迎撃完了――。
戦場へ向かおうと上昇してきていたモビルスーツ部隊は、目の前に広がる光景を見て動きを止めた。
30機以上いた敵機は、ラグナロクデスティニーによって瞬く間に殲滅されていた。
誰もが言葉を失う。
いや――。
ラグナロクデスティニーが見せた異常なまでの力に、誰もが萎縮していた。
モビルスーツ部隊長A
「2分? わずか2分で三十機以上のモビルスーツが全滅だと?」
モビルスーツ部隊長B
「たった3人でこの戦力……英雄の遺伝子ってのは、これが普通なのか!?」
雨だけが、静まり返った戦場へ降り続けていた。
アリシア
『シュダ!』
戦闘終了を確認すると同時に、ラグナロクデスティニーはクリムゾンフェイスの元へと急降下する。
シュダ
『俺は大丈夫だ』
セフィリア
『嘘ですね』
『あの衝撃で無傷とは思えません』
その声には、怒りよりも安堵の色が滲んでいた。
シュダ
『誰のせいだよ』
セフィリア
『私がやれば危険は少ないと言いました!』
シュダ
『俺とアリシアで十分だっつったろ』
二人のやり取りを、アリシアは静かに見つめていた。
アリシア
『もういい……帰ろう』
短い一言だった。
だが、その言葉で張り詰めていた空気は少しだけ和らぐ。
すでに他のモビルスーツ部隊は帰還を開始していた。
セフィリア
『そうですね』
シュダ
『ちっ!……ザラ隊、帰還します』
三機はゆっくりと機首を返し、極東基地へ向かう。
雨は――。
また一段と強さを増していた。
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極東基地。
モビルスーツ格納庫。
帰還した機体を迎える整備兵達が慌ただしく動き始める。
セフィリア
「ザラ大尉が負傷しています」
「ストレッチャーを用意してください」
整備兵達が駆け出そうとした、その時だった。
シュダ
「要らねえよ。そんなもん」
「自分で歩ける」
そう言ってコックピットから降りる。
着地した瞬間、わずかによろめいたものの、すぐに何事もなかったように歩き出した。
アリシア
「医務室には私が付き添う」
セフィリア
「……わかりました」
セフィリアは静かに頷く。
その視線は、並んで歩き始めた二人の背中を自然と追っていた。
シュダとアリシアの息の合ったコンビネーション。
アリシアがシュダへ向ける感情。
シュダの負傷。
そして――。
アリシアが見せた重複SEEDの力。
戦闘中の出来事が、次々と脳裏に浮かぶ。
様々な想いや考えが、セフィリアの頭の中を巡っていた。
シン
『セフィリア、聞こえるか』
不意に、アスカ指揮官から個人通信が入る。
シン
『ちょっと来てくれ』
『今の戦闘に関して聞きたいことがある』
自己判断での出撃だろうか。
それとも、アリシアのことだろうか。
一瞬だけ考えを巡らせた後、セフィリアはすぐに通信へ応じた。
セフィリア
『承知しました』
『すぐに執務室に向かいます』
通信を終えると、セフィリアはもう一度だけ二人の背中へ視線を送り、静かに踵を返した。
雨音が響く格納庫を後にし、指揮官執務室へ向かって歩き出す。
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極東基地内。
医務室。
軍医は手際よくシュダの患部を確認しながら、診察を進めていた。
軍医
「打撲と切傷だけですね。骨や腱は問題ありません」
シュダ
「コックピット内でちょっとぶつけただけっすから」
その診断を聞き、アリシアは小さく息を吐いた。
無表情のままではあったが、その肩からはわずかに力が抜ける。
アリシア
「……良かった」
シュダ
「大丈夫だって言っただろ」
アリシア
「……明日、辞める?」
明日はシュダとオーブ市街地へ行く約束。
シュダの負傷。
自身の変革。
その全てを受け止めきれずに出た言葉だった。
シュダは小さく笑う。
シュダ
「問題ねえよ。明日は晴れだって話だしな」
アリシア
「わかった」
その返事と共に、珍しくアリシアの口元が少しだけ緩む。
ほんの一瞬だけ見せた、小さな笑顔だった。