オーブ首長国連邦。
首都オロファト。
シュダとアリシアが街を訪れた翌日――
C.E.100.06.26
内閣府官邸。
首長執務室。
静かな執務室に、朝の柔らかな陽光が差し込む。
机上の書類へ視線を落としていたカガリは、一通の外交文書を手に取り、向かいに立つソルへ視線を向けた。
ソル
「イリュリア連王国からの謁見ですか?」
カガリ
「ああ」
「先日、王位を継承したばかりの第三連王、ラムレザルからの打診だ」
ソル
「諸国への挨拶回り、といったところでしょうか」
カガリ
「……それだけ」
「とは考えにくいな」
ソル
「と、言いますと?」
カガリは椅子にもたれ、ゆっくりと言葉を続ける。
カガリ
「オーブやコンパスからすれば、コスモ・オラクルに狙われているのはアカツキ島だ」
「だが、他国から見れば――標的はオーブ周辺そのものだと映るだろう」
一拍置き、真剣な眼差しをソルへ向ける。
カガリ
「そんな危険な状況の中で、わざわざ外交に訪れる……」
「何か目的があると考えるのが自然だ」
ソル
「なるほど」
カガリ
「ともかく、拒む理由はない」
「イリュリアも護衛艦隊を率いて来るだろうが」
「オーブとしても軍で護衛に当たる」
ソル
「わかりました」
「ザラ司令官に連絡しておきます」
カガリ
「ああ」
「念のため、シンにも伝えておいてくれ」
ソル
「これを狙ってコスモ・オラクルが動く可能性も……」
「ということですね」
「わかりました」
カガリは引き出しから一通の封筒を取り出し、静かにソルへ差し出した。
カガリ
「あとは、これをメイリンに」
「即時開封するよう伝えてくれ」
ソルは封筒を受け取り、その重みを確かめるように視線を落とす。
ソル
「……わかりました」
秘匿回線での通信すら避けるべき――それほどまでに機密性の高い案件。
だからこそ、カガリは自らの手で封筒を託した。
それは、ソルにとって極秘任務開始の合図でもあった。
以前、シュダとアリシアによる過激派逮捕作戦へ協力した際も、同じように封筒が直接手渡されている。
この方法は、カガリが最重要機密を扱う際の、数少ない慣例の一つだった。
---------
オノゴロ島。
オーブ国防本部。
カガリからの命令を受けたソルは、間を置くことなくアスランへ連絡を入れた。
アスラン
「わかった」
「ラムレザル第三連王来訪時の護衛はこちらで引き受ける」
「日時は決まっているのか?」
ソル
『07.03とだけ伺っています』
『時間は現時点では未定です』
『海路で来訪されると聞いていますので』
『直前になるまで到着予定時刻は確定しないかと思われます』
アスラン
「空路ではなく海路で?」
ソル
「はい」
「代表の話では、第三連王としての『力』の提示だろう」
「と仰っていました」
アスラン
「なるほど」
「統率力はカイ第一連王、軍事力はレオ第二連王」
「というのは有名な話だからな」
「わかった」
「念のため、艦隊は前日から動けるようにしておく」
ソル
『助かります』
--------
コンパス地上部隊極東基地。
極東基地では、シンが通信回線を通じてキラとディアッカへ状況を共有していた。
シン
「ということで、07.03の予定ですが」
「ラムレザル第三連王のオーブ来訪が予定されています」
キラ
『わかった』
『とりあえず、そっちはシンに任せるよ』
ディアッカ
『こっちはこっちで一応警戒は続けてる』
『もちろんプラントもザフトもな』
『さっき報告が来たばかりだけど』
『ジュール隊の仕上がりも問題なさそうだ』
シンは小さく安堵の息をつく。
シン
「そうですか」
「俺は、セフィリアを欠いた宇宙部隊が少し心配でしたが」
「それなら良かったです」
キラ
『そうそう』
『例の会議の件だけど』
『僕とディアッカ、それにラクスとイザークも日時は問題なさそうだよ』
シン
「わかりました」
ディアッカ
『ラムレザル第三連王が来るのって』
『もしかして例の会議の件だったりしてな』
キラ
『なくはないけど』
『さすがに今回はカイ第一連王が参加すると思う』
シン
「なんにせよ」
「あとはイリュリアですね」