異常過ぎるのは間違っているだろうか?   作:ダーク・シリウス

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鍛冶神と鉄の熱と求愛

カァン、カァン、カァン・・・・・ッ。

 

「ヘファイストス、俺にも専属冒険者っていた方がいいのか?」

 

「ダメに決まっているでしょ。理由は言うまでもないわ」

 

「デスヨネー」

 

カァン、カァン、カァン・・・・・!

 

「ヘファイストスってオラリオの外に出る事ってあるのか?」

 

「行くことはあるわよ。剣製都市ゾーリンガムってところに。今度連れて行ってあげましょうか」

 

「外国の都市の名前を聞くのはアルテナ以外は初めてだな。お願いするよ。・・・・・またダメだぁ」

 

完成した大量のアダマンタイトで使った剣身が柄に二つもくっついた世にも珍しいだろう見たことのないかもしれない武器を徹夜で打った。ヘファイストスに話しかけられながら世に出せない【ステイタス】が付与した武器を完成させてしまった。

 

「他の鍛冶師が作る武器を作りてぇ・・・・・」

 

「椿以外の子供達が知ったら心臓が飛び出そうな勢いで驚く武器を、素直に喜べない私も不思議な気分をさせられるわよ」

 

「・・・・・もうさ、俺の作った武器をレンタル制にしないか? 第一級冒険者限定で一日100000000ヴァリスって」

 

「法外すぎる値段、と言いたいところだけど【ステイタス】が付与されている物だから、それで下層なら一日じゃなくて十日でいいじゃない? レンタル制にするかどうか決めないといけないけど」

 

「一生誰にも使われず、人知れず暗い倉庫の中で眠り続けるのだけは避けたいぞー」

 

「それは他の鍛冶師も同じ気持ちよ」

 

主神と揃って悩みの種に溜息を吐いた【ヘファイストス・ファミリア】に入団して早一ヵ月目の昼頃。変わらず武具を作っては付与してしまっている【ステイタス】の内容を記録してヘファイストスに預かってもらってる倉庫も収まり切れなくなっている。仕舞には俺専用の保管倉庫なる物まで用意されていると知った時は頭が下がったものだ。でも、俺が悪いわけじゃないよなー? スキルの所為だもんなー?

 

「ほら、時間的に丁度昼なんだから何か食べましょう」

 

「ずっと徹夜で打ったから腹減ったのは確かなんだけど。何だかんだ、ヘファイストスと一緒にいる時間が椿より長いんじゃないか?」

 

「確かにね。事務の仕事を手伝ってもらう時はあるけどそれ以外は工房に籠ったりダンジョンにも行っているから、朝からずっとこの部屋で鍛冶をしているあなたと同じ空間にいる時間は長くなっているわね」

 

―――よかったな。椿が言う意趣返しできてるぞ

 

―――うるさい

 

工房の道具を片付け、ヘファイストスと仕事場兼店から出て西と北西の大通り、通称『冒険者通り』に闊歩するオラリオの住民達と交じって歩き出す。町の光景、只人、獣人、亜人、神と幾度と擦れ違い元の世界の国では設けられていない石畳の上を歩き、まだ暗い時間帯ではないから光っていない魔石製品の街灯、石造りや木造の建物を見回しいつ見ても異世界に来た現実を突き付けられる。

 

「まだ慣れない?」

 

「一番強いのは田舎から都市に引っ越した人間の気分だ」

 

俺の仕草にヘファイストスが気に掛けた言葉を送ってきたので素直な感想を言い返した。でも、それは生まれ故郷に戻れる人間の気持ちだからだ。が、俺の場合はその逆になるかもしれない立場に立たされている。なんてことを言うつもりはないがな。

 

「異世界なんて世界へ来てしまった当初は信じ難かったからな。でも神が下界に降りて眷族を集めているって知った時は元の世界に帰る手段か魔法があるかもしれないと絶望しなかったのが良かったよ」

 

「・・・・・元の世界に帰る方法は見つかった?」

 

「見つかってるならヘファイストスに教えてとっとと帰ってるって」

 

元の世界の時間の流れとこの世界の時間の流れが違うから、俺がこの世界で暮らしている間にも、元の世界の時間の流れは遅いようだけどそれでも止まらず進んでいる。もうどれだけ時間が流れているのかわからない不安があるのは否定できない。

 

「ま、俺が戻った時には人間の家族が全員死んでいても超常や超越者の仲間や友人、家族が生きていると思うから寂しさあれど帰ってこれた安堵感を浸れるなら何でもいいさ」

 

「そう・・・・・会えるといいわね家族と」

 

「そうなんだが、逆にこの世界に来ても不思議ではない両親であるから、ひょっこり現れたら俺は驚く自信はある」

 

「あなたが驚くほどってそこまで?」

 

「俺を産んだ両親だから、って言えば納得するか?」

 

・・・・・納得してしまったって顔を浮かべるヘファイストスに神妙な顔で見てしまった。

 

「でも、ウラノスと眷族の繋がりが切れてしまっているわよね」

 

「そのことはウラノスから聞いた。天に還ったように恩恵が途切れたって。でも俺がこの世界に来たら途切れた恩恵を感じられるって言われた」

 

俺がこの世界にいる理由は意味のある事の筈だ。それが住んだらどうなっているのか神々でもわからない未知の未来。だったら無様だろうが何だろうが、この世界で足掻いて足掻きまくって生き残ってやるまでだ。

 

「ところで、ヘファイストスがこの下界に降臨してどれくらい経つんだ?」

 

「え? そうね、もう十年以上は経っているはず。ロキやフレイヤより後にオラリオを訪れたわ」

 

「無一文なのによくオラリオに来られたな。いや、無一文でどうやって生きられるんだ?」

 

「下界に降りた神はみんな子供達がいる場所に降りては、眷族にした子供に養われるのよ」

 

さらに深く追究して訊けば下界に降りたばかりの神々の第一印象が無一文でニートだと植え付けられた。運が悪ければモンスターに襲われて天界に戻り、二度と下界に降りれなくなるらしいが。

 

「何度でも下界に降りれそうな感じなんだが?」

 

「天界で神々が決めた事なのよ。あなたの言う通り、下界には何度も降りれるけれど神が見守ると決めた子供の世界に易々と介入しないようにしていたけれどね」

 

で、天界に生きることを飽きた神々が現在絶賛介入していると。俺の世界の神々も人間界の俗世にハマって天界にあるはずがない物まで所有しているから考えることは同じなのかね。

 

「ヘファイストスって天界にいた頃には友達っていたのか?」

 

「友人までは行かずとも話し相手ならいたけれど、一人だけ神友がいたわ。ヘスティアって女神がね」

 

「へぇ、神同士にも親友の間柄がいるんだ。ヘスティアってどんな神?」

 

「年中グータラしているわ」

 

グータラ・・・・・? しかも最初に言う言葉と感想はそれ?

 

「のんびり屋ってことでいいのか?」

 

「良い言い方をすればそれでいいけれど、悪い言い方をすれば怠惰を止めない神なのよ」

 

oh・・・・・俺の中ののんびり屋のヘスティア姉さん象が崩壊していく・・・・・!

 

「でも、純粋無垢で私の右目を見て笑ったり不気味がったりしなくて、受け入れてくれたあの子が初めてだった」

 

右目の眼帯に触れ、フッと小さく笑むヘファイストス。俺は天界にいた頃のヘファイストスの事を知らないし、天界でどんなことがあったのかも知らないが心から助けられたんだなーってのは分かるな。

 

「じゃあ、もしもヘスティアがオラリオに来たら居候させて衣食住を提供するのか?」

 

「・・・・・困っていたら協力するけれど、下界に来てまで怠惰を止めないなら追い出すかもね」

 

あ、この微妙な顔と反応・・・・・泣きながら懇願されたら結局鬼になれず何度か助けてしまうパータンがありそうだなこれ。

 

「なによその顏」

 

「いや、神友に弱そうだなーって。困っていたら助けるし、もしかしたら最初は協力を拒んでも根強い説得に最後は折れそうだなーと」

 

「・・・・・」

 

微笑ましく言うと肯定も否定もしないヘファイストス。沈黙で返すということはもう放っておけない性分を自覚していると知ってからしばらく経ったある日の朝―――。朝の出勤にヘファイストスの執務室に訪れる直前、扉越しに話し声が聞こえた。

 

「主神様、俺、主神様の事が異性として好きだ。どうか俺と付き合ってほしいっ」

 

「・・・・・」

 

えええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっっっ!!?

 

こ、告白現場に落ち合ってしまったっ!? こんな経験初めてだ、どうすればいいっ? 俺の存在にはまだ気づいていない様子だから離れておくか! 善は急げと聞き耳も盗み聞きもせず速攻で降りて店内の商品を見る冒険者風によそって待つこと数分後。執務室に繋がる階段を閉ざす扉を開けて、なんだか申し訳もバツ悪そうに肩を落として外へ出る中年のドワーフを見送り、再度改めて執務室に戻れば妙な空気が漂っている中、ヘファイストスが突っ立っていた。

 

「話は終わったか?」

 

「・・・・・聞いてたの?」

 

「ヘファイストスに告白する声が聞こえて思わず下に戻って待ったわ。さすがに盗み聞きしちゃならんだろ」

 

「ふふ、意外と真摯な対応をするのね。そのまま入ってくれれば有耶無耶にできたのに」

 

「そうかい。それなら次からそうするけど・・・・・断ったんだな」

 

不思議そうに問うとヘファイストスは何とも言えない笑みを浮かべた。

 

「永遠を生きる私達にまとわりつかれたって、損をするだけよ。家庭なんてものも作れないしね」

 

「そうか? 俺は今後とも損得関係なくヘファイストスやロキ達にまとわりつかれる未来が決まっているようなものだが? 主に俺の意思関係なく複数の【ファミリア】に盥回しされる意味でなぁー?」

 

「・・・・・なんか、ごめんなさい」

 

自覚している罪悪感はここぞとばかりに刺激させてもらうからなヘファイストスゥ~~~~~ッッッ。と込めて見つめたら、話しの続きをしろと催促されたと思ったのか、彼女は口を開いた。

 

「・・・・・それに、私は女として失格なのよ」

 

卑下するわけでも自嘲するわけでもなく、ヘファイストスは淡々と言葉にし、己の右眼―――漆黒の眼帯に触れた。

 

「あなたの世界のヘファイストスもそうだと思うけれど、この下にはね、酷い顔が広がっている」

 

「・・・・・」

 

「不思議でしょ、神なのに。私も散々思ったわ。天界では他の神に倦厭されたし、笑われた」

 

彼女は顔の右半分を覆う眼帯に手を添えて、苦笑する。確かに俺の世界のヘファイストスのおじさんも右眼に怪我を負っていた。その話は神話にも書物にでも有名だ。実際幼い頃に会った俺でも痛々しいと思ったほどだ。その傷は神の力を持ってしてもどうすることもする事の出来ないって聞かされた。男神女神かかわらず、他神達には『醜顔』と嘲笑され、惨めな思いをしてきたのだと今ならわかる。

 

「ヘスティアだけはそうじゃなかった」

 

「ええ。だからこそあの子とは今でも腐れ縁であり、無二の神友なの」

 

とヘファイストスは頬を緩ませながら打ち明けてくれた。

 

「あなたの後に出て行った眷族もあの子以外の眷族達もこの目の下を見たら怯えた。怯えるぐらいならこの醜い顔を持つ神以前に女の私と付き合うのは損だと断ったのよ」

 

「・・・・・」

 

たかが傷されど傷、か。この世界の人間でもない俺が何を言っても意味はないだろうが・・・・・絶対にいるだろう、ヘファイストスを受け入れる男が。そして俺はちょっとムカついた。ヘファイストスが顔の傷で自嘲的になっているなら俺は何なんだ―――てな。だから大股で彼女を迫った。ヘファイストスの肩を右手で掴み、驚いた表情を見せる彼女と向き合った状態で、その漆黒の眼帯に左手を伸ばした。

 

「ちょ、ちょっとっ」

 

動じる声を無視し、滑らかな紅髪に触れながら、あっさりと眼帯を外す。立ち尽くすヘファイストス。始めて一緒に見る彼女の両の眼。そして視界に飛び込んでくる女神の素顔。俺より身長の低い、瞳を揺らす彼女をジッと見つめる俺は―――つまらなさそうに、ふんっ、と。盛大に鼻を鳴らしてやった。

 

「ヘファイストス。この程度で恋愛ができないと思っているのか。人間の皮を被ったモンスターの俺なんかよりまだお前の方が可愛げがある」

 

唖然とするヘファイストスの前で言い続ける。

 

「しかも拍子抜けだな。ヘファイストスに鍛えられた先輩達の(愛の想い)の熱は、こんなもんで冷めやすいのかよ。告白しておいてなんて様だ先輩達は。俺がこの世界の人間でヘファイストスの眷族で告白するなら、ヘファイストスに鍛えられた()の熱は、こんなものじゃ冷めやしないと燃え盛る情熱と熱意で言うのに」

 

断言する俺の言葉に、目を見開くヘファイストスの頬が薄っすらと染まる。おい、何でだ。

 

「・・・・・お、そうだ」

 

ヘファイストスの右眼を見ていると、ある事を思いついて俺も眼帯を外し青白い天使の姿になった。

 

「丁度いい。異世界の神の恩恵がこの世界の神にも通ずるか、試してやる」

 

「な―――」

 

二度目の動じる声を無視して俺と一緒に青白い翼に包まれたヘファイストス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――数時間後。

 

「イッセイ、調子はどう・・・・・主神様?」

 

「・・・・・何よ」

 

既に件の少年が不在であることを知らずとある武具店の執務室に顔を出した椿が、ヘファイストスの顏を見て紅い目を見開いた。なにせ、左眼に眼帯を付けている椿と対照的に右眼に付けている筈のヘファイストスの右眼に眼帯がなくなっていたのだ。初めて見る素顔を晒す女神に何度も目を瞬きを繰り返し、一体どうしたのだと追究するのに時間は掛からなかった。何故かイッセイが原因なのかと訊くと、頬を紅く染めてそっぽ向いたので悟った。

 

そしてこの頃から一誠のホームに夜だけ顔を出すようになった。ばったりロキ達と会っても凛とした態度で取るが、執務室に一誠と籠ると聞こえる鎚の音に心が温かくなり、作業をしている少年の顔を見つめると胸がドキドキして顔が紅髪と同じ紅くなった様子の女神に全て悟られている事すら気付かないまま自覚を持つようになると・・・・・。

 

「炉の炎に照らされるあなた横顔と鎚の音を見聞きする日々が好きよ」

 

無意識に呟いていた言葉に、我に返ったヘファイストスは一誠の前から逃げるよう机に戻り、今のは告白じゃないまだ告白じゃないと自分に言い聞かせて溜った書類に目を通して、あー忙しいわ、急がなきゃわねー。と言い訳染みた声を言いながら筆を動かし判を押しまくった。が、しっかり女神の声を聞こえていた一誠は彼女の眼帯を右眼につけていて、今度はある作品を作ろうと決めて今の作品の完成に精を出す。

 

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