ベータの右手が掴まえる。
「主さまっ!!!」
ベータの右腕が、シドの首に回される。
ベータのおかわりは、口が少し、開いていた。
「あるじ…さま…口を…開いて…。」
シドの口が開かれる。
2人の唾液が交換されてしまう。
「あぁ…。あるじ…様…」
「ベータ…。綺麗だよ」
クチャクチャと音を立てて、お互いを貪る2人。
というかベータが主にシドを貪る。
シドは、対話を楽しむかの様に、キスに応じる。
「んっ…んっ……。はぁっ…」
ベータの呼吸が荒くなる。
やがて、背中をシドの方に向けるベータ。
向けながらも、2人の唇は重なっていた。
「はぁ…はぁ…あの、胸を…触ってください。」
バックハグの様な状態で、シドの両手をホールドし、自身の服に潜り込ませる。
ブラジャーのホックは気付かれない内に、自分で解いていた。
やりすぎだ。シドは思う。
だが、もうこうなったら、イかせるしかない。
ギャルゲーでこういったテンプレは網羅していた。
優しく、触れるか触れないか、焦らしながら、触れる。
女性の胸は良く触っている。
押し付けられるからしょうがないのだが。
だが、自ら触るのは初めてだった。
性欲のないシドだ。興奮はしない。
だからこそ、力に任せて。ではなく、ベータの心地よいタイミングで、刺激する事が出来た。
服に隠れて見えないが、シドの片手では溢れてしまう胸を、優しく下から揉んでいく。
ベータの腹部が露わになる。
既に、ベータの乳首は尖っていた。
「はぁ…は…んっ…」
時間をかけて、乳首を弄るとビクビクした。
何度かイったのだと分かった。
相変わらず身体が熱い。
クネクネするベータをみて、どこが感じるのかを探りながら施工する。
小刻みの絶頂もいいのだろう。だが、これはきっとおそらく一生終わらない。
そう思ったシドは、ベータに囁いた。
「下も…触るぞ…。」
シドは、魔力でベータをイかせることは出来た。だが、それをしなかった。
なぜなら時間をかける事こそ、今のベータに必要な事だと思ったからだ。
「はぁ…。はぁ…はい…。」
触りやすいように手一つ分の足を広げるベータ。
その拍子にブランケットが床に落ちる。
だが、ベータは気にもしていない。
シドは、両手をホールドされていた。
ロングスカートがたくしあげられ、白のパンツが露わになる。
ミツゴシで最近発売された、シルクで出来た高級のティーバックだった。
足を広げると白檀の匂いが強く、鼻腔をくすぐる。
うちももを優しく撫でたかと思うと、ビクッとベータの背に電流が流れ、呼吸が更に早くなる。
徐々にパンツの上から右手の指を、ベータの下腹部に触れた。
男に当然の様についてる物が、ベータには付いてなかった。
大量のトロっとしたものが、シドの指に触れられる。
ズブ濡れである。
「あぁ…。主様…大好き…大好き…です…はぁ…。」
もっと触れと押し付けて来る。
ソフトタッチを行いながら、焦らしプレイをするシド。
そして、パンツの中に、右手を入れる。
尋常じゃない量の愛液を右手で受け止め、そろりそろりと右手の中指と人差し指でベータの割れ目をなぞる。
「はぁん…あぁん…はぁ」
呼吸が荒くなる。すでにベータの右腕はシドの首に回され、シドの口の中を、ベータの舌がまさぐる。
右手はシドの顔を触り、シドの耳をくすぐる。
呼吸の終着点は、ベータの大事なところであったが、シドはなかなか触れてくれなかった。
焦らされるのは好きだった。
ベータはトロトロに溶けていった。
大事なところに少しでもシャドウに触られたら、果てる自信があった。
だが、その自信を持ってしても、シャドウはなかなか触れてくれなかった。
なん度も割れ目をなぞるだけにしていたシャドウの右手の中指が、やがてベータの大事な所に触れ、硬くなっていたソレが弾かれる。
瞬間、今までキスをしていた唇を、ベータは力強く押し付け、唾液をこれでもかと流してくる。
ビクンビクン
「あぁ…。あああああぁ…は……ああ…。…………ふぅ。」
ベータの全身の力が抜けた。
放心状態になり、シドになだれ込まれる。
「…イったな…。」
シドに身体を任せ、ベータは小さな呼吸を繰り返す。
寝ているのか。気絶しているのか。いや、どちらもだろう。
シドはタオルでベータの下腹部を拭き、ブランケットで下半身を覆った。
やがて、小さな声で言った。
「アルファ…」
ん?出てこないな。
ちょっと待って、もう一度言った。
「あるふぁー…」
スっと遠くで、それでも見える距離で控えていたシャドウガーデン第1席が出て来た。
アルファは右手にタオルを持っていた。
長距離を全速力で走ったとて息切れしないアルファの呼吸が乱れていた。
「ふ…ふう…シャドウ…。助かったわ。ありがとう。」
「…それで?何これ?」
「…あなたには説明は不要だと思ったのだけれど…禁断症状よ」
「禁断症状?」
「え、ええ。」
「…なるほどね…。」
なにがなるほどなのかシドには分からなかった。
だが、理解しなかったが、言葉として分かった時に使うのが、『なるほど』なのだ。
ならば、なるほどと言うしかない。
そして、続けてこういう。
「禁断症状なら、しょうがないよね…。」
「え!ええ。そうよ。しょうがないことなの」
「始めから見てたと思うけど、ちゃんとシールしたからね…?」
「分かっているわ。それで…。」
「?なに?」
アルファが頬を明らめもじもじし始めた。
聞かなきゃ良かったと思ったシドは、とっさにキャンセルしようとする。
「あ、やっぱ良い!なにもいわ「私も、さっき禁断症状が出てしまったの…」」
「…」
「しょうが、ないわよね?」
「…えぇええ~…。」
サッ。と懐からシールを出し、シドに見せて来るアルファ。
ベータを寝かせる用の1人分のテントと、寝袋を既にセットしていた。
あとはベータを移動させる。
アルファの鼓動が、絶頂に達する。
鼓動の音がうるさく、どんな音も聞こえない。
ドクンドクンドクンドクン…
今宵は月が明るい。
まだまだ月が太陽に変わる時間ではない。
まだ夜は始まったばかりだった。
白檀の香りをサッと消臭スプレーで消し、アルファには珍しく石鹸の匂いを纏わせながら、アルファは白ワインとグラス、ブランケットをセットして行く…
◆
シドが1人になりたいときにくる絶景スポットは、
エルフの少女達が、シドを誘うためにありとあらゆるエルフの嗜好品が持ち込まれることになった。
地面は芝生のジュータンが敷き詰められ、観葉植物が所狭しと植えられる。
心地良い匂いを発する植物と、安眠効果や、性欲向上のあるフェロモンを発する木が植えられた。
シドに性欲はない。だが、エルフの少女たちの意欲を高めるため、雰囲気を作るために植えられたものものだった。
ある樹の根元には唇にはるシールの箱が隠され、年代物のお酒が6本、置いてある。
グラスの数も多かった。
たまに1人で寝に来るエルフがいた。
というか七陰のエルフ全てだった。
彼女達は病のケアのために、ここに1人で来たりする。
鉢合うことすらなかったものの、野生の勘なのか、女性の勘なのか分からないが、この場所に来る前と来た後は他の七陰に気付かれることとなった。
シドを誘う時は他の七陰の内2名の署名が必要で、シールを貼ることが義務付けられていた。
だが、シドの診断によって行為に至らないケースも出てきた。
初めの2人、2回はなし崩し的に行ったが、3日後のベータの要望は叶えられなかった。
そしてシドは学習した。
誘いに乗ったらダメであると。
シドは禁断症状かどうかを判断するために、奔走することになり、女の扱い方が上手くなっていった。
「キスは…イプシロンが上手いな…」
流石、緻密である。