ガンダムSEED LEGACY   作:shuda

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PHASE-005「守るべき日常」

赤い警報灯が通路を染めていた。

 

『オーブ市街地にて、コスモ・オラクル過激派と思われる集団の拠点を発見』

『コンパス地上部隊は第2警戒態勢へ移行。各員は速やかに持ち場へ。』

 

基地内放送の余韻が残る中、シュダは足を止めていた。

隣ではアリシアが静かに放送を聞いている。

 

アリシア

「……始まる。」

 

短く呟く。

 

シュダ

「休みの話してたら、これかよ……」

 

だが不満を口にしている暇はない。

ザラ隊は即応部隊だ。

呼ばれれば動く。

それだけだった。

 

基地内放送

『ザラ隊の両名は直ちにブリーフィングルームに集合してください』

 

―――

 

コンパス地上部隊極東統合基地内。

ブリーフィングルーム。

 

大型モニターにはオーブ市街地の地図が表示されている。

 

担当士官

「対象はコスモ・オラクル過激派と推定される武装集団」

「市街地での作戦となるためモビルスーツの使用は禁止」

「対象の目的は不明。逮捕及び拘束を最優先とする」

 

アリシアは黙って聞いていた。

 

シュダ

「武装集団って言っても、コスモ・オラクルは一応、宗教団体ですよね。」

「容疑はどうするんすか?まさか武装してるから逮捕ってのは無理でしょうし。」

 

担当士官

「……名目上はテロ未遂容疑だ。」

「だが、実際にはテロ未遂の証拠はない。だからコンパスは逮捕及び拘束。」

「身柄はオーブが引き継ぎ、取り調べする予定になっている。」

 

シュダ

「だったら全部オーブがやれば、よくないっすか?」

 

休みの日の話をしていたシュダは、

正直、良い気はしていない。

そもそも作戦内容に納得出来ていない。

 

担当士官

「コンパスの大部隊、オーブ、ましてオーブ軍が大きく動けば、」

「コスモ・オラクルを刺激しかねない。」

「コンパスの小隊で速やかに処理して、オーブ警察に引き渡す」

 

メガネの男性が入ってきた。

 

リュウタ

「それに…現在コンパスを含めた主要国は、宗教団体である、」

「コスモ・オラクルに対し、先制出来ない状況下にあります。」

「コンパスやオーブ軍が表立って動けば、他国も動き出してしまいます」

「そうなれば、また………」

 

アリシア

「戦争………」

 

室内に長い沈黙…………。

 

リュウタ

「すいません。私がアスカ指揮官にあなた方を推薦しました。」

 

シュダ

「判りましたよ、行きますよ」

 

心では納得出来ていないが、頭では理解出来た。

シュダやアリシアは経験したわけではないが

誰ももう、戦争なんてしたくはない。

 

担当士官

「ザラ隊は直ちに現地へ向かえ」

 

シュダ

「了解」

「アリシア!」

 

アリシア

「うん」

 

シュダは愛刀を手に、

アリシアと共に軍用車に飛び乗った。

 

―――

 

現場はオーブの首都オロファトだった、

コンパス基地のあるアカツキ島、

そこから、首都のあるヤラファス島までは、ヘリで向かった。

 

---

 

オーブ首都(ヤラファス島)

 

ヤラファス島の天候は雨だった。

オーブ市街地へ向かう車内。

 

運転席にはシュダ。

助手席にはアリシア。

 

窓の外には平和な街並みが流れていた。

 

たくさんの開いた傘。

休日を過ごす家族。

買い物客。

子供達。

 

シュダ

「こんな街中で………」

 

アリシアは膝の上でギュッと拳を握った。

 

ブルーコスモスの完全崩壊後、世界に表立った戦争は起きていない。

単なる宗教団体だったコスモ・オラクル。

テロや破壊活動が目立ちだしたのは、最近のことだった。

近年でのコンパスの活動自体も、実戦は少なく、

大国であるオーブ、プラント、大西洋連邦、

3国家間の同盟維持の楔としての役割を担っていた。

 

アリシアは窓の外を見つめたまま。

 

アリシア

「市民に被害……出したくない」

 

シュダ

「ああ、一瞬で制圧してやる」

 

窓に写るアリシアの瞳、窓を打つ雨が涙に見えた。

 

---

 

車内に通信が入る。

 

通信

『こちら情報部。対象の潜伏先を特定』

『オロファト郊外、東部住宅街』

 

シュダは眉をひそめた。

 

シュダ

「オロファト郊外東部……?」

 

シュダのよく知る場所だった。

ほとんど帰ってはいないが、ザラ邸からそれほど離れていない地域。

シュダの実家近く。

 

通信が切り替わる。

 

シン

『シュダ、アリシア、聞こえたな』

『がっつり住宅地だ』

『銃は使うな、出来れば使わせもするな』

 

シュダ

「無茶苦茶いってくれんな、オッサン」

 

シン

『オッサンじゃない。出来るな。シュダ』

 

シュダ

「アンタらさ。ある程度解ってて俺とアリシアにしただろ」

 

シン

『…………任せたぞ』

 

通信はプツリと切れた。

 

アリシア

「艦長も指揮官も、シュダに頼り過ぎ」

 

シュダ

「お前にもだよ。アリシア」

 

天才の姉、セフィリアと比べられ続けた人生。

姉とは別の道を辿るために入ったオーブ軍。

頼られた経験の少ないアリシアには、

シュダの言葉が強く心に刺さった。

 

---

 

オロファト郊外、住宅地。

街の片隅に設置された複数の倉庫の列。

時刻は21時。

街の灯りは徐々に消え始めていた。

 

シュダ

「…ここか」

 

シュダとアリシアは二手に分かれて、

該当倉庫の表口と裏口を静かに接近した。

 

聞こえる話し声から察するに

10人には満たないだろう。

 

シュダ

(この程度なら、俺とアリシアで十分だな)

 

シュダはアリシアにハンドサインを送った。

アリシアが頷く。

 

次の瞬間。

シュダによってドアが蹴り開かれた。

 

シュダ

「コンパスだ!武器を捨てろ!」

 

突然の突入に過激派達が動揺する。

だがすぐに銃口が向けられた。

 

シュダは左手に持った日本刀の鯉口を切りながら、一気に間合いを詰める。

同時に反対側では、アリシアがすでに1人掌底でぶっ飛ばしていた。

 

シュダの抜いた刀が横一文字に風を斬る。

 

2人同時。

だが、峰打ち。致命傷ではない。

 

過激派

「ダメだ!!逃げるぞ」

 

残った3人が小柄なアリシアの居る裏口に走る。

 

シュダ

「逃がすかよ!!」

 

シュダが1人仕留めた。

 

アリシア

「………」

 

アリシアも1人蹴り飛ばして行動不能にしている。

 

過激派

「クソッ!」

 

1人がアリシアの横をすり抜け、裏口から飛び出た。

 

アリシアとシュダが後を追うと、すでに過激派の残った1人は、

車のエンジンを掛けていた。

 

シュダ

「しまった!!」

 

軍用車は正面口。

 

アリシア

「!!逃げられる……」

 

突然、空から轟音が響いた。

 

巨大な影が地上へ降り立つ。

紫と白を基調としたモビルスーツ。

機体制御を重視した特徴的なウイング。

ORB-X117。

アポカリプスストライク。

オーブ連合代表首長直轄特務隊所属。

ソル・デ・フラガ専用機。

 

シュダもアリシアも見たのは初めてだった。

直轄特務隊は代表首長の護衛と斥候が主な任務であり、

表立った場所に、この機体が出てくることはほとんどなかった。

 

逃走車両の前方へ着地したアポカリプスストライクは、

モビルスーツの大きな手で車体を押さえ込む。

 

もちろん、

道路を破壊することなく、

周囲へ被害を出すこともなく。

 

完璧な制圧だった。

 

車は完全に停止し、

シュダに通信が入る。

 

ソル

『はい、確保っと』

 

どこか軽い声。

だが安心感のある声だった。

 

ソル

『間に合ったみたいだね、ボウズ』

 

シュダ

「ソル二佐……!」

 

---

 

拘束された過激派達が整列させられていた。

アポカリプスストライクの足元でシュダとアリシアはソルと合流する。

 

金髪とエメラルドグリーンの瞳を持つソル・デ・フラガ。

かつてオーブ軍でシュダ達の上官だった人物。

 

シュダ

「市街地でモビルスーツですか?」

 

ソルは肩をすくめるような口調で答えた。

 

ソル

「カガリ代表の命令さ」

「表立ってオーブ軍を動かすと、面倒な連中がウルサイからね」

「だから私を動かした」

 

アリシアが短く言う。

 

アリシア

「合理的。」

 

ソル

「だろ?」

 

ソルは笑った。

 

ソル

「戦争で暴れるだけが、モビルスーツじゃないってことさ」

 

シュダは拘束された車両を見た。

逃走車を止めるだけなら、あれ以上の方法はない。

 

シュダ

「助かりました、ソルさん」

 

ソル

「礼はいいさ」

 

ソルは軽く手を振った。

 

ソル

「若い連中を支えるのも、年長者の仕事だからね」

 

シュダ

「ソルさんまだ24でしょwww」

 

アリシア

「………久しぶり…ソルニ佐」

 

ソル

「アリシア、ちゃんと肉食ってるか?」

 

アリシア

「うん。…昨日、シュダに言われたから」

 

アリシアはシュダに対してと、同じようにソルには饒舌だった。

ノンバイナリーでターナー症候群のアリシアは、

コーディネイター第三世代ではない、ナチュラルにも関わらず、

偶然にも両性具有のソルに近しいものを感じ、

ソルもまた、アリシアの良き理解者として関わっていた。

 

ソル

「相変わらず、随分シュダには素直なんだなあ、アリシア」

 

アリシア

「………」

 

互いに良き理解者ではあったが、

アリシアはソルの軽口はどうも好きにはなれなかった。

 

しばらくして。

拘束されたコスモ・オラクル過激派達はオーブ当局へ引き渡された。

事件現場の処理も終わりつつある。

 

住宅地での騒ぎに、さっきまでは野次馬の近隣住民も集まっていたが、

オロファトの夜の街は、いつもの静けさを取り戻していた。

 

シュダとアリシアは護送車が去っていくのを見送る。

 

ソル

『じやあな。ボウズ、アリシア』

 

ソルのアポカリプスストライクは、

静かな住宅街に、出来る限り騒音を出さないよう、

ギリギリまでスラスターを弱めて飛び去っていった。

 

残された2人

アリシアが街を見つめる。

 

アリシア

「……綺麗。」

 

平和な街。

守るべき場所。

 

シュダ

「そうだな。」

「でも、こんなとこ大したことねえよ」

「今日は任務だしな」

「また…ゆっくり来ようぜ」

 

アリシア

「うん……」

 

コスモ・オラクルとの戦いは終わっていない。

今日捕らえた者達も、その一部に過ぎない。

 

それでも。

守れた日常がある。

その事実だけは確かだった。

 

真夜中のオロファトを見つめながら、シュダは静かに拳を握った。

 

次の戦いに備えるように。

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