ハッピーエンドのない箱庭より 作:生姜も無いし仕方ない
『生姜無い』という単語は意図してそう書いておりますので、誤字ではないのです。
しかし誤字報告はありがたい限りです。
それはそれとして毎日更新が途切れたので初投稿です。
「今からタケノコを採りに行こうよ」
アリサっていう女の子と超ホラー的出会いをしてからしばらく──というか雪が降って降らなくなってが3回ほどあったから3年くらい?──経ったある日のこと。
珍しくぼんやりと海を眺めていたアリサがそんなことを言ってきた。
「海を見ながらタケノコとか言うのはおかしい気がしまーす! いくら私が
「山? あぁ"筍"ならそうだね、その通りだよ。でもボクが言ってるのは"タケノコ"であって"筍"じゃないんだ。それは山にはないから探しても無駄だよ」
「あなたはいったい何の話をしてるの???」
「"タケノコ"と"筍"の違いはそうだな、"ショウガ無い"と"生姜無い"くらいだと考えて? 片方は普通に存在しないことを指すけど、そうじゃない方は非現実的存在が口にする妄言なんだ。つまりはそういうことさ」
「??????」
……わからん、もうなんもわからーん!
なーにが『そういうことさ☆』だっての! なに一つ分かんないんですけど!!
タケノコもショウガも野菜に変わりないじゃん!
頭の中でツッコミを入れまくっていたら、アリサの表情がだんだん変わってきていた。
見たことあるぞ、このちょっとムカつく顔は……!
「んふ。ただでさえ君の顔はちょっと抜けてるのに、そんなにアホ面してたら輪をかけて面白くなってるよ」
「ぬ、抜けてるぅ!? それはかぐやちゃんの顔じゃなくてウミウシボディの顔がそういうのなんだよっ! それと誰がアホ面じゃコラァ!!」
「はいはいかぐやちゃんはウミウシ可愛いね」
「ウミウシ可愛いって初めて聞いたんだけど!? それどういう意味なの!?」
「……。……マンモス可愛いの親戚?」
「今思いついて適当言ってるだけじゃんそれ絶対っ!」
この不死者は私のことを"音の出るおもちゃ"か何かと思ってるに違いない……!
確かに今のかぐやちゃんは超ぷりちーな小動物だけど、扱い方がなってない! もっと丁重に繊細に扱ってほしい!
ってそうじゃない! そろそろ"格の違い"ってヤツを思い知らせなければ……。笑っていられるのも今のうちだかんね!
そうして私が反逆計画を立てようとした時、不意に視点が高くなった。
というか待って、視点というかこれは……身体ごと持ち上がってる?
「ほら行くよウミウシちゃん、母なる海に還る時だ」
「なんか持たれてる!? いーやー、はーなーしーてー! 別に私のお母さんは海じゃなーい!」
「そんなこと言ったらボクだって違うよ。そもそも今の君は海棲生物なんだから陸にいるほうがおかしいんじゃない?」
「ハッ! そうかな……そうかも?」
「そうだよ。じゃあ疑問もなくなったし海に飛び込むとしよう」
「ってそんなわけあるかー! ──うおぉぉ投げられたあぁぁぁぁ!?」
こんないたいけなウミウシを放り投げるとか信じらんないぃぃぃぃ!!
重力に反してフワフワする身体を制御なんて出来るはずもなく。
ちっぽけな私はその勢いになす術もなく落ちていって────
────ぽすっ。
……アリサが着ていたパーカーのフードの中に着地した。というかアリサがフードを広げてたから、フード目がけて投げられたらしい。
「さて、心の準備はオーケー? しばらくはここに帰ってこれないと思うよ」
「うぅぅぅ、先に言ってよ! 投げられたのマジで怖かったんだからね……」
「ありゃ、そんなに怖かった? それはゴメン、次は言ってからにするよ」
「投げないって選択肢は……?」
私の質問にアリサは答えることなく、歩き始めてしまった。いや答えてよ!
次投げられたらかぐやちゃん無事では済まないかもしれないんだけど!? そうなれば死活問題ってやつだよ!
そんな私の怒りは当然伝わらず、アリサは歩き続けている。そして波打ち際で立ち止まると、なにやらポケットに手を突っ込んでゴソゴソやり始めた。
「これかな? あれ違った」とか言いながら何かを探してたアリサは、ようやく目当てのものを見つけたのかポケットから手を出した。
フードから身を乗り出して見てみると、それは3つの指輪だった。全部同じものみたいで、黒い……ヤギ? みたいな顔が彫ってあった。
アリサはその指輪を左手に全部つけて、それからまた私に話しかけてきた。
「よし。じゃあ改めて聞くけど、準備はいいかな? 目的を達成するまでここには戻らないけど」
「準備も何もこの身体じゃ何も出来ないんだけど……? それに目的って?」
「初めに言ったはずだけど? 『タケノコを採りに行こう』って。海のどこかに沈んでいるオーパーツじみたタケノコのサルベージが今回の目的」
「オーパーツの、タケノコ? それって……」
「間違いなくここが君の最初の"転換点"だ。輪廻に抗うことなく平穏を求めるならそれでもいいよ、君が何を求めるかは君の"自由"だからね。ただ君がボクの手助けを求めるならば────」
そうだった、アリサはこういう人だった。
なにをするにしても一方的だけはありえなくて、自分が誰かに何かを『する/される』した時、その誰かにも自分に対して同等の『する/される』を求める。
彼女が言うには『この世は全てギブアンドテイク』らしいから。
つまり彼女のこの"施し"を受けたら、きっといつか同じくらいの何かを返さないといけない日が来る。それが何なのか、そしていつなのかは分からないけど、その日は絶対来ることだけは分かる。
一見無理やり海に連れていこうとしてるようだけど、たぶんここで私が『いかない』って言えば引き返すんだろうなぁ。3年ずっと一緒にいれば分かっちゃう。
──
──
「────ボクの全力を以って君の力になろう」
絶対、彩葉に会いたいからっ!
「さぁどうする?」
答えなんて、決まってる。
「────
「……いいね、そこまでストレートに言われたのは初めてかもしれない」
そうして私は。
不思議な不死者の手を取った。
……そして手を取ったことを秒で後悔した。
「がぼぼがぼがぼぐぼげぼがぼぼぼがぼおおおぉぉぉぉぉ!?」
なんで海の中なのにジェットスキーみたいな速さで泳げるのぉぉぉぉぉ!?!?
***
ウミウシちゃんを連れて海に潜ってみた。でも今回ばかりは不死者パワーを存分に使わせてもらおうと思う。そうしないとこの広大な海で探し物とか出来ないよ。
というかウミウシだってのに『溺れる』はないでしょ。
というわけで今つけている指輪は『黒山羊の指輪』っていうもの。それを3つ。
効果は大雑把に言うと"各ステ+20%+600"って感じで、それが3つで乗算されて(1.2×1.2×1.2)=約1.7倍+1800になるわけだ。まぁその代わりMPが0になるんだけど。
ボクの今のステータスはだいたい8万前後ってとこかな。あの世界のカンストが10万ちょいなのを考えるとだいぶ盛れてるね。
ここからバフ魔法でも乗せればカンスト間際までいけるんだけど、残念ながらMPがないから使えないんだ。……デメリット踏み倒す方法もあるけどね。
ここまでやっている理由はひとつ、あの"タケノコ"を見つけるため。
主に素早さと運を上げるために指輪を装備した。素早さは言わずもがな、運は……気休めに近いけど上げたらいいことあるかもしれないし。
海流に捕まらないよう速度を上げながら、色とりどりの魚を追い越していく。
高速で流れていく景色にちょっとしたアトラクションのような感覚を味わいつつ、たまに海面に浮上し息継ぎをする。それを数回繰り返した。
「(この辺りから
そんなこんなでボクが隕石にキルされた周辺まで戻って来たよ。
どうやってここまで来たかって? ボクたち不死者は死ぬとその場に所持していたソウルを落とすんだ。フ〇ムゲーやってた人なら分かるかな?
ようはその気配を辿って来たってわけ。元は自分のものだったんだから、場所はなんとなく把握できる。落としたソウルを回収するアイテムもあるんだけど、今回はそれ使っちゃうと死んだところが分からなくなるから使わなかった。
とりあえずロストしたソウルを取り戻す。カンストまで貯めてたからちょっともったいなかったんだよね、回収できてよかった。使い道はほとんどないけど。
まぁボクの方は正直ついで、ただの目印に過ぎない。本命はタケノコ、かぐやちゃんが乗って来た宇宙船だ。
スレの人たちに聞いてみると『かぐやちゃんの本体は宇宙船にある』という。これはかぐやちゃん本人にも聞いて確証も得ている。
この宇宙船『もと光る竹』は、思念体である月人に物理的な肉体を与える役割があったらしい。これは『擬態』と呼ばれていて、その星の環境に最適な姿が選ばれるとかなんとか。
そこにプラスしてかぐやちゃんは自前で時間渡航の機能を付けてたんだからすごいよね。それが隕石との衝突で壊れたから今この場にいるってことを考えると……うん、かわいそうだ。
「(だからこそボクはこの子を助けてあげたいと思ったんだよねぇ)」
「(強大な理不尽に苛まれた、同じ立場の者として)」
「(ある意味でボクは君の先輩だ)」
別にボクだって独りで戦っていたんじゃない。助け助けられを繰り返したし。強くなってからも人とコミュニケーションをとるのを忘れたことはない。
つまるところ、真の意味で"独り"の存在なんていないということ。
誰かに助けを求めるのは当たり前の行動だし、誰かを助けるというのも立派な行動だ。どこかのメカワンコも『誰かに助けられた者は誰かを助けたくなる』って言ってたし。
ボクはあの理不尽な世界でいろんな人に助けられて、今ここにいる。
なら次はボクの番だ。ボクが理不尽に襲われている人を助ける。
「(『希望に伸ばす手にこそ勝機は掴まれる』っていうのはボクが好きなセリフのひとつだけど)」
「(君が
「(その真っ直ぐさでどこまで進んでいけるのか、君が目指すところの行く末を見たくなったからね)」
ま、なんだかんだ言ったけど。
結局はボクがやりたいから彼女を助ける、ただそれだけ。
やりたいようにやる、それが長生きを続ける秘訣だもの。
さぁそんなこと考えているうちにお目当てのものが見つかったよ。
こんな時代には似つかわしくない、丸みを帯びた人工物が。
大きさは40cmほど、重さは……水中だから分からないけど、踏ん張りがきかないから持ち上げられないや。
じゃあしょうがない、あの指輪を外すか。
掲示板で話題になった『姦淫の指輪』を外し、フルパワーでタケノコを引っこ抜く!
……よし、抜けた。
これでミッションコンプリートだ。凱旋といこうかウミウシちゃん。
***
「なんというかメカニカルタケノコだね」
「なんだそのワード、初めて聞いたんだけど。もうちょい良いのなかった? これってば月の超すごいテクノロジーの塊なんだけど? おん??」
「はいはい威嚇してる君もウミウシ可愛いよ」
「うぐぐ、またそれかぁ! ちょっと長く一緒にいたからって最近私に対する態度がぞんざいだと思いまーす!」
「ふむ、数年を"ちょっと"だなんて流石は月人のかぐやちゃんだ。その調子なら酒寄何某に会えるのも遠くないかもね」
アリサは言った通り『もと光る竹』を回収してくれた。……やり方に関して言いたいことは沢山あるけど!
てか数年がちょっとのワケないでしょ! それは言葉の綾ってやつじゃん!
……実のところ、私が彩葉と過ごした時間は2か月くらい。でもそのわずかな時間は私の中でキラキラと輝く宝物みたいで、何物にも代えがたい大切な思い出なんだ。
私の大切な人、酒寄彩葉。なんだかんだ言いつつ私を支えてくれた彩葉のことを、好きにならないなんてムリ。その想いは最後に直接伝えたし。
「うぅー……私はいつまでウミウシの身体でいなきゃなんないのぉ? 歌は上手く歌えないしそもそも発声に難アリだしぃ……およ?」
「どうしたの? 首を傾げてるみたいだけど、ウミウシボディが半分に折れてるよ」
「折れてる、ってどういう……おわっ私の身体が直角になってる!?」
「柔らかいウミウシでよかったね。他の生き物だったらスプラッタだったかもだ」
「よかったーウミウシで……じゃなーいっ! ねぇねぇアリサってなんで私の言ってることがハッキリ分かるの!? 自分で言うのもアレだけど発音とかめちゃくちゃなんだけど……!」
あぶないあぶない、またアリサの適当な話に流されるところだった。
何回そうやって脱線して行ったかもう覚えてないけど、コヤツは話の腰を折るのが絶妙に上手いんだって! いや『話の腰を折るのが上手い』ってなんだよ。
今回も危うくウミウシの曲がり方について話し始めちゃう流れになったし……!
そもそも私が言いたかったのは『ウミウシの身体では満足に発声出来てない』のにアリサは『全部聞こえてる』ってこと!
うーん……。うーーーーん……。
不死者っていう種族の特性なのか、アリサがおかしいのか判別つかないや。でもちょっと待って?
そういえば私ってアリサのことあんまり知らない気がするね?
だったらやることはひとつ!
「ねぇねぇアリサ!」
「なんだいかぐやちゃん」
「アリサが私の言葉をハッキリ受け取ってくれてるのって、なんで?」
「それは君の声を音じゃなくて"ソウルの波"として認識してるからだね。そうしないと君の話の半分は聞こえなくなっちゃうから」
「ねぇねぇアリサ!」
「なんだいかぐやちゃん」
「ソウルってなに? よく言ってるけど」
「ボクがいた世界で当たり前にあったエネルギーみたいなものだよ。文字通り"魂"のチカラで、あの世界の住人はソウルを消費して生きていたんだ。ちなみにこのソウルと君たち月人……つまり"思念体"はよく似てて、最初に君を認識していたのも声を認識できるのもそれが理由だね」
「へー……じゃあアリサは肉眼で月人が見えるんだね?」
「まぁそうだとも言えるし、そうでないとも言える」
「どゆことー?」
「ハッキリ見ようとすると自分を
「ふーん? でもぼんやりでも見えてるなら『見えてる』じゃん」
「まぁ確かにね」
「ねぇねぇアリサ!」
「なんだいかぐやちゃん」
「私がこのウミウシボディを脱却するにはどうしたらいいと思う?」
「うーん……聞きたい?」
「聞く!」
何個か質問をしていたら、つい自分に関わることを聞いちゃった。でも後悔してない!
でも『聞きたい?』ってことはなんかあるってことだもんね、期待しちゃうよ?
「まず簡潔なものからいこうか」
「わくわく」
「まずはボクがウミウシちゃんを食べます」
「却下なんだけど!? "まず"じゃねーんだわ!!」
期待を返してほしい! いや不死者に常識を期待したのがバカだったってこと!?
いーやかぐやちゃんはバカじゃないもんね! ぐぎぎ……アリサのおバカ!
「こんなに可愛いかぐやちゃんを食べようだなんてダメだかんね!」
「ゴメンって。でもからかうつもりはなかったんだよ。食べるっていうのはあくまで比喩、正確には『ボクがかぐやちゃんを取り込む』って言い方になる」
「……取り込むって?」
「不死者は他者のソウルを溜め込むことが出来るんだ。だからその特性を利用して、思念体の君がボクの身体を『間借り』するって寸法さ。……ただ問題があってね」
「普通にイヤな予感がするんだけど?」
「ボクの
「そんなん却下! やっぱ却下ぁー!!」
どうせそんなことだろうと思った! アリサは間違いなくおバカなんだよ!
いくら私が月人だって言ってもアリサみたいにドンパチ得意な肉体派じゃないんだから! アリサの中身って
……まぁそれはともかく。アリサは割と私について考えてくれてるみたい。
いやこんなこと思ってると自意識過剰みたいでちょっと恥ずかしいけどさ?
「ま、リスクが高いしその反応も想定内。これは"君の覚悟が決まった時に選ぶといい"って感じのやつだから安心して」
「ゔぇっ……それ本気ぃ?」
「君次第だよ、選ぶも捨てるも。じゃあ2つ目。君の意思でウミウシの身体に乗り移っているなら、君が別の生物に移ればいいんじゃないかな」
「あー、それは出来ないんだ。このウミウシってその辺にいたヤツじゃなくて、月からついて来てくれた『犬DOGE』って子が擬態してるの。動かせてるのはたぶん私とこの子が『
「なるほど、君は最初からひとりじゃなかったんだ。そしてタケノコが壊れかけだから無理だってことだね、うーん残念」
本当に残念だよ。私だってこの数年遊んでたわけじゃなく、何度も『もと光る竹』にアクセスしようと試していたんだ。
でも応答が返ってくることはなく、その度に絶望も深くなっていった。
同行していた犬DOGEがウミウシになれたのも奇跡に近いし、奇跡は何度も起きないから奇跡なんだよ。
正直、アリサがいてくれたからまだ明るく振舞えてるけど……。
うぅぅぅ……彩葉ぁ……会いたいよぉ……。
「おーいかぐやちゃん、かぐやちゃ~ん?」
「……大丈夫、私は大丈夫、だから」
「見るからに大丈夫じゃなさそうだね。なら最後の提案をさっさとしてしまおう。その前に聞きたいことが1つ、
「……へ?」
「なんでもいいんだ。送信用でも受信用でも充電用でも、とりあえず内部に繋がる穴があればいい」
なんか私がブルーになってるとアリサが変なことを言い出した。
穴と言われたら、そりゃあ点検用とかのポートはあるけど……それがどうかしたんだろうか。
「まぁあるよ? 流石に全部無線でってわけにはいかないし」
「お、いいね。ならちょっと見せてくれない? 現物はそこにあるんだから」
「ん、じゃあついてきて」
何をするかは分からないけど、ウミウシの身体を引きずってもと光る竹の方に近づいていく。
後ろからアリサも歩いてついてきているのを感じる。
そうして久しぶりにもと光る竹を視界に収めた。しばらくはこれを見ることはないと思っていたのに。……なんか泣きそ。
でも泣いてる場合じゃない。だってアリサが無駄なことをするとは思えないし、これを見に来たのも何かの考えの元なんじゃないかな?
そもそもアリサはなんで
「その辺にカバーの展開をロックしてる機構があるから──そうそれ、まずそれを開放する。そしたら内部が見えるから、先っちょからちょい下にあるポートを見つけて。グルっと見ればどこかにあるはず」
「グルっと回って……お、これだね。形状は……なんだろコレ、地球のUSBポートと似てる」
「そりゃ端子なんてどこでもソックリになるんじゃない? 月でも地球でも考えて行きつくとこは同じだよ」
「そんなもんか」
「そんなもんよ」
まぁ私も地球に来てからデバイスが思ったより使いやすくてビックリしたもん。すごい使いやすかったし、いや天才かぐやちゃんならお茶の子さいさいだったけどね?
「それで? こんなの見つけてどうするの?」
「じゃあ前置きも終わったし最後の提案をするとしよう。君、ボクのスマホに引っ越しする気とかあるかな?」
「引っ越しぃ? そんなのどうやって……」
「ボクが持ってるスマホは特別製でね。前の世界にいた邪神たちに改造してもらった結果、ボクのインベントリ検索機能とかいろいろ付けてもらったんだけどさ。中には使ったこともない機能もあって、それが『ソウル体の格納機能』っていうもの」
「ソウル体、ってなにさ」
「ようは肉体は失ったけどソウルだけで顕現している状態、まぁ今の君がそれに近い。そもそもこの機能は、肉体が消滅してもソウルがあれば再構築できる不死者を
……なーんか『捕らえる』の意味が物騒じゃなかった?
アリサが言ってるのはたぶん『もと光る竹』から『アリサのスマホ』に意識というか思念体を移し替えるってことなんだろうけど……。
でもそんなこと、本当にできるんだろうか?
「最初に言っておくけど、確実に上手くいくって保証は出来ない。なにせボクも初めて使うし、接続も邪神技術頼りになる。月人と邪神の相性は分からないから、何が起こるか分かったもんじゃない」
「……それって私の覚悟次第みたいな感じじゃん」
「実際君次第なんだから生姜無い。ボクはどっちでもいいんだ、時間だけは有り余るほど残ってるんだから。今この場で無理に決めずともいいし、もしかしたら時間が経てばタケノコを直せる見込みも出てくるかもしれない。なんならボクの知り合いのみんなが解決策を思いつく可能性だってある」
「ほんとアリサはさ、逃げ道を作るの上手いんだから……」
でもそれはそれで酷だと思う。だって『もしあの時あっちを選んでれば』って思っても、それは100%自分のせいになるんだから。アリサはその道は示してくれてたわけだし、それを選んだのは間違いなく自分の意思。
アリサは彩葉とは違って"ずっと"隣には居てくれない。
隣にいないわけじゃない。隣で喋っていたと思ったら、瞬きした瞬間に前を歩いてたり。突然いなくなったと思ったら、ひょっこり帰って来たり。
今は道案内をしてくれてるけど、絶対に私の手を引っ張ってくれはしない。あくまで
けどなんだろ、今はそれで良いのかもしれない。
だって、優しくされちゃうと泣いちゃうもん。
……ふぅー。
私は私の道を往く。彩葉に会うために。
そのためなら、不死者だってなんだって使ってやる!
「アリサ、私決めた」
「うん。聞かせてよ、君がどうするのかを」
「スゥー……あなたの提案に乗るっ! そんでもって
「…………」
「……アリサ?」
「あぁいや……なんでもない、なんでもないから。君の気持ちは受け取った、ならボクはそれに応えよう」
よかったー。アリサがなんも言わなくなったときはスベったかと思ったよ。
応えるって言ってくれたアリサはスマホを取り出して、さらにポケットからケーブルを引っ張り出した。ホントに有線接続するんだ……。でも接続ポートなんて絶対形とか違うのにどうする気なんだろ。
そんな私の心配を尻目にアリサはケーブルの片方をスマホ、もう片方をもと光る竹に近づけた。するとなんということでしょう! ケーブルの先端に付いている端子がぐにゃぐにゃと変形し始めたではありませんか!
「えっキモッ! フレキシブルとかそんなレベルじゃないくらい蠢いてるんだけど!?」
「なんてこと言うんだ。これはとある邪神に作ってもらった万能ケーブルなんだよ、いちいち変換を噛まさなくていいスグレモノなんだから。なんならそのまま電源プラグにもなるから直充電だって出来るスゴくて超便利な代物なんだぞー?」
「確かにそれはスゴいけどさ! ビジュアルが最悪!」
「まぁそこは否定はできない」
「やーんこんなのが
「残念、これは君が始めた物語だ」
言葉での抵抗も虚しく、怪しいケーブルがもと光る竹に接続されてしまった。
うごごご……言いようもない感覚がする気がするよぅ。
「さ、集中だ。ボクはもう手助けできない、ここからは君がやるんだよ。君は思念体なんだ、だったら心の強さが君の全てを動かす鍵になる。『全ては心ひとつなり』ってね」
落ち着いたアリサの声がする。
どんな時でも調子を崩さないアリサの声が私を導く。自然と私は目を瞑り、意識を集中させていた。
「君が見つけるしかない。君が手を伸ばすしかない。君が、君自身が希望を掴むしかない」
風の音、鳥の声、波のさざめきが次第に遠くなっていく。深く、深くまで意識を沈めていく。でもアリサの声だけは不思議と聞こえていた。
「光が見えるかい? 硬い殻に空いた穴から差し込む光が」
見える。
あれは光、外へ繋がる光。アリサが示してくれている、私が求めた希望。
「そのまま飛び込むんだ。君が望むのなら、君が想うのなら、迷わず行くといい」
アリサが教えてくれた歌は、とあるアニメの劇中歌。歌ってた子はとても真っ直ぐな子だったんだって。そしてアリサはその子のセリフが好きみたいで、いろいろ教えてくれた。
そう────
「最速で」
最短で!
「真っ直ぐに」
一 直 線 にぃぃぃぃぃ!
意識が加速する。その光に向かって、私は突き進んでいく。
光に到達するその瞬間、アリサの声が響いた。
「君はかぐやだ。君は大切な人に会うための旅路の途中だ」
「何が起きてもそれを忘れないでね」
それがどういう意味かを問う暇もなく。
私の視界は真っ白に染まった。
縄文時代終わりませんでした。
掲示板使ってもないのに1万字を超えてしまったのは大誤算です。
次こそ縄文時代の終わりまで行きます。
最後に。
ルーキー日刊ランキングで20位らしいです。ありがとうございます。
友人に言われて気が付きました。