雄英高校の闇、伝説の性癖・尊厳破壊ヒーロー『ミッキー』 作:青梅子
原作387話の 煮凝り の外典とコンプレスの会話風
ウーウーと回る赤光の余韻が、未だ脳裏にこびりついて離れない。
ある拘置所――
かつては「個性の自由使用」を掲げ、大通りで大衆を先導していたデモ隊のリーダー。
そして、路地裏で「無差別に個性を使用」し、街を恐怖に陥れていた指名手配ヴィランの邂逅。
鉄格子と薄暗いコンクリートの壁。
社会の欺瞞に抗い、己の異能を誇っていたはずの強者二人は今、すべてを奪われ、等しく檻の中に繋がれていた。
静寂に包まれた地下独房。
壁を背に預け、虚空を見つめていたデモ隊のリーダーが、掠れた声でぽつりと言い放つ。
「……あの女の『グリセリン』は……濃度が濃いんだ」
突如として始まった壁越しの独白に、隣の房の指名手配ヴィランがわずかに眉を動かす。
「デストロの思想を掲げた我らは、デストロの敗北後も大通りでのデモ隊の数を増やす事で、思想とプライドをなんとか保ってきた。……だが、あの『永遠の17歳♥』の前には、それすらも無力だった」
「……尊厳破壊と、性癖破壊のコンボね。未だにデストロの思想を実現しようとしてる奴らが聞いたらなんて言うかな」
自嘲気味に呟く指名手配ヴィランの言葉を、リーダーは遮るように続ける。
「だが、奴の指先が『暗殺歩法(ステルス・ステップ)』で音もなく滑り込み、侵入、注入すると共に、我らは加速度的に零落(おもら)していった。ミッキー❤の超高濃度で高速注入されたグリセリンがもたらす未曾有の『強烈な便意』を、肉体が拒絶(ガマン)できなかったんだ」
「……結果、大通り」
「ああ……。同志同士での、慟哭と連鎖決壊が相次いだ。」
「濃度が濃いとか、そういうのは問題ではなかった……」
「ああ…自らを直腸の閉塞環境に置く事が出来なかった、我らの門(ケツ)は、決壊(ブリュリュ)の一途を辿り――」
ガタガタと下腹部を震わせながら、リーダーの口から語られるのは、デストロの歴史すらも泥塗れにする「大通りの黙示録」。
とうとう自分の『門』が降伏を始めたことで、事実上の終焉を迎えたあの瞬間。周囲の同志もドミノ倒しになり、その汚物まみれの地獄絵図の中、自分は放水車の高圧洗浄(お尻掃除)という『聖水』に救われたのだと、リーダーは涙ながらに壁の向こうへ語り継ぐ。
「……濃く深く充填された、あのグリセリンの高速注入・ディープ・グライド・カスタムには、誰であっても耐え得ない『社会的・精神的崩壊』が眠っている。……門は誇りを置き去りにしたままだ」
深く、深く、冷たいコンクリートへ頭を押し付け、リーダーは絶望の雨が降る大通りを回想するように、心の中で呟いた。
(ASS……何が、漏れるだろう)
「さァ、次は、おまえだ」
壁の向こうから、デモ隊リーダーの静かな、しかし宇宙の真理を悟ったかのような声が響く。
「あの甘ったるく狂気に満ちた『ミッキー❤』の処刑宣告を至近距離で浴びた時、おまえは何を叫んでた?」
「何でもいい、聞かせろ。……『神は死んだ』と確信した、お前の路地裏の顛末を」