異常過ぎるのは間違っているだろうか?   作:ダーク・シリウス

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難儀な鍛冶と新たに交流する神が増えた

窓から差し込む朝日、外から聞こえる人々の喧騒、カァン、カァン、カァンと執務室の隠し工房から聞こえる鎚の音をBGM代わりにして筆跡するヘファイストスの日常が今日も始まる。

 

「・・・・・」

 

本来ならヘファイストスしか使われない工房を日常的に一誠のみ使わせているのはささやかな意趣返し。四柱に【ファミリア】存続の有無の脅しを受け、悔しくも屈するしかなくて『一年間限定』と平等な制約を交わすことで【ファミリア】の存命は保たれた。それでも脅しをされたことは、もう昔の事だろうと言われるほど長い時間の中を過ごしたとしても絶対に忘れないヘファイストスは常日頃、寝食共にし自分の傍に侍らすことでロキ達と交流をさせないようにしていた。

 

「う~ん・・・・・難しい・・・・・」

 

また悩む声が聞こえたならば、手加減を失敗したのだろう。そもそも手加減をさせるのが鍛冶を司る者としておかしいと自覚しているが、そうでもさせないといつか世にとんでもない異常すぎる武具が浮上してしまうからなのだ。今度は何を生み出してしまったのか視るため席から立って工房に顔出した。

 

「イッセイ、またなの?」

 

「ん、また。包丁を作ったんだけど、その気でもないのに魔法が付与しちゃう。これってスキルのせいか? スキルの影響が本人の意思の有無関係なく発動してしまうのか?」

 

どこにでもある普通の包丁。しかし実際は魔法が付与されているとんでもない包丁であったとは、一般家庭の婦人が知らずに生物を切っている想像をしたら間抜けな面を晒す自信がある。そもそもなんで包丁を作ったのかと目頭を押さえたくなる衝動に駆られるも、これからも同じことをするなら慣れないと身が持たないだろうと思いからくる諦めが占めるヘファイストスは溜息を零した。

 

「そうね・・・・・スキルは冒険者に否が応でも呼応して効果を発揮してしまうものよ」

 

「それなら手加減は無理だ。ヘファイストスの権能もスキルで反映してしまってるぞ」

 

「加えて魔導と神秘のスキルまであるから魔導書ではないのに武器版の魔導書ができてしまう、か」

 

魔法大国の魔術師達がこの武器の存在を知ったら心底怒り狂って、憤慨してこれ以上魔法が付与された武器を生み出されないよう一誠を亡き者にしようと刺客を放つ可能性は大いにある。一誠も同じ事を考えていたのか、微妙な顔をしていた。

 

「魔法大国アルテナの人達、絶対に認めてくれないよな」

 

「一般家庭に使われても自然過ぎるただの包丁にも魔法が付与されていると知ったら卒倒するわよ」

 

「デスヨネー」

 

「でも実際どうなの? それ」

 

武器に付与された魔法の効果を言外して問うヘファイストス。数回ほどで使い手を残して砕け散る運命に逃れない魔剣と違いはあるのかと。

 

「椿に試してもらったところ、魔力があるなら誰でも何度も使えるって。威力は使い手の冒険者によって異なるけど、少なくとも魔導士が使えば恐らく魔剣より強力になる、だそうだ。でも、欠点がある」

 

「欠点?」

 

「冒険者の【ステイタス】に刻まれてない魔法だから呪文が俺しか分からない。これだって俺が何も言わなきゃただの包丁だし、壊れたら魔法が発動しなくなる」

 

一誠から渡してもらった包丁からは一般的に使われてる金属で作られている。ただの包丁ではないのは鍛冶神として手に取るように分かるが、他の神々や冒険者は詳細も分からないだろう。ゼウスやヘラに使って欲しいと渡したら絶対気付かない確信を持てるヘファイストス。

 

「・・・・・イッセイ、これと同じ包丁をもう三つ用意しなさい。いえ、果物ナイフを四本よ」

 

「ヘファイストス? 急に何を言い出すのかのと、その意味深な笑みは何を籠めているんだ?」

 

「何も思ってはいないわよ。ほら、主神命令だから作りなさい」

 

と、ヘファイストスの命令で疑心暗鬼になってもその通りにする一誠の手で作られた果物ナイフはヘファイストスが持ってどこかに行ってしまった。ぼーっとしていると執務室に顔を出した椿から誘われ大通りの石畳の道を歩かされる。

 

「どこに行くんだ?」

 

「オラリオを案内しようと思ってな。鍛冶師として工房に籠るのは当然だが、たまには外に出るのも悪くなかろう」

 

「俺の場合は主神様の我儘で炉の炎に照らされ続けていたんだが?」

 

「手前もあんな主神様を見るのは初めてであった。しかしな、イッセイには不憫な思いをさせてしまっていることも心の中では申し訳ないと思っているはずだ。悪い主神様ではないから許してくれ」

 

片手を挙げて頼むと苦笑いする椿を見て仕方ないなぁ、も短く息を零した。

 

「で、最初はどこに連れて行ってくれるんだ」

 

「それはな―――」

 

「へーい、そこの異世界から来た子供君! オレと楽しい話をしようぜ!」

 

唐突に話しかける男の登場に思わず足を止めてしまった。旅人が被る鍔広帽子に羽根がついていて、身軽に動けるよう軽装の旅人服で身に包む橙黄色の髪と瞳を持つ男が飄々とした態度とニコニコと笑みで固めた顔を向ける。

 

「どちら様だこいつ?」

 

「神ヘルメスだ」

 

「ヘルメス? ・・・・・なるほど、体で名を表している通りだな」

 

「お眼鏡にかなったようで嬉しいね。では早速だが聞かせてほしい。このオレ、ヘルメスとはどんな神物かを!」

 

要は異世界のヘルメスを知りつつ、なぞなぞゲームの如くヘルメスと言う神をどこまで知っているのか好奇心から来る質問をしているのだと察した一誠は。

 

「オリュンポス十二神の一人、商業、商人、旅人、雄弁、策略、盗賊、また神々の伝令役を担っているとヘルメスのお兄さんから聞いたな。あと、アプロディーテ、もしくはアフロディーテお姉さんに肉体的な意味で迫って子供を作ったとか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

魂が抜けたような返事をしたヘルメス。おや? と不思議そうに小首をかしげ、彼の男神を見つめた。

 

「オレがあのアフロディーテに? しかも子供・・・・・?」

 

「しかも複数」

 

口をあんぐりと見開いた橙黄色の瞳から絶句と言う感情がありありと浮かばせ、次にその場で四つん這いになってすごく落ち込み出すヘルメスの原因のアフロディーテ。この世界ではどんな女神なのか興味を持つが、眼前のヘルメスの様子では聞けないし、ヘファイストスに至っては触れてはならない琴線をあっさり切ってしまう予感がする理由で、首を突っ込まないことを決めた一誠であった。

 

「それからタラリアって翼が生えたように空を飛ぶことができるタラリアって靴や透明化できるハーデスの兜と関わっているな。持ってたりする?」

 

「・・・へぇ、それは興味深いアイテムだね。でもそんなアイテムを作ることができる子供はまだいないんだ」

 

落ち込みから立ち直りながら一誠に言い返したヘルメスは次に発せられる言葉にも耳を傾けた。

 

「そっか、それならその内にヘルメスの眷族として現れるだろうな。本名か二つ名かは知らないけど『ペルセウス』、もしくは『アンドロメダ』って名前の人物がな」

 

「その名前の子供はキミの世界にも存在しているなら預言として胸に刻んでおこう。―――ところでオレと商談でもしないかい? 異世界の商品をこの世界でも生み出せるならオレの【ファミリア】がバックアップになって製品の量産を協力するよ」

 

「生み出す・・・・・ことはできないけど取り寄せることはできるかな」

 

「取り寄せる? それはどういうことかな?」

 

「この世界の通貨で異世界の物資を買うことができるスキルがある」

 

ほう・・・・・! と橙黄色の瞳にキラーンと妖しく輝かすヘルメスの好奇心を激しく刺激した。この世の物ではい異世界の物資とならば、その中には暇を持て余す神々を刺激させる玩具があるに違いない。それを手に入れてちょーと割増しに販売して幾分か懐に入れても、誰も咎めないだろう。もしくは異世界の玩具をこの世界風に魔改造をできるなら独占・量産ができて儲かればそれはもう笑いが止まらないこと間違いなしだ。

 

「イッセー君」

 

自然な動きで一誠の肩に腕を回して悪ーい内緒話と秘密と契約話を囁くように持ち掛けた。傍から見ていた椿は一応は主神様に報告をしておくかと他人事のように思っていた。だが、この機に一誠は鍛冶師ではなく道具作り―――アイテムメイカーに切り替えたのだった。ヘファイストスの権能が一誠の【鍛冶】を底上げし【魔導】と【神秘】の相乗効果でトンデモ武具を作ってしまい、ヘファイストスの許可が無ければ売ることも使えないのであればお蔵入りの宝の持ち腐れに成り下がる武具を作っても意味がない。

 

―――冒険者にとって役立つ武具に成り代わる道具を作ればいいじゃないか!!

 

そうヘルメスに相談したところ、一誠に天啓を導く言葉を送ったことで本人も目から鱗が落ちると言わんばかりに納得した。先日、時間の流れを止め食糧の長期保存を可能にし、本来の収納量を何倍も増やすバックパックを使ってもらってから好評を得たばかりだ。であれば次に作るべきなのは・・・・・・。

 

「イッセイ、これは何だい?」

 

後日とある男神を侍らす一誠自身のマイホームに呼び出された四柱の神と冒険者の前に置かれたある道具に聞かずにはいられなかった。問われた作った本人は淡々と説明口調で語る。

 

「それは遠い所に居ても誰かと会話することができる腕輪と、こっちの球体はそれと連動してフィン達が見ている光景を映してくれる。どっちも魔法の道具だ」

 

金属に幾何学的な紋様と衣装が凝った宝玉付きの腕輪と透明なガラス玉を渡されたフィン達はそれぞれ観察する眼差しで魔道具を見つめる。

 

「・・・・・これが俺達の役に立つと?」

 

「神の意見も聞けるし、集団で行動するってなら分散するよな? 離れたところから話をしたい相手と現状報告がを聞けたらいいよな?」

 

「ほー、本当にそれが出来るんなら、ウチらが地上からフィン達の迷宮探索をしている様子が見れるんやな」

 

「そうじゃな。マキシム達の姿をダンジョンの中でも見られる上に言葉を交わせるならば使いたい道具」

 

「私らにこれを渡すってことは使ってもいいって認識でいいんだね」

 

勿論だ、と首肯する一誠と交流ある神と冒険者の人数分のみに用意された道具が行き渡る。しかし、自分達だけなのは数が少なすぎると意見が挙がると。

 

「他の冒険者の分は有料だ。欲しかったら注文して代金を払ってくれ。―――この神を介してな」

 

「と、イッセイ君に紹介を預かれたこのオレ、ヘルメスが対応させてもらうよ」

 

さっきから一誠の横に陣取っている神の中で一番胡散臭い優男が満面の笑みを浮かべてそう言いだした。ヘルメスの腕には金属の光沢を放つ同種の腕輪が嵌められていて、ロキ達に何時の間に一誠と関わっていたのだと、まさかコイツも一誠を狙っているんじゃないだろうなと懸念を抱かせた。

 

「おうヘルメス。自分イッセイとなに親し気にしとるんや」

 

「おいおい、オレがどんな子供と関わろうと勝手だろう? オレとイッセイ君はビジネスパートナーなだけで、ヘファイストスから奪おうなんて思っちゃいないさ。ただ、純粋に仲良くなりたいだけだぜ」

 

一誠の肩に腕を回して仲良しをアピールするヘルメス。だからこの場にいるのかと、ヘルメスに通じて一誠へ依頼をしなければならないのであれば、【ヘルメス・ファミリア】の懐に幾分かの料金が収まる結果が見え見えで―――それが面白くないロキは不服と眉根を寄せた。

 

「まぁええ。ヘルメスのいつもの事じゃ。イッセイが作った武具の代わりに道具を買えるならば何でもいいわぃ」

 

「武器に【ステイタス】や魔法を付与する破天荒なこと、魔法大国が知ったら絶対に狙われること間違いないのだけれどね」

 

「ふふ、素敵よイッセイ。いつか私のための道具を作ってちょうだいね」

 

「ほほう、イッセイ君はそんなこともできるとは初耳だよ。とても興味あるねー」

 

―――お前かロキ。

 

教えていない筈のゼウス達が知っていて、ヘルメスまで知られることになった。その元凶と可能性あるこの場にいる一柱を睨むと、口笛を吹きながら一誠からそっぽ向いた。ヘファイストスに報告する案件が出来たと、このお喋り女神をどうしてくれようかという想いに耽っていればアルテナの事を呟いた。

 

「そういや、アルテナの件が有耶無耶になってしまったな」

 

「・・・・・どういうことじゃ?」

 

「ん、元の世界に帰るために一番可能性が高そうな方法はこの世界の魔法だ。だから魔法大国アルテナに顔を出してその国を統べる主神と会ったんだが、そこで俺がウラノスの眷族―――であることを知らずただ、オラリオにいる可能性があってもしも改宗状態が済ませたら俺の望みを叶えてやる代わりアルテナに戻って来いと言われた」

 

「「「っ!!?」」」

 

ゼウス達が揃って目を丸くする。その理由が何なのか一誠は気にせず言い続ける。

 

「ま、あんな国を見せられたらまた行こうなんて失せてたから丁度良かったよ。俺が好きじゃない国の方針だったし、何より魔法の恩恵を得られるならアルテナの主神オーディンじゃなくてもいいことも分かったし」

 

「そ、そうか・・・・・ヘファイストスは何も知らんでイッセイをオラリオに留める結果に・・・・・」

 

「いや、ヘファイストスが俺を眷族にしようがしまいがこの世界で生きるために必要な軍資金や物資を集めたかったからオラリオに留まる予定だったぞ」

 

あっけらかんと言ってのける一誠に神々は口を閉ざした。ヘファイストスでもそうならばゼウス達のことも同じ道理でどうでもいいと言外されたのだ。

 

「因みに、実際にこの世界のオーディンと会ってどんな印象を抱いたん?」

 

「狡猾なお爺ちゃんだな。俺の世界のオーディンの爺ちゃんはド変態で、書物じゃあ数え切れない女神に手を出した女の敵って感じだけど、好々爺で孫を可愛がるどこにでもいるお爺ちゃんみたいで俺は好きだったよ。ぶっちゃけ言うとゼウスと同じだな。絶対に親友になるほど気が合いそうだ」

 

「そこまで言うほどか。だったら異世界のオーディンと会ってみたいわぃ。そして間違ってないからのその印象」

 

「少し話した程度だけど嫌いではないからな。眷族になりたいかはまた別だけど」

 

「正解よイッセイ。あの大神だけは私も嫌いだから」

 

フレイヤが否定的な発言をしてもロキ達は表情を変えない。一誠には知らないフレイヤの事情など知ったこっちゃないが、オラリオとアルテナは敵対している故にオラリオに在籍している神々もそうなのだろうと―――。

 

「アルテナ、滅ぼしていいならしてこようか?」

 

「「「「止めなさい」」」」

 

「ハハハ・・・・・」

 

冗談抜きでやりそうな一誠の発言に間も置かずツッコミを入れる四柱、冗談だと思ってから笑いする軽薄そうな優男の神の反応の違い。眷族達も一誠ならやりかねないとちょっぴり不安に駆られた。

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