異常過ぎるのは間違っているだろうか?   作:ダーク・シリウス

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愚者と魔道具生産者

休暇を貰って翌日。アイテム創作の意欲が思っていたよりも高かったことに知らなかった。いざ思い描いていた物が何でも創れそうな予感を覚え、ヘルメスとの出会いを経てタラリアのような有翼のアイテム作りに挑戦してみたところ。自分の才能がここまであったのかと驚く出来栄えで完成した時、来訪者を告げる鐘の音が鳴った。出迎えに向かい扉を開けると【ロキ・ファミリア】一行が立っていた。

 

「おっ、今日はおった! イッセイ、一緒に遊ぼうや。というか、異世界の遊びをしようや!」

 

声を弾ませ遊びの誘いもとい異世界の遊びを従っているロキに、今日の休暇が潰れたと察し、遠い目になったのは仕方がないと思いたい。

 

「今日はアイテムを作っているから厳密的には暇ではない、と言っても聞いてくれなさそうだな・・・・・」

 

【ロキ・ファミリア】古参であり派閥結成時からの付き合いらしい亜人の三人組に目を向けると開口一番に謝罪の言葉を頂戴した。

 

「すまん」

 

「それからロキ料理も食べるつもりだ。それも含めてすまん」

 

「迷惑をかける前提で、久々にキミと交流できるとロキが嬉しいからね」

 

何気に苦労しているんだなこいつら、と若干の憐れみの眼差しで一瞥して4人を招き入れた。土足でホームの中を歩く習性があるらしいものの、俺は家が汚れるから勘弁してほしいから靴を脱いでスリッパに履き替えてもらっている。でなければ出禁だぞと釘刺したからな。それが効果覿面なのなわからないがしっかりとスリッパを履いてもらってくれてるからありがたい。ただ、来訪者分も用意したからスリッパの数が多いがな。

 

「なーなー、どんなアイテムを作ろうとしておったんや?」

 

「ヘルメスと出会ったからな。タラリアって靴の代わりの誰でも空が飛べる魔道具をな。それ、もう完成したところだ」

 

「タラリアってなんや?」

 

「靴から翼が生える魔法の靴の事だ。将来ヘルメスの眷族が使うと踏んでいる」

 

「イッセイ、完成したと言ったがそれは試したのか?」

 

「お前らが来たからまだしていないぞ」

 

狙って来たかのように邪魔するタイミングがピッタリだ。と苦言を零し、ロキ達をLDKにある席に座らせる。

 

「それはすまんかったな。しかし、それは儂らやロキでも空が飛べるアイテムなのか」

 

「そのつもりで作った。体験してみるか?」

 

「そうだね。キミの魔道具の性能検査を協力することで迷惑をかけた謝罪を兼ねて手伝わせてもらうよ」

 

フィンが大人の発言で提案してくれたので、ならば遠慮なく手伝ってもらおうと決めた。ロキ達から一度離れ、完成したばかりのアイテムを持ってきた。

 

「こいつだ」

 

「なんやこれ、翼の絵?」

 

1枚の紙に様々な形の翼の絵が描かれているのをロキ達は見下ろして見た。

 

「まだ名前は付けてないから・・・・・安易に〚翼シール〛と決めるか。これは魔法の翼で背中に張り付けるだけで翼が生えて、人が空を飛ぶように設計した。シールだから水で濡らせば簡単に剥がれるから日常生活には困らないはずだ。試しにロキからな。やるのはこの家の中でだ」

 

「わくわくするでぇ!」

 

背中を向けるロキに適当な翼シールを剥がして彼女の背中に優しく貼った。

 

「貼ったぞ。そしたら空を飛びたいと念じてみろ」

 

「・・・・・・」

 

瞑目(もともと糸目だから目を瞑っているのかわからないがな)をして念じたのがわかる。ロキの念に応え背中に張った翼シールが光を放ち、絵の通りの翼が鳥籠に閉じ込められていた鳥が解放されて世界に向けて旅立っていったように翼を広げたのだ。次に足が床から離れロキが浮いた姿にフィン達は驚嘆、感嘆の念を抱いているのが顔に浮かんで分かりやすかった。

 

「ど、どうや? なんや足の裏の感覚がないんやけど飛んでるウチ?」

 

「目を開けてみなよロキ」

 

眷族からの指摘に恐る恐ると朱色の瞳が開いて自分の下を見たロキは、俺達より高くいることと背中から伸びている翼を認識して「お、おおお・・・・・っ」と歓喜か興奮か感動か、どちらにせよ悪くなさそうな反応を示してくれる。

 

(それはそれとして、女神なのに全然神々しい感じが微塵もないのは悲しすぎる)

 

うひょ~! と狂喜で両手両足をジタバタとはしゃぐ姿を見ているからか? うーん、やっぱり悲しい・・・・・。

 

「イッセイ、次は僕達にも頼む」

 

「あいよー。ああ、リヴェリアは当然脱がなくていいからな」

 

「いや、私はいい」

 

否定の言葉を放たれた。もしかして服を脱いで背中に張るものだと思っているのか? だったら言葉が足りなかったな。

 

「服に貼っても翼シールの翼が出るから背中を見せなくていいんだ」

 

「何じゃ、脱がんでいいなら手間が掛からんでよいな。てっきり肌に直接張るのかと思ったわぃ」

 

「ロキの背中が露出しているからだよそれは」

 

「なるほどね。リヴェリア、服を脱がずに済むなら試してみようじゃないか。彼に手伝う約束だろう?」

 

話している間に2人の背中にシールを張り終え、最後はリヴェリアだけだ。彼女は無言で俺に背中を向けてくれたのでペタリと張った。そしてフィン達はロキのように念じて問題なく翼を生やし、宙に浮くことができた。飛行練習としてゆっくりと移動、やや慣れてきたら外で飛ぶ練習をするロキ達の学習能力は高いことを示してくれた。

 

「いやっほうー!! きんもちぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「おいロキ、あまり飛ばすと危険だぞ!」

 

「いいね。空の上にいるモンスターと戦いやすくなるアイテムだ。魔力も消費しないらしいし広いダンジョンの中の移動も楽になるかも」

 

「どのぐらい速いのか試してみたいのぅ」

 

赤、黃、緑、茶色の翼を生やす4人を見上げ作った者として感慨深い気持ちになり、天使化になってロキ達とオラリオ中を飛び回って遊んだ。まぁ、そんなことしている俺達に気付いた地上にいる神々や人類が騒ぎだってしまい、原因の本人である俺に交流ある神々や冒険者が詰め寄ってこない筈がなかった。

 

「イッセイ! 儂にもロキのように空を飛べるようにしてくれぇい!!」

 

「はいはーい! イッセイ君の魔道具を買いたいならこのオレを通してくれよー!!」

 

「私の眷族達の分を作りな!」

 

「楽しそうな魔道具を作ったのね。とても欲しいわイッセイ」

 

「イッセイ、座りなさい。話があるわ」

 

 

「空を飛ぶことができる魔道具とは。イッセイは稀代の魔道具製作者として名を残すな」

 

「そうだな。リヴァイアサン討伐時に役立ちそうだ」

 

「問題は濡らさないように気をつけなきゃならないけどね。え、なに? 海の上に立てる魔法を施した防具を用意してある? ・・・・・用意周到じゃない」

 

こうも騒がれるのが目に見えていたがなー!!! だからかヘファイストスにはしばらく魔道具を製作するのを禁じられてしまい、それならお馴染みの回復アイテムを作ろうと考えたものの、その類のアイテムは作ったことがないから知っていそうな人物はいないかこっそり・・・・・。

 

「ウラノスお爺ちゃん、回復薬の作り方を知っている人を知らない? 無償で教えてくれる人とか」

 

「なぜだ」

 

ヘファイストスの眷族になって今までして来たことを伝える間、蒼い瞳を真っ直ぐ俺に向けるウラノスお爺ちゃんだった。話し終えると老神は「そうか」と短く呟き。

 

「―――フェルズ」

 

ここ祈祷の間を照らす四炬の松明の灯りが届いていない闇の奥から黒衣の謎の人物が気配も足音もなく現れた。爪が長い金属のグローブを装着して一切の肌を隠している黒衣の者にウラノスお爺ちゃんは問いかけた。

 

「話は聞いていたな」

 

「ああ、私でよければ手解きをしよう。同じ『神秘』を有する者同士、有益な時間を過ごそうか」

 

眷族を持つことを許されない立場だと聞いていたが、太ったエルフやギルドの上層部、その以下の関係者にも知られていない協力関係の人なのかな。どちらにしろ俺とウラノスお爺ちゃんにヘファイストスしか知らないスキルを知っていて、神秘のスキルを持っているとウラノスお爺ちゃんの前で言うほどだから嘘を吐いているとは思えない。

 

「よろしくお願いします。師匠と呼ぶべきか?」

 

「・・・・・好きに呼ぶといい。私の名はフェルズ、またの名を愚かな賢者、愚者だ」

 

賢者・・・・・もしかして賢者の石とか作れたりするかな?

 

「先ほど聞かせてもらったが武器や防具に【ステイタス】を付与することができるとは本当かね」

 

「作った俺しか分からないことだけど本当だ。でも知っての通り俺の意思とは関係なく諸々付与してしまうから、ヘファイストスの許可が無いと表に出せないし下手に売ることも使わせることできないから作ってもしょうがない現状でつまらないんだ。ただのナイフや包丁にも【ステイタス】やスキル、魔法が付与しちゃってさぁ・・・・・空に飛べる魔道具も創るなと言われたし、それなら回復薬を極めようと決めたんだよ」

 

「・・・・・キミの作品を見て見たくなるな。まずは一度用意できないか?」

 

「じゃあ、家に来るか? 【ファミリア】とは別件の個人用のホームにある鍛冶の工房で一振り作るよ」

 

「では夜に訪れよう。場所を教えてほしい」

 

ということでフェルズが来れる夜になると、鐘の音が鳴り出して玄関を開けるとホラー映画にピッタリだろう闇から出てくる黒衣を着たゴーストが立っていた。

 

「ゴーストって言われたことない?」

 

「ギルド内で噂話にされているぐらい自覚はある」

 

あるのかい!!!

 

心の中で盛大にツッコミを入れる俺の気持ちなど露知らずなフェルズを招き入れ、真っ直ぐ工房へ案内した。

 

「ところで俺のスキルはウラノスお爺ちゃんから聞いた?」

 

「キミに神秘のスキルがあることぐらいしか聞かされていない。厳密に言えば『神秘希少』と『幻想』と言う未知のレアスキルそうだね」

 

「じゃあもう一つ、とんでもない物になってしまう原因も知らないな。俺には『神器』とスキルがある。効果は神の血を介して神の権能が使用可能、だ」

 

「っ!?」

 

「そう言うわけでヘファイストスの鍛冶の権能が使えて武器や防具に【ステイタス】とスキルと魔法が付与するとあり得ない現象が発生していると踏んでいる。しかも別の神の眷族になっても永続的に効果が続くどころか他の神の眷族になったらその神の権能を使える可能性が大きいかもしれない」

 

そうそれはウラノスが司る力も行使できると道理だ。同時に俺は複数の神の眷族になればその分の権能が使えるということだ。

 

「キミは・・・・・神になるつもりか」

 

「さて、神の権能が使える副作用として神の血がこの身体に流れているというなら、寿命もちょっとぐらい長くなってもおかしくないかもな」

 

炉に口から放出したドラゴンブレスで燃え上がらせた。フェルズから戸惑いの気配を感じることも気にせず、魔法ではない覇龍の方の【ドラゴン・オブ・ドラゴン】の呪文を謳い青白い天使の姿になった状態で、まだ残っている巨大すぎるリヴァイアサンの牙で二振り目の長大剣を鍛え上げることで魔剣として完成した武器は初代より強力になった。

 

「ほ、本当に【ステイタス】が付与されている。魔法もスキルも確かにある・・・・・」

 

眷族の者の【ステイタス】を暴く魔道具を使って確認するフェルズの声が震えていた。ふぅ、と一息入れてから沈黙を保つフェルズに問い掛ける。

 

「これで信じてくれたか?」

 

「信じらずにはいられない。いや、認めずにはいられない。もしやキミのスキルに『魔導』もあるのか」

 

「正解だ。魔導書じゃなくで魔導具が作れてしまうんだよな」

 

「魔導具・・・・・アルテナがこの事実を知ったら黙ってはいない。この事情を抱えているなら神ヘファイストスの気持ちもわからなくもない」

 

「だからつまらないんだよ。鍛冶師なのにこんな常識破り、革命的な武器や防具を完成させてしまうと冒険者達のパワーバランスが一気に崩壊してしまうのが目に見えるからさ」

 

確かに、と頷くフェルズもそう危惧してしまうらしい。

 

「だったら回復アイテムを作れば問題ないかなっと思って作り方を知っている師匠に乞うているわけ」

 

「理解した。であればエリクサーまで作れるように指導をしよう」

 

「お願いしまーす。あ、魔導士って武器を使ってる?」

 

「魔導士や魔術師の『魔力』を高め『魔法』の威力を変動させる『魔宝石』という魔術師のみが作れる宝石の他、杖も加工している。・・・・・もしやそれも作りたいのか」

 

「単純に興味本位からの質問だったけどその魔宝石、魔剣と相性がよさそうじゃん?」

 

「・・・・・キミが手掛けるととんでもない魔剣が誕生しそうだな。しかし、気にならないと言えば嘘になる」

 

それからしばらくして、俺のマイホームにフェルズのための巨大な隠し魔導工房が増築されて毎夜毎夜、マジックアイテムの製作に勤しんだ結果。エリクサーまでの回復薬の作り方を学び、マスターして一人で調合できるまでに至れた。

 

「師匠、体力と魔力の回復薬がそれぞれあるなら、両方を回復できるデュアル・ポーションとやら作れないかな」

 

「興味深い発想を思いつくなキミは」

 

新薬の素材になりそうなものをそれぞれ集めることにして、ふと気になったことを聞いてみると意外な事実を教えてくれたから実際に確かめにオラリオの外へ出かけ、ある物を手に入れてフェルズがダンジョン内で集めたアイテムと調合してみたところ。

 

「おおー、できた!」

 

「試作段階であるが、体力と魔力のどちらも一つの回復薬で回復できた。さらなる改良の余地もあるし高等回復薬のような回復薬を目指せるかもしれないな」

 

「じゃあ、もっと集める必要があるな。今度は冒険者に頼もう」

 

その冒険者達に依頼を直接お願いして報酬の回復薬を提示した。

 

「デュアル・ポーション、体力と魔力を同時に回復するイッセイが開発した新しいポーションか」

 

北方面にホームを構えているロキ達の『黄昏の館』に持ち込んだ新回復薬を説明するとすぐに興味を持ってくれた。

 

「付け加えると回復薬の作り方を教えてくれた魔術師の師匠と開発した。俺一人じゃ完成できなかった新薬だ」

 

「魔術師・・・レノアという魔術師か?」

 

「フェルズって名前だ。で、引き受けてくれる?」

 

無理なら無理で別の、まぁーフレイヤにこの依頼を回すだけだから問題ない俺の心情を他所にロキやガレスが蓄えた髭を擦りながら意見を述べた。

 

「儂は受けても構わんぞ。体力と魔力の回復薬を持ち運ぶ数がこれ一つで減る上に事足りるからの」

 

「確かになぁ〜。今年だけブルー・パピオンの翅を毎月一定数集めたら報酬のデュアル・ポーションが貰えるなら、回復薬を買う金も浮いて酒代に回せる美味い話やで」

 

ロキを無言で睨みつけるリヴェリアも含めフィンとガレスはこの依頼を引き受けてくれることに。

 

「じゃあ、初依頼として先に報酬を渡すな。来月からよろしくお願いする」

 

「わかった。状態のいい翅を必ず集めよう」

 

成立したその翌月、約束通り品質がいい翅を手に入れてくれてお礼に大量のデュアル・ポーションを渡した。実際使ってくれたフィン達からの感想は好評だった。

 

「ンー、来年は【ロキ・ファミリア】に来てくれたら量産してもらいたいね。彼ならエリクサーまで作れるだろうから、ロキの言うとおり物資の補充に使う資金が減るメリットがある」

 

「フェルズという魔術師は聞いたことないが、イッセイにとってプラスになる存在みたいだ」

 

「今の儂らは借金を抱えておるから無料でデュアル・ポーションを貰えたのはありがたい。魔道具のバックアップのおかげでいつもよりダンジョンに籠もれてドロップアイテムを何時もの何倍も確保できるが、早めに返済しておきたいわぃ。ついでにダンジョンから地上まで戻れる魔道具、作ってくれんかのあやつ」

 

それは是非ともそうして欲しいところなのはフィンとリヴェリアのみならず、全冒険者もそんな魔道具を欲しいまである。

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