とんでもねぇ。よろしくお願いします。
ある日のシャーレでの業務中……
「(あ〜……だめだ………頭がくらくらする……)」
今日僕はかなり体調が悪く、仕事が全然進んでいなかった。
普段は風邪を引いたり体調が悪くなることはないが、一年に何回か、今日のように体調が一気に悪くなる時があるのだ。
「ユウ、大丈夫?体調が悪いなら、少し休んでもいいからね。」
そんな僕の様子を見て、先生はそう優しく声をかけてくれる。
「そう……ですね……はい。少し休んできます……」
僕の仕事はまだ残っていたが、まともにできる状態ではないので休むために仮眠室へと向かった。
「………つらいな…」
仮眠室のベッドの上で仰向けになりながら、かすれた声でそうつぶやいた。
「なら、私が看病するよ。」
声がした方に顔を向けると、先生が立っていた。
「せん…せい…?」
「あんなに辛そうにしてたら、流石に見過ごせないよ。」
先生はいつもどおりの優しい顔でそう言った。
「それは……ありがたいのですが……せんせい、お仕事のほうは…」
「あ〜、だいじょぶだいじょぶ!残ってるのは簡単なやつだけだからさ!」
「そう……ですか。」
絶対嘘だな。と思いながらもそう言う。
「うんうん。それよりも、喋るのも辛いでしょ。だからもう休んで。冷えピタとかもあるからね。」
「はい……」
そして、先生は手際よく僕のおでこに冷えピタを貼ってくれた。
「よし。私はずっとここにいるから、安心して寝ていいからね。」
僕はコクリと頷き、目を閉じた。
……
「うん。よく寝てるね。」
私はユウの寝顔を覗きながらそうつぶやく。
この子、普段は12歳とは思えないほど真面目で、先生である私が逆にお世話されるくらいだって言うのに、こうして寝ている分には、年相応の子どもって感じ。
「(やっぱ、あの子と重ねちゃうなぁ……)」
こうしてユウのことを見ていると、昔の出来事と重ねてしまうときがあるのだ。
良くないことだとは分かっていても、ふとした時に思い出してしまい、重ねてしまう。
「(ダメダメ。あのことはもう忘れるって決めたんだから。)」
頭をフルフルと振って思考を取り払う。
今はとにかく、ユウの看病だ。…といっても、今はこうして隣に座って様子を見るだけなんだけどね。
…それにしても、やっぱり、可愛い寝顔だなぁ。
……
「ん……んぅ…」
結構長い間寝た僕はゆっくりと目を開ける。
隣りにいる先生も少し眠いのか、ウトウトしていた。
「んあっ、ユウ、起きたんだね。調子はどう?」
「だいぶマシになってきました。」
寝ただけだが十分調子が良くなってきた。
「なら良かった。」
先生の声はやっぱり落ち着く。それに、声だけじゃない、こうしてそばにいてくれるだけで、安心感がとっても増す。
なんか、この感じは……
「……お母さん…」
「!!?」
先生の雰囲気が母というものに似ていると感じた。それが口に出てしまったようだ。
「お母さん…っていうのは……私のことかな?」
「あっ…すみません……」
「全然!別に、お母さんって呼んでくれても構わないからね。」
先生は優しく微笑んだ。
「……流石に恥ずかしいので………」
「そっか…」
何故か先生は残念そうにしていた。……そんなにお母さんって呼ばれたいのかな?
「でも、先生、なんだか手慣れてましたね。」
ふと思ったのだ。看病をしてもらって、先生の手際がかなり良いということに。
「……あ〜……それは多分、いろんな生徒たちのことを見てるからかな?」
先生はそう答えたが……なんかちょっと変な間があったような……
「じゃあ、私は仕事に戻るけど、ユウはもう少し休んでていいからね。」
「はい。」
申し訳ないなと思いつつ、出ていく先生を見送った。
その後、シャーレのオフィス内にて……
「はぁ……なーんであんな事言っちゃったのかな……”お母さん”は、今の私にとっては呪いの言葉だっていうのに……」
先生の独り言が、小さく響いた。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
短くなってしまいましたが、明日は頑張ります。