機動戦士ガンダムSEED LEGACY C.E.100 作:shuda
PHASE-019「受け継がれる想い」シーン1/3
各国の代表たちが、次々と回線から姿を消していく。
先ほどまで多くの国の代表者たちが言葉を交わしていた共有回線も、いつの間にか静かになっていた。
そして最後に残ったのは――。
かつて同じ戦場に立ち、幾度となく同じ時間を過ごしてきた、昔からの顔馴染みたちだった。
キラ
『はーーー』
『やっと終わったね』
キラが大きく息を吐く。
その溜息には、会議そのものから解放された安堵がはっきりと滲んでいた。
だが、その一言を聞き逃すイザークではない。
イザーク
『まったく貴様は!』
『いい加減に慣れろ!』
ディアッカ
『無理だろ。キラには』
アスラン
『そうだな』
イザーク
『立場を考えろ。立場を』
『だって疲れるんだもん』そう言いたげなキラの様子に、イザークはさらに何か言いたそうな顔をする。
しかし、それ以上追及しても仕方がないと判断したのか、ひとまず口を閉じた。
カガリ
『しかし、こうやってみなで話すのも久しぶりだな』
その言葉に、場の空気が少しだけ変わった。
先ほどまでの政治的な緊張とは違う。
かつての仲間たちが集まった、どこか懐かしい空気だった。
ディアッカ
『まあ、いろいろと忙しいもんな、俺らも』
アスラン
『アリシアが産まれて、春に花見をした時以来だな』
ラクス
『となると15年以上前ですわね』
キラ
『また、あの時みたいに会いたいね』
その言葉に、何人かがほんの少しだけ表情を緩める。
あの頃は、今よりもずっと自由だった。
いや――。
自由だったというより、自分たちが背負うものが、今ほど多くなかった。
イザークが言ったように、彼らにはそれぞれの立場があり、当然のように職務も多い。
国を背負う者。
軍を率いる者。
世界規模の組織を運営する者。
そして、平和を守るために現場へ立つ者。
それぞれの立場は違っても、彼らが抱えているものは決して軽くない。
それよりも――。
平和を維持する戦いというものは、平和を作るよりも遥かに大変なのだと、彼らは痛感していた。
戦争を終わらせれば、それですべてが終わるわけではない。
戦争の後に残された傷。
国家間の利害。
人々の感情。
そして、再び戦争を起こさないための努力。
それらすべてを抱えながら、彼らは今も戦い続けている。
シン
『……アリシアと言えばキラさん』
『ラグナロクデスティニーについてちょっと聞きたいんですが』
懐かしい話題から一転。
シンが、少しだけ真剣な声音で口を開いた。
キラ
『……うん』
シン
『みんなも報告書で知ってるとは思うんですが……』
イザーク
『アリシアのSEEDか』
シン
『はい』
『あれってコンパスで設計開発ですよね』
『アリシア専用に開発した。とは聞いてますけど』
『実際のところ、どういう仕様になってるんですか?』
キラ
『アリシア専用ってコンセプトにはしてるけど』
『わかりやすく言っちゃうと』
『ほとんど『僕用』なんだよね』
キラは、少し苦笑する。
キラ
『あの子のスペックがどの程度なのか分からなかったし』
『素質的に僕と同じくらいかなって』
その言葉に、シンだけでなく他の者たちも耳を傾ける。
「キラ用」それがどういう意味なのか。
それがどういう意味なのか。
そこにいる全員が、ある程度は理解していた。
アスラン
『しかし、そのOSもあの子が書き換えたんだろ?』
ディアッカ
『それでカタログスペック以上って話だよな』
キラ
『前にイザークにも話したけど』
『僕にもアリシアの能力が測りきれないんだよね』
『多分、重複SEEDだとは思うんだけど』
キラの言葉が途切れる。
それは断定ではない。
あくまで、現時点での推測。
キラ自身ですら、アリシアという存在を完全には理解できていない。
その事実が、かえってその場にいる者たちの警戒を強めた。
カガリ
『私達以外には、この情報は出さないのが得策だな』
ラクス
『一度、あの子にも話を伺ってみたいですわね』
『あの子自身が自分の変化をどう思い、どう感じているのか』
ラクスの声音には、軍人としての警戒とは別のものがあった。
一人の自分の娘として。
一人の人間として。
アリシア自身が、自分の中に起きている変化をどう受け止めているのか。
それを知ろうとしている。
イザーク
『俺には分からんが』
『そこまでSEEDと違う物なのか?』
シン
『だってキラさん仕様の機体を、更にスペック上げて』
『それを自在に扱えるんでしょ』
『そんなの俺には無理ですよ』
シンが率直に言う。
それは謙遜ではなかった。
自分自身も高いSEEDの能力を持っていることを、シンは理解している。
だからこそ、アリシアの異常さも想像できる。
アスラン
『俺は、昔ストライクフリーダムに乗ったが』
『あれも相当扱いが難しかった』
『並列演算の量もだが、それを処理しなければならない量も多すぎる』
シン
『なんすか?』
『『お前には無理でも、俺には出来た』って言いたいんすか』
アスラン
『そうじゃない!』
『キラ以外にはちゃんと扱えないと言ってるんだ!』
シン
『……それ、最初からそう言ってくださいよ』
アスラン
『だからそう言ってるだろ!』
二人のやり取りに、イザークが呆れたように息を吐く。
イザーク
『貴様らは本当に変わらんな』
ディアッカ
『……お前もだろ』
イザーク
『なんだと!?』
『ディアッカ!貴様ぁ』
いつもの光景だった。
戦場を共にした頃から、何年経っても変わらない。
世界の立場が変わっても、背負う責任が増えても――。
この部分だけは、昔のままだった。
カガリ
『とにかくだ』
『ラクスが言うように、一度アリシア本人に』
『話を聞いてみてもいいかもしれんな』
カガリが話を戻す。
キラ
『それは上官としてシンが話すより』
『僕かラクスが話したほうがいいかもね』
シン
『そうですね。お願いします』
ラクス
『アリシアはシュダに随分懐いているようです』
『シュダにも話を聞いてみてもいいかも知れませんわね』
その名前が出た瞬間、シンの表情がほんの僅かに変わった。
シン
(懐いているだけならね………)
口には出さない。
ただ、その一言だけを胸の内に残す。
シン
『セフィリアには聞いてみましたよ』
『まあ俺達と一緒で『わからない』でしたけど』
キラ
『イリュリアには僕も行くから』
『その時にでも2人と話してみるよ』