雄英高校の闇、伝説の性癖・尊厳破壊ヒーロー『ミッキー』   作:青梅子

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終日!!文化祭!!

「冗談じゃないわよ……!」

 

 雄英高校1年A組の教室で、光己は声を上げた。彼女が唸るように声を上げるなか、担任教師は死んだ魚のような目でため息をつく。

 

「諦めろ、■■。昨日の最終締め切りまでに、お前たちのクラスの出し物アンケートは『白紙』で提出された。よって、事前の警告通り、我がクラスの雄英祭の出し物は『公開座学』とする亅

 

「なんでお祭り騒ぎの雄英祭で、私たちだけ真面目に教科書開いて授業風景を一般公開しなきゃいけないんですか! ギャル子! あんたがタピオカ屋やるって言って、アンケートまとめる係引き受けたでしょ!」

 

「えー? だってぇ、光己」

 

 話を振られたギャル子は、ネイルを弄びながら、悪びれもせずに口を尖らせた。

 

「何気なくタピオカミルクティーのカロリー調べたらさ、数字がヤバすぎてビビっちゃったんだよね。トッピングとか甘さ次第で、一杯で豚骨ラーメンと同じくらいのカロリーあるんだよ? あんなの出したら全女子を敵に回すと思ってやめたの」

 

「別にカロリーなんて気にしないってば!」

 

「あんた以外は気にするわ!」

 

 ギャル子の間髪入れないツッコミに、すかさず普通女子も苦笑しながら手を挙げた。

 

「……私もギャル子ちゃんに賛成かなー。さすがにあのカロリーはちょっと怖いよ」

 

「え〜……カロリーはストローを通れないからゼロカロリーなのに……」

 

「通るわ! むしろタピオカと一緒に大量に吸い込まれてくるわ!」

 

 光己の謎理論のぼやきにギャル子がすかさず吠える。

 

「まあまあ、諦めなよ。決まっちゃったものは仕方ないよ。普通に教科書読んで、ハイハーイって手ぇ挙げてれば、すぐ終わるって」

 

 普通女子がのんびりと宥めるが、光己の顔はかっちゃんブチ切れフェイスのままだ。

 

「終わるわけないじゃない。誰も見に来ないわよ、そんな地味な出し物。恥さらしもいいとこだわ」

 

「ううん、そんなことないよ、ママ」

 

ここで控えめ女子が、光己に無邪気な顔で話しかけてきた。

 

「私はママの授業受けてる姿、いっぱーい見たいな。ママ、頭いいしカッコいいから、私、何時間でもちゃんと席に座ってママの声聴いてられるもん!」

 

「みんな受け入れ始めてるけどさ…あんたのその態度は最近さらに加速してるんだけど、誰か止めてよ… 」

 

 光己の、運命の雄英祭当日がやってきた。通常の「公開座学」といえば、身内の親御さんや、真面目な他校の生徒が数人覗きにくる程度の、ごく地味な企画である。光己も

 

「一秒でも早く終わらせて、経営科の出し物の食べ歩きに行ってやる」

 

と冷めた目で構えていた。しかし、教室の扉を開けた瞬間、光己は顔を引きつらせた。

 

「……は? なによこれ、人の密度がおかしいじゃない……」

 

 教室の後方から廊下にかけて、ありえない規模の人だかりができていた。

 

「なんか1年に、とんでもないエロい感じの女子がいるらしいぞ」

 

 と聞きつけた、噂に釣られたヒーロー科の上級生男子たちが、下心を隠しきれない目でぎゅうぎゅう詰めに群がっている。

 一方で、観客席の最前列では、かつて光己の足運びを恐れてスカウトをスルーしたあのグラントリノのほか、噂のやべぇヒーローの卵を観ようとプロヒーロー達が座っていた。

 

「おいおい……あれが、噂の……」

 

「ああ、あれ…一年生ってマジかよ……」

 

 上級生たちが色々こらえながらヒソヒソと囁き合っている。

 光己は冷や汗をにじませながらも、クラスメイトに怪しまれないよう静かに自分の席に座った。裏の戦闘技術は、絶対にクラスメイトにバレるわけにはいかない。教壇に立つ担任教師も、プロや上級生たちの妙なプレッシャーに声を震わせている。

 

「え、えー……それでは、1年A組の公開座学、ヒーロー基礎理論の授業を始める。……では、この問題の最適解を……■■、答えてみろ。」

 

(なんか視線を感じる……ただの公開座学にこんなに人が集まるとはね…でも、普段の授業に観客がいるだけだし…)

 

 光己の立ち上がる動作は、一切の予備動作を排除した完全なるノーモーション。服の擦れる音すら立てず、スッと直立する。

 

『うおっ……!?』

 

 最前列のグラントリノが、その無駄のない滑らかな挙動に本能的な恐怖を覚え、椅子ごと後ろにひっくり返りそうになった。

 

「やはり奴をスカウトしなくて大正解だった。」

 

とホッと胸に手を当てている。光己は黒板の問題を一瞬で読み切り、教科書通りの模範的な解答を淡々と述べた。

 

「――以上の理由から、ヴィランの初動を正面から確実に捉え、周囲の民間人の安全を最優先に確保した上で拘束へと移行するのが、教科書における最適解です」

 

「おお……! 揺れてる……!」

 

「声まで最高じゃないか……!」

 

 どよめく上級生たち。クラスメイトたちは

 

「みっちゃん、なんか今日の授業はいつもより気合い入っててかっこいいねー」

 

とのんきに感心している。こうして地味なはずの公開座学は、主に上級生男子たちの邪念により、大盛況を見せて幕を閉じたのだった。

 

 

「はーーー!! 緊張で息が詰まるかと思ったわ! なによあの物々しい空気は!」

 

 午後。これからどうしようか?経営科の出し物楽しみだよね。そんなクラスの空気をギャル子がブチ壊した。

 

「おつかれー! 座学、超大盛り上がりじゃん! でさ、次のステージの時間だから、これ着替えてね」

 

「は? 次のステージって何よ。食べ歩きしたいんだけど。」

 

「何言ってんの? ミスコンのエントリー、アンタの名前で出しといたから。ほら、光己のコスチューム、持ってきてあげたよー」

 

「あんた、また勝手なことを――」

 

 光己が抗議する間もなく、ギャル子と普通女子、控えめ女子の三人に囲まれ、更衣室へと強制連行された。

 数十分後。雄英祭のメインステージ。女子生徒たちが美しさを競い合う華やかなミスコンテストを飾るため、スポットライトの中に「彼女」が現れた。

 ギャル子によって魔改造された、超ミニスカ、ヘソ出し、ルーズソックス、配置されたネオンカラーの装飾が目を引くギャル仕様の黒セーラー服。あまりにも暴力的でグラマラスな人妻ドスケベボディが、ステージ上で嫌でも主張を始める。

 その瞬間、光己の中でカチリ、とスイッチが入った。ヒーローコスチュームに身を包んだ以上、恥ずかしがったら負けだ。

 羞恥心を完全に遮断し、コスチューム時におなじみとなったギャルを演じる。それが彼女のやり方だった。

 光己は首をちょこんと傾げ、手を頬に当てた。そして、性癖破壊ボイスをマイクに乗せて、完璧なギャル口調で一気にまくしたてる。

 

「ちょ、マジでこれ着せるか普通ー!? 露出度高すぎてお腹冷えちゃうんですけどー! でもでも、みんながミッキーのこと呼んでる声、ちゃーんと聞こえてるゾ♥ 永遠の17歳の輝き、後ろの人までアゲアゲで届けちゃうから、みんな瞬き禁止ね♥」

 

ステージ上で盛大に放たれた、「永遠の17歳」という宣言。その圧倒的な爆胸爆尻の肉体美と、15歳とは思えない完成された大人の魅力。

 

「……え?」

 

客席の時間が、ピタリと止まった。特に、最前列付近で見ていた上級生男子たちの脳内で、何かが音を立ててパキンと割れた。

 

「17歳……? え?ホントは15歳…?ギャル…?人妻…?嘘だろ、あの身体、あのみるからにヤバい包容力……」

 

「なんだあのギャップは……! 見た目と声が最高にドストライクのギャル……ッ!」

 

「ヤバかった…黒ギャルだったら耐えられなかった…俺は運がよかった…」

 

「うわあああ! 俺の中の何かが壊れる! 俺の好みが、あのギャルに全て書き換えられていく――!!」

 

「ママァァァーーーッ!!! 今日も世界一可愛いよ、ママァァァ!!!」

 

 客席の後方からは、大好きな推しを全力で応援するように、『光己ママ応援グッズ』を全身装備した控えめ女子の絶叫が響き渡る。

 それを皮切りに、ステージ前は歓声という名の悲鳴で埋め尽くされた。あまりの衝撃に言葉を失って

 

「15歳? 17歳 ギャル 人妻 ママ」

 

とスマホで検索を始める上級生が続出。まさに、会場全体がその肉体の暴力によって跡形もなく圧倒される大盛況となった。

 

「みんなのハートにロックオンしちゃうぞ☆ バイバーイ!」

ステージの真ん中で、光己は完璧な営業スマイルとギャル口調を維持しながら、心の中で計算していた。

 

(完全に客の意識を釘付けにしてやったわ。これならミスコンの優勝はウチのモンね……!)

 

1年ヒーロー科 ■■光己 ✕✕年度雄英祭ミスコン優勝

 

 ついに大多数の性癖破壊の被害者を出してしまった男たちの性癖を破壊する伝説のヒーロー「ミッキー❤」の、後世に語り継がれることのない雄英祭の記録。

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