ガンダムSEED LEGACY   作:shuda

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PHASE-014「水面の波紋」シーン2/3

執務室でコンパス上層部による会議が開かれていた頃――。

 

極東基地の食堂では、今日もセフィリアが一人で朝食を取っていた。

 

セフィリア

(やはり、毎日きちんとした食事が取れるというのは良いものですね)

 

宇宙部隊に所属していた頃は、アリエルス艦内で過ごす時間がほとんどだった。

当然、食事も宇宙食などの簡易的なものが中心になる。

こうして温かい料理を落ち着いて味わえる日常は、彼女にとって久しく忘れていた贅沢だった。

 

その時、食堂の入口にアリシアの姿が現れた。

 

セフィリア

「おはようございます」

「アリシア」

 

アリシア

「……おはよう」

 

その短いやり取りだけで、食堂の空気がわずかに張り詰める。

 

セフィリア

「昨日は疲れたと言っていましたが」

「十分に休めましたか?」

 

アリシア

「……それなりに」

 

セフィリア

「そうですか」

「今日はシュダは一緒ではないのですか?」

 

アリシア

「………姉さんが一緒に食事って言ってたから」

「……………嫌なら帰る」

 

思いも寄らぬ返答に、セフィリアは目を見開いた。

 

セフィリア

「!? いえ」

「そうでしたか」

「では、ご一緒しましょう」

 

先日、セフィリアが初めてこの食堂へ姿を見せた時とは状況が違う。

あの時は、皆が慣れ親しんだシュダが傍にいた。

しかし、今日は違った。

今もなお、極東基地にはアリシアという存在に戸惑いを抱く者が少なくない。

 

そこへ並ぶセフィリアとアリシア『クライン姉妹』。

 

その圧倒的な存在感に、先ほどまで賑やかだった食堂は、いつしか静まり返っていた。

アリシアはセフィリアの向かいへ腰を下ろす。

シュダのいない今日は、サラダとスープだけを静かに運んできていた。

肉は食べない。

 

しばらく無言の時間が流れる。

 

アリシアはサラダへフォークを刺しながら、ふと口を開いた。

 

アリシア

「……何?」

 

セフィリア

「何とは、どういうことですか?」

 

アリシア

「何か言いたいから私と食事」

「しようとしたんじゃないの?」

 

セフィリア

「……」

 

確かに、ミリアに勧められたことがきっかけでアリシアを食事へ誘った。

だが、最初から何か話したいことがあったわけではない。

 

それでも、向かい合った今、どうしても確かめたいことがあった。

 

セフィリア

「……シュダとは」

「隊長のシュダとは、上手くやれていますか?」

 

アリシア

「…普通」

 

その一言だけだった。

 

セフィリア

「……昨日のシュダとの……」

「いえ……オーブの街はどうでしたか?」

 

アリシア

「セレーネに行った」

「あと海と」

「街で偶然、ルナマリアさんとシュダのお母さんに会った」

 

セフィリア

「セレーネ……ソル中佐のご実家ですね」

「ムウさんやマリューさんはお元気でしたか?」

「ルナマリアさんとメイリンさんですか」

「私も久しくお会いしていませんね」

 

アリシア

「みんな……姉さんのこと聞くけど」

「知らないから……知らないって答えた」

 

セフィリア

「そ……そうですか」

「サクラさんとはどうですか?」

「私も一度見かけましたが、ザラ隊をよく支援していると聞いています」

 

アリシア

「…後方支援は姉さんよりも助かる」

 

セフィリア

「……」

 

先日の戦闘のことを言っているのだろう。

自分とシュダの連携は噛み合わず、その結果、シュダは危険な状況へ追い込まれ、負傷した。

その事実は、今もセフィリアの胸に重く残っていた。

 

セフィリア

「ごめんなさい」

 

アリシア

「…さっきから」

「姉さんは私に何が聞きたいの?」

 

見透かされていた。

セフィリアが本当に知りたいのは、アリシアがシュダをどう想っているのか。

だが、それを真正面から尋ねることはできない。

 

少しの沈黙の後、セフィリアは慎重に言葉を選んだ。

 

セフィリア

「……サクラは……」

「シュダをどう想っているのでしょうか」

 

それまで一度も視線を合わせず、黙々とサラダを口へ運んでいたアリシア。

 

その問いを聞いた瞬間――。

フォークが止まる。

 

ほんのわずかに、眉が動いた。

 

アリシア

「どういう意味?」

 

その反応だけで十分だった。

セフィリアには確信できた。

アリシアは間違いなく、シュダに対して特別な感情を抱いている。

 

セフィリア

「……いえ」

「なんでもありません」

「ご一緒して戴いて、ありがとうございました」

 

それ以上この場にいることができず、セフィリアはトレーを持ち上げる。

まるで逃げるように食堂を後にした。

 

廊下を歩きながら、胸の内には様々な想いが渦巻いていく。

 

セフィリア

(アリシア……サクラ……シュダ……)

 

ノンバイナリーであるアリシアへの気遣い。

姉として抱く心配と、無口で無感情だと思っていた妹への安心。

友人であるサクラへ、軽率にシュダとアリシアの話をしてしまった後悔。

 

そして以前にも増して感じる、アリシアから向けられる拒絶にも似た感情。

 

すべての想いが、シュダという存在を中心に複雑に絡み合っていく。

 

セフィリア

(シュダ………あなたはいったい…………)

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