ロイツの都市長の館のバルコニーに、それはいた。
燃え盛る体を持ち、強靭な肉体を誇る悪魔──
それと対峙するは魔導王アインズ・ウール・ゴウン。
「おぉ、お前が魔導王か……様、を付けた方がいいかね?」
そう
「悪魔なんぞに敬称を付けられても困るな。ヤルダバオトよ……ここで決着をつけるか?」
「無論、そのつもりだとも。そのために兵士も用意させてもらった」
数は百程度。だがどれもがレベル五十から六十代のユグドラシル基準では中位。この世界では最上位に入る悪魔たちだ。
ウォー・デビルやアビサルデーモンなどである。
「数を用意すれば私に勝てるとでも?」
「普段のお前ならば無理であろうとも。だが都市を守る為に魔力を消耗したお前ならば、勝てるとも」
「ふん。いいだろう──その思い上がりを正してやろう!」
そう言ってアインズは飛行の魔法で
そして空中戦に入る。
(さて、勝てるかな?)
これはアインズの敗北が決定している戦いだ。
アインズとしては自身の命を危険に晒す気はさらさらない。だから最初からアインズの勝利が決まっているが、ストーリー上では敗北が決まっている。
この
原作だとプレアデスと戦っていたがプレアデスはお役御免だ。
プレアデスはNPCだが階層守護者と違いプレイヤーたちに知られてはいない。最奥のNPCだからだ。
だが悪魔──敵キャラクターとして出すといかにアインズがもう安全だと言っても信じられぬ者もいるだろう。だから敵側としては使わなかった。
アインズは自身の戦闘力の低さを感じている。これは練習のための戦いだ。
だから
アインズは魔法を行使する。
「
のたうち回る雷の龍が
ウォー・デビルの剣がアインズを背後から襲った。
「無駄だ」
だがウォー・デビルはレベル六十以下の悪魔。アインズにはダメージが通らない。
「それ──
爆裂魔法によってウォー・デビルと周辺の悪魔が爆発四散した。
「さぁ、どんどん行こうか!」
アインズは興奮し、飛行しながら魔法を唱えていく。
雷の龍。炎の波、衝撃波。多数の魔法が悪魔の群れと
しかし隙がでかすぎる。その隙を狙って
「ちっ」
所詮アインズはDMMOで戦ったことのない、戦闘の素人だ。勿論クレマンティーヌやブレインとの戦闘訓練は欠かしていないが、それでもレベル差がありすぎてまともな訓練とは言えなかった。
自身にダメージを通せる存在との戦い──それにアインズは興奮していた。
弱者を蹂躙するだけだとつまらない。強敵との戦い。命がひりつく戦い、それこそをアインズは求めていたのだ。
ゲームでも最初からチートで最強で敵を蹂躙するだけだとすぐに飽きる。ちゃんと勝つか負けるかぎりぎりの戦いだからこそ楽しめるのだ。
アインズは更に魔法を唱えていく。
「
攻撃範囲最大の魔法が悪魔の群れと
広範囲が吹き飛び、建物が消し飛んで焼け野原となる。
だが
戦いは続き──ついにはアインズは一定以上HPを削られ、敗北した。
街の上空。人の目では視認しにくい上空でアインズと
「やはり今の私だとこれが限度か……お前のHPを半分しか削れなかった」
「数の不利がある中でもこれだけ削れただけでも充分だと思います」
「いいや。今の私は弱体化が激しいからな……やはり私が戦うのは暫く避けた方が良いだろう。ちょうどいい手段も手に入れた事だしな」
アインズはそう苦笑した。
「さて、それじゃあ後は任せるぞ、
「畏まりました、アインズ様」
そして二人は空を飛びながら何度かぶつかり──アインズは落ちていったのだった。
■
「やぁ」
「あ、あなたの名前を聞かせてくれないかしら……?」
魔導王が東の奥に墜落して行ってから数日後。
聖騎士団のもとにシズ・デルタがやって来た。
アインズ様から命令を受けて来た者、とは言うが身分証明書などはなく怪しい者だった。アンデッドでもないし。
だがそれでもカスポンドの指示で受け入れた。魔導国の者として。
そしてシズはある屋敷でネイアと会っていた。
「私はシズ・デルタ。アインズ様のシモベ」
「……魔導王陛下の、ね。それで、シズ。これから──」
★後は原作通りなのでカットだ!
■
ところ変わって魔導国首都エ・ランテル。
元魔術師組合は今は魔法省の本部に作り替えられた。
周辺の建物、土地を買い取って拡張工事が成され、大規模な施設となった。
その施設にアルシェは勤めていた。
魔法省での仕事はいくつもある。
一番大きい仕事は既存の魔法の習得難易度の低下だ。
そして次に魔法の開発だ。
こちらは攻撃魔法は殆ど作らず、日用品用の魔法を作る。
例えば多くの新香料や塩を創り出す魔法や、魔法の灯りをつけたり消したりする魔法。
アインズからの指示でよくわからないが一定の速度で常に回転する魔法なんてものを作らされたりしている。
はぁ、とアルシェはため息を吐いた。
「どうした。アルシェ。その調子では新魔法の開発は難航するぞ」
そういうのはまだ若い男性だ。
だが、鼠色のローブを纏い貫禄のある雰囲気を出している。
歳は二十代程度だろう。
「いえ。大丈夫です。少し疲れただけですから──フールーダ様」
そう。この相手はフールーダ・パラダインその人だ。
アインズから超位魔法によって若返りを受けたのである。
そして、何度か死ぬ事でレベルダウンをし、クラス構成を整えている。
ニグレドの助力もあって今は完全な魔力系の
使えるのは第六位階の魔力系までだが、習得数は増えた。
「うむ。それならばよい……では次は、この魔法だが──」
魔法省の仕事は続いて行く。
■
「はーい、それじゃあ訓練するよー」
エ・ランテル。第三騎士団の本部の訓練場にてクレマンティーヌがやる気がなさそうに言った。
クレマンティーヌは元スレイン法国の漆黒聖典の一員だ。そのため人類未踏とされる地での活動も何度か行っている。
それらの知識を伝え、正しい野営の仕方を教えたり未知の敵との戦闘手法を教えるなどの仕事をしている。
クレマンティーヌとしてはだるくてすぐ逃げ出したい仕事だが、逃げる訳にはいかない。
プレイヤーとギルド拠点のNPCたちから逃げきれるわけがないのだ。たとえ評議国に逃げたって、故国である法国に逃げても捕らえられるだろう。
そうなれば愚かな侵入者たちのように生き地獄にぶち込まれる。それは嫌なので真面目に仕事をこなすしかない。
クレマンティーヌは正しい平原での野営方法を新人たちに教え込んでいくのだった。