雄英高校の闇、伝説の性癖・尊厳破壊ヒーロー『ミッキー』   作:青梅子

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番外編 聖母へ捧ぐ貢ぎ物

 時を遡ること二十三年前。雄英祭の後の雄英高校1年の放課後の教室。

 教室内は、ある異常な光景に包まれていた。光己の机の上が、デパ地下の高級和菓子、特上ブランド肉の引換券、そして大量のファンレターで埋め尽くされていたのである。

 

「ちょっと、なによこれ……。机が物産展みたいになってんだけど」

 

 光己は、爆豪勝己のルーツを感じさせる不機密そうな顔で、山積みの貢ぎ物を眺めていた。そこへ、ネイルをいじりながらギャル子がやってくる。

 

「ウケる。光己、また未婚女性ヒーローの先輩たちから『聖母への感謝状』が届いてるじゃん。ほら、この高級マカロンとか、完全に婚活成功したお礼の品っしょ」

 

「は? なんで私がそんなもん貰わなきゃいけないわけ? 私はまだ1年生の、ただのヒーロー科の生徒なんだけど」

 

「あんたがこの前の雄英祭のミスコンで、あの格好で暴れたじゃん。あの一連のアレが、ミスコン観てたプロの間で出回ってさ。若い男のプロヒーローたちの間で『年上のお姉さんの包容力、ヤバくね?』って、おかしな目覚めが起きてるわけ」

 

 ギャル子はクスクスと笑いながら、マカロンを一つ勝手に口に放り込んだ。

 

「おかげで、行き遅れを心配してた20代後半から30代の先輩女性ヒーローたちにお見合いの申し込みが殺到して、今、婚活市場の成功率がとんでもないことになってるらしいよ。光己、あんた男の性癖を狂わせただけじゃなくて、日本の婚姻率の歴史まで動かしたわよ」

 

「……あはは、本当だねー。このブームがこのまま10年くらい続いてくれれば、これから新しくデビューする未来の若手女性ヒーローの子たちまで、全員モテ期の恩恵に預かれそうだよねー」

 

普通女子がのんきにお茶を飲みながら会話に混ざってくる。光己は

 

「勝手なことを……」

 

と額を押さえた。

 

「全部勝手に申し込んだあんたのせいでしょ。あの派手な服を着てバカ騒ぎに付き合ったのも、全部あんたのせいなんだからね。これ以上変に目立って、夢の国の法務部に目を付けられて、裁判なんてことになったら…本当に冗談じゃないわよ」

 

「いいじゃん、結果オーライっしょ。男どもはみんな光己のあのドスケベボディと『永遠の17歳♥』っていう不埒な言葉にメロメロなんだからさ」

 

「思い込まなきゃやってらんないわよ。」

 

光己が訂正した、その時だった。

 ガタッと教室の机が派手な音を立てて後ろに倒れた。見ると、両手に「ミッキー♥」と書かれた光沢のある応援うちわと、ディープ・グラインドを模した謎のグッズを両腕に装備した控えめ女子が、感動の涙を流しながら床に膝をついていた。

 

「……ママ……ッ! ああ、ママァァァーーーッ!!」

 

「ちょ、あんた何してんのよ! 怖いからやめなさいって!」

 

 光己の静止も耳に入らない様子で、控えめ女子は狂信的な笑みを浮かべて叫ぶ。

 

「ママは……全ての行き遅れを救う、本物の現世の女神……! 世の哀れな独身女性ヒーローたちに大いなる母性の光を示された救世主……! 今日も世界一可愛いよ、ママァァァーーーッ!!」

 

「だーかーら! 私はまだ15歳だし、誰の母親でもないわよ! その『ママ』って呼び方、最近さらにひどくなってるけどマジで誰か止めなさいよ!」

 

 光己のツッコミが響くが、控えめ女子は完全に幼児退行しており、うちわを振り回して「ママァ♥」と悦びに浸っている。

 普通女子は

 

「みっちゃん、諦めなよー」

 

と笑い、ギャル子は

 

「この狂気、ウケるわー」

 

と動画を撮っていた。

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