ヒナさんに訓練をしてもらうようになってから半年が過ぎた。ヒナさんが言っていた通り、ある程度動けるようになった。
でも、実戦はまだやったことはない。危ないからって止められてるのと、僕も普通に怖いからだ。
「ん〜。今日は暇だなぁ...」
今日はヒナさんが風紀委員の仕事で出掛けている。しかもかなり時間がかかりそうとの事だった。
やることがないのだ。訓練をしようにも、訓練場を借りれる訳じゃないしね。
「...出掛けちゃうか。」
そうして思ってしまったのは、内緒で出掛けること。前にも勝手に出掛けたことがあるが、ヒナさんにめちゃくちゃ怒られたからそれ以降は勝手には出ていない。
それでも、暇なものは暇だからね。
「軽く散歩するだけだから...大丈夫だよね...」
そうして僕は日傘と愛銃を持ち、ドアに手を掛ける。
ドアを開けると、秋の風が吹き抜ける。今日は日が強いながらも風が強いため、暑いということはなかった。
「心地いい〜......銃声とかも聞こえないし、今日は平和だ。」
この地域はゲヘナの中でもほんの少しだけ治安がいい場所ではあるが、銃声が聞こえない日の方が珍しくはある。それでも今日は、そんな戦闘音は聞こえてこなかった。
しばらく歩いていると、公園を発見したので入る。遊具などはないが、ベンチがいくつかありそのひとつに腰掛けた。
「ただ歩いているだけだけど、楽しいなぁ...」
この半年の間、このようにして歩くということは少なかった。正直、変な生活をしていたと思う。家で勉強か、訓練。訓練は楽しいが、勉強はさすがに飽きた。だから、今日はこうして散歩に来てるんだけれど。
しばらく座って風を感じていたが、1つの感情が湧いた。
「...お腹すいたなぁ。」
そう、お腹がすいたのだ。時間にして約2時間ほど歩いていたためだろう。
ベンチから立ち上がり、公園を出る。食事処を探すにしても、調べる手段は持っていない。仕方がないから見つかったらラッキー程度で歩き始めた。
「ふんふんふーん〜......お」
陽気に鼻歌を歌いながら道を進んでいると、営業中の暖簾を上げた小さなお店を見つけた。いい匂いもするため、食事処なのは間違いないだろう。
ガラガラと扉を開け、中に入る。
「お、いらっしゃい。空いてる席に...て言っても、全部空いてるけどな。」
中に入ると、厨房に立つ優しそうな猫の店主が案内してくれた。
厨房の前のカウンター席に座り、メニュー表を見る。色々なメニューがあったが、初めてなので''おまかせ定食''というのを頼むことにした。店主に注文をし、出されたお冷を1口飲む。
「よかったら、少し話をしないか?」
「...いいですよ。」
そう言って店主さんは調理をしながら会話に誘ってくれた。
「ありがとな。......最近はお客さんが来なくってよ。あんたが久しぶりの客さ。」
「そうなんですか......僕は結構好きですよ。ここの雰囲気。」
「ははっ。そう言ってくれるならありがてぇな。よっと、ほらできたぜ。」
調理を終えた店主はお盆に乗せ、定食を出した。
ご飯に生姜焼き、おひたしとお味噌汁。The定食な内容だった。
「...いただきます。」
食事前の挨拶を済ませ、食べ始める。
「おいしい...!」
めちゃくちゃ美味しい。夢中になってどんどん食べ進める。
「そうかそうか!そりゃ嬉しいな!」
あっという間に全て食べきってしまう。かなりの量あったが、もう全て腹の中だ。
「ごちそうさまでした!とても美味しかったです!」
「おう!また来てくれよな!」
「はい!絶対また来ます!」
会計を済ませ、店を後にする。
「...美味しかったなぁ。今度はお姉ちゃんと一緒に来よう。」
そういえば。と看板でお店の名前を確認する。
"三毛猫亭''
達筆な字だったが、何とか読むことができた。この名前を、記憶にしっかりと刻むことにしよう。
三毛猫亭を出てからもしばらく歩いていた。まだ15時だったのでもう少し歩くことにしていたのだ。
「あと少ししたら帰ろうかな......お姉ちゃんが帰る前には戻らないとだし...」
そうしてまた歩こうとした時だった。
ドカーン!!!
爆発音だ。ゲヘナでは日常ではあるが、その音はすぐ近くで聞こえていた。
「爆発......近いけど、大丈夫だよね?」
我関せず。と帰ろうとした時だった。
「撤退!撤退だ!」
「ヒャッハーッ!!!どうした!風紀委員はその程度なのかぁっ!」
音の主であろう人達が奥から走ってきていた。
「先輩!前に子供が!」
「本当!?っ。そこの!早く逃げるんだ!」
逃げているのは風紀委員で、その奥にいるのは......ヘルメット団?風紀委員は強いってヒナさんから聞いていたけど...いや、あのヘルメット団が強いってことかな?
「......10人。行けるかな...」
僕は愛銃を構える。狙うは奥のヘルメット団。
「何をしてるんだ!早く!」
風紀委員の叫ぶ声を無視して集中する。
「(訓練通りに......よく狙って......撃つ!!!)」
バン!
「ぐあっ!」
「リーダーッ!?」
放った弾丸はヘルメットを貫通し頭に命中。その人はどうやらリーダーだったっぽい。
「よくもリーダーを!あのガキか!」
バン!バン!バン!
「「「ぐあっ!」」」
訓練によってコッキングの動作が最適化されていて、かなりの速度で撃つことができるようになった。
撃たれる前に撃つ。効率よくヘルメット団に撃っていく。
「よし。」
10発全て命中でヘルメット団は全員倒れていた。
「せ、先輩。あれって......」
「分からん。聞くな。」
「いやほんとになんですかあれ!全弾命中ですし、ヘルメット貫通してますし!」
何やら風紀委員の方たちが騒がしい。ちょっと聞いてみようかな。
「あの...大丈夫...ですか?」
「あ...ああ。大丈夫だ。......そっちこそ大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「先輩、なんかこの子、ヒナちゃんに雰囲気似てますね...。」
「......確かにそうだな。」
ヒソヒソと目の前で話す2人。なんかお姉ちゃんの名前が出た気がするけど...
って!やばい!早く帰らなきゃ!
「すみませんっ!急いでるのでもう行きますね!」
「そうか。気をつけて。」
「名前聞いときましょうよ。」
「たっ確かに。少年!名前を聞いても?」
「あっ。''空崎ユウ''です!ではまたっ!」
「また......な......」
「空崎......って...」
風紀委員のふたりは顔を合わせる
「「どういうこと!?」」
■
「はぁ、はぁ、帰ってこれた...お姉ちゃんはまだ...だよね。」
ドアに手を掛ける。少しの違和感を感じつつもドアを開けると...
「...おかえりなさい。ユウ。」
怒りを含んだ笑顔のヒナさんが立っていた。
「えっ。あ。」
さっき感じた違和感。僕は出掛ける前にドアに鍵をかけていたのだ。だが、鍵は開いていた。
「ちょっとお話する必要がありそうね?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
三毛猫亭、風紀委員の2人は今後も出していきたいなと思っています。
血を使った戦闘ではなかったですが、ユウの初戦闘ということでした。