ホームカミングガーリー~ごきげんようお姉さま。わたし百合もバトルも無双します!~   作:天野ぬぼ子

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第33話 恐怖!魔女の館

お化け屋敷。もしくは廃墟。住所に書かれた場所はそうとしか言えない洋館が鎮座していた。

庭は荒れ果て、屋敷を覆う鉄柵はぼろぼろに錆びてあちこちに蔓が巻き付いている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

鉄柵の門にはチャイムもインターホンも無く、途方に暮れているとギギギと音を立てて勝手に門が開いた。入ってこいという事なのだろう。屋敷の扉にも鍵はかかっていなかった。

 

「お邪魔しまーす…」

 

エントランスに入ると目の前に大きな階段。外の荒れ果てた様子とは打って変わって中は小奇麗で、一目で人が住んでいるとわかるくらいには手入れされていた。この広そうな屋敷を掃除するのは一苦労だろう…そんな事を考えていると、

 

「結合ちゃん、よく来てくれたね」

 

二階からネグリジェ姿の蛇苺さまが現れた。昨日見た時よりもだいぶ顔色がよくて私は少しほっとした。しかしまあネグリジェというものを初めて見た。ほんとに着てる人居るんだね。

静々と階段を下りてくる蛇苺さま。これだけ見るとどこかのお嬢様のようだ。

 

「いやあ悪いね、買い出しさせちゃって。だいぶ良くはなったんだが、それでも外に出るのが億劫なほどにはだるくてね…」

 

私は買い物袋を手渡した。

 

「あの…ご家族とかは」

 

「居ないよ?…ああ、心配しないで。そういう意味じゃなくて。二人とも忙しくしてて仕事で海外を飛び回ってるだけだから。ウチは昔から続く由緒正しき魔女の家系でね。両親とも魔女(Witch)なんだ。魔女ギルドの仕事に追われてここに帰ってくる事はあんまり無いんだよ」

 

広い屋敷を歩きながら蛇苺さまはそう説明してくれた。それは寂しい事だと思いつつ、最初から両親が居ない?私は何と声を掛けていいかわからなかった。

そして案内された食堂には白いテーブルクロスが引かれた長いテーブルといくつかの燭台。それから何脚もの背の高い椅子。一応シャンデリアの光は点いていたのだが、蛇苺さまがパチンと指を鳴らすと一気燭台に火が灯った。

蛇苺さまが買い物袋をがさごそして中身を取り出す。頼んでないゼリーとヨーグルトが出てきて「ん?」という顔をした。

 

「あ、それ。まだ食欲無かったらと思って」

 

「ああ、気遣わせちゃったね。食欲なら大丈夫。ちゃんと食べてるよ。ちょっと作りすぎて食べ飽きちゃっただけ。それで弁当を頼んだのさ。あ、お金は後で払うから」

 

「いえ、お見舞いですから。気にしないでください」

 

「そう?悪いね」

 

言うが否や、蛇苺さまは椅子に座って温めもしてない唐揚げ弁当を食べ始めた。余程飢えていたのだろうか。というかネグリジェのまま食事って大丈夫なのか?いろんな疑問が頭に浮かんだがそれ以上に私は蛇苺さまが「作りすぎて食べ飽きた」ものが一体どういうものなのかが気になった。

 

「ちょっとキッチン覗いても大丈夫ですか?」

 

「いいよー。キッチンそっち」

 

弁当を食べながら扉を指差す蛇苺さま。その扉を開けると広々としたキッチンが広がっていた。その一角、ガスコンロに魔女が儀式で使うような鍋が置いてある。中身は緑色のドロドロとした汁?でいっぱいだった。…食べ物なのか?これ。鼻を近づけてみるとものすごいハーブの香りと微かにスパイシーな匂いがした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

食堂に戻ると既に蛇苺さまは弁当を食べ終わり、プラスチックのスプーンでヨーグルトを食べていた。相変わらずの食べっぷりだ。

 

「蛇苺さま、何です?あれ」

 

「あれ?おかゆの事?」

 

…おかゆだったか。アレ。

 

「いやあ、冷蔵庫の中も調味料も切らしてしまってね。庭で摘んだ各種ハーブを入れて、塩も切らしてたから味塩コショウで味付けしてみたんだ。まあまあ食べれるよ?」

 

もしかして蛇苺さまはいつもあんなものを食べていらっしゃるのか?そりゃあ学校帰りに蕎麦屋に寄りがたるわけだ。一人暮らしというのは大変だなと私はしみじみとしてしまった。

 

「蛇苺さま、今度ウチに遊びに来ませんか?ばあばに頼んでおいしいもの作って貰いましょう」

 

「えっ!いいのかい?行く行く!明日行く!」

 

蛇苺さまは私の方にずいと体を乗り出して答えた。確かに明日は日曜日だが。

 

「私はいいですけど…大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫大丈夫。ヤマは越えたよ。今はまだちょっとしんどいけど、もう一晩もすれば大丈夫!」

 

恐るべし、食の魔力。

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