今回は原作とほぼ一緒なので飛ばしても問題ないかも。よろしくお願いします。
ブリッジでブリーフィングが行われる。
「……おそらく、これが最後の作戦となるでしょう。」
リンの言葉に全員が固唾を飲んだ。
「成功したらサンクトゥムはつくられないわけだし、失敗したらキヴォトスは終わる……」
「そうですね、いずれにしても最後の作戦になります。」
「まあ、成功させれば良いんですよ。成功させれば。」
「……それもそうだね。」
変に不安を煽ってもしょうがない。成功させればいいだけの話だからだ。
「専門家が集まって検証したんでしょ?これ以上ない、完璧な作戦のはずよ。」
ユウカの言う通りである。
「……では、作戦の説明に移ります。」
全員が改めて資料に目を落とす。
「私たちの目標は、キヴォトス上空にある”アトラ・ハシースの箱舟を破壊する”こと。」
「無事破壊できたら、”虚妄のサンクトゥム”の出現を阻止できるよ〜」
「しかし、箱舟は物理的な介入を無効化する”状態の共存”によるバリアで保護されています。このバリアが存在する以上、箱舟に対しての物理的なアプローチは不可能とされていました――ですが、この宇宙戦艦……”ウトナピシュティムの本船”を同様の状態にすれば、理論上はバリアを通過することが可能です。」
「要は、相手と同じ存在になったら、干渉できるって事〜」
「なかなか簡単そうに言いますね……」
「そのための計算は、私がこの船の演算装置を用いて進行する予定です。」
ヒマリが少し自信ありげにそう言う。
「……計算に失敗したら?」
カヨコはそう小さく問う。
「そうですね……万が一、計算に失敗した状態でバリアが展開されている空間に侵入した場合――運が悪ければ原子単位でバラバラに、運がいい場合でも、船から弾き出されて地上75,000mの高さから墜落することになります。」
ヒマリの言葉に誰かが小さく悲鳴を上げたが、誰も気にしなかった。
「そ、その高さからの自由落下……流石にヘイローが壊れてしまうのでは……」
「いや、その前に肉体が耐えきれないと思うよ。」
「失敗した時のことを考えるのは止めましょうよ。」
「――はい、そうですね。失敗の想定をしたところで、不毛ですので。」
失敗する可能性はいくらでもある。だからこそ、失敗を想定するのはあまりよろしくはない。
「バリア通過後、箱舟に物理的な衝撃を与え――内部に侵入します。無事に侵入できたら、主要施設のハッキングを行い、これ以上作動しないよう徹底的に破壊します。」
「でも、そう簡単にはいかない……ですよね?」
「もちろん。箱舟内にいる敵から抵抗を受けるでしょう。ですので、攻撃を防ぎつつ、箱舟の各エリアを少しずつ占領、最終的に箱舟の制御権を奪う――それがこの作戦の最終目標です。」
「……制御権を掌握したら、箱舟自体を自爆もしくは地上に墜落させることが可能になるでしょう。」
「ま、とってもシンプルな作戦ってことですよね。」
「ヒガン、シンプルと簡単はイコールじゃないからね?」
「むぅ、分かってるよ、パパ。」
作戦の内容については、全員が理解できた。
「アユム、私たちに残された時間は?」
「……えっと、サンクトゥムの出現まで……約12時間と予想されています。」
「うう〜っ……それまでに箱舟を占領しなきゃいけないんだよね?言いたかないけど……これって本当に実現できる作戦なんだよね?」
この場にいる何人かは同じことを思っているだろう。シンプルでありながらもそれだけ、現実離れした作戦なのだから。
そして、モモカの質問にヒマリが答えるが……
「はい。何度もシュミレートした結果、成功確率は――なんと、3%もあります。」
「さん、パーセント……?」
「まさか、一桁台だとは……さすがにもうちょっとはあると思っていたんですけどね……」
「……奇跡みたいな確率を味方にするしかありませんね。」
「それでも、やる価値は十分あると思うよ。」
やらないで諦めるより、やって、失敗して、諦めるほうが何百倍もマシだ。
「……はい、先生のおっしゃるとおりです。ここまで色々なことが起こり、対処してきましたが……私たちは今まで通り作戦を遂行するしかないのです。」
「そうだね。みんなで力を合わせて、やってみよう。これまでも、そうやってなんとかなってきたんだから。」
「……そうですね。これ以外に方法がないのですから、最初から選択肢は存在していません。」
全員が決意を固めていく。
ここまで来て引き返すということは、誰の頭にも浮かんでいなかった。
「それでは”ウトナピシュティムの本船”を8時間以内に発進できるよう、準備をお願いします。」
「えっ、ちょっとまって!出発って8時間後!?」
「マニュアルはありますので、これを覚えていただきます。」
リンはドサリと冊子を置く。
「いやいやいや、こんな分厚いマニュアルを数時間で覚えろなんて無茶だよ!?」
「できるできないの問題ではなく、やらなければならないのです。マニュアルを把握し終えた方にオペレーターをお願いします。」
「はぁ……っていうか、オペレーターって最低10人は必要だよね……」
「じゃあ、私が総責任者になるよ。」
先生が名乗り出た。
「シッテムの箱があるから、きっとなんとかなるよ。」
「……私も先生をサポートします。」
「り、リン先輩?」
「ここまで来たのですから、私も最後までご一緒します。一番危険な部分を先生だけに負担させるのは、忍びないので。」
「リン、ありがとう。すごく頼りにしてる。」
それを見て、次々と生徒たちが名乗りを上げていく。
アユム、ユウカ、ハナコ、アコ、アヤネ、カヨコ、ヒマリ、半ば強引にモモカ。リンも合わせて計九名。マニュアルを手に取った。
そして、オペレーターには専用の衣服が用意されることになった。……まぁ、いるかどうかは置いておこう。
「それでは皆さん。これより8時間後、夜明けと共に出発といたします。それまでに……できる限り各自、休息を取るようにしてください。……では、解散します。」
地上最後の夜を、皆思い思いに過ごすことになった。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
後一話、地上での話なんじゃ。
がんばりまちゅ。