えっ凡人がアインズ様に憑依?!   作:Revak

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第21話

 

 翌日。

 パンドラ、ナーベラル、アウラの三人がドワーフの王都フェオ・ベルカナに向けて出発する事になった。

 ハムスケとフェンは置いて行く。クアゴアの襲撃が再度あった際の為の防衛戦力だ。

 ハムスケ一人でもいいかもしれないが、探知系が二人居てもいいだろうとのことでの配置だ。

 

 そしてパンドラは出立前に王都への案内人という事でゴンドと会っていた。

 

「ゴンド、君が来るのか? この旅は危険だぞ」

 

 パンドラがそう尋ねる。

 

「危険は承知じゃ。じゃが道案内は任せろ。街の老人たちから道について聞いて来たからの。道案内は任せてくれ!」

 

 そうゴンドは胸を張った。

 そしてこそっとパンドラに近づく。

 

「王都にはルーンの技術書があるはずじゃ。それをこっそり回収したい。この国に残しても死蔵されるだけじゃろ?」

「……それならこちらで回収し、正式に買取をしようか」

「うむ。頼むぞ」

 

「それじゃあ、出発しようか」

 

 そして一行は進む出した。

 

 大扉を開ける。

 その先は死体の山だった。

 死臭が酷く、血の匂いが強い。

 

「ハムスケはずいぶん頑張ったようだな」

 

 パンドラがそう苦笑した。

 

「徒歩で行くには問題があるな。ナーベ」

「はい。<全体飛行>(マス・フライ)」

 

 全体にかける飛行魔法によって死体の海を越えていく。

 

「王都に行くには三つの難所を超える必要がある。そのうちの一つが大裂け目なんじゃが……まぁ、これは空を飛べば簡単に超えられるの」

 

 そうゴンドは頬をかいた。

 

 そして一行は橋の向こう側に着いた。

 

「それじゃあ、ここからはゴンド。頼んだぞ」

「うむ。任せてくれ!」

 

 

 

 

 

 ドワーフの王都フェオ・ベルカナに向かうには三つの難所を超える必要がある。

 最初は大裂け目で、二つ目は溶岩地帯だ。

 本来アゼルリシア山脈は溶岩があるような山脈ではないが、これは天然の<転移門>(ゲート)に似た効果を持つ物によって遠くの山から溶岩が流れ込んできてるのが原因だ。

 といってもこれも難所ではあるが、空を飛べば簡単に超えられる。

 

 ナーベラルの<全体飛行>(マス・フライ)で簡単に超えた。

 

 

 そして最後。三つ目の難所だ。

 

「ここは強敵じゃぞ。何せ<飛行>(フライ)が効かん。ガスの吹き溜まりによる即死トラップやガス爆発など、天然の罠がそこかしこにある。更に蟻の巣のように入り組んでる死の迷宮じゃ」

「これは超えるのは難しそうだな」

 

 そうパンドラは判断する。

 ならば、とパンドラはマジックアイテムを取り出した。

 小さな妖精のフィギュアの様な物だ。

 

「これは一日三度まで<妖精女王の祝福>(ブレス・オブ・ティターニア)を使えるマジックアイテムだ。起動」

 

 瞬間王冠を被った小指サイズの小さな妖精が現れた。

 

「この妖精について行けば、安全な道を教えてくれる。さぁ行こう」

「……難所、のはずなんじゃがな」

 

 ゴンドは若干納得できぬと首をかしげていた。

 

 

 

 

 そうして死の迷宮を超え少し歩いていると向こう側から足音がした。

 二足。だが非常に重い。二メートルは超えるサイズの持ち主か相当の体重の持ち主だろう。

 

 パンドラがグレートソードを抜き、構える。

 ゴンドはアウラの後ろに隠された。後衛にナーベラルが居る。

 

「ど、ドラゴンじゃ!」

 

 ゴンドの悲鳴のような叫びはあっている。

 向こう側から出て来たのはまさしくドラゴン、竜だ。

 四足の身体。体は細くどこか蛇の様なしなやかさを感じさせる。

 鱗は薄い青色で美しい。背中には蝙蝠にも似たドラゴンの翼を持っている。

 これが基本的な霜の竜(フロスト・ドラゴン)の特徴だが、一点このドラゴン──ヘジンマールは違う点があった。

 

 全体的に太い。そして腹が出ている。

 

(デブゴン?)

 

 パンドラは一瞬そんなくだらないことを考えた。

 

 ヘジンマールが口を開いた。

 

「わ、私はこの先にある都市に住んでいる霜の竜(フロスト・ドラゴン)だ。お……あなた達は何用でここまで来た?」

 

 その問いかけにパンドラはこいつは賢そうだ、と上方修正した。

 

「私はモモン。ドワーフの王国から王都奪還の依頼を受けた冒険者だ。君たち霜の竜(フロスト・ドラゴン)が不当に王都を占拠しているのならば、倒す立場にある」

 

 そうパンドラはグレートソードを構えた。

 

「そ、そうですか……私は王都を塒にしている霜の竜(フロスト・ドラゴン)の王の息子の一人、ヘジンマールと言う……のだが」

 

 ヘジンマールは少し悩んでいる素振りを見せた。

 

(推定人間の戦士と魔法詠唱者(マジック・キャスター)。そしてダークエルフにドワーフ……ドワーフは弱いか? いやこれだけのパーティだ。あのドワーフも何か隠し種があっても可笑しくない。ならば……撤退? いや、あんな高価そうな武具を装備している冒険者相手に撤退は不味い。逃げ切れる保証がない! ならば──! 

 

 そこまで考え、ヘジンマールは土下座を完工した。

 

「……それはなんだ?」

 

 パンドラは察しつつ問いかけた。

 

「はい! これは平服のポーズでございます! 貴方様の強さに惹かれまして、貴方様の従魔にしていただきたく!」

「……既にハムスケという騎乗魔獣が居るんだが……そうだな」

 

 ふーむ、とパンドラは考える。

 

(ここでドラゴンを鹵獲し、魔導国に役立てる……というのもありですね。ただ他のドラゴンたちがどう出てくるかは……まぁ、最初は敵対でしょうが頭を潰せば大人しくなるでしょう)

 

 そうパンドラは判断した。

 

「なるほど。ならば私ではなく、私が所属する国──魔導国の国民となってもらうのはどうだ?」

「魔導国、ですか? それはどのような国で?」

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王という、死の支配者(オーバーロード)……アンデッドが支配する国だ。と言っても死者の国ではなく、生者も普通に暮らしている。なかなか繁栄している国だぞ」

 

 そうパンドラは苦笑する演技と共に言った。

 アンデッド、という言葉にヘジンマールとゴンドが固まった。

 

 アンデッドが支配する国とは聞いていなかったのだ。

 

「さ、左様ですか……アンデッドにされる、という事は……」

「お前が望めばそうなるかもしれんが、生者をわざわざアンデッドに変える利益もないからしないぞ。安心すると言い」

「そ、それならば……私は魔導国に着きます」

「いいだろう。これからは魔導国の為に働け……それじゃあ、王都の塒まで案内してもらおうか。ナーベ。クアゴアたちはお前とアウラに任せる。そうだな……降伏勧告をして、従うようなら魔導国に引き入れ、逆らうようなら皆殺し──ん、少し待て」

 

 <伝言>(メッセージ)がパンドラに来た。

 

『パンドラ。今ちょっといいか?』

 

 メッセージの主はアインズだ。

 アインズはそういや放置するとクアゴア殲滅されそうだな、と謎の親切心で支配下に置くべくメッセージを送ったのだ。

 

「何の用だ? 時間は今あるが……」

 

 ゴンドとヘジンマールの手前、モモンロールを崩す訳にはいかないのでモモンとしてメッセージに対応する。

 

『ナザリックに送られたクアゴアという連中がいるだろう? あれを魔導国の臣民にしたくてな。完全に逆らってくるようなら要らんが、ある程度話をして従うようなら魔導国に引き入れて欲しい』

「わかった。ではそのように動くとしよう」

『では頼んだ』

 

 そしてメッセージが切れた。

 

「予定変更だ。魔導王からの指示でクアゴアは配下にするとの事。そうだな……霜の竜(フロスト・ドラゴン)の対処中に来られてはたまらんから、ナーベとアウラがクアゴアの元に行ってくれ。のちの判断は私がするから、足止めと降伏勧告だけでいい」

「わかりました」

「おっけー」

 

「さて、それじゃあ竜の王に会ってみようじゃないか」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 ドワーフの王城内をパンドラはヘジンマールに騎乗しながら進む。

 隣にはゴンドも乗っている。

 

「この先が私の父と妃たちがいる部屋になります」

 

 ヘジンマールがそう言い、パンドラは念のため警戒を強めた。

 

「妃という事は、おぬしの母親もいるのか?」

 

 ゴンドが問いかけた。

 

「はい。そうです」

「そうか……なぁ、モモン。出来ればヘジンマールの母親ぐらいは助けてやってはくれんか?」

「いいぞ。全員従うなら殺す必要もないからな」

 

 そうパンドラは返事をした。

 

 そして扉を開く。

 そこには霜の竜(フロスト・ドラゴン)の王。オラサーダルク・ヘイリリアルと三人の妃が居た。

 

「私の上に居るのは私が所属する魔導国の冒険者、モモン様! これより霜の竜(フロスト・ドラゴン)を支配する者である!」

 

 ヘジンマールがそう叫ぶとオラサーダルクは眉を潜めた。

 

「狂ったか小僧!」

 

 ひぇ、とヘジンマールは小さな悲鳴を漏らした。

 

「……ん。だが待て。その上の鎧、結構なマジックアイテムじゃないか。そうだな。それを献上するというのなら見逃してやってもいいぞ」

 

 そうオラサーダルクは笑いながら言った。

 

 パンドラはヘジンマールから降りて、グレートソードを構えた。

 

「霜の竜(フロスト・ドラゴン)の王よ。私はモモン。魔導国に従うというのならばいいが、従わぬならば──この剣がお前を斬り裂くだろう」

「ほざけ人間風情が! ならばお前を殺し、そのアイテムを奪ってやる!」

 

 そうオラサーダルクが叫んだ。

 

「では──<完璧なる戦士>(パーフェクト・ウォーリァー))

 

 レベル百戦士と同程度になったパンドラが高速移動。そのままオラサーダルクの首を跳ね飛ばした。

 

 神業。一瞬の出来事。瞬く間もないとはまさにこのことであった。

 

「さて、逆らう者は?」

 

「いません!」

「私たちは従います!」

 

 そう言って三人の妃は平服のポーズを取った。

 

「よし。従うというのなら殺しはしない。だが魔導国の役に立ってもらうぞ……お前たちはこの城の霜の竜(フロスト・ドラゴン)をここに集めろ。ヘジンマールは書籍に関してめぼしい物を集めて持ってくるんだ」

「畏まりました!」

 

 そう言ってヘジンマールと妃たちは部屋を出て行った。

 

 この部屋は丁度宝物庫の扉がある部屋だ。

 この扉は飛び切り頑丈でオラサーダルクでも傷をつけられなかった程だ。

 

 そして当然、パンドラはそれに対し対策を用意している。

 

「ハンゾウ」

「はっ」

 

 パンドラの影からにゅっと忍者型のモンスターが出て来た。

 ハンゾウはアインズから貸し出されたモンスターだ。

 忍者系のクラス構成をしている為、鍵開けも可能である。

 

 ハンゾウが幾つか特殊技術(スキル)を使う事で宝物庫の鍵が開いた。

 そこには金貨の山があった。

 ナザリック程ではないが、金銀財宝の山である。

 

「この中にあるはずじゃ!」

 

 ゴンドは財宝の山には目もくれず技術書を探し始めた。

 

 パンドラも幾つか調べる。こっそり鑑定系の魔法を行使し幾つかくすねた。

 

「あったぞ! これじゃ!」

 

 そうゴンドが金貨の山から顔を出した。

 

「よし。これで更にルーンの研鑽が出来る!」

 

 そうゴンドは歓喜するのだった。

 

 宝物庫から出て、少し待つとヘジンマールが戻って来た。

 

「よし。これは一部以外はドワーフの王国に返すか」

 

 そうパンドラは判断する。

 

 そしてアイテムボックスに収納すると、ちょうど他のドラゴンたちもやって来た。

 

 霜の竜(フロスト・ドラゴン)たちは平服するも、一匹不満を露にしている者がいた。

 

「納得がいかん! 何故人間なんぞに従わなければならない!」

 

 そう叫ぶのはオラサーダルクの子の一人、トランジェリットだ。

 

「辞めなさい!」

 

 妃の一人がそう叫ぶ。

 だがパンドラはグレートソードを抜き──まさしく神速でトランジェリットの首を跳ね飛ばした。

 

(ドラゴン素材二つ目ゲットだな)

 

「さて、他に逆らう者は?」

 

 パンドラがそういうも、全員平伏したままだった。

 

「さて、後は外のクアゴアたちだな」

 

 そう言ってパンドラはヘジンマールに乗り、外に出た。

 

 

 

 ■

 

 

「なんだ、あれは」

 

 クアゴア氏族王、ペ・リユロは空から飛んでくる者を見て疑問を抱いた。

 リユロにとってみれば両者ともドワーフの変異種に見えた。

 ドワーフより背が高い者に黒い肌をした者。

 

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。リユロは側近と少し話してから地上に降りた二人組──ナーベラルとアウラに近づいた。

 

「初めまして。お……私はクアゴアの王、ぺ・リユロという。あなた……方は何者で?」

「私たちは魔導国の冒険者です。貴方達を我が国の臣民にすべく来ました」

 

 ナーベラルが事務的に言う。

 

「急にそんなことを言われても……我が民は八万も居る。即座に判断は出来ない」

 

 そうリユロが言う。

 そのことに二人はむっとした。

 アインズ様が臣民にしてやろうというのに即座に首を振らない。不敬だ、と。

 だが殲滅の許可は出されていないし、判断はパンドラズ・アクターがするので二人は攻撃しない。

 

「であれば、最終的な意思確認はモモンさーんがするので、それまで待っていてもらいます。逃げ出すようなら殺します」

 

 ナーベラルがそう言った。

 冷たい目をリユロは感じ取った。

 

「わ、わかった。そのモモンとやらが来るまで待とう」

 

 そうして待機している。

 すこし沈黙が流れる。

 リユロは情報収集のチャンスだ、と会話を試みた。

 

「あー、貴方達が言う魔導国とはなんだ?」

 

 そのことにナーベラルはむっとしつつアウラが答えた。

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下が治める国だよ。魔導王陛下はアンデッドだけど、慈悲深い治世をしているんだ」

 

 アンデッド、という言葉にリユロは目を点にする。

 アンデッドなど生者すべての敵だ。それが王? 何かの冗談じゃないか、と。

 

「そ、そうですか……それは一体どこにあるので?」

「エ・ランテル近郊……トブの大森林とかその周辺全部だよ」

 

(トブの大森林? 確かアゼルリシア山脈の外に広がる森だよな。それをすべて支配しているというのか?!)

 

 リユロは警戒度を上げた。

 それだけの広範囲を支配できるだけの知恵と戦力を有している。充分要警戒対象だ。

 

「で、では……武力はどうなのでしょう? どれだけの兵士が居るので?」

「……なんでそんなことを聞くの?」

 

 アウラが気になって問いかけた。

 それに対しリユロは即座に対応する。

 

「いえ。これから主と仰ぐかもしれない相手、詳しく知りたいのは当然でしょう?」

「……ならいいけど。兵士は死の騎士(デス・ナイト)が数百体……こっちだとなんて言えばいいのかな? 森の賢王とか以上の奴が居るよ」

 

 森の賢王というのをリユロは知らない。

 だがそれだけの異名を持つ存在と同程度の存在が数百居るというのは大事な情報だ。

 

 これは首を垂れるべきでは。リユロがそう考えていると空から霜の竜(フロスト・ドラゴン)がやって来た。

 その背にはパンドラが乗っている。

 

(竜を容易く支配してきた? あるいはすべて殺して来た?)

 

 霜の竜(フロスト・ドラゴン)の塒に行って無事である。それだけで圧倒的な実力者であるとわかった。

 

 パンドラが地上に居り、ナーベラルたちの前に着く。

 

「さて、調子はどうだ?」

「なかなか首を縦に振りません」

 

 ナーベラルがそう返す。

 

「そうか……お前は他とは違うな。クアゴアの王か?」

「そ、そうです。私はペ・リユロ。クアゴア八氏族の王です」

 

 そうリユロは頭を下げた。

 

「そうか──それでどうする? 従順か死か。好きな方を選ばせてやろう」

「……従順を。我らクアゴアは貴方様達に従います」

「私ではなく、魔導王に従ってくれ。さて、これで仕事は終わりだな」

 

 こうしてクアゴアもまた、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の支配下に入るのだった。

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