ガンダムSEED LEGACY   作:shuda

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PHASE-006「帰るべき場所」

C.E.100.06.07----

コンパス地上部隊極東統合基地、食堂。

 

昼時の食堂は騒がしかった。

食器の音、話し声、テレビの音。

シュダは適当に選んだ定食を前に、面倒そうに箸を動かしていた。

向かいにはアリシア。隣にはコウタ。

 

シュダ

「お前、肉食えよ」

 

アリシアは少しだけ視線を上げた。

 

アリシア

「……食べてる」

 

皿の端の肉を細かく切っていた。

苦手な肉、食べにくいんだろう。

シュダはそれを確認して何も言わない。

 

コウタが苦笑した。

 

コウタ

「相変わらずだなお前ら。兄妹でもないのに保護者みたいになってるぞ」

 

シュダ

「うるせぇよ」

 

コウタ

「否定しないんだな」

 

アリシアは静かに食事を続けていた。

食堂の大型モニターからニュース音声が流れる。

 

アナウンサー

『プラント医療研究機関は、本日』

『エクステンデッド技術を応用した薬剤制御型遺伝補助治療についての、』

『中間報告を公開しました』

 

食堂で食事をしている数人が顔を上げる。

 

アナウンサー

『従来問題となっていたコーディネイター第三世代以降の出生率低下について、』

『大幅な改善傾向が確認されています』

 

コウタが眉を上げた。

 

コウタ

 

「へぇ」

 

シュダもテレビを見始めた。

 

解説が続いている。

 

アナウンサー

『従来のナチュラルの遺伝子を体外受精で植え付ける手法ではなく、』

『出生前の母体への薬理的補助技術による改善——』

 

アナウンサー

『一方で倫理的課題も指摘されています』

 

コウタが肩を竦めた。

 

コウタ

「時代も変わったな」

 

シュダ

「……どうだかな」

 

コウタは視線をテレビに向けたまま言った。

 

コウタ

「昔はもっと直接だったんだろ」

 

シュダは少し考えて、悟ったような目で言った。

 

シュダ

「ああ、エクステンデッドか……らしいな」

 

シュダもコウタも話にしか聞いたことはない。

かつての連合のエクステンデッド。

強化人間。

 

シュダは箸を置いて話を続けた。

 

シュダ

「ミリアさん……知ってるか」

 

コウタ

「クライン隊のか?」

 

シュダ

「あの人はちょっと昔の方式で生まれてる」

 

アリシアが僅かに反応した。

シュダが続ける。

 

シュダ

「ナチュラルの遺伝子を組み込んでの人工受精、」

「今みたいな調整技術よりも荒っぽい」

 

コウタが黙る。

 

コウタ

「……両親とか…大変だったろうな」

 

シュダ

「知らねぇよ…………本人達しかな」

 

アリシアが静か呟く。

 

アリシア

「産まれ方で、人は決まらない」

 

シュダは一瞬だけアリシアを見る。

自分のことを言っているんだろうか。

セフィリアのことを言っているんだろうか。

それとも単に、今話に上がっているミリアさんのことを言っているんだろうか。

 

シュダ

「……そうだな」

 

シュダは、その全てに対してと捉えて、一言だけ答えた。

 

突然シュダの端末が鳴った。電話だ。

 

発信者は………アスラン・ザラ。

 

シュダは露骨に嫌そうな顔をした。

 

コウタが笑って言う。

 

コウタ

「出ろよ、オーブ軍の司令官だろ?」

「この前の過激派の件じゃないのか?」

 

ため息を付きながらシュダは電話に出た。

 

アスラン

『シュダ』

 

シュダ

「なんだよ」

 

アスラン

『過激派の件は、聞いた。よくやってくれた』

 

沈黙。

シュダは無表情。

 

シュダ

「任務だからやっただけだ」

 

アスラン

『だが、市街地であれだけ被害も出さずに抑えたのは——』

 

シュダ

「要件はそれだけか?」

 

アスラン

『…………ああ、たまには帰れよ』

『メイリン……母さんも心配してたぞ』

 

シュダ

「アンタこそ、帰ってねえんだろ。どうせ」

 

アスラン

『俺は………すまない』

 

シュダ

「また、『すまない』かよ」

「アンタそれしか言えねえのか」

 

アスラン

『悪かった。とにかくこれで、この一件も前進する』

 

シュダ

「そういうのは、アンタら『上』の仕事だろ」

 

アスラン

『そうだな………』

 

シュダ

「………切るぞ」

 

コウタが苦笑した。

 

コウタ

「もうちょい愛想良く出来ないのかwww」

 

シュダ

「やろうと思えばな」

 

コウタ

「やらないだけか」

 

シュダは答えない。

アリシアは黙っている。

頑張って肉を全部食べ終えて、水を飲んでいた。

 

その日の終わり。

そろそろ寝ようかと、

目覚ましのアラームを確認したタイミングで、メールの着信。

 

差出人はクレア・ザラ。

 

『C.E.100.06.09/08:00』

『コンパス地上部隊極東統合基地にてザラ隊運用MS査察を実施します』

『対象:クリムゾンフェイス及びラグナロクデスティニー』

『ザフト、カーペンタリア基地到着後』

『ナイトメアジャスティスにて、そちらに伺います』

 

必要事項のみだ。

業務連絡。

 

一般的な兄妹で交わすようなメールではない。

 

シュダは返信せずに既読だけ付けて端末を閉じた。

 

「……面倒だな…………どっちも」

 

-----

 

C.E.100.06.09/07:58

 

基地上空に蒼と白のカラーをした機体が降下する。

 

左側だけ大きく張り出した翼。

不均衡なのに異様な完成度。

ナイトメアジャスティス。

 

明らかに重心がズレているはずの機体は、

真っ直ぐ綺麗に着地した。

 

コックピットが開き、クレアが颯爽と降りてくる。

 

クレア

「ザフト所属、コンパスMS査察官、クレア・ザラ少尉。到着致しました」

 

時刻は8:00ちょうど。

業務的な口調。

 

シュダはため息を付いた。

 

シュダ

「……ご苦労さん、相変わらず時間ピッタリだな」

 

クレア

「任務ですので」

 

クレアはすぐに整備ハンガーに向かって歩き出した。

ふと、空を見る。

宇宙は見えない。

小さく息を吐く。

 

クレア

(……姉様が遠い…………)

 

地上勤務は嫌いではない。

居るべき場所は宇宙だと思っている。

 

セフィリアが居る場所。

早く戻りたい。

 

--------

 

整備ハンガー。

 

先日オーバーホールを終えたばかりのクリムゾンフェイス。

クレアは端末を開き、機体を確認する。

 

-----

 

格納庫では。

コウタが腕を組んでモビルスーツを見ていた。

 

クレアの機体。

ZGMF-X93MΩナイトメアジャスティス。

 

コウタ

「……やっぱ変態だな」

 

シュダ

「?」

 

コウタ

「これだけ左右非対称なのに、重力下でも安定して自立してるし、」

「ドラグーンまで制御して、近接型で安定して運用してんだろ。」

「そんなもん、よくここまで仕上げたよな」

 

シュダ

「なんかわかんねえけど、アイツの整備技術は凄いらしいからな」

 

コウタ

「ちょっとは判れよ」

 

-----

 

シュダとコウタが整備ハンガーに移動すると、

すでにクリムゾンフェイスは一部解体されていた。

 

コウタ

「この前、オーバーホールしたばっかなんすけどね」

 

クレア

「オーバーホールと査察は違います」

 

コウタ

「そうっすか……」

 

クレア

「査察終了です。後はパーツを戻します。」

 

コウタ

「いいっすよ。そんなのは俺等でやりますよ」

 

クレア

「……わかりました。お任せします」

 

次にクレアはラグナロクデスティニーの元に足を運んだ。

アリシアが自機のチェックをしている。

 

クレア

「久しぶり、アリシア」

 

アリシア

「……久しぶり」

 

沈黙。

幼少期より知る仲だが、それ以外に会話はない。

 

クレアが切り出す。

 

クレア

「姉様は地上に来ませんよ」

 

アリシア

「知ってる」

 

クレア

「早く宇宙(そら)に戻りたいです」

 

アリシア

「……そう、私はシュダの近くでいい」

 

クレア

「…あなたはアニキの……」

 

言いかけたが、クレアは最後まで言わなかった。

自分とは対象的。

セフィリアとシュダに対する感情。

 

言う必要はない。

 

クレア

「ラグナロクデスティニーの査察を始めます」

 

-----

 

査察を終えたクレアは、シンに報告するため、

指揮官執務室へ向かっていた。

 

廊下の反対側から、よく知る人物が歩いて来る。

ちょうど執務室前で鉢合わせる。

 

アスラン

「査察か?」

 

クレア

「はい。ザラ隊の査察で伺いました。」

 

アスラン

「そうか、俺はちょっとシンに用事があってな」

「宇宙(そら)はどう……」

 

アスランが会話を続けようとした時、

執務室のドアが向こう側から開いた。

 

シン

「アスラン、もう来たのか」

 

アスラン

「……ああ」

 

シン

「あークレアは、報告か?悪い。」

「後で見とくよ。お疲れ。」

 

クレア

「かしこまりました。データはメールでお送りしています。」

 

シン

『ありがとう』

 

サッと立てた去ろうとするクレアに

 

アスラン

「クレア」

 

クレア

「はい。"司令官"」

 

アスラン

「……いや………お疲れ様」

 

クレア

「お疲れ様です」

 

クレアはアスランとシンに敬礼をして、

足早に格納庫方向に歩いて行った。

 

背後で執務室のドアが開く音と重なって、話し声が聞こえる。

 

シン

「アンタ、ホント。息子だけじゃなくて、娘にも優しくないよな」

 

アスラン

「俺はそんな…………」

 

会話の途中でドアが閉まり、クレアに聞こえた会話は途切れたが、

歩調は変わらない。

表情も。

 

クレアは格納庫に急ぐ。

 

クレア

(早く帰りたい)

(姉様の居る場所へ)

 

-----

 

執務室-------

 

アスラン

「で、シン。例の会議の件だが………」

 

シン

「ええ。その件ならすでに先鋒に………」

 

------

 

コンパス地上部隊統括指揮官との話を終えた、

オーブ軍最高司令官。

 

アスランは、その足でオーブ軍基地に戻った………。

 

シュダには会わず………。

 

そして、シュダも父が来ていたとは知らず………。

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