えっ凡人がアインズ様に憑依?!   作:Revak

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第3話

 

 転移二日目。

 モモンガはセバスに怒られ、しょんぼりしながら部屋で本を読んでいた。

 幾ら必要な事だったとはいえ護衛をアウラ一人で出たのが不味かったらしい。

 まぁけどあのタイミングじゃないと割と不味かったし……と思いつつモモンガは考える。

 

 これからパンドラズ・アクターに会おうと思っている。

 

 だが問題は二つ。

 

 一つは宝物殿のパスワードを半分忘れている事と、そもそもパンドラ相手にモモンガ様ロールプレイが通じるのか、という問題。

 パンドラはモモンガが直接作ったNPCだ。故に中の人が違う事を見抜かれるかもしれない。

 だがモモンガとしては最初の内からあってモモンをやらせたい思惑があった。

 

 所詮ただのアルバイターである自分が英雄モモンを演じられる訳がないのだ。ならば最初から演じることに特化した者にやらせた方が良い。

 

 勿論最初の内は自分でやる必要があるので自分でやるが、最初以降はパンドラにやらせればいいと思っている。

 それにモモンガとしては戦闘訓練や帝王学について学ぶ必要があるためモモンをやっている暇がない、というのもある。

 まぁ未知の世界を冒険してみたい気持ちがないと言ったら嘘になるが真なる竜王などの脅威蔓延る世界で戦闘能力なしでのほほんと廻れるとは思っていないのである。

 

 しかし会うと中の人が違う事を見抜かれるかもしれない。

 

 どうしたものか、と悩むこと三十分。仕方がないので<伝言>(メッセージ)をシズに繋げる。

 

「シズ、これから宝物殿に行こうと思う。私の部屋に来てくれ」

『わかりました、モモンガ様』

 

 そうして<伝言>(メッセージ)が切れる。

 取りあえず予定をセバスに言っておいた方が良いだろう、と思いモモンガはセバスに顔を向ける。

 

「これから宝物殿に向かう。シズも連れていくつもりだ」

「畏まりました、モモンガ様」

 

 セバスは一礼した。

 どうやら問題ないらしいと内心ほっとしながら待つことしばし、シズが来た。

 

「よく来たな、シズ。これを一時お前に貸そう」

 

 モモンガはアイテムボックスからリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出し渡す。

 これがないと宝物殿に行けない。

 

「では転移するぞ」

「わかりました」

 

 そうして二人は宝物殿に転移した。

 

 

 転移したモモンガの視界に財宝の山が目に映る。

 

(……リアルで見るとすげぇな。これだけの財宝どうやって集めたんだか……)

 

 黄金の山は幾つも乱立し、山の中には高価なマジックアイテムが多数入っている。

 モモンガは近くの黒で塗りつぶされた通路に行く。

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ」

 

 そう言うと門に文字が浮かび上がる。

 

「確か……かくて汝暗きものは全て離れるだろう……だったか」

 

 ぶー、と音が鳴った。

 

「違うか……シズ。正解を教えてくれ」

「はい。"かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう"……です」

「あぁ、それだ……かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう」

 

 再度合言葉を言うと黒く塗りつぶされた場所がなくなり通れるようになる。

 

「シズはここで待機しててくれ。私が一人でパンドラズ・アクターに会ってくる」

「……パンドラズ・アクターと言うのは?」

「む、知らないのか……パンドラは私が作ったNPCでこの宝物殿の領域守護者だ」

「……わかりました、お待ちしています」

「あぁ。では行ってくる」

 

 モモンガは気乗りせず憂鬱な気分になりながら武器庫の通路を歩く。

 

 長い通路の暗闇がモモンガの内心を表しているようだ。まぁ暗くても闇視(ダークヴィジョン)で真昼間のように見えるのだが。

 

 そうして奥へと着く。そこそこの広さを持つ四角い部屋だ。

 部屋の中央にはソファとテーブルがある。

 

 ソファの前には異形が立っていた。

 

 水を吸って大きくなった死体の頭に、タコが取り付いた様な邪悪な姿をしている。

 指先も長く物を持つのに苦労しそうだ。

 

「久しぶりだな、パンドラズ・アクター」

 

 モモンガがそう言うとパンドラズ・アクターはぐにゃりと姿を変える。

 肌は薄いピンク。卵の様につるつるとしている。鼻も口も耳もなく突起がない。

 ナチス親衛隊に似た黄色い軍服を着ている。

 

「はっ! お久しぶりです、んぅ~モモンガ様!」

 

(うわぁ)

 

 モモンガは思わず顔を覆いたくなった。

 アニメ見た時からすげぇキャラしてんなとは思ってたが実物を見るとまた羞恥心が出てくる。

 

「きょ、今日はお前と話したいことがあって来たのだ。まずは座って話そうか」

「かしこまりました……と言いたいところですが」

「なんだ?」

「モモンガ様の様子がいつもと違う様子。何かございましたか?」

 

(──あっぶね!)

 

 どうやらギリギリ中の人が違うとはバレてないらしいと精神が沈静化される。

 

「……ふむ。お前にだけは言っておこう。私は記憶を失っている」

「なんと?! アンデッドであるモモンガ様がですか?」

「あぁ。この異世界への転移の影響だろう。記憶を無くした私は戦闘経験も失っている……まぁ、大幅な弱体化と言えるだろう」

「そんな! すぐに治療の手段を──」

「アンデッドである私に通常の治療手段は効かないだろう。ありえるとしたらワールドアイテムだが、現状そこまで差し迫った危機がある訳でもないのにワールドアイテムを使うのは憚れるだろう」

「それは……確かにそうですが、モモンガ様の身を守ることこそが我らNPCの使命──」

「コストと利益が見合っていない。ならば一から私が訓練をし、戦闘経験を一から積んでいく方が良いだろう」

「……モモンガ様がそう言うのなら、畏まりました」

「さて、まずは座ろうか」

 

 モモンガがそう言いソファに座るとパンドラも隣に座ってくる。

 

(んなんで隣?!)

 

 そう思いつつまぁ修正するほどではないかなと思ってそのままにする。

 

「それで、だ。まずは……外で英雄を作ろうと思っている」

「英雄、ですか。なるほど」

「……今のでわかったのか?」

「はい。今後ナザリックが動く際に外で情報を得るための手段が必要。そのために今後ナザリックの名を売る為にも英雄と言うキャラクターを立てた方が都合がいいと判断しました」

「そうか……ここがユグドラシルではないと気付いていたのか?」

「はい。私がこうして喋れて、動ける。その時点でここは既にユグドラシルの法則を離れた異郷であると理解しました」

「……そうか。最初の内は何があるかわからないから私が動くが少ししたらパンドラズ・アクターに変わってもらう。相棒としてナーベラル・ガンマを連れる予定だ」

「畏まりました……マッチポンプなどはいたしますか?」

「必要があればするが、最低限だ。さらに言えばナザリックのNPCを使うとしても顔を晒す気はない。今後来るプレイヤー相手に反論の余地を与えたくないからな」

「畏まりました」

「あぁ、それとナザリックにあるワールドアイテムと貴重なマジックアイテムについて教えてくれ。今の私は記憶がないからな」

「わかりました。長くなりますがよろしいですか?」

「問題ない」

「では──」

 

 

 この後四時間かけて色々説明された。

 

「これぐらいでよろしいですか?」

「う、うむ。問題ない」

 

 アンデッドの体じゃなければ悲鳴を上げていた、とモモンガはパンドラに頼んだことを早速後悔していた。

 

「それじゃあ、私はこれで……と、その前に。私は名を変えるつもりだ。これからはアインズ・ウール・ゴウン、アインズと呼ぶように」

「名を変える……なるほど。今後来るプレイヤーに対する布石とするためですね」

「その通りだ。では、私は部屋に戻るとする。最後にこれを」

 

 モモンガはアイテムボックスからある箱を取り出しそこからリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出す。

 

「おぉ! リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン! 至高の四十一人にのみ所持を許された秘宝! 私めが所持してもいいのですか?」

「構わん。今後宝物殿を出て動いてもらうこともあるからな。移動手段がないと困るだろう。受け取ると良い」

 

 モモンガはそう言い指輪をパンドラに渡した。

 パンドラは仰々しく指輪を受け取った。

 

「では私はこれで」

 

 そう言うとモモンガは最初の部屋に戻りシズを連れて転移で部屋に戻った。

 

 ■

 

 転移四日目の朝。

 モモンガとアルベドはカルネ村へ通じる道の途中に居た。

 

「最終確認だ。これから私は村へ行くが設定は僻地で研究していた流浪の魔法詠唱者(マジック・キャスター)現世(うつしよ)には疎い。お前はアルベドで亜人の戦士、アインズ・ウール・ゴウンを守る存在でありここから遠くの地で暮らしていたためここら一帯には詳しくない。これで問題ないか?」

「問題ありません。もも──いえアインズ様」

 

 外に出た時点でモモンガは名を変えアインズにした。

 

 アインズは今格好を変えている。

 普段の神話級装備だが胸を閉じ小手にはイルアン・グランベルを装備し顔には嫉妬する者の仮面をつけている。怪しげな魔法詠唱者(マジック・キャスター)その物である。

 アルベドも完全武装である。

 

「では行くぞ」

「はい、アインズ様」

 

 そうして二人は歩き出す。

 無言で二人は歩く。

 

(この足場歩きにくいなぁ。統治したら絶対石の道に変えさせよう)

 

 そう思いながらアインズが進んでいくとアルベドが発言する。

 

「モモンガ様。村が襲撃されているようです」

「何? わかった。ここからは走るぞ」

「はいっ」

 

 そうして二人がダッシュでカルネ村に向かうと村の通路を歩くエンリとネムに遭遇した。

 

「アルベド! あの少女を助けろ!」

「はっ!」

 

 アルベドが目にもとまらぬ速度で動き騎士の一人の首を跳ね飛ばした。

 

 え、という間抜けな声が漏れる。誰の物か定かではない。

 硬直しているもう一人の帝国騎士の格好をしたスレイン法国の機密部隊をアルベドは3Fで両断した。

 

 アインズがエンリとネム二人の前に着く。

 

「もう大丈夫だ。私が来た」

 

 何気言ってみたかった台詞を言いながら少女、エンリに告げた。

 

「あ、あなたは……?」

「私はアインズ・ウール・ゴウン。旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だよ……怪我をしているな」

 モモンガは無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)に登録しておいた赤いポーションを取り出した。

 

「これを飲むと良い。これはポーションで傷を治してくれる」

「わ、わかりました……」

 

 エンリは少し躊躇しながらポーションを受け取り、飲む。

 傷が瞬く間に治るが服は直らない。

 

「うそ……」

「さて、それでは……」

 

 モモンガは死体の両断された方の騎士に近づく。

 

「<中位アンデッド創造>死の騎士(デス・ナイト)

 

 黒い靄が生まれる。

 靄は死体に乗り移りがしゃがしゃと騎士の死体を立ち上がらせ、騎士の体から黒い液体を噴出しながら形を変えていく。

 最終的に身長二百三十センチの長身。兜からは死体の顔がのぞいている。赤黒い全身鎧を纏っている。全身鎧の一部には棘が出ている。

 右手にはフランベルジュを、左手にはタワーシールドを持っている。

 レベル三十五の攻撃能力二十五レベル相応防御性能四十のアンデッドだ。

 能力としてどんな攻撃を受けてもHPを一残して耐える力と攻撃を自身に引き寄せる力、更に殺した相手を従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)にして操る力を持つ。

 

「この騎士の格好をしたものを殺せ」

 

 アインズがそう命じると死の騎士(デス・ナイト)は雄たけびを上げ、走って去っていった。

 

「さて……では<生命拒否の繭>(アンティライフ・コクーン)。||<矢守りの障壁>《ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ》|」

 

 アインズが二つの魔法をエンリとネムの周囲に張る。

 

「これらの魔法は敵の侵入を阻害し、矢による攻撃を防ぐものだ。そして……」

 

 アインズはアイテムボックスからゴブリン将軍の角笛を二つ取り出す。

 小さな角笛だ。

 

 アインズが投げ入れると攻撃判定にはならなかったのか結界を素通りしエンリの足元に落ちる。

 

「それを吹けばゴブリンの軍勢がお前の身を守るために出現するだろう。何かあれば使うと良い」

「あ、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

 

 エンリとネムが頭を下げて礼を言った。

 

「では行くぞ、アルベド」

「はっ」

 

 

 そうして二人は歩いてカルネ村へと向かった。

 

 

 

 ■ 

 

 カルネ村の中央の空からアインズはゆっくりと広間に降りる。

 広間では死の騎士(デス・ナイト)が虐殺をし、騎士も数人しか残っていなかった。

 村の周囲に居た騎士はアインズが魔法の実験がてら殺して回ったのでこの数人が最後の生き残りだろう。

 

「初めまして、私はアインズ・ウール・ゴウン。そこの死の騎士(デス・ナイト)の主人だ」

 

 その言葉に騎士たちは絶望した表情を浮かべる。

 

「もし君たちがまだ戦いたいというのなら私に剣を向けるがいい。降伏するというのなら武器を捨て大人しく──」

 

 アインズがそう言うと騎士たちは慌てたように剣を投げ捨て膝をついて両手を挙げた。

 

「……死の騎士(デス・ナイト)がよっぽど恐ろしかったらしい。アルベド、この騎士たちを拘束しろ」

「畏まりました」

 

 アインズは村長へと近づく。

 

「村人の皆さん、もう大丈夫です。危機は一時去りました」

 

 アインズがそう言うも村人たちの表情は暗いままだ。

 村人たちにとっては危機が騎士からアインズに変わった程度にしか認識していないのだ。

 

「私はあなたたちを助けに来たのです。勿論、ただで、とはいきません。対価を貰います」

 

 その言葉に逆に村人たちは安堵する。

 対価欲しさで助けに来てくれた俗物の方がまだわかりやすいからだ。

 

「では……村長は誰かな?」

「わ、私です」

 

 壮年の男が手を挙げた。

 

「では村長殿。これからの話をあなたの家で話しましょうか」

 

 

 ■ 後は原作通り進んだのでカットだ! 

 

 

 アインズは第五階層の氷結牢獄に来ていた。

 牢獄の外にはデミウルゴスがこれから拷問しようとうきうきとしていた。

 拷問相手はもろちん陽光聖典だ。

 原作通りに進んだので陽光聖典も全員捕らえている。

 

「デミウルゴス」

「これは、モモンガ様。何か御用でしょうか?」

「何、情報を入手する前に話しておこうと思ってな。先ほど捕らえた奴らはあれでも一国の機密部隊。拷問や精神支配に対し何かしらの対策を積んでいる可能性が高い。まずは下っ端から情報収集を始めると良い。ニグン……指揮官に関しては後回しにするんだ」

「畏まりました、モモンガ様」

「うむ。それと三十分後に玉座の間に動かせるNPCとシモベを連れてきてくれ。他の守護者たちにもそのように伝えろ」

「畏まりました」

 

 そうしてアインズは転移して一足早く玉座の間に転移した。

 

 

 

 

 ■

 

 

(うわー圧巻)

 

 三十分後の玉座の間にて。

 玉座の間には多種多様な異形が勢ぞろいしていた。

 最前列にはもちろん守護者各員が揃っており、玉座の傍にはアルベドが控えている。

 

「まずは私が勝手に動いたことを詫びよう。何があったかはアルベドに聞くように……そして」

 

 アインズは魔法で自身の旗を壊した。

 

「私は名を変えた。これより私を呼ぶときはアインズ・ウール・ゴウン、アインズと呼ぶように!」

 

 その台詞によってシモベたちから大歓声が上がる。

 

「そしてお前たちに厳命する。アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ! 空に、大地に、海に。遍くすべてにアインズ・ウール・ゴウンこそが最も偉大な英雄なのだと知らしめるのだ! 力で上回る者がいるなら知恵で。数で上回る者がいるならばそれ以外の手段で! この世界全てに轟かせるのだ!」

 

 更にシモベたちから大歓声が上がった。ナザリックが揺れるのではないかと思えるほどの声だ。

 

「さぁ行くぞ。目指すは世界だ!」

 

 

 こうしてアインズ・ウール・ゴウンは動き出す。

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