数時間後。
リ・エスティーゼ王国倉庫街はゲヘナの炎に包まれた。
そしてその奥で、ヤルダバオトこと
パンドラの傍にはイビルアイとナーベラルが。
その先端には果実のように人の頭部が付いている。三つの頭が付いている。
と言っても最大階位は種族レベルに依存し、
「ヤルダバオト。お前は何故王都を襲った?」
パンドラが問いかけた。
その問いに対し
「この都市に大量の悪魔を召喚できるアイテムがあると聞いてな。そのようなアイテム、人の手では余るだろう? 故、我の物にしてやろうと思ってな」
「傲慢だな……それを使ってこの人の世界を悪魔で埋め尽くすつもりか」
「そうだとも。退屈な世界が少しは明るくなるだろう?」
「物理的に、な……聞きたい事は聞けた。行くぞ、ヤルダバオト!」
「こいっモモン!」
パンドラが駆け出し
パンドラと
「では私も御方の為に戦うとしようか──
頭の一つが召喚魔法を唱えた。
召喚されるのは
荒れ狂う炎が人型の女性の形をしている。骨格は溶岩の様な物で出来ている。
「高位の精霊か……!」
精霊系モンスターは属する属性攻撃を無効化、あるいは吸収し魔法効果のない攻撃に対し無敵属性を持つ強敵だ。
「さぁ行くぞヒューマン。精々抗って見せろ──
イビルアイとナーベラルは
「ならば私も飛ぼう。
空中で魔法合戦だ。精霊が盾役となりナーベラルとイビルアイの魔法を受け止める。
イビルアイもナーベラルも負けじと高位の魔法──それこそナーベラルも第五位階までの攻撃魔法を唱えていく。
ある程度英雄の仲間なのだから高位の魔法を使えないと駄目だろう、と今のナーベ状態でも第五位階の魔法までは行使を許可されているのだ。
炎の波。雷の龍などの魔法が
殺す事こそ禁止されているが瀕死に追い込んだり手足の一、二本奪うぐらいは許可されているのだ。
悪魔らしい嗜虐趣味に興じようと暴れているのである。
だが──遠くから聞こえる轟音が両者の動きを止めた。
イビルアイがその音の方を見た。
そこでは空中でパンドラと
周囲の建物をぶち壊し、瓦礫を舞い散らしながらの戦闘だ。
周辺被害だけで王国の復興費はとんでもなく高くなるだろう。
「なんという……!」
モモン様の強さはあれほどなのか、と戦慄し、イビルアイはならば自分も出来る事を全力でせねば、と気合を入れ直した。
■
「ふむ……これが高レベルの戦いか」
アインズは一人、ナザリックの自室で
DMMOの戦闘経験が一切なく、戦いなどそれこそ漫画やゲームの世界で、ゲームで戦うと言っても自分では戦わず画面の中のキャラクターを操作してでしか戦ってこなかったアインズの中の人にとって見ればリアルな戦いは心おどるものがある。
今のところはクレマンティーヌだと相手にならなくなってきたので創造や召喚したアンデッド相手に戦闘訓練を積んでいるが、レベル百相手だとまともな戦いにはならないだろう。それだけの差がまだある。
薄々アルベドやデミウルゴスあたりには記憶喪失に感づかれているが、まだ致命的な失敗ではないとアインズは考えている。
「私も精進しなければな……」
そうして戦いは佳境に入った。
苦戦し、傷ついたイビルアイとナーベラルの近くに傷ついた
「まったく……! 人間だからと侮ってはいけなかった! 英雄モモンよ!」
そう
遅れてパンドラも着地してくる。
「それで、まだやるか?」
そう言いながらパンドラは剣を向けた。
「いいや。ここは退こう……これ以上やりすぎて真なる目的を見失う訳にはいかない……故退かせてもらうぞ」
「それを許すとでも?」
「許すさ──この王都を包囲できるよう悪魔の群れを待機させている。この意味が解らぬ愚者ではあるまい?」
イビルアイが歯ぎしりした。
「王都を人質に……!」
「そうだ。故、退かせてもらうぞ。来い、
瀕死まで追い詰められていた
「実に残念だ。目的を達することも出来ないとは──」
そうして
「……モモン様! 我々の勝利です!」
そうイビルアイがはしゃぎ抱き着こうとする。
パンドラは英雄として恥ずかしがりながらそれを受け入れる。
そこに続々と人間たちが来る。
ガゼフ・ストロノーフ。蘇った蒼の薔薇メンバーなどだ。
「モモン様、勝鬨を!」
「あぁ……そうだな──我々の勝利だ!」
「ウォォォォォ!!!」
「こうして、悪い悪魔は退治されました、とさ」