この作品は真・恋姫無双、魏√のその後を独自の外史で描く二次創作です。
原作のキャラを崩さないように書きますので、アンチ・ヘイト警告をしておりませんが、英雄譚で公開されているキャラやオリジナルキャラ、オリジナルの設定が入りますのでご注意ください。
某所の道場。二人の男が真剣な表情で相対し、木刀を交えている。
カーンという乾いた音が鳴り、片方の木刀は飛んでいく。
「……参りました。」
勝利した男は本郷流実践武道剣術後継者、本郷一刀。
負けたのは本郷流新田派後継者候補、新田剣丞。本郷一刀の従弟であり、一番弟子である。
「流石、強いですね師匠。」
「ふぅ、何だよ急に他人行儀なしゃべり方して。」
試合が終わると真剣な空気は霧散し、互いに優しそうな笑みを浮かべる。
「士別れて三日なれば刮目して相待すべし。昨日も会ったのに、だいぶ成長したな。
まるで何年も修行していたかのように。
まさか……な。」
一刀は弟子を褒めるとともに、その急激な成長に2年前、自身に起きた奇妙な体験の数々が頭に浮かんだ。しかし、あり得ないことだと否定する。
彼の体験、1つは外史と呼ばれる、過去の英雄たちが女性として存在している世界に行ったことだ。
そこで彼は、曹操が天下に覇道を轟かす手伝いをして、この世界に戻ってきた。
そこで彼は、長く濃密な日々を過ごしたというのに、まるで一炊の夢であったかのように、日付はその世界に行った、次の日のものであった。
2つ目は、戻ってすぐのことである。
戻って来たとき彼は、自室の布団に寝ていた。戻ったと認識すると共に思い出したかのように知らないはずの情景が浮かんだ。
それは不思議な鏡によって劉備のいない蜀の王となり、仲間と協力し三國を統一した姿だった。
3つ目は、異なった歴史である。
ニホンが誇る大財閥、徳川財閥が江戸時代をモデルとした学園都市、大江戸学園を離島に作ったのだという。
しかも、存在しなかったはずの幼なじみで現在の彼女である 佐々木唯三菓 はそこの卒業生なのだという。
一刀は思い浮かべたことを否定したものの、やはり気になる所がある。
もし、剣丞が同じ体験をしたのであれば同じ外史なのか?どうやって行ったのか?
一刀は2年という月日の流れた今も、かの地に強い未練を持っていた。
寂しさや、思いを断ち切るためにも唯三菓と交際することとなった一刀だが、結局のところは叶うものなら曹操……華琳や魏の武将に再び会いたいという気持ちを捨てられきれてはいない。
さらに、記憶に増えた関羽、張飛、諸葛亮などの蜀の将に対しても抑えがたい気持ちを孕んでいる。
一刀はため息を一つ、大きく吐き出すと道場の外へと出て、空を望む。
雲一つない晴れやかな空。夜になれば綺麗な月が見えることだろう。
剣丞との鍛錬が終わり、自室に戻ると一刀は翌日の予習を始める。
一刀は現在、大学で中国史を教える講師を目指している。華琳たちへの未練というところが大きくを占めているが、外史とはいえ、実際に時代を生きたものとして、後世に伝えたいことがあるからだ。
予習が終わると、次に読書を始める。あちらの世界で生活を通し、不要な知識はないと思うようになり、戻ってからは毎日、何かしらの専門書を読むようにしている。
専門的な知識は積み重ねた知識を持ち合わせていなければ、読むのも難しく、一晩に読み切ることはできない。
キリのいいところで読むことを中断し、眠りにつく。
この日、一刀は久しぶりに、外史の夢を見た。
しかしそれは、一刀の見慣れたものではなく、始めてみる光景。しかし、その場には一刀の姿もある。
一刀の夢には劉備と共に将たちの主として、人を導く姿。孫権を初めとした呉の将達の夫として子を愛しむ姿があった。
「はぁ、はぁ……桃香、蓮華。
いったいなんなんだ、この記憶は!!」
知らないはずの記憶が増え、一刀はじっとりと汗をかきながら、目を覚ます。
「くそ!……みんなに会いたいよ。」
記憶が増えるに従い、一刀の心にある、
目が覚めたことで、枕元にある時計に目を向けると、夜中の2時。
12時に時計を確認し、眠りについたので、未だ2時間しかたっていない。
再び寝ようと目を瞑るが、会いたいという欲望の増大に心臓の鼓動が強くなり、とてもじゃないが寝直すことができない。
ココロを落ち着けるため、外の空気を吸おうと家を出ると、同じタイミングで隣の家の扉が開かれる。
「唯三菓か。どうしたんだこんな時間に。」
「ちょっと、ね。
そういう、一ちゃんもどうしたの?」
質問への解答は曖昧で、むしろ聞き返された一刀は一瞬、胸に秘めたすべてを吐き出しそうになるが、違う世界の話をしたところで信用されず、精神を疑われるだけ。
それに、幾十人の女性への未練など彼女に言える内容ではない。
眠れなくて、一刀がそう答えようとすると唯三菓は返事を待つことなく、言葉を発する。
「外史のことでも思い出したのかな?」
一瞬、何を言われたのか一刀には理解ができなかった。
しかし、徐々にその言葉の意味に愕然とする。
「何でお前が……」
「知っているのか、でしょう。
ワタシは一ちゃんが三国志の世界に生きたことも……ワタシを知らない世界から来たことも、全部知ってる。」
全部を知っている。それも、外史のことだけではなく、一刀にとっての正史のことすら知っていることに二の句を次げずにいると唯三菓は悲しそうな表情を浮かべ、さらに言葉を続ける。
「だから知ってる。一ちゃんがその世界に戻りたいと思ってることも、もう一度その世界にいくことも……。」
もう一度その世界に……その言葉を聞き、思わず唯三菓に詰め寄り大声をあげる。
「行けるのか!みんなに会えるのか!?」
言ってしまってから一刀は自分の話し相手が
「だから知ってるって……、遠慮する必要ないよ。
一ちゃん、道場へ向かって。剣丞と管理人が待ってるよ。」
速く行ってと、手を振って送り出す唯三菓を気がかりに思いつつも、走って道場へと向かって行った。