勇者を殺してください。 〜 全ステータス#N/A《エラー》の俺が、レベル999の勇者を殺せる唯一の存在だった理由 〜   作:こうタロス

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カイの村編
第2話「使命の儀」


——転生から7日目

 

 マオはソイルという男に拾われ引き取られた。

 

 ソイルは聞いている限り村の人たちから慕われており、この村のリーダー的ポジションだ。

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 

「はいはい、スイル。

お腹減ったのね!ご飯にしましょう!」

 

 この家にはソイルの妻、アクア。

 そして、その2人から生まれた子供、スイル。

 

 どうやらスイルはマオと同じ歳らしい。

 

「ただいま!腹減ったぁ〜……」

 

「あら!あなた、おかえりなさい!」

 

 ここエルド家は家族仲も良く、いわゆる順風満帆な家庭である。

 

 そして、マオの第二の故郷となったここ、カイの村。

 村の人口は数十人で、かなり小規模な村である。

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 

「おー!スイル!

お父さん帰ってきたぞぉー!」

 

 スイルの頭を撫でるソイルの表情は、幸せという言葉があまりにも似合っていた。

 スイルを愛で倒した後に、マオを見る。

 

「マオ!お父さんだぞぉー!!

そーれ!たかいたかーい!」

 

 つい1週間ほど前に拾った、血の繋がりのないマオをスイル同様、子供として扱ってくれる。

 

 男でも惚れる度量の大きさだ。

 

 転生してから1週間。

 

 微かに身体と意思が同期している感じがする。

 

 この身体じゃ、レベル上げも当分できないが、とりあえず今はこの世界の情報収集としようか……

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

———転生から7年

 

「はぁー!!せーい!!」

 

 木材同士の強くぶつかる音が鳴り響く。

 

「うぉおっ!さすがマオだな!!

俺が攻撃を受けてよろけるなんてよっぽどだぞ!」

 

「ふふん!どうだ父ちゃん!」

 

 転生してから7年。

 

 マオはこの世界で7歳となった。

 

 身体と意思は完全にリンクし、マオの意思で自由自在に動かせるようになった。

 転生前よりも動体視力は格段に上がっている。

 

 なぜか、戦闘時のみ突然パワーがみなぎる感覚がある。

 なにか、スキルのおかげなのかもしれない。

 まるで、オンボロな車から高級な外車に乗り換えた感覚である。

 

「お兄ちゃんすごーい!!」

 

「いててて……とんだ馬鹿力だなマオは!

ハッハッハ!今年の"使命の儀"が楽しみだな!」

 

 この世界では7歳になると、"使命の儀"という儀式を受ける義務があり、そこで自身の役職、パラメータなどを確認できる。

 人生においての"使命"を見つけることから"使命の儀"と名付けられているらしい。

 

「あぁ!パパ!ケガしてるよ!!

私が治してあげる!

【天より降りる聖光よ、苦痛を祓い傷を癒したまえ……ヒール】!!」

 

 スイルもマオと同じ7歳となった。

 

 スイルは魔法使いの素質があるのか、回復魔法を使えるようになっていた。

 

 まぁ……まだ、かすり傷を治す程度だがな。

 

「おーい!スイル、俺にもヒールしてくれよ」

 

「もぉー仕方ないなぁー!

【天より降りる聖光よ、苦痛を祓い傷を癒したまえ……ヒール】!」

 

ドクンッ!

 

 内側から心臓を掴まれたような痛みを感じる。

 

「……ッグ……ッテェー!!

また、詠唱ミスかよ?」

 

 スイルは、俺に回復魔法をかけるたびに失敗する。

 

 まぁ、まだ7歳だもんな。

 

「え、ごめん、お兄ちゃん!

ちゃんと詠唱できたと思ったのにな……」

 

「よしっ!今日の特訓終了!

腹減ったし飯にするか!」

 

 この村には、時計という文明の利器はない。

 朝昼晩は、なんとなくだが存在している。

 

 お腹が空けばご飯を食べ、眠くなれば寝る。

 人間らしい暮らしと言えば、そうなのかもしれない。

 

「はーい!」

 

 転生から7年。

 家族仲は相も変わらず良い。

 これが、理想の家族てやつなのかもしれない。

 

「パパ!肩車!!」

 

「おっ!いいぞ!よいしょっと!」

 

 スイルは甘えん坊だ。

 年齢は同じだが、性格的にマオがお兄ちゃんということになってる。

 

「お兄ちゃんは乗らないのー?」

 

「俺はいい……2人も担ぐのは父ちゃんがしんどいでしょ」

 

「お前は優しいな!マオ!

でも、父ちゃんな……めっちゃ力持ちなんだぞ!

さっ!マオも来い!」

 

「ちょ、ちょっと!父ちゃん!」

 

「ハッハッハー!どうだ!父ちゃんすげぇーだろ!」

 

 相変わらず父ちゃんは力持ちだ。

 

 自慢の父ちゃん。

 

 血は繋がってないけど本当の家族って思う。

 

 ずっとこんな幸せが続けばいいなぁ……

 そんな思いにふけるマオは、もう異世界に染まっていた。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

———3ヶ月後

 

「パパ起きて!早く起きてよ!」

 

 スイルの声が家中に響き渡る。

 

「な、なんだよスイル……こんな朝っぱらから……」

 

 父ちゃんが目を擦りながら上体を起こす。

 マオもスイルの声で目が覚めた。

 

「今日!"使命の儀"!今日だよ!!」

 

「な、そうだ!やべぇ!」

 

「もぅー、パパったらぁ!」

 

 今日は"使命の儀"。

 

 パラメータや能力値が今日公開なんだが、転生する時、狭間で見た能力値は確か#N/A(エラー)だったよな。

 

 スキルは……なんだっけか?

 

 7年も前のことだ、あまり覚えていない。

 

 毎日、父ちゃんと訓練をしてきたんだ。

 そこで感じた、父ちゃんに負けず劣らずのパワー。

 パワーの能力値は優秀なはずだ。

 

 数分で身支度を済ませ、スイルと父ちゃんと共に村唯一の教会に向かった。

 

———徒歩約20分。

 

 無事に教会に到着した俺たち。

 

 貧乏な村のせいか、教会はオンボロで今にも崩れそうなところがいくつもある。

ソイルを見つけるなり司祭は、笑みを浮かべすり寄る。

 

「ソ、ソイル様!お待ちしておりましたぞ!」

 

「ソイル"様"はやめてくれよ!ソイルでいいよ!

堅っ苦しい……」

 

「いやいや、それはできません!なんて言ったってソイル様は……」

 

「まぁまぁ……その話は……」

 

「勇者様とご一緒に……」

 

「やめろって!その話はしなくていい……」

 

 ソイルは司祭を怒鳴り睨みつける。

 

 そこには普段の余裕はなく、心臓がすくむほどの覇気を纏っていた。

 

 勇者と一緒に……。

 

 父ちゃんは勇者と何か関係があるのか?

 それより、父ちゃんのこんな顔見たことない。

 

「す、すみません。ソイル"さん"、えへへへ」

 

 司祭はソイルの覇気に怯えつつも、平然を保つかのように笑いを浮かべる。

 

 なんか、気まずい……。

 

 この空気感苦手なんだよな。

 よし、ここは大人な俺の出番だな。

 

「と、とりあえず"使命の儀"をしよう……?」

 

「あ、あぁ、そうだな!

空気を悪くしてすまなかった。

なぁ、司祭、スイルとマオの"使命の儀"を始めてくれ!」

 

「わ、分かりました!

それでは1人ずつ行います。どちらが先に行いますかな?」

 

「はいはいはーい!スイルから行くー!」

 

「かしこまりました。スイルちゃん!

それではこちらに……」

 

 スイルの"使命の儀"が始まる。

 

 転生の中間地点"狭間"で見た大きな石板が現れ、スイルの前で浮いている。

 

 スイルは、おそらく魔法使い系のスキルだろう。

 まぁ、初級回復魔法のヒールですら失敗するのだ。

 そこまで才能があるわけではない気がするが——

 

 数秒後、石板が光り刻まれる。

 

――――――――――

Lv.1

 

名前:スイル・エルド

種族:人族

 

HP:D

MP:S

 

筋力(STR):G

耐久(VIT):F

敏捷(AGI):D

器用(DEX):B

知力(INT):S

運(LUK):B

 

スキル:白魔法

異名:

 

使命:伝説の魔法使い

――――――――――

 

「うわぁー!なにこれ!すごーい!」

 

「ま、まじかよ……」

 

———

【あとがき】

 

本作を手に取っていただき、本当にありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら、⭐︎やフォロー、感想をいただけるととても励みになります。これからも物語を大切に紡いでいきます。

応援よろしくお願いいたします。

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