C.E.100.06.02
地上で発生したコスモ・オラクル襲撃事件から、4日後。
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コンパス宇宙部隊用戦闘旗艦――アリエルス。
スーパーミネルバ級をベースとした宇宙部隊用戦闘旗艦であり、
現在はコンパス宇宙部隊の主力艦として運用されていた。
格納庫へ着艦したシャトルから2人の女性が降りてきた。
白とピンクを基調とした制服姿の女性。
セフィリア・クライン。
そして、その後ろを歩く金髪の女性。
ミリア・ジュール。
イザーク・ジュールとシホ・ジュール(旧姓ハーネンフース)の娘。
便宜上、ハーフコーディネイターとされているが、
コーディネイター第三世代とほとんど変わらない。
これは、コーディネイター第三世代の出生率低下への対策として、
プラントが行なっていた施策の1つ、体外受精で両親の遺伝子に加えて、
ナチュラルの遺伝子を組み込むことで産まれたことに起因していた。
セフィリア
「……久しぶりですね、アリエルス」
セフィリアが静かに呟く。
ミリア
「地上にいた数日間が濃すぎたから、なんか何週間も離れてた気分だわ」
ミリアが肩を竦めた。
???
「お帰りなさい、セフィリア少佐、ミリア大尉」
2人の前に立っていたのは、濃紺の制服を着た男だった。
ユーリ・アレクセイ。
コンパス宇宙部隊用戦闘旗艦アリエルス艦長。
階級は中佐。33歳。
銀色の髪、見た目は男性のようだが、両性具有だった。
これも、第三世代の出生率問題に対するプラントの施策の1つ
ナチュラルの技術であるエクステンデッド
この薬品技術を応用して出生率を上げたまでは良かったが、
彼のような両性具有や性に特性を持った出生が増えていた。
アリシアがノンバイナリーでターナー症候群なのも、これが要因であった。
セフィリア
「ユーリ艦長」
セフィリアが軽く敬礼する。
ユーリ
「地上の件は聞いています。大変でしたね」
セフィリア
「対応したのはザラ隊です」
「クライン隊には待機命令が出ていましたので」
ユーリ
「ザラ隊ですか、ということはあなたの……」
セフィリア
「はい。妹も出撃しました」
アリシアの異常な戦闘のことは言わなかった。
いずれ報告書は上がってきて、ユーリも目を通すだろうが
それが理由ではない。
ミリアはアリシアの話を深くしないセフィリアを横目で見ていた。
ユーリ
「そういえば、ミリア大尉」
「機体のチェックは済んだのですか?」
ミリアがバツの悪そうな顔をしている。
ミリア
「いや、なかなか時間が無くて〜」
セフィリア
「……ミリア、本日中に済ませておいてください」
ミリア
「わかりましたよ」
ユーリ
「しかし、何となくきな臭いですね」
セフィリア
「はい、未達とはいえ、これまでテロ行為主体だったコスモ・オラクルが」
「コンパス基地に直接奇襲というのは……」
ミリア
「…………」
---数時間後
ミリアは自機の前に立っていた。
ZGMF-X89R24 フリューゲルフリーダム。
金と白を基調とした大型の実体槍を持った機体。
ミリア
「うぅ……整備って苦手なのよねぇ……。」
「データだけのチェックなら、とっくに終わってるんだけど…」
カチャカチャ。
工具を持ち出したのはいいが、不思議そうに首を傾げた
ミリア
「あれ?……これってどこを外したんだっけ?」
???
「それ以上は、触らないほうがいいですよ、ミリアさん。」
ミリアが振り向くと、そこにはセフィリアとはまた違った雰囲気の
真面目そうな蒼い髪の女性が立っていた。
クレア・ザラ。
ザフトに所属する、16歳の少尉。
クレア
「事前に告知しましたように査察任務で参りました。」
ミリア
「明日じゃなかったっけ?」
クレア
「はい。ですが、本日アリエルスに帰還されると伺いましたので」
「であれば、お忙しいクライン隊の査察は早めに済ませたほうがよいかと…」
ミリアは解っていた。
彼女が事前告知よりも前日に来た本当の理由を……
クレア
「データをみる限り、特に異常は無さそうですね……」
クレアは真剣な表情で、機体に語りかけるように
フリューゲルフリーダムの前に立った
クレア
「装甲は問題無さそうです、関節も痛んでいなさそうですね」
「後は私が査察ついでにやっておきます」
ミリア
「助かる〜〜 」
ミリアが苦笑する。
クレア
「相変わらず、機械は苦手みたいですね」
ミリア
「あなたも、相変わらず」
「お兄ちゃんとは違って真面目よね」
クレア
「兄は兄です。私には関係ありません。」
クレアの兄はシュダ。
つまりは、あの両親だ、彼女もアスカ家に預けられていた時期があり、
サクラとは友達だが、兄妹仲はいまひとつだった。
ミリア
(まったく、こっちの兄妹といい、あっちの姉妹といい)
「……面白いんだから」
クレア
「面白い?」
ミリア
「何でもない何でもない」
ミリアはシュダを中心にした、この若者達の関係を
まるでドラマでも見るように楽しんでいた。
バカにしているわけではない。
大切な友人達だとも思い、『見守る』に近い感覚だった。
格納庫にコツコツとクラシックを奏でるような足音が響いた。
セフィリア
「クレア、随分早い到着ですね」
クレアの蒼い瞳が大きく見開かれる。
クレア
「姉さ……セフィリア少佐」
落ち着いて言い直したが、顔はニヤけている。
ミリアが後ろでクスクス笑っている。
セフィリア
「…ミリア?チェックは終わったのですか?」
ギクッとしたミリアが答える前に
クレア
「私が引き継ぎました」
「手早く終わらせて、アブソリュートの査察に移ります」
セフィリアが「まったく……」といった表情でミリアを見ると、
ミリアは「だってこの子が」と言い訳めいた顔をしている?
???
「これはこれは美人が3人も揃って楽しそうですね」
突然、声をかけられ珍しくセフィリアまでもがギョッとした。
いや、それよりも仮面をしている姿に驚いた。
レイヴン
「失礼しました。私はレイヴン・ヴァレンタイン」
「彼女同様、ザフトの人間です」
「この度、本国より辞令を受け」
「ザフトとコンパス宇宙部隊の連絡将校として伺いました」
「アレクセイ艦長には、数日前に話を通してあります」
クレアがレイヴンの階級章を確認して敬礼する。
クレア
「失礼しました、ヴァレンタイン少佐」
レイヴン
「堅苦しいのは苦手でしてね」
「これからは私もたびたび伺うことになります」
「同じザフトの人間として仲良くやりましょう」
クレア
「はい。ありがとうございます」
セフィリア
「よろしくお願いします」
ミリア
「ザフトは今回の件、どう考えてるんですか?」
元ザフトのミリアとセフィリアとはいえ、今はコンパス所属の2人、
本来であれば、不用意にザフトの内情を聞きにくい。
どう聞き出そうか考えていたセフィリアを、
ミリアがその楽観的な性格で突破した。
レイヴン
「公式には警戒強化のみですね」
「プラントでは連日会議だと、ジュール委員長は仰っていました」
「そういえば、ミリア大尉はジュール委員長のご息女でしたね」
「お噂はかねがね伺っています」
ミリア
「いえ それほどでも 」
セフィリア
「…また戦争になるのでしょうか」
クレア
「姉様…………」
レイヴン
「…出来れば、もう辞めて欲しいものですね」
「ですが、あなた方コンパスと我々ザフト、それにオーブと大西洋連邦」
「この同盟に安々勝てる組織も国も無いでしょう」
「……では私は艦長に連絡に伺います。失礼します」
---レイヴンは足早に艦長室に歩いて行った
ミリア
「なんか代わった人ね」
クレア
「仮面が…ですか?」
ミリア
「私とセフィリアがザフトに居た時にも、居たのかな?あの人」
セフィリア
「さあ?ですが、見た目の年齢通りで少佐であれば」
「長くザフトにいらっしゃるのでしょうね」
「人を詮索するのは、よしましょう」
「クレア。モビルスーツ査察を続けてください」
クレア
「はい♥姉様」
---その夜
アリエルス艦内セフィリア自室
セフィリアは窓の向こうの星々を見つめていた。
セフィリア
「……姉」
小さく呟く。
アリシアの顔が浮かぶ。
自分を姉様と呼び崇拝するクレア
アリシアと共に居る………シュダ。
セフィリア
「何かが起ころうとしているのでしょうか」
静寂………
しかし。
その静寂のどこか遠く。
男の声。
「セフィリア・クライン」
「あなたも、重要な観察対象です」
「そしてシュダ・ザラ、クレア・ザラ」
「サクラ・ホーク・アスカ」
「SEEDを持つ者達」