「うーむ。上手くいくかな……」
アインズはエ・ランテルで執務をしながら若干の不安に襲われていた。
今回パンドラを起用したのは実験的な意味合いがある。
アインズのフットワークの軽さによって良くも悪くもナザリックは変わっていくが、今回動かない事で上手くいくかいかないかが決まる。
冷静に考えれば一国の王がわざわざ国交のない国に行くなんてことありえないのでパンドラを使ったが。
それに真の冒険者を募る癖に冒険者を使わないというのも問題だ、とモモンを行かせたのだ。
「上手くいってるといいがな……」
■
「ここだ! ここに見覚えがある!」
アゼルリシア山脈を進む事数日。
モモン一行はゼンベルの記憶を頼りにドワーフの国の入り口を見つけた。
「だが妙だな。見張りの姿がねぇ。前は二人ぐらい立ってたんだが……」
入口は一見するとただの洞窟の入り口にしか見えなかった。
「ふむ……アウラ。見てきて貰っていいか?」
「いいよー。ざっと見てくるね」
そう言ってアウラはダッシュで洞窟内を進んで行った。
常人では視認できぬ超スピードであった。
「さて、ドワーフの国で何があったのか……ゼンベル。心当たりはあるか?」
パンドラが問いかける。
「んー……しいて言うなら、確か亜人種と戦争してたはずですぜ。それと負けて都市を放棄した、とかですかね」
「亜人種との戦争? その相手の詳細は?」
「すんません、詳しくは知らないっす」
「そうか……最悪ドワーフの国が滅んでる可能性もあるな」
そうして話しているとアウラが戻って来た。
「ただいまー。ドワーフの都市は見つけたけど、人っ子一人居なかったよ。ただ都市の奥の方で坑道を掘るような音聞こえたから、何かしら居るみたい。どうする?」
「なら、俺とアウラで会いに行こう。他の者は都市内で待機だ」
「おっけー、じゃあいこ」
そしてアウラとパンドラが走る事でドワーフの都市──フェオ・ライゾを通り、奥の行動に進む。
「あれがドワーフか。ユグドラシルと変わりはないな」
その坑道で一人採掘作業をしているドワーフが居た。
身長は百四十センチほど。樽みたいな体形をしている。髭は長い。
ずんぐりむっくりな体形をしている男のドワーフだ。
「こんにちはー、何をしているのかな?」
アウラがそのドワーフ──ゴンドに声をかけるとゴンドはびっくり仰天しマントを被った。
「ん、不可視化かー」
不可視化の魔法効果が着いたマントらしいが、パンドラにもアウラにも普通に看破されている。
「お、お主はダークエルフか? そちらの鎧も?」
ゴンドが不可視化状態で問いかけた。
「いや。私は違う。人間だよ。私はモモンというのだが、君の名は?」
「わ、儂はゴンド・ファイアビアドじゃ……不可視化を看破されているのなら意味はないな」
そう言ってゴンドはマントを外した。
「初めまして。アインズ・ウール・ゴウン魔導国から来たアウラ・ベラ・フィオーラです」
「同じく魔導国のアダマンタイト級冒険者、モモンだ」
「魔導国? 寡聞にして存せぬが……儂はゴンド・ファイアビアド。ルーン開発家じゃ」
ゴンドはズボンで手の汚れをぬぐうとアウラとパンドラに対し握手をした。
「それで、おぬしらはここに何の用じゃ? ここは放棄された都市じゃが……」
「そうなの? うちの国民がかつてドワーフの都市に世話になったって聞いて、気になって来たんだ。ゼンベルっていう
「
「知ってるんだ……放棄されたって、何かあったの?」
「うむ。クアゴアが出るようになってな。念のため都市を放棄し、東のフェオ・ジュラに国民は移動したんじゃ」
「ほう。クアゴア。それはどのような者で?」
パンドラが好奇心に駆られ問いかけた。
「うむ。背丈は儂らと同程度。モグラが二足歩行してるような感じで、毛皮は主に茶色いがたまに赤や青い奴が居る。そういうのは幼少期に貴重な鉱石を食った特徴でな。毛皮が金属鎧並みに硬いんじゃ。暗闇を見通す目を持つが、逆に太陽の元だと盲目になるという」
「ほぉ……非常に気になるが──何故そんなクアゴアが出るという都市に一人ここに?」
その問いかけにゴンドは苦い顔をした。
「……長い話になる。歩きながら話そう」
そう言って三人は都市の方へ向かって行った。
「儂はルーン開発家を名乗っているが……その実、開発は難航している。ルーンはかつてドワーフ唯一の魔化手法だった。じゃが二百年前、外から
「……新技術によって伝統芸能が廃れた、と」
「そうじゃ。じゃがルーンにもいいところはある。何せ金がかからん。
(……まるで未来を見通しているかのような発言ですね。我が創造主は──今は置いておきましょうか)
パンドラはそう考え、ルーンを魔導国に引き入れるべく話術を行使する。
「であれば、魔導国に来るというのはどうだ? 魔導国ならルーンの技術研究開発に惜しみなく予算をつぎ込もう」
その言葉にゴンドは驚いた表情を浮かべた。
「なんじゃと? ──なんでそんなことをする?」
「我が国の王、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下は新技術に目がなくてね。未知なる技術に対し未来を見据えている。新技術の発展には予算は惜しまないのさ……どうだ、ゴンド。魔導国に来る気はないか?」
「……確かにありがたい申し出じゃが、此方が差し出せる物などないぞ」
「悪魔の取引じゃないんだ、対価はそれこそ新技術を魔導国で独占する、ぐらいの物でいいさ──さぁ、どうするゴンド。魔導国の手を取るか?」
「……冒険者にそこまでの権限があるのか?」
「あるとも。私は魔導国に所属する冒険者であり、ある程度権限を与えられている最高位冒険者だからな。スカウトぐらいは許されるさ」
「そうか……」
パンドラの言葉にゴンドは目をつむり、何か考える素振りを見せ──覚悟を決めた顔をした。
「儂は魔導国に移ろう。そこで新技術を作って見せる!」
「そのいきだ、ゴンド。それなら他のルーン工房もスカウトせねばな。一人だと出来る事に限りがある──すべてのルーン工房をゴンドの下に着け、技術開発をさせよう」
その言葉にゴンドは驚いた表情を見せた。
「いいのか? そこまでして。結構なことを決めているが……」
「問題ない。スカウトも冒険者の仕事なのでね。ルーン工房たちは魔導国に来るかな?」
「……燻っているが、駄目な奴らじゃない。眼ざしい物があれば、必ずや来る──儂も呼びかけようとも!」
「よし。ならまずは、今のドワーフの首都に行かなければな」
■
坑道を出た三人が待ち合わせ場所に行くとナーベラルがパンドラに話しかけた。
「モモンさん。亜人種と思わしき者がこの都市に侵入してきました。今はハムスケに偵察させています」
「亜人種? それはモグラの様な者か?」
「はい。モモンさんはそれらについて知っているのですか?」
「あぁ。今ちょうどゴンドから聞いたところだ」
「そちらのカナブンからですか」
「ナーベ……はぁ。取りあえずそいつらを捕縛するとするか。多少は減らしても問題ないだろう。ゴンドはここでアウラと待っていてくれ。万が一があっては困るからな」
「わかった。大人しく待って居よう」
「では、行ってくる」
そしてパンドラとナーベラルが走り出す。
すぐにクアゴアたちを見つける。
「ナーベ」
「はっ──
放たれた雷球がクアゴアの集団の真ん中に命中し、クアゴアたちを雷撃で殺した。
「なんだ?!」
「敵襲だ!」
「ドワーフ共じゃないぞ?!」
クアゴアたちは一瞬混乱するも、指揮官の声で冷静になる。
「落ち着け! 敵は少数、数でかかれば勝てる!」
「それはどうかな──」
パンドラはモモンズ・グレートソードを抜いた。
二刀流でクアゴアの群れに切り込む。
クアゴアが綺麗に両断されていく。
いかにクアゴアが金属武器に対し耐性を持っていると言ってもアインズの
バッタバッタとなぎ倒していく。
(この程度か)
そうパンドラは判断する。
「ナーベ。捕獲を」
「はい──
減ったクアゴアたちはたった一度の魔法で拘束するには充分だった。
しかし奥の建物から追加のクアゴアが出てくる。
だが再度唱えた拘束魔法で捕らえられるのだった。
ハムスケの案内の元アウラとゴンド、フェンがやって来た。
「さて、これで充分か……リーダーは誰だ?」
拘束された状態でもクアゴアは強気だ。
「ふん! お前の様な者に言う訳ないだろう!」
「そうか──ナーベ」
「はい。
唱えたのは魅了系の魔法だ。
それによりナーベとクアゴアの関係が親友まで上がる。
「そこの青色の毛の者がリーダーだ」
その答えにクアゴアたちに動揺が広がる。
「では、
そしてナーベラルがリーダーに魅了魔法を唱えた。
「よし。お前たちは何用でこの放棄された都市に来たんだ?」
「俺たちは別動隊なんだ。これからドワーフの都市を攻め落とすんだが、逃げ出したドワーフを背後から強襲するのが俺たちの役目だ」
「な、なんじゃと?!」
その台詞にゴンドが驚愕の声を上げた。
「そうだ。大裂け目を避けれる道が見つかったんだよ。お前たちドワーフはこれで終わりだ!」
ハハハッ! とクアゴアは笑った。
「なるほどな──すぐにでも行動しないと不味そうだ。ゴンド。ドワーフの都市まで案内できるか?」
「出来はするが、ここからだとどうやっても四日はかかる……それだけかかると……」
「……では地上を通るのはどうだ?」
「地上か……方角はわかるし、外の出入り口もある。何とか案内してみよう」
「それじゃあ、ゴンド。ちょっとアウラと向こうに行っていてくれ」
「? わかった」
そしてゴンドが離れるとパンドラは
「それじゃあ、ナザリック送りだ」
クアゴアはナザリックに送られた。