ガンダムSEED LEGACY   作:shuda

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【挿絵表示】

C.E.100――。

戦争は終わった。

少なくとも、
世界はそういうことになっている。

ブルーコスモスは壊滅。

ロゴスは歴史の闇へ沈み。

二十五年前、
オルフェ達アコードによる最後の戦乱も終結した。

ナチュラルとコーディネイターは、
ようやく共に歩き始めた――。

……そんな風に、
誰もが“思いたかった”。

だが。

火種は消えない。

人は、
あまりにも簡単に、
憎しみを遺してしまう。

世界は今もなお、
薄氷の上にある。

静かな海に見えるだけだ。

その下では、
まだ誰かが剣を研いでいる。

---




PHASE-001「紅蓮の継承者」

オーブ連合首長国。

 

オノゴロ島。

 

コンパス極東統合基地、

訓練空域。

 

白煙を裂き、

深紅の機体が加速する。

 

深紅と黒を基調にした重装甲。

 

金と白の装飾。

 

鬼神を思わせる鋭角的シルエット。

 

両腰に装備された日本刀型実体剣。

 

――ZGMF-X808/HY666

《クリムゾンフェイス》。

 

コンパス地上部隊所属、

ザラ隊隊長機。

 

デスティニー系列発展機。

 

超近接戦闘へ特化した、

純粋な“斬るため”のモビルスーツ。

 

最大の特徴は、

搭乗者の剣術を極限まで再現するため設計された、

666箇所にも及ぶ異常な関節駆動機構だった。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

振り抜かれた刀が、

訓練用ドローンを一閃で両断する。

 

しかし次の瞬間。

 

上空から降り注いだ光線が、

クリムゾンフェイスの肩部を掠めた。

 

「またかよッ……!」

 

コクピット内で、

青年が舌打ちする。

 

赤みがかった黒髪。

 

鋭い赤の瞳。

 

シュダ・ザラ。

 

19歳。アスラン・ザラとメイリン・ザラの息子。コンパス地上部隊所属、ザラ隊隊長。

 

感情が顔に出やすい性格。

 

だが戦闘になれば、

父アスランを思わせる静かな殺気を纏う青年だった。

 

『被弾判定です、シュダ』

 

通信越し。

 

落ち着いた女性の声。

 

『これで13連勝ですね』

 

「っせぇな……!」

 

シュダが睨みつけた先。

 

白とピンクを基調にした、

優美な機体が空中に静止していた。

 

鳥の羽を模した超高機動ウイング。

 

周囲を漂う、

77基のドラグーン。

 

――ZGMF-SX737P/A

《アブソリュート》。

 

コンパス宇宙部隊所属、

クライン隊隊長機。

 

フリーダム系列の到達点とも言われる、

超高機動殲滅型モビルスーツ。

 

『まだやりますか?』

 

モニターへ映る少女。

 

漆黒のロングヘア。

 

透き通るような白い肌。

 

蒼い瞳。

 

セフィリア・クライン。

 

20歳。キラ・クラインとラクス・クラインの娘。コンパス宇宙部隊所属、クライン隊隊長。

 

現在は極東基地へ長期滞在中であり、

宇宙部隊との合同演習のため地上へ降りてきていた。

 

「……今日はやめだ」

 

『そうですか』

 

セフィリアは、

少し安心したように微笑む。

 

それがまた、

シュダの神経を逆撫でする。

 

勝てない。

 

一度も。

 

模擬戦績、

〇勝13敗。

 

しかも毎回、

あと一歩届かない。

 

『でも、前より速くなってました』

 

「慰めいらねぇよ」

 

『慰めではありません』

 

本気で言っている。

 

だから余計に腹が立つ。

 

セフィリア・クラインは、

そういう女だった。

 

---

 

格納庫。

 

着艦したクリムゾンフェイスから、

蒸気が噴き出す。

 

コクピットハッチが開き、

シュダが降り立った。

 

「お疲れ、シュダ」

 

明るい声。

 

振り向けば、

赤髪の少女が手を振っていた。

 

肩より少し短い赤髪。

 

快活な笑顔。

 

サクラ・ホーク・アスカ。

 

18歳。

 

オーブ軍少尉。シン・アスカとルナマリア・ホーク・アスカの娘。

 

オーブ軍所属ではあるが、

二名編成のザラ隊へ協力要員として派遣されることが多い。

 

「また負けたんだ?」

 

「うるせぇ」

 

「13連敗?」

 

「だからうるせぇって」

 

「あははっ」

 

サクラは楽しそうに笑う。

 

昔からそうだった。

 

シュダが不機嫌な時ほど、

妙に距離を詰めてくる。

 

「でもさ」

 

サクラは整備中のクリムゾンフェイスを見上げた。

 

「ホント変わったよね、この機体」

 

深紅の装甲。

 

異様な駆動構造。

 

刀を握るためだけに存在する、

人型兵器。

 

「前よりずっと、

シュダっぽい」

 

「……そうか?」

 

「うん」

 

その時だった。

 

格納庫奥の扉が開く。

 

静かな足音。

 

黒い制服。

 

肩までの桃色の髪。

 

赤紫の瞳。

 

――アリシア・クライン。

 

16歳。コンパス地上部隊所属、ザラ隊所属。

 

キラとラクスの娘。

そしてセフィリアの妹。

 

スーパーコーディネイター第二世代と呼ばれる、特異な存在。

 

「……シュダ」

 

短い声。

 

シュダが振り返る。

 

「なんだ?」

 

「次の任務」

 

「もう来たのか?」

 

アリシアは小さく頷く。

 

「ユーラシア旧南部地区」

 

「……またコスモ・オラクルか」

 

「うん」

 

サクラの表情が曇る。

 

コスモ・オラクル。

 

エヴィデンス01――“羽クジラ”を神格化した、

新興宗教武装組織。

 

近年では各地で武装蜂起を繰り返し、

コンパス最大の対処対象となっていた。

 

「今回はちょっと妙」

 

アリシアが呟く。

 

「妙?」

 

「敵の動きが」

 

その瞬間。

 

格納庫全体へ警報が響き渡った。

 

『総員第一戦闘配置!』

 

『所属不明機接近!』

 

「ッ!?」

 

轟音。

 

基地外周部で爆発が起きる。

 

「早ぇな……!」

 

サクラが息を呑む。

 

だがアリシアだけは、

静かだった。

 

まるで。

 

こうなることを、

予感していたかのように。

 

「シュダ」

 

「あぁ」

 

シュダの目が変わる。

 

先ほどまでの苛立ちは消え、

戦士の目になる。

 

「行くぞ」

 

「うん」

 

その時。

 

格納庫上層ブリッジ。

 

白い制服姿のセフィリアが、

静かに下を見下ろしていた。

 

その隣には、

銀紫の超ロングヘアを揺らす女性。

 

ミリア・ジュール。

 

22歳。コンパス宇宙部隊所属、クライン隊所属。

イザーク・ジュールとシホ・ジュールの娘。

 

「セフィリア少佐、先行しますか?」

 

『いえ、ザラ隊に任せます』

 

セフィリアは静かに答える。

 

『まずは地上部隊を優先します』

 

だがその瞳は、

既に戦場を見ていた。

 

蒼い瞳の奥で。

 

白い翼が、

静かに殺意を開き始めていた――。

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