3章スタート。よろしくお願いします。
夢見る少年
「はぁ…またですか……」
「アコさん、どうしたんですか?」
休暇が終わり、風紀委員会に復帰してからのある日、アコさんはため息を付きながら報告書を見ていた。
「またあの”赤髪の不審者”が出たらしいんです……。エデン条約も近いのに……」
「”赤髪の不審者”…?」
初耳の言葉だ。休暇中に何かあったのだろうか。
「ユウ君は聞いたことがありませんでしたか。”赤髪の不審者”というのは最近ゲヘナでよく目撃されている人物のことです。まあ、特に害があるわけではないのですが、何かを探しているような目つきと行動を取るとのこと。」
「なるほど……実害がないだけまだマシですね。」
「そうなんですが…」
アコさんは少し間を置いてから「実は…」と話し始める。
「…ゲヘナだけでなく、トリニティでも目撃されているらしいんです。」
「なんと。……それは少し問題がありますね。」
問題というのはエデン条約だ。もしこれでトリニティがその不審者をゲヘナからのスパイかなにかと勘違いしてしまったら大変だ。
「そうなんですよ……」
「僕の方でも色々と調べてみますね。」
「ありがとうございます、ユウ君。」
調べる。と言って真っ先に思いついたのが先生だ。今度はトリニティに仕事があるとこの前言っていたので調べてもらうこともできるだろう。
■
「……というわけなんです。」
僕は早速シャーレへと向かい、先生に”赤髪の不審者”について、そしてそれを調べてほしいと伝える。
「…なるほどね。分かった、それとなくだけど聞いてみるよ。」
「ありがとうございます。」
先生は快く僕のお願いを聞き入れてくれて、なんとか情報を手に入れることができそうだった。
「あの……」
僕と先生が話していると、当番の生徒であるハスミさんが口を開いた。
「ユウさん、その”赤髪の不審者”についてなんですが。」
「あっ。そう言えば、ハスミさんはトリニティの正義実現委員会でしたね。…もしかして、なにか情報が…?」
「はい。トリニティでその不審者が目撃されるようになってから、正義実現委員会でも調査を続けていたのですが…」
「その不審者は、アリウス分校の人間らしいのです。」
「「アリウス…?」」
僕と先生はアリウスという言葉に首をかしげる。
僕も2年以上キヴォトスで暮らしているが、そんな単語は聞いたことがなかった。
「アリウスというのは、過去のトリニティの分派の一つで、学園で今ではその存在を知る人のほうが少ないので、知らないのも無理はないかと。」
「とりあえず、理解しました。」
「と言っても、この情報は推測でしかないのです。」
「というと?」
「アリウスへと向かう道は判明しておらず、不審者が通った道がおそらくその道であろうと予測を立てたまでです。」
「いえ…予測だとしても、可能性がある情報が聞けてありがたいです。」
なんの情報もないときより少しは進展しただろう。
このことを風紀委員会へと持ち帰り、共有を済ませる。
「なるほど……なおさら心配になってきましたが、まだ大丈夫でしょう…」
「先生からの情報もあったらまた報告します。では。」
「…今日はしっかりと休んでくださいね。」
かなり疲れていたため、帰宅するとすぐさまベッドに飛び込み、眠りについてしまった。
■
『パパ〜!今日も私頑張ったんだよ!』
夢…?
今、僕の眼の前には赤髪の少女がいる。
パパというのは僕のことだろうか?
ぱっと視界が切り替わったと思えば、先程の少女はうつむきながらポツポツと涙を流している。
『パパ……どうして私たちは生まれてきたの…?』
なぜだろう、心が苦しい。知らない子の言葉のはずなのに、聞き覚えがある。
「それは…これが君の過去だからだろうね。」
「!?」
気がつくと、隣に金髪で狐耳の少女が立っていた。
「過去…って?それに、あなたは…」
「私が誰か、というのは気にしなくてもいいさ。それより今は、この夢が何なのか。だろう?」
「……」
「さっきも言ったが、これは君の過去の夢だ。君は、記憶喪失でこのキヴォトスにやってきたのだろう?」
僕のことをそこまで知っている…何者なんだ?
「つまりはその失われた記憶の一部というわけだ。」
「……ですが、なぜそれが今…」
「あの赤髪の少女、君も知っているはずだ。」
赤髪。今日ちょうど調べていた”赤髪の不審者”と重なる。
「……赤髪の…不審者。」
「正解だ。あの子こそ、いまトリニティやゲヘナで目撃されている不審者の正体。」
じゃあ、僕と”赤髪の不審者”は関係があるとでも言うのか?
「君は、この少女をどうする?」
泣いている赤髪の少女。誰のせいかはわからない。でも、助けなきゃという思考が強く頭に鳴り響いていた。
「……助けたい。」
「そうか。君ならそう言うと思っていたよ。」
「だが、その道はとても険しいものだ。」
「君は、それでも進んでいくかい?」
僕は静かにコクリと頷く。
「期待しているよ。…それと、最後にお願いしたいことがあるんだ。」
「なんですか?」
「どうか先生を、守ってほしい。」
狐耳の少女がそう言うとともに僕は目が覚めた。
枕はびっしょりと濡れていて、汗が酷い。
変な時間だったが、もう一度寝ることはできず、次の日は寝不足のまま投稿することになった。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
少し短めにはなりますが、プロローグ的なものということで。