個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~ 作:復活のB
USJ
正式名称『ウソの災害や事故ルーム』
雄英高校が誇る巨大実践演習施設であり、『水難ゾーン』『山岳ゾーン』『火災ゾーン』『倒壊ゾーン』『土砂ゾーン』『暴風大雨ゾーン』等といった、あらゆる災害を再現した訓練エリアを備えている
プロヒーローを育成する為の、国内最高峰の救助訓練施設
生徒達はここで、人命救助の難しさと重要性を学ぶ
時には己の未熟さを知り、時には仲間との連携を学び
そして、人を救うというヒーローの本質を身をもって経験する
本来ならば、今日もまた、その為の授業が行われる筈だった
平和の象徴《オールマイト》
スペースヒーロー《13号》
抹消ヒーロー《イレイザーヘッド》
そして、雄英高校ヒーロー科一年A組
三人のプロヒーローと、ヒーローの卵達による、平和な実践授業
ーーーその筈だった
◇
「はい、皆さん」
「本日の授業はこちらになります」
巨大なドーム状施設
USJ
ここに集まった一年A組の生徒の前にに、一人のプロヒーローが立っていた
宇宙服を思わせる、白いコスチューム
指先まで覆う白いグローブ
穏やかな声色
スペースヒーロー・13号である
「えー、始める前にお小言を一つ、二つ…三つ、四つ…」
13号が穏やかに語り始める
((((増える…))))
思わずそう心の中でそう呟く、一年A組の生徒達
この場に集う二十人の未来のヒーロー達は、それぞれが異なる思いを胸に授業へ臨んでいる
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んで、塵にしてしまいます」
「その個性で、どんな災害からも救い上げるんですよね!」
そう言ったのは、緑がかった癖毛とそばかす、大きく丸い目が特徴的な少年・緑谷出久
「えぇ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にも、そういう個性がいるでしょう」
13号は続ける
「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます」
「しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる、‘‘いきすぎた個性,,を個々が持っていることを忘れないで下さい」
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」
一年A組の生徒達は皆、13号の話を真剣な表情で聞いている
彼女の言う通り、個性の中には、使い方を誤れば簡単に命を奪うてしまう個性も多く存在する
それはヒーローを目指す彼らにとっても、他人事ではない
「この授業では心機一転!人名の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は、人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと、心得て帰って下さいな」
(13号…カッコイイ!)
13号の言葉に感銘を受け、心の中で呟く緑谷
「以上!ご清聴、ありがとうございました!」
「ステキー!」
「ブラボー!」
13号がそうお辞儀をすると同時に、A組の生徒達から歓声が上がった
この時までは、誰も疑わなかった
今日は、良い授業になると
いつも通り、生徒達は学び
いつも通り、一日が終わるのだと
しかし、誰一人として思わなかった
この数分後
ーーーー雄英史上初となる、大規模ヴィラン襲撃事件が始まるだなど
「そんじゃあ、まずはーーー」
相澤がそう言いかけた、その瞬間だった
バチッ…バチッ…
突如としてUSJの電灯が点滅を始め、すぐに消えてしまう
その直後、USJ中央広場にある噴水の前
誰もいない筈のその場の空間が歪み、何か黒いものが出現する
それは霧だった
濃密で、不気味な漆黒の霧
その異変に、真っ先に気付いたのは相澤消太だった
「……!」
黒い霧はどんどん大きくなり、その中から、全身に手をつけたような男が現れる
男ーーー死柄木弔は、顔の大部分を隠す手の指の間から、不気味な目を覗かせる
その姿を目にした瞬間、相澤の眠たげだった瞳が、一瞬で鋭く細められる
「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」
相澤が叫ぶ
「なんだありゃ…?」
状況が飲み込めずに生徒達が困惑する中、赤髪の少年・切島鋭児郎がそう口を開く
黒い霧は一気に広がり、巨大なゲートへと姿を変えた
そして、そのゲートの向こう側から、死柄木弔が出てくる
それを皮切りに、霧の中から次々と人影ーーーヴィラン達が姿を現していく
「また入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン?」
目の前の光景に、そう口にする切島
緑谷が前に出ようとした、その時
「動くな!」
相澤が叫び、A組を静止する
A組の動きが止まり、緑谷は相澤の顔を見た
そして、ゴーグルを着用した彼を見て、すぐに只事ではないことを悟る
「あれはヴィランだ…!」
「「「「「っ!?」」」」」
その言葉に、一年A組に緊張が広がる
そうしている間にも、ゲートからは次から次へとヴィランが現る
10…50…100
気付けば、その数は400にまで膨れ上がっていた
その様子を見て、驚愕する生徒達
しかし、彼らが驚愕していたのはその数ではない
ヴィラン達に混じった、明らかに人間ではない‘‘何か,,の存在だった
ナメクジやウミウシに似た姿をした、ゲル状の身体を持つ生物
クチクラ質の表皮を持つ、サナギを思わせるような不気味な怪物
長い尻尾と両腕に鋭い鋏を持ち、体毛に覆われた胴体をした昆虫のような顔をしたもの
大型爬虫類を彷彿とさせる、毒々しい色合いをした、両生類のような怪物
そのいずれもが、人間とは似ても似つかない姿をしていた
「……え?」
茶髪をショートボブにした少女・麗日お茶子が息を呑む
「な、何だよ……あれ…あれも、ヴィラン……なのか?」
小柄な体格とブドウのような頭が特徴の峰田実が思わず溢したその疑問に、誰も答えられない
だが…その場にいた全員が、本能で理解していた
違う
あれは、‘‘人,,ではない
個性で姿が変わった、異形型とは違う
‘‘人間,,ーーー否、‘‘生物としての前提,,そのものが違っていた
緑谷もまた、その異形達を見つめる
(違う…人間じゃない…あれは……)
全身に鳥肌が立つ
ヒーロー科に入学してからーーーいや、その前から様々な個性を見てきた
異形型個性も、そう珍しくはない
しかし
ヴィラン達に混じっている目の前の
個性どうこうの話ではない
生物としての在り方そのものが異質
まるで、この世界の生き物ではないようなーーー
その時だった
「……まさか」
相澤の表情が変わる
驚愕、そして警戒
普段ほとんど感情を表に出さない彼が、僅かに目を見開いた
「スペースビースト……!」
その呟きを聞いた13号が問う
「ご存知なのですか?」
「……最近、警察のヒーロー事務所に極秘で共有された極秘資料だ」
相澤は視線を逸らさずに、そう言う
「ヴィラン『スペースビースト』…召喚した怪物を使役する個性を持つ危険なヴィランだ」
「既にヒーローを複数人返り討ちにしていて、中には犠牲者もいる…警戒度は極めて高い」
その言葉を耳にし、生徒達の緊張がさらに高まる
そして
ヴィランと怪物ーーースペースビースト達の最後に、ある人物達が現れる
現れたのは、黒い霧が服を着たような男と、脳が剥き出しになった大男
そしてーーー
黒いパーカーを着た黒髪の少年と、その隣に立つ金髪の少女
穏やかな表情のまま歩く少年と、その隣をどこか嬉しそうに笑う少女
まるで友人同士が散歩でもしてるかのような自然さだった
だからこそ、その光景は余計に異様だった
二人の姿ーーー正確には、黒髪の少年の姿を見た相澤は、小さく息を吐く
「……いたか…スペースビースト」
相澤の低い呟きが、USJに静かに響いた
◇
ヴィランとスペースビースト達が全て姿を現すと、巨大なゲートはゆっくりと閉じ始める
広がっていた黒い霧が一点へと収束し、本来の姿ーーー黒霧へと戻った
黒霧は本来の姿に戻りながら、静かに口を開く
「13号に…イレイザーヘッドですか……」
「先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいる筈だったのですが……」
その言葉を聞いた相澤の表情がより一層険しくなる
「……やはり、先日のはクソ共の仕業だったか」
低く吐き捨てるような声
つい先日、雄英高校が誇る防衛システム『雄英バリア』が何者かによって破られ、校内へ報道陣が雪崩れ込むという事件が起きていた
当初は偶発的な事件とも考えられていたが、今、黒霧の口から『教師側のカリキュラム』という言葉が出たことで、その認識は覆されていた
一方、死柄木の隣では黒斗もまた僅かに目を細めていた
(……教師側のカリキュラムを事前に入手済み…侵入ではなく、情報収集から準備していたということですか)
(今はまだ規模は大きくないですが、思っていた以上に組織的ですね)
その横で、トガは楽しそうに辺りを見回していた
「わぁ……広いですねぇ!」
まるで遊園地へ遊びに来た少女のような声だった
そんな二人を横目に見ながら、死柄木は苛立ったように呟く
「どこだよ……」
掠れた声がUSJに響く
「せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ……」
死柄木はゆっくりと視線を巡らせる
13号
相澤
そして、一年A組の生徒達
だが、その中に求める姿はない
「……オールマイト…」
「平和の象徴…いないなんて…」
そして
死柄木はゆっくりと両手を広げる
そしてーーー
「子供を殺せば……来るのかなぁ……?」
そう言い放った
その言葉を聞いた生徒達は悟った
プロヒーロー達が、何と戦っているのか
そして、何と向き合っているのか
それはーーーー途方のない‘‘悪意,,だということを
いかがでしたでしょうか?若干終わりが中途半端でしたかね?(汗&苦笑)
ちなみに今回登場したビーストは
・ナメクジやウミウシに似た姿をした、ゲル状の身体を持つ生物→ペドレオン クライン
・クチクラ質の表皮を持つ、サナギを思わせるような不気味な怪物→バグバズンブルード
・長い尻尾と両腕に鋭い鋏を持ち、体毛に覆われた胴体をした昆虫のような顔をしたもの→アラクネア
・大型爬虫類を彷彿とさせる、毒々しい色合いをした、両生類のような怪物→フログロス
と言った感じです