後もう少し。よろしくお願いします。
「じゃ、予定通りこっちは好きにやらせてもらうわね。」
「ん。」
そう言って、ルナはユウとヒガンに向けて挑発する仕草を見せた。
「……誘いに乗ります。」
「分かった。……死なないで。」
先生とユウ。それぞれの決戦へと向かっていく。
■
「ここまで来るって、信じてたよ。……これでやっと、お父様を殺せる。」
「……そうですか。」
この広い空間の一角。強烈な殺気が漂っていた。
お互いに睨みをきかせ、動こうとしない。
そして、その膠着を破ったのはルナだった。
「では、他の方が来る前に終わらせましょう……かっ!!」
「っ!」
ルナの得意な槍での突進攻撃。
超高速の攻撃ではあるが、何度も見た攻撃。防ぐのは容易いことだった。
「またそれですか?もう喰らいませんよっ!!」
打ち合いを続ける。ヒガンも隙を見て狙撃するが、片手間に弾かれてしまった。
「これはどう?」
「ぐっ!?」
ユウの腕に槍が刺さる。
「曲げた……!?」
「ちっ!」
ユウは飛び退き、距離を取る。
「……ずいぶんと逃げ腰ですね。」
「僕としては、君とは戦いたくはないからね。」
「はい……?」
「私もそうだよ、お姉ちゃん。」
ユウとヒガンの言葉は、ルナはよく分からないようだった。
「ここまで来て、戦いたくない?戯言を!!」
「本当だよ。お姉ちゃん。」
「ッ!」
ルナは怒り、弾を飛ばす。だがヒガンはそれを防ごうとも、避けようともしなかった。
「……ねえ、お姉ちゃん。どうしてこんなことをするの?この世界が、そんなに不満?」
「うるっさいっ!!私達吸血鬼に、居場所なんてどこにもない!!」
ルナの攻撃が勢いを増していく。
相変わらずヒガンはその攻撃を受け続けている。
「それは”前の世界”の話でしょ?キヴォトスのことじゃない。」
体がボロボロになりながらも、ヒガンは言葉を続ける。
「キヴォトスはそうじゃない。私やパパが、自由に生きれる。夢にまで見た世界だよ?」
「私はそんな世界、最初から夢見ていないっ!!お父様が見た、ひどく身勝手で、幼稚な夢なんか!」
「っ!(ああ、そういうことか。”私”の言っていたことは、こういうことだったのか。)」
「大体ヒガン、貴女は分からないの!?貴女は利用されたのよ!ああやって醜い人間どもにいじめられて……それでもお父様と同じ考えだって言うの!?」
ルナの瞳に少しの涙が浮かんだ。
「そうだよ。私はそこで、少しの希望を見出したから。それに、私はもうその時のことをなんとも思ってない。」
「ヒガン……」
「確かにあの時は酷かった。……けどね、ここに来て、パパに救われて……ミレニアムに入学して……友達ができて……。そんな過去のことなんか、どうでも良くなったんだ。暗い過去ばかり見ていても、何も生まれない。だから、私はキヴォトスで生きて、その希望から……未来を創るよ。」
「っ……」
「お姉ちゃんがなんでキヴォトスを滅ぼすことに協力してるのかは、もういい。今私は……お姉ちゃんと仲直りがしたいよ。」
「……今更そんなこと言ったって……。……私はもうっ……止まれないのよ。」
ルナの声に、少しの嗚咽が混じった。
すれ違っていた心の、答え合わせが行われていく。
「……”私の望みは、君の母のものでもあった。”」
「……え?」
ユウが”私”から頼まれた伝言。
彼の人間と仲良くなりたいという願いは、人間である彼の妻……ルナたちにとっては母となる人物もそうだったのだ。
人間と吸血鬼。異なる種族間で愛し合った者たちの人生を通しての願い。そしてそれは、新しい人生で、叶ったから。
「”私”から、君に伝える言葉だよ。……まあ、僕には詳しくわかりませんが……君とのすれ違いを直すためには、効くと思う。」
「……そっか。私は間違ってたのね……。お母様はあんなにも優しかったのに……どうして……どうして気づけなかったんだろう……」
「なら、ここでやり直せば良い。」
「……無理ですよ。」
「無理じゃない!それが君がここに来て、与えられたチャンスなんだから。」
「……良いの?」
「はい。」
ユウは優しく微笑んだ。父の如く。
そしてルナに近づいていく。
「……でも。」
「!」
歩む足を止める。
「やり直す前に、”今”の私を、終わらせてくれますか?」
そう言って、ルナは武器を構え直した。
「……分かりました。」
「ちょっ、パパ!?」
ユウも同じく武器を構える。
2人が武器を交える、最後の戦闘。
「……このバカで無知な私を、終わらせてください。」
「任せて。」
「ふぅ…………行きますっ!!」
「ッ!!」
■
剣と槍が打ち合う音が響き続ける。
「はあ……ああ言ってたし、手を出せない……そもそも、そんな隙がないんだけどさ……」
ヒガンは先生の戦闘の方をチラチラと見ながらもユウとルナの決闘を見届けていた。
「……というか、なんか場所も変わってるし……」
先生の方にも、戦闘要員の生徒たちが続々と集まり、本当に最後の戦いになりつつあった。
「うあぁぁぁっ!!」
「んッッ!!」
2人は激しく打ち合う。
地面で、空中で、縦横無尽に駆け回りながら。
「君が迷わず未来に進めるようにっ!!”今”だけじゃない。”過去”さえも切り捨てる!!」
「……あ」
鋭い一撃が、ルナに直撃した。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
結構頑張りました。……短いけど。
5章、そろそろ完結です。