魔法科高校の鬼狩り守護者   作:守護者の夜明け

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真夜編、まだ終わりません。本当に申し訳ないです。
本当はこれで終わらそうと思ったのですが、書き終わってみれば約12000字⋯⋯。というわけで、分割いたします。それとも、そのまま投稿して良かったですか?感想などで教えて頂けると助かります。


プロローグ 真夜変革編 3

   第四話  見つめ合う紅と紅

 

           ◇

 

 真夜の柔らかな髪を優しく撫でていた津那美だったが、不意にその動きを止める。そして、この監禁部屋における唯一の出入り口たる分厚い鋼鉄の扉へと、険しい視線を向けた。彼の超常的な感覚が、この場を目指して急速に迫りつつある無数の気配を察知したのだ。

 津那美は小さく舌打ちを漏らす。

 

 「⋯⋯どうやら話はここまでのようだ」

 「っ!?どうされたんですか?」

 「不埒者どもの増援だ。煩わしい」

 

 そう告げた津那美からは温和な雰囲気が霧散し、代わりに肌を刺すような寒々しい威圧感がユラリと立ち上る。

 間近にいた真夜は、その峻烈な気配を正面で浴びてしまい、魂まで凍てつかせるような重圧に思わず小さく息を呑んだ。

 そして、彼の視線を追うように、自身も何の変哲もない頑強そうな鋼鉄の扉を見つめる

 

 __だが、真夜には特に何も感じられるものは無かった。それも当然だろう。自分は、姉と違い精神干渉系魔法の素養は無いし、鋭い直感も持ち合わせていない。 あるいは、武術でも修めていれば、何かしらの気配は察知できたかもしれない。

 

 しかし、目を見張るほどの超常の力を振るった津那美がそう断言するのだ。間違いなく、扉の向こうから『敵』の群れが迫っていると真夜は判断した。

 

 そんな彼女の脳裏に、男に凌辱されそうになった記憶がまざまざと蘇る。アレの同類が、もうすぐここに来ると理解した瞬間、真夜の身体は本人も気付かぬうちに、ガタガタと激しく震え始めていた。

 

 (あのケダモノたちの仲間がくる。⋯⋯嫌、嫌!絶対に会いたくない。あんな鬼畜たちに、身体を弄ばれるなんて絶対に嫌っ!!)

 

 真夜は、内からせり上がる恐怖に懸命に抗いながら、救いを求めて視線を左右に彷徨わせた。

 そして、その紅い瞳が、目の前に立つ津那美の漆黒のコートを捉える。

 恐怖で狂いそうになりながら、真夜は激しく震える手で彼のコートを力一杯に掴み、縋り付いた。

 

 自分の衣服を掴んで縋りついてくる彼女の怯えに気づいた津那美は、その小さな手を安心させるように、自らの手でそっと優しく包みこむ。

 

 「大丈夫だ。気配がするだけで、奴らとの距離はまだ物理的に離れている。今のうちに脱出してしまえば問題は無い」

 「っ!?だっ、脱出って、どうやって!?出入り口は、あの扉一つしかないんです。出ていけば、必ず、とっ、途中で鉢合わせしちゃいますっ!」

 

 真夜は、恐怖から軽度のパニックを起こしていた。焦りと混乱で声を荒げ、目尻には大粒の涙が浮かんでいく。掴んでいるコートを引っ張りながら真夜は、余裕の表情を崩さない津那美へと必死に窮状を訴えかけるのだった。

 

 怯えて、涙に濡れる真夜の瞳を、津那美は真っ直ぐに見つめ返す。そして、空いている手の指先で彼女の頬を伝う涙をそっと拭った。

 

 「もう一度言おう。大丈夫だ。君の傍には今、私がいる。奴らが君に触れることなど、もう二度とありはしない。絶対にだ」

 

 そう毅然と言い切る彼の紅い眼には、言葉通り、いかなる不条理をも否定する『絶対』の自負が宿っていた。その眼差しが放つ神威そのものの輝耀に魅せられた真夜は、彼には為せないことなど何一つも無いのだと、確信させられたのだった。

 

 気高き意志を宿す、絶対の強さを象徴する青年の紅い眼。

 

 涙に曇りながらも、高貴な光を決して喪わない少女の紅い眼。

 

 同じ色彩を持つ互いの視線が、静かに融け合っていく。まるで世界が止まったかのような静寂の中で、津那美はさらに言葉を重ねた。

 

 「私の言葉を⋯⋯私のことを、信じてくれるか?」

 

 限りなき強さと深い優しさを秘めたその問いかけに、真夜は言葉にできないほどの歓喜と安堵に包まれた。

 何か答えようにも、感情の昂りで喉が震えて声にならない。

 そして、彼女は片手で愛らしく口元を覆い、小さくむせび泣きながら、津那美に応えるように何度も首を縦に振るのだった。

 

 

           ◇

 

 真夜は、彼のコートを掴んでいた手をそっと離すと、指先で目尻に残る涙を拭った。そして、両手で自身の頬を軽く叩いて気合を入れると、泣き腫らした紅い目で津那美を真っ直ぐに見つめ、改めて誓うように告げた。

 

 「私は、津那美さんを信じます。貴方の強さを⋯⋯その優しさをずっと、ずっと信じます!」

 

 真夜の飾らない朗らかな笑顔に、津那美も温かい笑みを浮かべて返した。

 彼女が、気を持ち直したことを察した津那美は、流れるような動作でスッと、紳士的に右手を差し出す。

 

 「では、行こうか。⋯⋯お手をどうぞ、お嬢さん」

 「はっ、はい。ありがとうございます⋯⋯っ」

 

 頬を染め、嬉しげに彼の右手を取ろうとした真夜の動きが、不意にピシッと凍りついた。

 

 何故、自分は頑なに寝台に腰かけ、身じろぎ一つしない姿勢を保っていたのか。その重大な理由を思い出してしまったからだ。

 

 真夜は冷や汗を流しながら、顔をわずかに背後へ巡らせ、寝台の上を確認する。その視界にありありと映るは、自身が晒してしまった痛ましい醜態の痕跡。

 

 (っ!?いけない。お話が素敵すぎて、すっかり忘れてたわ。⋯⋯ああ、津那美さんが手を差し出して、微笑んで待ってるのに!どうしたら⋯⋯っ!?)

 

 真夜の頭脳が、この危機を打開する第二の策を求めて、再び高速で思考の歯車を回していく。

 

 しかし、哀しきかな。いかに明晰な彼女の頭脳を以てしても、これ以上の妙案はどこをどうひっくり返しても思いつきはしなかった。仮に閃いたとしても、それを実行する時間的余裕は一秒たりとも残されていなかったが__。

 

 差し出された手を取ることもできず、目まぐるしく顔色を変えて葛藤を続けている真夜。

 そんな彼女の様子を黙って観察していた津那美だったが、ふと思い当たる節があることに気づき、何の躊躇もなくその言葉を口にした。

 

 だが、それは一人の少女が必死に守ろうとした尊厳と、そのために果たした涙ぐましい努力を跡形もなく木っ端微塵にする、言葉という名の無慈悲な爆弾だった。

 

 「フム⋯⋯もしかして君は、その背後に隠した『痕跡』を気にしているのか?だとしたら、さほど問題はないと言っておこうか。私も、さして気にはしない」

 

 ある意味では気遣っている__が、年頃の少女への配慮は致命的に欠落した津那美の言葉を受けて、真夜の顔は熟しきった柘榴の如く、一瞬で耳まで真っ赤に染まった。

 

 羞恥のあまり顔から火が出るどころか、脳天から煙が吹き出しそうな恥じらいを覚えた真夜は、その紅い眼を吊り上げ、口をへの字に曲げると、津那美を鋭い眼光で睨め上げる。その身体は怒りと羞恥でプルプルと小刻みに震えており、傍目にはどうしようもなく愛らしい。

 

 そんな彼女の、噛みつきそうな激怒の姿を見た津那美は、差し出していた手を一旦下ろし、さらに追い打ちをかける言葉を投げてしまう。

 

 「んっ?⋯⋯もしかしてだが、これは口に出さないほうが良かったことなのか?」

 

 まさにバッターへ__しかも脳天を直撃した、完璧な死球。

 真夜はいっそ頭を抱え絶叫しながら、この場を走り去りたくなった。

 

 (っ!?いやぁぁぁぁぉぁぁ!?バレてた、最初からバレてた!つっ、津那美さんは、最初から気づいてたの!?どうしよう、どうしよう!?どっ、どうカバーすれば⋯⋯。というか、津那美さん、気づいてたのなら、最後まで紳士的に対応して。どうして、最後の最後でデリカシーを無くして口に出しちゃったんですか?)

 

 真夜の思考回路は、羞恥心の影響で完全なオーバーヒートを起こし、もはや修復不可能なパニックの極致に達してしまった。

 

       

           ◇

 

 (フフフフッ、なんて日なの、今日は。⋯⋯交流会をのんびり楽しんでいたら、武装した男たちにいきなり拐われて。それから、あんな破廉恥な体勢で拘束されて、男に犯されそうになって。あげくの果てに、怖ろしい怪物に食べられそうになって⋯⋯。もう駄目、死ぬのねって思ったその瞬間に、麗しい剣士さまが颯爽と救けに現れた。まさに、お伽話のお姫様みたいな夢の状況ね。

 なのに、なのに!その救けに来てくれた肝心の剣士さまからトドメの一撃をもらうなんて、誰が想像できますか?

 __ああ、夢なら今すぐ醒めてほしい。⋯⋯でも、でもね、これは残酷なことに現実なのよ、真夜。仕方ないわ。もう、こうなれば覚悟を決めましょう。でも、せめて、最後に⋯⋯)

 

 限界を迎えた真夜の頭脳は、今日一日の過酷な体験をなんとか処理しようとするも疲労が蓄積しており、上手く機能してくれない。

 

 その結果、彼女の思考は極めて短絡的な方向へと暴走し、本来の彼女であれば逆立ちしても選ばないだろう、凄まじい結論を導きだす。

 

 そう、四葉真夜は__『開き直る』ことにしたのだ。

 

 (もう、全部バレてるのよ。だったら今更隠すことなんてないじゃない。恐れることないじゃない。ええ、ええ、堂々としてあげるわよ。でも、でもね。せめて、目の前で涼しい顔をして立っているこの人に。私に恥をかかせてくれた津那美さんに、一言ぐらい文句を叩きつけても構わないでしょ。そのくらいの権利は、私にもある筈よね)

 

 完全に腹を括った真夜は、改めて津那美をキッと睨みつけると、胸いっぱいに空気を吸いこんで、大きく深呼吸をした。

 

 「!?つっ、津那美さんの⋯⋯大馬鹿ぁぁぁぁぁっ!!⋯⋯えっと、おたんこなすぅぅぅぅぅぅ!!あっ、後は、おっ、女のてきぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 四葉真夜、人生初の渾身の罵声が静寂の室内に響き渡る。

 しかし、いかんせん高貴な身分ゆえに悪口のバリエーションが不足しており、所々がつっかえ、勢いは弱々しい。むしろ、罵倒と呼ぶにはあまりにも可愛らしさが際だつものだった。

 

 大声を出したせいで激しく乱れた呼吸を整えながら、真夜は真っ赤な顔のまま、唖然とした表情で自分を見つめている津那美を見返す。

 

 「なっ、何ですか?何か、言いたいことでもあるんですか?でしたら、言ってみなさい。この⋯⋯えっと、朴念仁!」

 

 絞り出した最後の一言すら、どこか時代錯誤で語彙力が低い。あきらかに、言い慣れていないのだろう。

 それを悟った津那美は、ついに堪えきれなくなったように破顔し、声を上げて笑い始めた。

 

 「クククッ、ハハハハハハハハハハハハハッ!」

 

 超然とした姿からは想像もつかないほど、愉快そうに口元を手で押さえながら笑う彼を見て、今度は真夜が唖然と口を半開きにする。

 

 「なっ、何が可笑しいんですか!?私の⋯⋯醜態はそんなに無様ですかっ!?」

 

 真夜は、プルプルと震える指先を津那美へと突きつけ、威嚇する小動物のように吠え立てる。そんな彼女の涙目混じりの猛抗議に、津那美は波打つ笑い声をどうにか抑えながら、楽しそうに告げた。

 

 「すまない。君の醜態を笑ったわけではないんだ。私は女性から罵声を浴びるという経験があまり無く、とかく新鮮でな。⋯⋯それに」

 

 津那美は目元を和らげ、額にかかる白髪を気怠げにかき上げながら、まだ怒りでプンプンと肩を揺らしている真夜を見つめる。

 

 「感情を剥き出しにして怒る君が、なんとも可愛くてな。見ていたら、腹の底から笑いが込み上げてきてしまった。悪かった。私の配慮が足りなかったな、赦してくれ」

 

 笑いが治まった津那美は、軽く頭を下げて彼女に謝罪をした。

 その顔は、どこまでも穏やかであり、1000を超える時を生きているとは知りもしない真夜は、どこか少年っぽさが垣間見えたような気がして、ドクンと胸を跳ね上がらせた。

 

 津那美は腰に両手を当て、閑散とした天井を仰ぎ見る。

 

 「しかし、久方ぶりに笑ったな。__ああ、そうか。笑うというのは、とても心地好いものだったのだな。愚かにも忘れてしまっていた。⋯⋯それを思い出させてくれた君には感謝を贈らねばな」

 

 そう語りながら真夜へと視線を戻した津那美の顔には、見るもの全てを魅了するような極上の微笑みが浮かんでいた。

 

 不意打ちでそれを見てしまった真夜は、まさに胸を撃ち抜かれるような衝撃と早鐘のような高鳴りを同時に覚える。その顔はお湯の沸いたヤカンよろしく、頭頂から湯気が上がりそうなくらいに真っ赤に染まっていた。

 

 これ以上恥ずかしい顔を見られたくない真夜は、思い切りそっぽを向き、照れ隠しを口にする

 

 「何ですか?それは!?そんな言葉で私の機嫌をとろうとしても無駄ですから!ええ、本当に、津那美さんのことなんて、もう一生知りませんから!!」

 

 もはや、ツーンという音がはっきりと聞こえそうなほどの勢いで、頑なに顔を背けてしまう真夜だった。

 

 

           ◇

 

 津那美は、へそを曲げてしまった彼女の様子を見つめながら、どうやって機嫌を伺おうかと高速で思考を巡らせていた。何故なら、彼の研ぎ澄まされた超常の感覚が、さらに距離を詰めてきた敵増援の無粋な気配を捉えていたからだ。

 

 ( やれやれ。奴らがここに到達するまで、あと数分といったところか。自業自得とはいえ、拗ねてしまったお姫さまのご機嫌取り、どうしたものか⋯⋯)

 

 津那美自身には、微塵の焦りも恐怖もない。敵が百人いようが、千人いようが、その全てを鏖殺できる絶対の自信が彼にはある。__だが、真夜は違う。

 奴らへの恐怖が根底にある彼女のために、一刻も早い脱出を試みたい津那美だったが__

 

 そんな思い悩む彼の前に、スッとそれが差し出された。

 

 プイっとそっぽを向いたまま、真夜は自身の左手を恥ずかしそうに津那美へと差し出している。

 

 顔を背けているため、彼女の表情は窺えない。しかし、差し出されたその左手には、『何をしているの、さっさと取りなさい』という明確で不器用な意志が込められているように津那美は感じた。

 

 (本当に聡い娘だ。今はなにを優先すべきかが、判っているのだな。本当なら、子供らしく友と遊び、無邪気に笑いあう年頃だろうに。⋯⋯四葉というのは、ずいぶん罪深い教育を施す一族だな。いや、それは四葉に限ったことではないか。他の高名な魔法師の家系も似たような歪みを子どもたちに強いているのだろうな)

 

 津那美は慈悲と、少しの憐れみを込めた眼差しで、頑なに顔を背けている真夜を見つめた。

 

 (だが、彼女に伝えるべき言葉は、全て伝えられたと思う。これから先も大人の言いなりのまま籠の鳥として生きるか。それとも、自らの真価を見いだして世界の空を翔けるか。それは、彼女自身がこれからの人生で決めることだ。⋯⋯しかし、願わくば__)

 

 津那美の脳裏に、自分に【名前】を授け、【力を持つ意味】を説いてくれた、太陽のように眩い笑みをもった女性の姿が鮮烈によぎる

 

 (私の『二人目の母』のように。己の信念をどこまでも気高く貫く、美しい女性になってほしいと祈りたい)

 

 差し出された真夜の小さな左手を、自身の左手でそっと掬い上げるように取りながら、津那美は彼女の歩む未来が自由で光輝くものであることを、静かに願うのだった。

 

 

           ◇

 

 津那美は掴んだ真夜の左手を優しく引き寄せる。

 

 「⋯⋯あっ!?」

 

 彼女の口から微かな声が漏れ、その身体は、フワッと舞うように寝台から離れ、彼の胸元へすっぽりと収まった。

 

 津那美は、彼女の尊厳と誇りを慮り、背後の寝台には視線を向けないよう徹底する。そのまま、空いている右手を真夜の細い腰に回し、決して離さないように、害する者から守るように力強く抱き寄せたのだった。

 

 だが、いきなり津那美と急接近することになった真夜の心境は、安堵を覚えるどころか、全く別の意味で限界突破を迎えていた。

 

 この世の者とは思えない彼の完璧な美貌がすぐ目の前にあり、力強い鼓動、包みこむ温もり、そして微かに漂う、白檀の甘く静謐な香りが鼻腔をくすぐる。

 

 その全てが、真夜の心を激しくかき乱していく。

 

 (っ!?ち、近い、近い、近すぎるわ!あああ、津那美さんの顔が、すぐ目の前に⋯⋯っ。そっ、それに何かすごく甘い香りがするわ。これは何の香りなの?わっ、分からないわ。⋯⋯というか、もう何も考えられない。あっ、頭の中が、真っ白で__)

 

 そんな彼女のパニックなど、つゆ知らず。

 津那美は、チラリと出入り口たる鋼鉄の扉を一睨みすると、腕の中の真夜に語りかける。

 

 「私から離れないように、しっかり掴まっていろ」

 「ひゃ、ひゃい。わっ、分かりました⋯⋯っ!」

 

 津那美の声に促され、真夜は彼の逞しい背中に両手を回し、漆黒のコートの生地をギュッと力一杯に掴みこんだ。しかし、あまりの緊張と照れで、その返事は思いきり噛んでしまった可愛らしいものだった。

 

 彼女の小さな手が、自身のコートを掴んだ感触を察した瞬間__津那美は【空間転移】を発動した。

 術式の展開も、サイオンの輝きすら一切無い。二人の身体は、空間へ透けるように一瞬でかき消え、影も形もなく監禁部屋から存在が消失した。

 

 

 __数分後。

軽快な電子解除音とともに、分厚い鋼鉄の扉が乱暴に開かれ、武装した無数の兵士たちが監禁部屋へと怒涛の勢いでなだれ込んでくる。

 だが、彼らがそこで目にしたのは無人と化した伽藍洞の空間だけだった。

 

 




次回で真夜編、終わります。今度こそ確実です。
次回、崑崙方院が⋯⋯。
悲鳴を上げる真夜。歓喜する真夜。踊り出す真夜。
そして、大人になった真夜が歩む道とは?
この外史世界の真夜は、色々な意味で正史世界の真夜とは別人です。それを、しっかり描写できるよう、頑張ります。では、次の投稿を楽しみにお待ちください。
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