雄英高校の闇、伝説の性癖・尊厳破壊ヒーロー『ミッキー』   作:青梅子

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パパ っと かつ !

――夜のきらびやかな繁華街。

 色鮮やかなネオンサインがひしめき、行き交う人々で溢れ返る大通りを、二つの人影がパトロールしていた。

 一人は、黒いセーラー服のヒーローコスチュームに身を包んだ光己である。

 生地が抜群のボディラインにぴったりと密着し、ミニ丈のスカートからスラリと伸びる瑞々しい生足が、ネオンの光に照らされて圧倒的な生々しさを放っていた。

 

「ねえキミ、ちょっといい? これ名刺なんだけど、ウチでモデルの仕事とか興味ない?」

 

「ちょっとお姉さん、この後どこ行くの? 一緒に美味しいお店行こうよー」

 

 芸能事務所のスカウトマンや若い男たちが、次々と声をかけてくる。

 光己は肉食系の妖艶な眼差しを男たちに向け、

 

「今パトロール中だからまた今度ねー♥」

 

と軽いノリであしらいながら、小悪魔的な笑みを浮かべて歩いていた。

 事情を知る周囲の一般客たちがゴクリと息を呑み、驚きと困惑の混じった表情で道をあけていく。

 

「随分と賑やかだね、夜の街って♥」

 

「お前な……少しは緊張感というものを持て。夜のパトロールは昼間とはワケが違うんだぞ」

 

 その一歩後ろを、胃痛を堪えるような顔でついて歩くのは雇主のアングラヒーロー、社長だった。

 隣を歩く光己へ次々と群がるスカウトやナンパの声と、すれ違う人々からの視線のせいで、精神的な疲弊が限界に達しつつある。社長は内心、冷や汗を流しながら顎に手を当てた。

 

(コイツら、何も知らずに鼻の下を伸ばして声をかけてきてるが……。この女のエグい制圧方法を知っても、そんな邪な目で見つめていられるかね……。)

 

 その時、賑やかな人混みの向こうから、二人の警察官がまっすぐこちらへと歩み寄ってきた。

 

「――はい、そこの二人。ちょっと止まりなさい」

 

 警察官たちは鋭い視線で光己の黒いセーラー服姿と、その隣に立つ中年の社長を交互に見つめ、一瞬でその表情をガチの警戒へと変えた。

 

「お巡りさん、お疲れ様でーす♥」

 

「ミッキー❤、喋るな。……あー、警察の方、私はプロヒーローの――」

 

「はいお父さん、言い訳は署で聞くから。とりあえず身分証出して」

 

 警察官の冷徹な一言が、繁華街の雑踏に突き刺さった。

 社長の顔が驚愕で凍りつく。

 

「なっ……! お父さんだと!? 私はコイツの父親ではないし『パパ』でもない! 私はれっきとしたプロヒーローであり、これはヒーロー活動のパトロー――」

 

「いや、……セーラー服着た未成年を、こんな繁華街で夜中に連れ回してさ。どう見ても健全な関係じゃないよね?」

 

「援助交際、あるいは未成年者誘拐の疑いがある。ガサゴソしないでポケットから手を出して!」

 

「ち、違う! 免許証だ! 今、免許証を出すから……ッ!」

 

 焦った社長がヒーロー免許証を取り出そうとポケットをガサゴソと探るが、指先が震えてなかなか見つからない。最悪のタイミングでの不審な挙動に、警察官たちの目は完全に現行犯を捕らえたプロのそれに切り替わっていた。

 次の瞬間、一人の警察官が、社長から隠すようにして光己の前にスッと立ち塞がった。警察官は光己の肩に優しく手を置き、真面目で慈愛に満ちた声で語りかけた。

 

「キミ、大丈夫? ひどいことされてない? 脅されて無理やり連れてこられたんじゃないかい?」

 

「へ? あ、いや、アタシは別に――」

 

「怖がらなくていいんだよ。親御さんはキミの帰りを心配しているはずだ。もう大丈夫だからね。さぁ、おじさんから離れてこちらへ」

 

 完璧な善意による、完璧な保護。その光景を目の当たりにした瞬間、社長の中で何かがパキィィィンと音を立てて完全に粉砕された。

 

「オレは……オレはプロヒーローだぞ……。街の平和を守る、正義の……プロの……」

 

 その後、必死にスマホの登録画面を見せて誤解が解けるまで、社長は魂が抜けたような顔でブツブツと呪詛を呟き続けるだけの置物と化していた。

 

 

 ――翌朝、アングラヒーロー事務所。

 

「夜は……もう夜は、絶対にソイツと行け……! ソイツの事務所ともう話はつけてある……! オレは二度と夜間パトロールには行かん……!!」

 

 社長は完全にへそを曲げ、机の上に胃薬の瓶をドカドカと並べながら、虚空を睨んでいた。

 そこへ、ガチャリと勢いよく扉を開けて乱入してきたのは、他事務所所属の控えめ女子だった。

 

「やったぁぁぁーーー!!! じゃあこれからは、社長公認でママと夜のパトロールに行けるんだね! 」

 

「小学生にしか見えないのとセーラー服が夜に歩いてたら面倒くさいことにしかならない気がしますけど……」

 

 大喜びで光己の腰に抱きつく控えめ女子に対し、光己は、さらに面倒な事態へと発展しかねない真っ当な懸念を漏らすのだった。

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