銃社会を、吸血鬼は生きる   作:MIKAZUKIN2525

104 / 105


過去との別れ。よろしくお願いします。


未来へ

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう。」

 

ユウの攻撃が命中し、ルナは倒れた。

 

死んだわけではない。ただ意識を失っているだけ。でもそのルナの表情は、どこか安心しきっている、安らかなものだった。

 

 

「ふぅ……。おつかれ、ルナ。……っは。」

 

戦闘を終えたユウに一気に疲れが襲い、倒れそうになる。……が、そういうわけにも行かないのだ。

 

 

「みんな急いで!!順番に送るから!!」

 

オペレーター達の尽力により、アトラ・ハシースの箱舟の自爆シーケンスを起動させることに成功しているのだ。

 

つまり、この場所はもうじき墜ちる。

 

そしてリオが用意していた脱出シーケンスで生徒たちを順番に地上へと送っているのだ。

 

「……よし。」

 

「ユウたちも!こっち!」

 

先生に言われ、ユウはルナを抱きかかえて先生のもとへ駆け寄る。

 

残っているのはユウ達だけ。他の生徒は既に地上へと送られ、……黒いシロコも、同様に送られていた。

 

「終わったんだね。」

 

先に寄っていたヒガンが優しくそう言った。

 

「うん。ルナは、これでちゃんと進める。」

 

「そっか。」

 

「……ユウ――」

 

「さっ。ヒガン、先に送ってもらって。」

 

先生の言葉を遮り、そう促す。

 

「分かった。……待ってるね。」

 

「ルナもすぐに送ってもらうから、よろしくね。」

 

先生は端末を操作し、ヒガンに脱出シーケンスを使った。

 

足元に光が現れ、ヒガンを包んでいく。

 

「転送、開始!」

 

そして、ヒガンは転送され目の前から、消えた。

 

 

「よし。後はユウだけど……」

 

先生はユウに抱きかかえられたルナを見た。

 

「……その子を、送りたいんだよね?」

 

「はい。でも、脱出シーケンスはあと一つしかない……違いますか?」

 

「バレてたか。」

 

そう。脱出シーケンスは残り1つ。何故ならば、リオが用意したのは仲間の分のみ。敵であった黒いシロコ、ルナの分は用意されていないのだ。

 

そして、先生は1つをすでに黒いシロコに使っている。

 

「僕はこの子に未来を見せてあげたい。創らせてあげたいんです。」

 

「そう言われちゃ、断れないよね。」

 

先生は優しく微笑み、端末を操作してルナに脱出シーケンスを使った。

 

同じく、ルナは光に包まれ……

 

「転送、開始!」

 

2人の前から、消えた。

 

 

 

「……これで、終わりかぁ。」

 

残された2人は、床に座った。

 

75,000mも上空から落下して生き残れる可能性は、ない。

 

この箱舟が崩壊するのをただ待つだけ。

 

……と、思われたが。

 

「先生は、生きたいですか?」

 

「え?そりゃもちろんそうだけど……」

 

「僕もです。……じゃ、いきますよ。」

 

「え?行くって、どこに。」

 

「もちろん、地上です。」

 

 

 

 

 

 

■

 

 

 

 

 

 

「じゃ先生、血を吸わせてください。」

 

「えっ、今!?」

 

「早くしてください。死にたいんですか?」

 

「うっ……わかった、分かったよぅ……」

 

先生は首元をあらわにする。

 

ユウは素早く噛みつき、血を吸い始めた。

 

「んぅっ!そんな勢いよく……」

 

わずか5秒ほど。短い吸血であったものの、先生は少しのだるさを感じていた。

 

「ふぅ。ごちそうさまです。」

 

ユウがそう言うのと同時に、体が大きくなった。

 

「失礼しますね。」

 

そしてユウは先生を抱きかかえた。

 

「えっ、ちょっ、何!?」

 

「先生!”シッテムの箱”のなんとかバリアでも守ってもらってくださいね!」

 

「まって!ほんとになにするつもり!!?まって、まってぇぇぇぇ!!!」

 

ユウは、先生を抱え箱舟から飛び降りた。

 

 

「あんまり喋んないほうが良いですよ!舌噛んじゃいますからね!」

 

ユウは周りにバリアを纏って高速で降下していく。

 

「うわぁぁぁぁぁあああぁ!!?」

 

先生は悲鳴を上げ、大事に抱えたシッテムの箱からも元気な声が2つ聞こえてくる。

 

「ははっ。……綺麗だ。」

 

ユウはこの状況と景色をかなり楽しんでいるように見えた。先生はそれどころではないけど。

 

「これが僕たちが掴み取った、未来。そして……奇跡。」

 

「! ……うん。」

 

彗星のように落ちていく2人の目には、青く、綺麗に輝く空が映っていた。

 

「最高の景色ですね。」

 

「でっ、でもっ!それどころじゃないってぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

■

 

 

 

 

 

 

「そんな……嘘……」

 

「………先生。」

 

地上では、脱出シーケンスによって送られた生徒たちが暗い顔をしていた。

 

ヒガンとルナが地上へと送られたあと、脱出シーケンスが残っていないこと、先生とユウが残っていることが判明したためである。

 

「パパがいなくて、どうやって未来を創れっていうの……?」

 

あの遥か上空からの生存が絶望的なのは全員が理解している。だからこそ辛いのだ。自分たちには何もできない。待つことしかできない、信じて。

 

そんな雰囲気の中、ヒマリが声を上げた。

 

「あれは……?……っ!」

 

空を見上げていたヒマリは、赤い、流れ星のような何かを見つけた。そして、すぐに観測を開始した。

 

「ヒマリ先輩……?」

 

「っ!あれは……」

 

「先生とユウさんですっ!!」

 

『!!?』

 

全員の心に光が灯った。そして、予測された落下地点へと全員で向かう。

 

 

 

 

「うわああぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

声が段々と近づいてくる。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 

「ちょっ、本当に大丈夫なの!?」

 

「ああああぁぁぁあああ――」

 

「到着っ!!」

 

ドスンと着地する音が聞こえ

 

元気な声と、土煙が上がった。

 

「よしっ。無事ですね!」

 

「ぶじ……うん……”体”は無事だね……」

 

「服のことですか?しょうがないです。そこまでは守りきれません。」

 

そういつも通りに楽な会話をしている先生とユウを見て、その場にいる全員は空いた口が塞がらなかった。

 

でも……

 

『先生!!』

 

「パパぁぁっ!!」

 

全員が、2人の帰還を優しく出迎えた。

 

 

 

 




ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。

このラストは最初から決めてた。書けて嬉しい。

ラストと言いつつ、もうちょっとだけ続きます。よろしくお願いします。

がんばりまちゅ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。