異常過ぎるのは間違っているだろうか?   作:ダーク・シリウス

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生産と探索の次の挑戦

 

鍛冶神の眷族になったにも拘らず完成させる作品は常識を覆す物ばかり。主神の許可なく作れない多くの物よりヘルメスの提案により魔道具製作者として活動した方が性に合っていると判断した俺は、主に魔道具を作りつつ片手間でこの世界の鍛冶の技術を学んで行く方針を定めた。

 

「イッセイ、そろそろ精霊の護布にも学んでもらおう」

 

「精霊の護布?」

 

俺のホームにやってきた椿がこれがそうだと巻物みたいに巻かれた赤色、黄色、水色、茶色、緑色、白色、黒色、他多彩な布を俺の前に置いた。

 

「お主の世界にもいるかもしれんが、火精霊サラマンダー、水精霊ウンディーネ、土精霊ノーム、風精霊シルフといった精霊達がこの世界にいて。奴らの加護が宿った布が精霊の護布というのだ」

 

「確かに俺の世界にもいる精霊の名前だな。その精霊の御布はどんな効果があるんだ?」

 

「ダンジョンには火を吐くモンスター、水を操るモンスター、風を起こすモンスター、冒険者も属性攻撃の魔法を使う。よって敵からの各属性攻撃に対抗、抵抗できるのが唯一各精霊の属性が宿った護布で、それを防具に仕込めばどうなるか言わずともお主なら察することができるであろう」

 

確かにもう察することはできた。でもだ・・・・・。

 

「俺が手掛けた防具、とんでもない防具になるよな絶対」

 

「それを前提に創ってみるのだ。これから遠くない内にリヴァイアサン討伐作戦に出る奴らの為にな」

 

そう言われてしまえば創る他ない。誰一人死なずに生きてほしいと気持ちを込めてな。椿の指導を受けながら精霊の護布を扱わせてもらい、手始めに外套を完成させてみるとあら不思議なことに・・・・・。

 

 

『水精霊の外套』

 

『力』E440 『耐久』C699 『魔力』A823 『敏捷』C605

 

 

スキル『水精霊の加護』 この装備の着用時、水魔法の抵抗力は『魔力』の数値に依存する

 

 

武器にはアビリティと魔法が付与されたのに、防具にはアビリティとスキルが付与してしまった。この結果に椿へ告げるとヘファイストスの下へ持ち込まれて御布で作った外套の効果を知るや否や、呆れを通り越して身体が溶けてしまったかのようにテーブルに突っ伏してしまった。

 

「イッセイあなたね・・・・・・」

 

「どうしようもない事だと思います!」

 

「・・・・・何を言っても確かにどうしようもない事なのだけれど、どうしてくれようかしら」

 

だから不可抗力なんだってば! 真剣に作っただけでこんなとんでもない防具になるとは思わなかったから!

 

「しかし、これぐらいの代物を用意しておいて損はしないだろう。リヴァイアサンに対抗するならば備えあれば患いなしだ主神様よ」

 

「わかってるわよ。でも、一誠が手掛ける物はゼウスとヘラの眷族のみ使わせるしかないのは事実。取り敢えず彼等彼女等の分の防具を揃えて作りなさい」

 

「全員のサイズ分からないんだけど」

 

「それなら手前が調べておいてやる。イッセイはさらに防具の性能を向上する専念をすればいい」

 

椿がそう言ってから数日後。本当に全員分のスリーサイズや体の骨格、太さや細さまで調べたのか一人一人のサイズが異なる数字を提示したのであった。

 

「さて、それじゃあ水精霊の護布にこいつも使ってみようと思う」

 

「リヴァイアサンの鱗か。リヴァイアサン討伐が成した際は素材にした鱗が消失するかもしれんぞ」

 

「それまでは消えないって事だろ? なら十分マキシム達の助けになるはずだ」

 

「イッセイしかできぬことだな。手前も手伝うぞ」

 

リヴァイアサンの鱗を使った防具を椿と共に一心不乱に飲まず食わず寝ずの夜を何日も過ごし、初めて作るものだから何度か失敗した経験を経て一週間と二日が経った頃に、人数分の防具が完成できた。

 

「やっと終わったー・・・・・どうだ椿」

 

「うむ、手前から見ても一寸の狂いもなく完成したなイッセイ。して、肝心の中身は?」

 

スキルは対リヴァイアサンでそれが全ての防具に付与されていて【ステイタス】の数値はどれもこれもオール1000以上、文句なしだと親指を立てた。ただ、これだけは言わせてくれ。

 

「駆け出しの冒険者兼見習い鍛冶師にこんな大役をやらせないでくれるか。いくらスキルがとんでもないからってさ」

 

「適材適所ではないか。それに手前も指導しながら手伝ったから一人で任せたわけではないぞ」

 

ぐうの音も出ない俺はヘファイストスのお墨付きとしばらくの休暇を貰うことができて久しぶりにマイホームでのんびりしようと二人と別れた。

 

北西と西の間の区画にある俺の家の周辺に足を踏み込んだ瞬間、息と気配を殺して身を潜めていた獣が殺気まで解放して至る所から何人も襲い掛かってきた輩の隙間を潜って距離を置いた。

 

「誰かと思えばゼウスとヘラの眷族達か? いきなり攻撃してきてどういう了見だ?」

 

襲撃者はリヴァイアサンから体の一部を剥ぎ終えた俺を待ち構えていた冒険者の中にいた面々。別に敵でも味方でもないから攻撃されるいわれは・・・・・なくはないか。俺、モンスターだし。

 

「自信を無くすぜ。軽々と攻撃を躱されるとよ」

 

「あんたらが弱いから躱されるのは当然でしょうが。こっちは私達の団長を無力化したなんて汚い手を使ったに違いないと思って、レベル9なんて嘘に違いないと思っていたのに・・・・・」

 

「悪いがリヴァイアサン討伐の備えてお前をぶっ倒して莫大な経験値を貰わせてもらう」

 

「命までは奪わないから安心しろ」

 

目に見える範囲、そして廃墟の陰に隠れている二大最強【ファミリア】の数は軽く20人は超えている。

マジカー・・・・・こいつらもこっちの意見は無視ですかそうですかー。

 

「一応聞くけど拒否権はあるよな」

 

「人の皮を被ったモンスターに人権なんてあるとでも?」

 

「・・・・・まぁ、否定できないからそうなんだけど、場所も関係なく相手に襲う野蛮な冒険者相手をするのも面倒臭いわけでさ、悪いけどさ・・・・・」

 

俺の足元にこの区画中に展開した広大な魔法円に彼の【ファミリア】の眷族達は瞠目し、魔法を放たせまいと地面を蹴って飛び出してくるが、それに近づく前に隠れている奴も含めて全員地面から高く浮かされた。

 

「―――」

 

「――――」

 

「――――――」

 

宙に浮かされてなお魔法の呪文のような詠唱を唱える冒険者を見据え―――パン、と両手を合わせると彼等彼女等が磁石に引き寄せられた勢いでぶつかった。そしておにぎりを作るようにギュッギュッと手を動かせば冒険者達の身体が一つの塊になっていく。

 

「俺、今日は休暇なんだ。ゆとりの時間を過ごしたいからお前らの相手なんてするつもりはない」

 

突き出した手から意志を持った巨大な雷の竜を放ち、冒険者達を噛み砕きながら雷撃を与えそのまま中央広場へと送り届けた。

 

「命までは奪わないから安心しろ」

 

もう声は届かない相手にそう言い残してホームへ足を運んだ。後からゼウスとヘラが何を言ってこようと知らん。正当防衛でしたんだからな。

 

その後―――。

 

「お互い歯牙も掛けられずイッセイに一蹴されたみたいだな」

 

「いや、相手にされなかったと思うね」

 

「つまり、レベル6以下の第一級冒険者が束になっても勝てない実力、魔法を有しているということだイッセイは。なぁ、そうだろう?」

 

中央広場に巨大な雷の竜と共に現れ、莫大な雷が迸った。無所属や冒険者達が避難や警戒している他所に雷の竜は消失して残された【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の冒険者達の中に意識を保っていた者は這う這うの体で未だ気絶している仲間を引きずってホームに帰った。そしてマキシムや【女帝】に見つかって何があったのかと事情を訊き出し、内容を聞くや否やさっそくイッセイが作った通信道具を利用(直接相手のホームに顔を出さず誘い出す便利さを知った)してある酒場で落ち合った。イッセイに挑んで敗れた仲間も連れだして。

 

「・・・・・ちっ」

 

「・・・・・潜んでいた仲間にも気付いていたみたいで一緒に浮かされて強力な雷魔法でやられたわ」

 

「なるほど、気配も探知できるのかあいつ。ともなれば真正面から挑むのが正解で、お前達は一つだけ足りないことをしたから相手にもされなかったかもな」

 

「なによ、足りないことって」

 

実力の事か、と自分の弱さを指摘されようなら一回ぶん殴ってやるとヘラの眷族の一人がテーブルの下で拳を作っていたところ、ザルドが安酒を口に傾けた後に言った。

 

「奴と戦う際は自分達で作ったアップルパイを持って行くことだ。そうすれば餌に釣られた奴はこちらからの勝負に応じてくれるぞ」

 

「アップルパイって、そんなバカなことがあるはずがないだろ」

 

「事実だ。騙されたと思って一度だけ試してみろ。このまま負けっぱなしでいいなら話は別だがな」

 

マキシムまでザルドの言い分に肯定する。胡乱気に訊く冒険者達は作ったことがないアップルパイをザルド達に手伝ってもらいながら完成させ、一誠のもとへ持って行くと。

 

「・・・・・アップルパイを持って来たぞ。これで戦ってくれるのか」

 

「ザルド達から聞いたのか。それも今朝追い返したってのにまだ凝りてないのかよ。はぁ・・・・・ホームの地下でなら相手になってやる」

 

「・・・・・マジかよ」

 

サッと掴んでアップルパイを食べ始める一誠の発言に信じられないと呆気にとられるも、今度こそまともな戦いをして倒してやると意気込みホームの地下で改めて挑んだのだが。

 

「はい、俺の勝ちー」

 

「くそったれ・・・・・!」

 

「次は私よ!」

 

「いいぞー、かかってこい」

 

朝より手応えある戦いを繰り広げ、刀剣同士が交じり合う際に火花が散る。時には無詠唱どころか魔法名も言わず魔法や空気を圧縮した殴り飛ばす衝撃波や斬撃を纏った衝撃波、斬撃そのものを飛ばす実力に驚かずにはいられなかった。相手がモンスターであることも忘れるほどだが、口から火炎球や熱光線を放つ姿に思い出される。第一級冒険者としての動きをして、翻弄して倒しにかかるはずが、逆にそうさせられて地面に叩きつけられて首元に刃を突き付けられて勝負は終わり、次は自分の番だと女冒険者が勇ましく名乗り上げる。双剣を使いこなす彼女とも真正面から戦い、徐々にギアを上げて最後は圧倒すると、またもう一度だと負けん気を起こす男の冒険者の気が済むまで、女冒険者も負けじと再挑戦に応じる一誠。この日を境に【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の冒険者の間で問答無用の襲撃・奇襲するよりか自作のアップルパイを持って挑めば高確率で何度も(回復込み)相手にしてくれる話題が一時期流れ、両派閥のホーム中に甘い香りがするようになったのは遠くない未来の出来事である。

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