過去。よろしくお願いします。
『じゃあパパはユウって名前なの?』
……夢だ。僕の過去であろう夢。
『ああ、お前と同じで、ママがつけてくれたんだ。』
『えへへ〜、おそろいっ!』
僕に似た雰囲気でありながらも僕より長い髪、高い身長の男性が赤髪の少女と話している。
「あれは君かい?」
気づけばまた隣に狐耳の少女が立っていた。
「…わかりません。けど……たぶん、僕だと思います。」
あの長髪、繭を破った後の姿が変わった僕ととても似ている。
「そうか。それより……一つ、苦難を乗り越えたようだね。」
「見ていた…というか、”知ってた”んですよね。」
「ああ、そうだとも。」
この人はおそらくだが未来や過去を見ることができる……予知のような力を持っているのだろう。それに、こうして他人の夢にも干渉できる…
「それに、君は”過去と同化”したわけだ。」
「過去と同化……ですか。」
僕が繭を破った後の姿の事を言っているのだろう。
「あの男性、”ユウ”と呼ばれていたね。……そして、君の名前もユウだ。」
「偶然……とは、言えませんよね……」
「そうだとも。姿もあれに似ていたのだろう?」
「……はい。」
決まりだ。この夢、そして彼は”僕の過去”。失われた記憶の一部だ。
「君はこの過去と向き合うべきだろう……とはいっても、その機会はすぐ近くまで来ているがね。」
「……予知ですか。」
「ああ、だがそれもまた、苦難だろう。」
「…もう一度聞くが……君はあの少女をどうしたい?」
この前の夢でも聞かれた問いだ。
「助けたい……いえ、助けます。」
答えは変わらない。だが以前より決意を込めて言った。
「…そうか。頑張ってくれ、応援しているよ。」
■
「…体のあちこちが痛い……」
パチリと目を開け、意識がはっきりしてくると、かなりの痛みが体を襲っていた。
「あっ、目が覚めましたか。」
声のした方に視線を向けるとそこにはナース服を着たピンク髪の生徒が立っていた。
「えっと……もしかして、僕を手当してくれた方ですか?」
「はい、救護騎士団所属、鷲見セリナです。」
セリナと名乗ったその少女は明るく笑った。
「それにしても、良かったです。ユウさん、こちらに運ばれてから2日も目を覚まさなかったので……」
…今回は2日も寝ていたのか。
「あ、先生を呼びますね。」
そう言ってセリナさんは連絡をいれ、数分して先生が病室に駆け込んできた。
「ユウ、目が覚めたんだってね。」
先生は優しく微笑んでくれた。
「はい、迷惑をかけてすみません……」
「迷惑だなんて思わないで。」
「そう…ですか。」
「むしろユウには感謝してるんだよ?」
「あっ!」
僕は思い出したかのように声をあげる。
「試験は!?」
そう、補習授業部の皆さんのことだ。あのあと無事に試験を受けれたのか。そして…
無事に受かったのか。だ。
すると、先生はサムズアップして答える。
「大丈夫、皆合格だった!」
それを聞いて僕はホッとした。
「……それと、ミカさんは…?」
もう一つ、ミカさんのあの後について聞くと、先生の顔が少し曇った。
「ミカはね……牢屋に閉じ込められてる。」
「っ…」
予想できたことではあったが、ティーパーティーであるミカさんが閉じ込められたというのは流石に驚いてしまう。
でも、ミカさんには会って聞きたいことがある。
「……先生。」
「ん、何?」
「ミカさんと面会することは…可能ですか…?」
僕がそう聞くと先生は少し考えた後に答える。
「…ユウなら大丈夫だと思う。手続きさえすればね。」
少し含みのある言い方だ。おそらく、先生は面会させてもらえないのだろう。ミカさんが断り続けているとかかな?
「では、面会してきます。」
「待って、まだ目が覚めたばっかりでしょ?もう少し後でも……」
先生の言っていることはごもっともだ。だけど……
「いえ、今じゃなきゃだめだと思うんです。」
僕は先生の静止を振り切ってベッドから降りる。セリナさんにも止められたが、頭を下げて行かせてもらった。
■
少々面倒な手続きを終え、僕はミカさんがいる部屋の前に立っていた。
「ふぅ………よし…」
コンコン
「ユウ君でしょ?入っていいよ。」
僕がノックをすると、この前戦ったときと同じような陽気な声で返事が入る。
「失礼します…」
部屋に入ると、ミカさんは中央に置かれたテーブルに礼儀よく座っていた。
「座って。」
ミカさんの言葉に軽く頷き、ミカさんと向かい合うように座る。
「今日はどうして来たの?もしかして、煽りに来たとか?…って、そんなわけないよね。」
「まぁ、はい。」
僕は一息ついてから話し始める。
「ミカさん、赤髪の不審者…いえ、アリウスにいる”ヒガン”という生徒について教えてくれませんか?」
「へえ……いいけど、逆にどうしてそんな質問をするのか教えてほしいな〜?」
「…理由は2つあります。一つはミカさんがアリウスとつながっていたこと。そして2つ目。こっちのほうが理由としては強いです。……僕の名前の由来を知っていたこと。」
「名前そのものなら僕は風紀委員会かつシャーレ所属という立場上知っていてもおかしくはありませんが……名前の由来までは、普通であれば知らないはずです。」
「あ〜、あれね。確かに、君の名前の由来はヒガンちゃんから聞いたよ。なんで知ってたかまでは教えてくれなかったけど…」
ビンゴ。やはりミカさんはヒガンという生徒とも関わりがあったか。
「では…教えてくれますか?」
「うん。」
ミカさんは語り始める。
「まず初めに、ヒガンちゃんは生徒じゃない。年齢的な問題じゃなくて、出自の問題かな。聞いた話だと、あの子、拾われた子らしいの。」
僕はその話を聞いて静かに驚く。
「それに、詳しくは分からないんだけど…結構大事にされてるみたい。実際、自由に出歩けているわけだし。」
「あとは……ユウ君のことを知ってたってことかな。あの子、君のこと結構詳しく知ってたんだよ?名前だけじゃなくて、さっきも言ったけどその由来とか、好きな食べ物とか…あと…君が吸血鬼だってことも知ってた。」
「っ!?」
僕が吸血鬼だということを知る人はあまりいない。それなのに、まともに会ったことのない人がそれを知っている………
確定と言ってもいいだろう…あの”ヒガン”という赤髪の少女は、あの夢に出てきた少女と同一人物。そして……
過去の僕の娘だ。
「ありがとうございました。」
「うん、……また来てね。」
その後、少しの雑談をしてから僕は部屋を去った。
「困りましたね……どう動けばいいのやら……」
僕はそれからずっと悩んでいた。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
ちょっとのネタバレみたいになりますが、ヒガンの見た目について。
・髪色は真っ赤。かなりの癖っ毛。
・瞳の色は青。(ユウと似ている)
・イメージは彼岸花
名前の由来については今後出てきます。(予想してみてね)