翌朝・・・・・と言っても早朝で起きて食事を済ませると、無人の家から出てギルドに足を運んだ。まだ開いていないだろうけど、ウラノスのお爺ちゃんが用意する依頼は決まっているだろうから早めに受注したいし、一応ダンジョンのことも知りたいしな。
「やぁ、また会ったね」
「・・・・・」
中央広場に通った時、昨日の子供とエルフ、ドワーフの三人組が得物を持って噴水の縁に座っていた。
「おはよう、これからダンジョン?」
「そのつもりだよ。君は?」
「ギルドに行く。依頼を受けにな」
「いまはまだ開いてないことはわかってると思うけど、6時からギルドは開くよ」
「そうか。教えてくれてありがとう」
「わからないことがあるなら僕達に聞いてね。冒険者の先輩として教えてあげるから。そうだ、まだ名前を教えていなかったね。僕は【ロキ・ファミリ】の団長のフィン・ディムナだ」
「同じく【ロキ・ファミリア】の副団長リヴェリア・リヨス・アールヴだ」
「儂も同じ【ロキ・ファミリア】の所属しておるガレス・ランドロックじゃ」
ほうほう、ロキにフィン・ディムナにエルフのアールヴ・・・・・なんですと?
「黄金色の髪にフィン・ディムナ・・・・・もしかして、フィアナ騎士団の関係者だったりするか?」
「っ!?」
お? 碧眼が凄く見開いて吃驚した反応をするな。ビンゴか。
「君がその騎士団の名前を知っているなんて驚いた。でも僕に訊くのはなんでだい?」
「フィンの名前って光の意味だからな。ディムナの方は後にそう呼ばれるようになった程度でしか知らないけど、俺が知っている知識と似ている部分があるんだ。関係者だったら凄いなーぐらいの認識で聞いた」
「・・・・・それも含めて、ロキとこの二人以外教えた覚えはないけどね。君は強さだけでなく、何か根本的に不思議な事情があるみたいだね」
「まーな。しかしロキか・・・・・悪い神だったりする?」
「ロキが悪い神じゃと? そんなことはないぞぃ。ただまぁ、女と酒が好きなあまりにたまに迷惑を被ることもあるが」
「お前が思っているような女神ではないぞ」
・・・・・ん? 今なんと?
「女神? ロキって男じゃないのか?」
「ンー、見た目だと女神らしい特徴は乏しいけどロキは歴とした女神だよ」
「(*゜Q゜*)」
「そんな顔をするほどなのか。お前の中でロキはいったい何なんだ」
「ロキが男か・・・違和感が全くないな・・・・・」
神妙な顔で納得するガレスの横でフィンが苦笑いする。リヴェリアは呆れる顔で催促する。
「そろそろ行くぞ」
「そうだね。それじゃ一誠、また会ったらロキを紹介するよ」
「うーん、女神のロキ・・・・・想像つかないな・・・・・」
「まだ衝撃から抜けておらんのか」
白亜の巨塔バベルへ向かう三人を見送り、俺もギルドへ向かう途中でまた昨日いた冒険者と再会した。その冒険者の隣に立っている頭まで覆い隠すローブの女性。被ったフードの奥から紫色の瞳が俺に向けられることを察し目を合わせると。
「・・・・・あなた、一体何者?」
不思議なことを聞かれた。
「俺は俺だとしか言えないな」
「そう・・・・・。質問するわ。この子が言うにはオラリオで主神を探しているようね。見つけたのかしら?」
「ああ、見つかったよ。だが、俺の主神は眷族を持つことを許されない立場だったから、改宗ができる脱退をせざるを得なかった」
ギルドの方へ意味深に向ける俺の視線に彼女も釣られてギルドに振り向く。察しのいい人だったら信じられない気持ちだろうな。目の前の女性―――おそらく女神もそうであるかもしれない。
「それなら今のあなたは無所属なのね? どこかの派閥に入る気はある?」
「ないな、と言いたいところだけど【ファミリア】に入らないとダンジョン探索を許してもらえなかった。だからどこかの主神の所で改宗しなくちゃならなくなった」
硬く閉ざされていた扉が開くギルドの門。誰よりも早くギルドの中に入り、窓口にいる受付嬢・・・昨日太ったエルフを連れてきた女性に近寄った。
「あ、昨日のお方! おはようございます、お早く来てくださったのですね」
「おはよう。何か俺宛てに用意されている物とかある?」
「いえ、なにもございませんがご用件がありますでしょうか?」
「じゃあ、質問なんだが冒険者ってどうやって稼いでいるのか教えてほしい」
「それはダンジョン内で倒したモンスターが落とす魔石とドロップアイテム、他にはダンジョン内に存在するギルドが買い取りできる武器の素材、道具の素材、ポーションの素材、その他諸々の資源を集めて持ち帰って下さればあちらの換金所か、私たち受付嬢が換金したお金をお渡しするのです」
「魔石ってどういうやつ?」
「大きさは様々ですけど全て紫紺色の石です」
紫紺の石・・・・・? じゃあ、ここまで来るのに見かけたモンスターを倒して記念に集めた物が魔石だったのか。
「それってオラリオの外にいるモンスターの物でも買い取ってくれたり?」
「はい、可能ですよ」
「おお、じゃあ換金してくれる。ここに来る前に大量に手に入ったんだ。大きな箱の入れ物が大量に必要なほどだ」
「そんなにですか? あの、そのように見えないのですが・・・・・」
背負っているバックパックを見て大きな箱の入れ物が大量に必要とは思えないのだろう。無理もない、このバックパックには絡繰りがあることを知らないんだからな。
「じゃあ、いま出すよ」
「出す?」
バックパックを下ろしふたを開けた状態で逆さまに落とす。ガラララララララッッッ!!! と大瀑布の滝の如く紫紺色の大量の石がギルドのロビーを埋め尽くす勢いで広がる。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」
まだまだ出るぜーうはははー!!!
「―――はっ、ま、待ってください! 待ってー!? もう出さないでください、お願いしますぅー!!!」
それは受付嬢が悲鳴を上げながら制止するまで出し続けてみた。後に他の受付嬢や男性職員、ギルド員の総勢で放出した魔石を必要になった大量の大きな箱の入れ物に入れる作業をする羽目になった。元凶の俺も協力して作業をスムーズ無に終わらせ換金が終わるまで待った最中、太ったエルフに強制連行されてウラノスのお爺ちゃんの所に。
「一誠、大量の魔石を持ち込んだようだな。どこで集めたか説明してほしい」
「オラリオに目指す途中で山のように大きい黒い獣を倒して手に入れたんだけど」
「山のように大きい黒い獣だと・・・・・」
「ん、そう。名前は知らないけど大陸の王者って名前に似合いそうなモンスターだったな」
・・・うん? ウラノスのお爺ちゃんが蒼い瞳を大きく見張り、太ったエルフは口と目を大きく見開き間抜けな表情で時が停まったかのように固まってる? なんで?
「・・・・・一誠、そのモンスターはおそらく我々神々とオラリオの冒険者達の間で『陸の王者』ベヒーモスと呼んでいる古代から存在している強大なモンスターの一種だ」
「へぇ、そうだったんだ」
軽く相槌を打つと太ったエルフから怒濤の抗議を受ける羽目になった。
「そうだったんだ、ではないわ!? 貴様、ベヒーモスはな、この世界ひいては下界において、絶対に倒さなければならぬ三体の内の一体を、何も知らずに倒したことになるのだぞ!! 本来ならばギルドが認めた最強派閥のみしか受注できない【三大冒険者依頼】を、我々ギルドに無断で勝手に討伐しては、オラリオや冒険者の沽券に懸かることをぉぉおおおおおおおー!!!」
「知ってたなら倒していないわ! 倒せると思ったから倒したんだ! どちらにしろオラリオの冒険者がベヒーモスを倒したことには変わりないから問題ないだろ!」
「貴様の存在は隠し通さなければいけないイレギュラーなのだぞ!? そんな発表できるかぁー!!!」
「あ、何人か俺がウラノスのお爺ちゃんの元眷族って教えた。【ゼウス・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】に」
貴様ぁあああああああああああああああああああああああああああ!!! って怒声を張り叫ぶ太ったエルフ。血圧上がってるよなー?
「構わん。ゼウス達なら私達の関係性を公にはしない。寧ろお前の両親を知っている一柱でもある。もしも困ったことがあるならばゼウスを通して協力をしてもらうといい。ヘラもお前の両親を知っている」
「ヘラもなんだ。一応覚えておく。それからベヒーモス以外にどんなモンスターがいるの?」
「【海の覇王】リヴァイアサン。そして【黒竜】だ。どちらも天変地異を引き起こすほど強力なモンスターだ。一誠、お前なら倒せるか?」
「実際に戦ってみないことには何とも言えないけど、討伐してくれって言うんなら倒してみせるよ」
「わかった。ではゼウスとヘラの両派閥と共に残りの二体の討伐戦に加わってもらう」
それならまた俺が倒せるなら倒していいか、と質問したら太ったエルフにまた怒鳴られてしまった。解せん・・・・・。
祈祷の間と後にしてから換金が終わるまで軽く一時間以上も掛かった。受付嬢に呼び出しを受け魔石とドロップアイテムと引き換えに受け取ったヴァリス通貨の額は―――億超えだった。はは、あれだけ集めればこうも簡単に一気に億万長者になれるのか、なんて稼ぎやすい世界だ!
「あの、どうやってあの量の魔石を集めたのですか? 昨日初めてオラリオに来たと思うのですが」
「モンスターを倒した」
嘘は言っていない、陸の覇者の二つ名を持つ巨獣モンスターをオラリオに向かうついでに倒したんだから。ヴァリス金貨が詰まった大量の亜麻袋をバックパックに入れ続ける俺とこの光景に言わずにはいられないか、受付嬢から疑問の声が。
「どうして明らかに要領を超えてるのに・・・・・」
「気になる? これ、魔法の道具なんだよ。どれだけ入れても重さはこの鞄の重さで、容量はさっきの魔石の量の五倍以上も入れられる」
「魔法の道具でしたか。それは魔法大国アルテナの商品ですか?」
「へー、そんな国があるんだ? あとこれは自作だ」
詰め終わったヴァリスを入れたバックパックを背負い、ギルドを後にする俺を出迎える団体が待ち構えていた。何十人もいる冒険者がギルド本部を囲うように突っ立っていて、俺が外に出た瞬間に空気が張り詰めた。緊張の糸が限界まで伸ばされ、切っ掛け一つでこの場で戦闘が勃発してもおかしくない気配ですらある。そのぐらい武装して冒険者達の視線が俺一人に向けられているんだ。その影響でギルド本部周辺が野次馬が出来ていて、ギルドを利用したい冒険者達らしき人間達や大通りを歩きたい一般人達がおっかなそうに遠巻きで立ち止まっている。
「俺、警戒される事でもしたのか?」
「助けてあげましょうか?」
フードで顔を隠す女神と銅像のように佇む獣人にも視線を向けられる。まだいたんか、と思っている俺の目の前に昨日出会ったゼウスと見知らぬ老婆が現れた。
「昨日ぶりじゃなイッセイ。悪いがお主と話がある」
「派閥の勧誘はお断りだぞ。冒険者をするつもりはない」
「じゃあ何で主神を探しに来たんだい」
「俺の知らない間に神の恩恵が刻まれていたんだ。どんな主神なのか気にならない方がおかしいだろ。そんで、脱退させてもらいたかった。都合よくそれも叶ってよかったよ」
「なら、これからどうするつもりなのか教えてもらってもよいかの」
「ダンジョンで金を稼ぎながら一般人のように暮らす。そのためにウラノスからそういう許可証を得る強制任務を引き受けた。だから・・・俺の邪魔だけはするなよ」
威圧を放ち邪魔したら容赦はしないと全力で脅迫されたゼウス達は息を呑み、意識を失い倒れる数多の冒険者に仲間の冒険者達が安否確認しつつ俺への警戒の念をさらに強めた。
「お前、俺達に何かしたか」
私服姿のザルドが気絶した冒険者を横目で見ながら質問してくる。この状況で俺が原因だと察しられたのは分かり易かったか?
「覇気・・・あー、威圧と言えばいいか。それをお前らにぶつけた。気を保てない弱い奴は気絶するだけだから今日か、明日の内に目を覚ますよ」
「・・・・・逆に言えば、気を保てる奴はお前の威圧には通用しないという事か」
「正解だ。実際その証明が示されている」
気絶した冒険者よりも数が多い冒険者が意識を保って立っている。失いかけそうになっている冒険者はいなくはないがな。
「で、話って何だ?」
「話し合いに応じてくれるのじゃな? てっきり頑なに儂等と関りを拒むかと思っておったわぃ。それじゃあ話し合いの場に移行とするかの。飯は食ったか?」
「軽く食べた。まだ食べられるけど」
「それならば何か食べたいものがあるなら用意しよう。食べながら話をしてもよいじゃろ。親睦を深める意味も兼ねて」
食べたいものか。あるかなーと思いつつ言ってしまうあの大好物の食べ物。
「アップルパイって、ある?」
数十分後―――。
「おお、本当にあるんだ。ないものと思ってたのに」
誰だか知らないがたくさん買って来てくれたアップルパイ。そして俺と親睦を深めたいと言って案内した場所がゼウスが貸し切りにした店内。ゼウスと知らない女神、眷族は二人の護衛だろうザルドと昨日割り込んできた知らない男と人の翼で寝ていた灰色の髪の少女、それから知らない女性。彼等彼女等の前で話し合う前にこの世界のアップルパイの味見をした。
「・・・・・へぇ、美味しい」
「「は?」」
「「「「・・・・・」」」」
美味いと分ればショタ狐の姿になって、満面の笑みを浮かべながらアップルパイを食べる。中々どうして、近代的な技術や科学で作った調味料などこの世界にはないのに、甘い林檎の味をどうやってか引き出して噛めば表面はサクサク、中はふんわりと焼き加減が完璧に調整されているではないか。うん、文句の無い美味しさだ。
「ザルド。お前が言っていた九本の尾を持つ狐人の子供とは本当だったんだな」
「信じられないのはしょうがないことだが、俺からしてもやはり目を疑うな」
「なんなんだこいつは?」
「・・・・・」
こんな姿の俺の未知を知りたいか、ザルドが手を伸ばして狐耳や尻尾を触れてしっかり触れられる物体と認識したことでますます疑問を抱いたようで首を傾げた。それに乗じて他の三人まで触ってくる。
「あー、よいかのイッセイ」
「いいぞー」
「ますます聞きたいことが増えたが・・・まず最初にお主は今までどこにいたのか知りたい。お主の両親が健在だというなら、この世界のどこかにおるんじゃろう?」
「だから、そんなことあり得はしないんだよゼウス。千年も生きられる子供はエルフでもない限りね」
「しかしのぅヘラ。実際に嘘を言っておるように見えん。何より子共が嘘を言っているのか言ってないのか神々が見抜くのに、この子供には嘘を見抜けなかったんじゃ儂」
ほう、神々は嘘を見抜く力があるのか。俺の世界の神々にはそんなの無かったと思うけど。
「はん、どうせ沈黙したに違いないさ。クソガキ、お前の親は本当に兵藤誠と式森一香の名前の只人で間違いないんだろうね」
「嘘を吐く理由はない。間違いなくその名前だよ」
と、正直に答えると女神ヘラが眉間に皺を寄せて俺を訝しむ目つきで見る。
「同じ人間、極東の人間の子孫じゃないだろうね」
「極東ってなんだ? まぁ、質問の答えを言うなら俺は双子の弟として産まれたよ」
「・・・・・兄の名前は何だい」
「クソ兄貴の名前は誠輝だ」
「・・・・・生まれた場所の国の名前は?」
「日本」
途端に押し黙るヘラだった。ゼウスから「な? 嘘を見抜けんかったろ」と指摘を受けても俺を睨むように凝視する目つきは変わらない。
「・・・・・お前の家族はこの世界の日本という国で今も生きている、その証拠はあるか私らに納得させる術はあるかい」
「あるにはあるけれど、どうしてそこまで固執するのか気になるぞ。別に二人には関係ない事だろ」
「確かにそうなんじゃが、二人の活躍は現代でも語り継がれるほど英雄じゃったんだ。それが千年経っていても生きているというし、何なら二人の子供がこうして目の前にいるのであれば根掘り葉掘り探ってでも知りたいんじゃ」
「・・・・・納得するまで話し合いは続く?」
「少なくともオラリオにいる限り、儂等が納得するまで何度でも話を聞きたいぐらいは」
嗚呼・・・・・。面倒事厄介事は早々に終わらせた方が後々に楽だってことだよなこれ・・・・・。溜息をこぼし、残りのアップルパイは適当に寝泊まりする場所で食べようと紙袋ごと空間に開けた亜空間の中に放り込んで元の姿に戻る。
「おい、今のはなんだ? 空間に穴が開いて閉じたぞ」
「そういう魔法だよ。空間の中に収納したんだ」
「・・・・・理解できん」
「しなくていい。俺以外できないことだしこれからそれの理由を含めて色々と教える。まずは、俺達の家族は元々この世界の人間じゃないことか」
は? と異口同音の声が店主しかいない店内で漏れた。
「ゼウスとヘラは知っている? 並行世界、異世界って言葉と概念、その存在をだ」
「・・・・・言葉と概念は知っておるが、存在は把握しておらん。まさか実在しておるのか?」
「しているよ。俺が生まれ育った世界にはバベルの塔はあるにしても、その地下にはダンジョンは存在していないんだ。剣と魔法を使え、一部以外そうじゃない同姓同名の神々もいるぞ」
「それが本当なら・・・儂とヘラもいるのかの?」
「いるぞ。俺の世界のゼウスとヘラは・・・・・結婚していたり離婚していたり、ゼウスが目が見や人間の女性との間にたくさんの子供を作ってるし」
次の瞬間。ヘラが勢いよく立ち上がって椅子を倒し俺に向かって異論を唱えてきた。
「ふっざけるんじゃないよ! そんな話を信じられるはずがないじゃないかい! しかも寄りにもよってゼウスと結婚しているなんて嘘も大概にしな!」
「俺の世界の話だし、別に二人がそうであろうとそうだろうと関係ないぞ。寧ろ俺個人的にどういう関係なのか気になる程度だ。それと二人はオリュンポス十二神の一柱だろ?」
「・・・・・下界の子供達が知るはずもない立場をあっさり言われるとは、他の十人の神も言えるかの?」
「アポロン、アフロディーテ、アレス、アルテミス、デメテル、ヘファイストス、ヘルメス、ポセイドン、最後はヘスティアなんだけどディオニュソスに変わってたりする?」
「・・・・・全員間違いもせず言い当ておった。では、処女神は誰じゃ」
「ヘスティア、アルテミス、アテナ」
「大神は?」
「ゼウスとオーディン、他はアマテラスにスサノオ・・・他にもいるけど言う?」
「儂と言えば?」
「ゼウスと言えば? 動物や雲や雨や雷といった気象まで変身できて雷の武器を持っている。それと天界でゼウスとプロメテウスが原初の火を巡ったが結局下界の人類に与える形で落としてしまったことか。オリンピアにな」
スラスラと俺が知っているゼウスという神物の知識を公開すると、ゼウスが深い溜息を吐いた。
「・・・・・儂とプロメテウスの阿呆のことまで知っておるなら、イッセイが神々のこと全てを知っていると言っても過言ではないわい。寧ろ、どこまで知っておるのかと恐怖まで覚えたぞ」
「全てじゃないけどなー。全部が全部当て嵌まっているとは思ってないよ。あ、アイギスの盾ってあったりする?」
「本当にどこまで知っとるんじゃって話だわぃ!? ・・・・・じゃあ、ヘラのことも言ってみてくれんか」
興味本位かな? 別にいいけど。
「ヘラは『白い腕の女神』『牝牛の目をした女神』『黄金の御座の女神』と呼ばれているな。それからゼウスとゼウスが浮気した女神全員に控えめで言わせてもらうとお仕置きをしてた。それと処女性を取り戻すとアフロディーテにも劣らない天界で最も美しくなるだとか」
「そのゼウスと関係を持った女神の名を言いな」
「そこまで? えーとセメレー、レートー、カリストー、ラミアー、アイギーナとイーオー、エーコー、イーノーとアタマース、シーデーとゲラナ、テイレシアース」
おやどうしたゼウス。顔色が悪くて体が震えているじゃないか。
「ふん、どうやら信じてやってもいいようだね。お前が異世界の人間であることを」
「それはどーも。じゃあ、本題に戻るぞ。俺の両親はどうやってだか知らないけど、戻れた元の世界で過ごして今も生きているわけなんだが。この世界と俺が育った世界の時間の流れが違うからだと思うよ」
「なるほど・・・・・時間の流れか。それなら千年前の人間が今でも生きているという辻褄が合うな。そしてその世界からお前がこの世界に来たとなれば納得も行く。しかし、レベル9になるほどの戦いがあるのか?」
首肯する俺は説明する。
「俺の世界には神々以外にも昔存在していた英雄や勇者の末裔や子孫、魂を引き継ぐ強い人間や強力なモンスターに異種族と戦う事件がたくさんあってな。俺でも倒せない存在はかなり多くてそういう戦いも含めて知らずの内にレベル9になるまで経験値が溜まってたんだろ。というかそれしかない」
「神々と戦う世界か・・・・・」
「興味深い話だ。神の恩恵無しで異世界の人類は強くなれるのであれば、古代の英雄と匹敵する強さを秘めていることも含めてな」
神の恩恵か・・・・・。
「似て異なるけど俺の世界の人類の一部は神の恩恵を得ているぞ。それなしで強い人間は確かにいるけど」
「異世界の神の恩恵はなんじゃ?」
「神の器と書いて神器だ。特に人間と人間の血を流す異種族のハーフのみしか宿らない摩訶不思議な能力だ。その神器を扱う条件も様々で、存在を知っていても神器を一生覚醒せず生涯を終えることが殆どだ。代わりに覚醒出来たら能力次第で強くなれるけどな」
「では、昨日の金色の翼とさっきの獣人の姿もそれなのか?」
「獣人の姿は、俺の世界にいる妖狐って狐の異種族の魂を宿したことで自由に狐の耳と尻尾を生やすことができるようになっただけだ。その妖狐の魂はまだ生きている状態だから俺の力で現世に召喚できるし話も可能だ。金色の翼が神器だよ。光の攻撃と傷を癒す力が使える。さらにその力を昇華すると不治の病も治すこともできる」
倒した椅子を起こして座り直してたヘラが半信半疑な目で言ってくる。
「本当にできるのか信じ難い話だね」
「信じるかどうかは自由だよ。俺はザルドに嘘偽りなく説明しているだけだから」
「昇華か・・・・・つまり、レベル自体もさらにランクアップするという事か?」
名も知らぬ青年が俺を見ながら大変興味深いと漏らす。
「次だイッセイ。異世界の魔法はどんなことができる?」
「うーん、神器や道具で死者を甦らすこと以外? 転移、テレポート、深く戻ったダンジョンから一瞬で地上に戻ったり逆に地上からダンジョンに行くことも地上とダンジョンの空間を繋げて楽々に移動できたり、火や水、雷に風といった気象の魔法を行使できたり、他にも色々と魔法使いの数だけ色々なことができるな。ぶっちゃけ、俺も出来なくはない」
「「なん、だと・・・」」
「へぇ、本当にできるなら今後の探索が便利になるじゃないか。魔法なら、魔力を持っている人間でもできるのかしら?」
「頭の中で魔法の術式を構築しないといけないからなー。魔法使いやエルフだったら可能性あるかもな。ミスったら壁や地面に埋まるなりして即死するけど」
それからも長々と話をして小一時間も経過してしまった。全てではないが異世界のことはある程度教えた。これ以上のことは教えてもしょうがないとしてそろそろいいか。
「と―――いうわけど。もういいか? 俺は他のことをしたいんだけど」
「む、何をしたいんじゃ」
「衣食住の確保だ。それ以外何がある?」
「それだったら私達の派閥にこない? アルフィアとメーテリアの為に入って欲しいわ」
アルフィアとメーテリア? 誰のことだと首を傾げれば灰色と白髪の髪の少女のことだと教えられた。それから何のためだとも質問すれば、生まれた時から謎の不治の病を患い常日頃、激痛に苛まれながらも日常生活は送れるが長時間もの戦闘は出来ない。そして不治の病を治さない限り長くは生きられないことも。
「・・・・・なるほど」
右目の眼帯を外し、開眼した濡れ羽色の瞳も含めてその人物の情報を閲覧する鑑定の神器の力を使った。なるほど・・・・・確かに不治の病のようだな。ちょっと試してみるか。
「禁手化」
天使変化の力を解放―――さらにその力を昇華した証として神と翼、頭上の輪っかに瞳が青白く染まった姿になった俺をゼウス達が目を見開きながらも見守ってくれる。
「アルフィアだったな。少しジッとしてろ」
「・・・・・」
六対十二枚の青白い翼を動かしアルフィアを包む。それから癒しの力を使い淡い青白い光が発すること数分。解いた翼から見た目は何も変わらないアルフィアが解放され、天使変化を解きまた鑑定の神器の力を発動する。今度は彼女の状態に不治の病の詳細が消えて健康状態を表していた。
「ん、彼女の病を消せた。痛みも感じなくなっただろ」
「・・・・・アルフィア、彼が言っていることは本当?」
「・・・・・嘘は言っていない。痛みを感じなくなっている。本当に忌々しい病が治ったみたいだ【女帝】」
本人からの証言もあって一定の信用を得たようで、女帝と呼ばれた女性から感謝の言葉を言われた。