機動戦士ガンダムSEED LEGACY C.E.100 作:shuda
シュダがアリシアのことを『ウサギみてえ』とバカにしていた頃。
コンパス極東基地。
兵舎内、セフィリア自室。
ラムレザルの出国を伝えるニュース映像は、すでに終わりを迎えていた。
静かな部屋の中。
セフィリアは一つの髪飾りをそっと手に取り、窓の外へと視線を向けていた。
幼い頃に譲り受けた、小さく可愛らしい髪飾り。
今の彼女には少し幼すぎるその装飾品を、長い年月、大切にしまい続けてきた。
セフィリア
(ラム……)
(お父様のことを耳にした時は驚きましたが)
(元気そうで良かったです)
その小さな髪飾りは、遠い昔を思い出させる。
十数年前。
今よりも遥かに内政が不安定だったイリュリア連王国。
当時、第三連王であったラムレザルの父は、幼い娘の身を守るため、安全なプラントへと避難させていた。
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C.E.86.XX.XX
プラント。
首都アプリリウス。
幼年学校。
幼い二人にとって、それは初めて経験する『別れ』だった。
セフィリア
「ラム!」
「国に帰るってホント?」
ラムレザル
「うん」
「コンパスがブルーコスモスをやっつけてくれたからなんだって」
セフィリア
「私のパパとママ?」
ラムレザル
「そうだと思う」
セフィリア
「寂しいけど」
「平和になったってことだよね」
ラムレザル
「そうだよ」
「セフィもイリュリアに来れると思う」
セフィリア
「イリュリアのお城」
「見てみたいな」
ラムレザル
「おいでよ」
「中でかくれんぼしよう」
セフィリア
「楽しそう」
幼い二人には、王城も広い遊び場でしかなかった。
ラムレザル
「セフィ」
「これ。あげる」
ラムレザルは、自分の頭に着けていた髪飾りを外し、セフィリアへ差し出した。
セフィリアは両手で受け取り、小さな髪飾りをしばらく見つめる。
嬉しさと、別れの寂しさ。
幼い胸の中で、その二つの感情が入り混じっていた。
セフィリア
「……じゃあ私はラムにこれあげる」
今度はセフィリアが胸元のブローチを外し、ラムレザルへ差し出す。
ラムレザル
「ありがとう」
互いに笑い合う。
それは、幼い二人だけの小さな約束だった。
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C.E.100.07.07
極東基地。
セフィリア自室。
セフィリア
(懐かしいですね)
(ラムはまだ……持ってくれているでしょうか)
セフィリアは微笑みながら、ゆっくりと髪飾りを頭へ着けてみた。
幼い頃にはぴったりだったその髪飾りも、今では少し似合わなくなっている。
それでも。
彼女にとっては、何よりも大切な思い出だった。
ピピピッ
不意に通信端末が鳴り響く。
セフィリアは慌てることもなく、反射的に通話ボタンをタップした。
シン
『セフィリア、ちょっといいか?』
セフィリア
「はい」
シン
『先日のイリュリア来訪で、オーブに依頼があったようでな……』
話しかけていたシンが、不意に言葉を止めた。
シン
『……お前、それ何だ?』
セフィリア
「!!!!」
セフィリアはハッと目を見開く。
髪飾りを着けたままだったことを思い出し、慌てて外した。
セフィリア
「申し訳ありません」
「見苦しいものをお見せしました」
シン
「随分と幼い品だな」
少しだけ優しい表情になる。
シン
「……想い出の品か」
セフィリア
「……はい」
そっと髪飾りを見つめる。
セフィリア
「以前、大切な友達に貰った」
「大切な物です」
シン
「俺も、そういうのは今だに肌身離さず持ってるよ」
そう言うとシンは内ポケットへ手を入れ、一台の古い携帯電話を取り出した。
長い年月を共にしてきたことがわかるほど、大切に扱われている品だった。
シン
「その友達は」
「また会えるのか?」
その問いに、セフィリアは静かに目を伏せた。
何となく。
シンが本当に聞きたかったことを察してしまった。
シンが持つ想い出の品。
それは今も大切だから持っているのではない。
もう二度と会えない、大切な人との思い出だからこそ、手放せないのだ。
だからこそ、セフィリアは穏やかに微笑んだ。
セフィリア
「……はい」
少しだけ髪飾りを握りしめる。
セフィリア
「いつか必ず」