前座。よろしくお願いします。
「じゃあみんな、よろしくね。」
タワー攻略のメンバーが決まり、それぞれが持ち場に向かって動き始める。
「各作戦箇所の皆さんにこちらを配っていただけますか?」
ユウは段ボールを置いた。ちらりと見える中身は、大量のポーチであった。
「これは?」
「丸薬です。飲めばほとんどの傷は治ると思います。ですので、戦闘に出る方にはできるだけ携帯させてください。……使わないのが一番ですけどね。」
「分かりました。そのように手配しますね。」
ユウが前からコツコツと作っていた丸薬を詰め込んだポーチ。生徒の何人かはそれを飲んだことがあるのでその効果については保証されている。
「ありがとうございます。もし足りなくなったらいつでも言ってください。補充しますので。」
「ユウ、無理はしちゃだめだからね。」
先生はシャーレに用意された司令室の席に座りながらそう言った。
各地の状況を把握するための大量のモニターにいくつもの司令機器。急ごしらえで用意されたものにしては十分と言えるほどの設備である。
「分かっています。……でも、僕が戦場に出るわけではないので、これくらいはやらせてください。」
「なるほどね。まあ、程々に。」
「はい。」
ユウも席に座る。
目の前のモニターに表示される報告の数々に少しうろたえてしまうものの、冷静に一つ一つを整理して的確な指示を飛ばし始めた。
「す、すごい……」
「やるね〜。」
日頃の業務で培った技術を惜しみなく使ったユウの作業は他の追随を許さないほど素早く正確であり、連邦生徒会であるアユムやモモカは驚いていた。
「ま、でもまだ本格的には始まってないからもうちょっと肩の力を抜いても良いんじゃない?」
「そうだね。でも、ああなったユウは止まらないよ。」
「えぇ〜……」
先生の言う通り。集中しているユウは誰の声にも反応しなかった。……それが良いかどうかは置いておこう。
「それだけ、キヴォトスを守りたいって思ってるってことだよ。」
「わ、私たちもユウさんに負けていられませんね!モモカちゃん、私たちも頑張りますよ!」
「うっ……分かったよ。」
■
一歩その頃、ヒガンは……
「まさか、ヒナさんと一緒の作戦だなんて……」
「ええ、頑張りましょうね。」
D.U.近郊の遊園地……第3サンクトゥムに配属されたヒガンとヒナは、目標地点に向けて動いていた。
「あっ、来た!!」
目標地点に近づくと、聞き覚えのある元気な声が聞こえてくる。
「モモイ!」
ヒガンも元気よく返す。声の主は、同じく第3サンクトゥムに配属されたモモイだった。
「知り合い?」
「はい。ミレニアムの友達です。」
「そう……よろしく。」
「ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ……!」
「よ、よろしくお願いします……!」
緊張しながらも挨拶をするミドリ。すると、既に合流していたミヤコとサキらRABBIT小隊も挨拶をする。
「私たちからも、よろしくお願いします。」
「この前の奪還作戦では世話になったな。確か……ヒガンと言ったか?」
「そうです。」
挨拶も済んだところで作戦の準備を進めていく。
「それで……狙撃手、聞こえる?」
『は、はい!?』
「そう怯えなくても大丈夫。少し確認なのだけれど……この環境の中、狙撃は可能?」
ヒナの言う通り、現在ここでは台風級の暴風が吹いており、視界も悪く風速も速い。お世辞にも狙撃ができる状況とは言えなかった。
ただ……
『あ……えっと、問題ありません……!』
RABBIT4……狙撃手のミユは可能だと応えた。
「流石だね。頼りにしてる。」
『は、はい……?うああ……あ、ありがとうございます……!?』
「ミユは1980m離れた距離からも狙撃を成功させたことがあります。」
「……そう。」
「す、すごいです……。ミユさん、よろしくお願いしますね!」
その後もお互いの装備、役割を確認していく。
「前は私が出ます。銃ではなく、こっちを使うので。」
「あ、やっぱヒガンは接近戦?」
「うん。こっちのほうが慣れてるし。」
ヒガンの武装は双剣。このキヴォトスでは珍しい近接武器である。
「ヒガン、無茶はしないでね。危なくなったら、いつでもポジションは交代するから。」
「分かりました。」
「よし。第3サンクトゥム、スタンバイ完了。RABBIT小隊及びゲーム開発部が待機中。作戦担当、確認願う。」
ヒナが通信を入れる。今回の攻略戦にはそれぞれ作戦担当が決められており、第3サンクトゥムの担当と言うのは……
『だ、第3サンクトゥム、作戦担当は……は、花岡ユズ、です……。ど、どうして私が……うう。』
ゲーム開発部部長の花岡ユズであった。
「ああ、ユズだったんだ。よろしくね。」
「確認いたしました。ユズさん、よろしくお願いいたします。」
『は、はい……うう……』
■
作戦司令室にて、ユウたちはそれぞれの作戦担当から報告を受けていた。
「第1から第6サンクトゥム、準備完了だそうです。」
そう確認が取れると、リンたちが改めて作戦概要を展開していく。
「分かりました。では再度、”虚妄のサンクトゥム”の作戦概要を展開します。攻略部隊は、各守護者を攻撃できる距離まで接近してもらいます。道中、敵の防衛ラインで交戦予定となります。そうして総計6つの攻撃ルートを確保していただきます。」
「また、防衛部隊は、サンクトゥムの攻略が終わるまで各自治区を守らなければなりません。攻略開始と同時に、サンクトゥムから敵が召喚され、キヴォトス全域に広がる可能性が高いです。防衛部隊は全方位からの襲撃に備えてください。」
「各自治区の防衛が成功して、全サンクトゥムの攻略ルートを確保できたら、守護者集中攻撃のカウントダウンを始めるよ〜。カウントダウン終了と同時に、みんなで一斉に守護者を攻撃してね。タイミングが重要だよ〜」
「5つのサンクトゥムを各個撃破できたら、第6サンクトゥムに全員で挑みます……!」
「以上が”虚妄のサンクトゥム攻略戦”の全貌です。」
その場にいる生徒、通信で聞いていた生徒全員が頷いた。
「ここからは、シャーレの力が必要です……防衛及び攻撃――すべての戦闘の指揮を先生にお願いします……!」
「うん、任せて。」
「もし手が足りなくなってきたら、僕たちに通してください。あくまで指揮は先生に任せますが、情報解析や整理は僕たちにもできますので。」
「よし。行こう、みんな。」
「ん、貴女が直接手を出す必要はない。」
「そうね………でも、あの子が障害になるというのなら、私はあの子も殺さなくちゃいけない。」
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
前回のあとがきにもある通り、次はヒガン視点。つまり第3サンクトゥムメインで書きます。他のところはダイジェストにするつもり。
頑張ります。