今回、オリジナル要素がほとんどですのでご注意ください。よろしくお願いします。
ピッ…ピッ…
静かな病室の中には心電図の音のみが響く。
「せんせい……」
応急処置はうまく行ったが、先生はいまだ目を覚まさない。当然と言えば当然だろう。ヘイローがないのにもかかわらずお腹を撃たれてしまったのだから。
僕はずっと先生のベッドのとなりで座っていた。
「ユウさん、あなたも少し休んでください。あなたも重症ではあるんですからね?」
「セリナさん…」
気づかぬうちにセリナさんが隣に立っていて、僕に休むことを勧める。
「先生に比べれば、軽いものです。こうして起きているのですから。」
「…そうですか。でも、救護騎士団として流石に見過ごせません。無理やりにでも休ませますからね。」
そう言うと、セリナさんは僕の手を引いて先生の隣のベッドに僕を座らせた。
「本当に少しでいいので、休んでいてください。」
「………はい。」
セリナさんの心配する顔を見て、断るわけには行かなかった。
そうして、僕はベッドに横になる。横になった途端、急激な眠気に襲われた。
「(ほんと…ちょっとだけ……)」
ゆっくりと目を閉じていく。
『これを聞いたあとでいいから、ここまで来てほしいな。』
「(最近、変な夢ばっかだな……)」
また夢を見ている。でも、今回は声だけ。
「(そういえば…戦闘中も同じようなことを聞いたような……)」
ヒガンに槍で胸を貫かれ、それを吸収した直後何かが聞こえていたが、戦闘中だったので無視した内容だ。
「(またヒガンと会える……かも。)」
そんな期待を抱きながら、僕は夢から覚めることに。
「ん……」
目を開け、辺りを見渡す。
「……え…」
隣のベッドにいるはずの先生がいない。そして、僕のベッドの横にある机の上には、一つの書き置きがあった。
”私はこの戦いを終わらせに行く。だからユウも、自分がやるべきことをやって。”
まるで僕がヒガンに会いに行こうとしているのを知っているかのような書き方だった。
「…はぁ、…絶対に死なないでくださいね。」
届くかも分からない祈りをつぶやきながら、僕は病室を後にした。
■
「(ここですか……)」
翼で飛び、指定された場所の少し前で降りる。
周りはいまだ激戦区であり、銃声や爆発音が響き渡っていた。
「こんなところに呼び出して……どういうつもりなんでしょうか……」
「話とお願いがしたくって。」
声がした方を向く。そこには、赤髪の少女……ヒガンが立っていた。
「話……ですか。」
「うん。私とパパの、昔の話。」
「!」
驚いた。ずっと気になっていた僕の過去というのが、この子から語られようとしているのだから。
一呼吸置いてからヒガンは語り始める。
「…私たちが吸血鬼ってのは気づいているよね?」
「うん。」
「それでね、昔……いや、”前世”って言ったほうがいいかな?」
「!?」
「前世でパパは、吸血鬼の王って呼ばれてたの。」
「ちょっ、待ってください。前世?王?全然分からないんですけど……」
急に教えられる情報に驚きを隠せない。というか、脳がパンクしそうだ。
「詳しい話は省くけど……私たちは殺された。だから、このキヴォトスに来たの。」
「パパは、いつキヴォトスに来た?」
「……2年前くらい…」
「うん。合ってる。私がこっちに来たのは、一年前。そこで、サオリちゃんに拾われた。」
「つまり……僕は2年前、前世で殺されてキヴォトスに来た……ということですか?」
「そう。私は1年前に殺されたから。」
なんで殺されたのかは省かれたけど……僕がキヴォトスに来た理由が分かった。ただ……
「どうして、ヒガンには記憶があって、僕にはないんでしょう…」
「ごめん…それは分からない。」
「そう…ですか……」
すると、ヒガンは少しさみしそうな顔をしながら言葉を発する。
「前世の状況と今の状況。少し似てるの。」
「似てる…というと?」
「パパはずっと、人と吸血鬼が共存できる”楽園”を夢見てた。そして今、ゲヘナやトリニティの人はエデンという”楽園”を求めてるでしょ?」
なるほど……前世の僕がどんな人だったかは分からないけど、そんなことを夢見ていたんだな……
「それで……僕に、何をしてほしいんですか?」
「ここまで色々言ってきたけど…エデン条約については、あの先生がなんとかしてくれるはず。だからね、パパに頼みたいのは、その後の話。」
「その後?エデン条約がどうにかなっても、まだ終わりじゃないと…?」
僕の言葉にヒガンはコクリと頷き、ぽつぽつと話し始める。
「そうなったら、作戦は失敗として、アリウススクワッドの皆は追われることになるかもしれないの……というか絶対に。」
「追われる…?誰にですか?」
「……ベアトリーチェ。アリウスの生徒会長。」
初耳の名前だったが、聞くだけで嫌な予感しかしなかった。
「だからね、お願い。」
「皆を、アリウススクワッドを助けてあげて。」
「………」
正直、複雑な気持ちだ。ヒナさんに先生、そしていろいろな人を傷つけた人を助けるなんて。
「無理を言ってるのは分かってる。でもね…これが私の、最初で最後のお願いだから。」
ヒガンの言葉には、含みがあった。
「…待ってください、最後…と言うのは?」
「……実は、私がこうして外に出れるのも今回が最後。次にアリウスに戻ったら、私は閉じ込められて実験体にされる。」
「!?」
「さっき言ったでしょ?パパは吸血鬼の王だったから、その血統のわたしも同じようなものなの。」
「だったら…!」
「戻らなければいい…でしょ?でもね、無理なの。」
そう言うとヒガンは腕についている端末を僕に見せた。
「これにGPSがついてるの。」
「だから、逃げるのは無理。」
「……分かりました。」
「!ほんと!?」
「はい。助けますよ。アリウススクワッドの皆さん、そして……ヒガン。君も。」
僕の言葉にヒガンは目を丸くする。
「え……」
「前世で僕の娘だったんですよね?だったら、君を助けないわけには行きませんよ。」
「それに、”吸血鬼の王”だった僕なら余裕です!」
「…そっか。やっぱり、姿は変わってもパパはパパだ。」
ヒガンは涙を流しながらそう言った。
「じゃあ…待ってる。助けに来てくれるのを…待ってるから。」
「うん。待ってて、必ず、助けに行くから。」
僕はニコッと笑って見せる。それに答えるように、ヒガンも笑みを浮かべた。
「……時間だ。じゃあ、ちょっとのお別れだね。」
「うん。あ、最後に聞いてもいい?」
「何?」
「前世の僕は……どんな人だった?」
「……とっても優しくて、強くて、頼りがいのある……そんな人だったよ。」
そう言い終えると、ヒガンは霧となって消えていった。
「自分で言うのもあれだけど……あんま変わってないかも?」
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
どうでしたでしょうか。ブルアカ要素が恐ろしいほど薄くてオリジナル要素が濃すぎましたが、ユウの過去描写ができて私は満足です。
ちなみに、ユウやヒガンなどのオリキャラのキャラシートはほとんど完成しております。