前哨戦。よろしくお願いします。
「依頼されたデータについて、結果が出たよ。」
僕達はG.Bibleのパスワードの解除を依頼したヴェリタスの部室に訪れていた。
「いよいよ…!」
「ドキドキ……」
部員の一人、小鈎ハレさんが淡々と話す。
「知っての通り私達”ヴェリタス”は。キヴォトス最高のハッカー集団だと自負してる。シウテムやデータの復旧については、それこそ数え切れないほど解決をしてきた。」
「(ん…?データの復旧…?)」
「そのうえで、単刀直入にいうね。」
皆が固唾を飲み込む。
「モモイ、あなたのゲームのセーブデータを復活させるのは無理。」
「うわぁぁぁぁん!もうダメだーーー!!!!」
「そっちじゃないでしょ!?G.Bibleのパスワード解除はどうしたのさ!?」
「そうです!モモイさんのセーブデータはどうでもいいです!」
「ユウ、それはひどくない!?」
小さな言い合いをしていると、コタマさんが口を開く。
「パスワードは、マキが作業中です。」
「マキちゃんが?」
すると、奥で作業をしていた赤髪の少女が、椅子をくるりと回し、こちらを向く。
「あ、おはようミド!来てくれたんだね。って、その子がユウ君?」
「はじめまして。あなたがマキさん…であってますか?」
「うん!よろしくね、ユウ!」
「…で、モモはどうしてこんな絶望してるの?」
「気にしないで大丈夫……それより、G.Bibleはどうだった?」
「うん、ちゃんと分析できたよ。あれはかの伝説のゲーム開発者が作った神ゲーマニュアル…G.Bibleで間違いないね。」
「や、やっぱり!」
「すごいですね。そこまでわかるなんて…」
「ま、色々な情報を照らし合わせても確実。つまり…オリジナルの”G.Bible”だろうね。」
すごい。と皆声を上げたが、マキさんはでも。と付け加える。
「…ファイルのパスワードについてはまだ解析できてないの。」
「えぇっ、じゃあ結局見られないってこと!?」
「方法がないわけじゃないんだけど…」
「それってどんな方法なんですか?」
僕が質問すると、マキさんは少し苦い顔をしながら答えた。
「直接解析は無理でも、セキュリティファイルを取り除いて丸ごとコピーをすれば行けると思う…で、そのためには通称”鏡”と呼ばれるツールが必要なんだけど…」
「……もしかして、持ってない…?」
「…うん。この前までは持ったんだけど……生徒会に押収されちゃったの。」
生徒会……というとセミナーのことである。おそらくユウカさんあたりが来たのだろう。
その後、”鏡”というツールについて軽く説明を受けた僕たち。
話を聞く限り、パスワードなどを無理やりこじ開けるようなやばいツールであった。
「…まぁ、それは没収されちゃうかもしれませんね…?」
「うっ、だとしても、早く見つけないと部長に怒られちゃう!」
「とにかく……整理すると、私達も”鏡”を取り戻したい。そして、G.Bibleのパスワードを解くためには、あなた達にとっても”鏡”は必要……そうでしょ?」
「なるほどね……呼び出された時点で、何かあるのかなとは思っていたけど。大体分かったよ。」
「え、も、もしかして……?」
「ふふ、さすがモモ。話が早いね。」
「えっ…と。話が見えてこないんですけど…」
「も〜、まだわからない?つまり、旅は道連れってことだよ。」
「共にレイドバトルを始めるのであれば、私達はパーティーメンバーです。」
「お姉ちゃん、もしかしてだけど……」
「もしかして…」
「「生徒会を襲撃するつもり(ですか)!?」」
「うん!」
モモイさんは元気よく返事をするが、生徒会を襲撃しようとするなんて正気じゃない。
考えている間に、襲撃の話が進んでいく。
「でもね、モモ、一つ問題があって。」
「”鏡”は生徒会の差押品保管所に保管されているんだけど、そこを守っているのが、メイド部、なんだよね。」
「え、メイド部って……」
「あぁ、C&Cのことだよね?ミレニアムの武力集団、メイド服で優雅に相手を”清掃”しちゃうことで有名なあの……」
「そうそう!まあ些細な問題なんだけどさ〜」
僕はC&Cという言葉に驚く。この前ユウカさんから聞いたけど、ミレニアムの最高戦力だって……
「そうだよね〜、C&Cね〜、うーんなるほど〜…」
モモイさんは数秒言葉をためる。そして…
「諦めよう!!!ゲーム開発部、回れ右!前進っ!!」
「待って待って待って!諦めちゃダメだよモモ!」
「だって!メイド部とやり合うなんて冗談じゃない!」
モモイさんたちはそのまま言い争いを始めた。
「G.Bibleがなきゃ、ゲームが作れないんでしょ?そうなれば廃部になっちゃうんでしょ!?」
「…そりゃ廃部にはしたくない、けど、ミドリにアリス、ユズとユウのほうが圧倒的に大事!危険すぎる!」
「待って待って、C&Cが危険なのは分かってるって!でもあたしたちはゲヘナの風紀委員会でもなければ、トリニティの正義実現委員会でもないんだから…」
「え?」
急に、先生が驚いたような声を上げる。
「どうしたの?先生。」
「いや、風紀委員会ならここに………あ。」
「先生!?それは秘密だって…!」
ゲーム開発部にも、ヴェリタスにも言っていなかったこと。そしてミレニアムにいる間は隠し通そうとしていたこと。
…僕がゲヘナの風紀委員会所属の生徒だということ。
「えっ!?ユウってゲヘナの風紀委員だったの!?」
「…今考えたら、ユウ君の苗字って空崎だったよね…?」
「空崎って、風紀委員長の苗字と一緒じゃん!!」
さっきまでどうしようかという雰囲気だったが、それは一変し、希望に満ち溢れていた。
「風紀委員会がいるなら百人力だよ!!」
「それに、現在のメイド部は完全な状態ではないとのことです。」
「えっ?」
「うん。なんでC&Cが最強と言われているか。」
「ネル先輩……ですよね。」
「そう。でも、今彼女は個人の用事で外郭に出向いているらしい。」
「ということは、最高戦力が不在と言うことですね。」
「…だとしても、正面衝突を避けて”鏡”を奪って逃げるのは……うーん……」
「…もう少し、仲間が要りますね。」
「大人数でいくのは、レイドバトルの基本ですね!」
「はい。ですので、仲間を集めましょう。…ひとまず、この部屋にいる人は全員仲間ですね。」
少しゲームらしい言い方をする。アリスさんは目をキラキラと輝かせて、辺りを見渡す。
「…この光の剣を作りし偉大な職人も必要です。」
「なるほど、エンジニア部ですね。」
「そうだね、おそらく彼女たちの力なしに、この作戦は成功しない。」
善は急げ。ということでゲーム開発部のみなさんとエンジニア部へと向かう。
「なるほど、それは確かに的確な判断だ。君の言う通り、その方法なら私達じゃないと難しいだろうね。…うん、分かった。協力しよう。」
「ほ、本当にいいんですか?」
「そうですね。頼んでおいてあれですが、エンジニア部の皆さんはこの作戦に協力しても何も利益がないと思うんですが…」
「確かにそれはそうだね。だけど…」
「そのほうが面白そうだから、かな。」
「そうです!それに私達も、もっと先生やユウ君と仲良くなりたいですから!」
『ありがとうございます!』
「あ、そうだ。ユウ君。ちょうど頼まれていたものが完成したところなんだ。持っていってくれ。」
改造が完了した「ヴァンプリーパー」を受け取り、ヴェリタスの部室へと戻る。
「これでメンバーは揃ったよね?」
「うん、準備もできてる。」
「あ、そういえば、作戦はいつ始まるの?」
「いつ…?」
「あ、僕も気になってました。」
「もう始まってるよ。」
「え。」
こうして、鏡争奪作戦が始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回こそ、鏡争奪戦です。
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