個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~   作:復活のB

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第8話です


第8話『抹消ヒーロー《イレイザーヘッド》』

「はぁ、ヴィラン!?バカだろ……ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ!?」

 

切島が思わず声を上げる

 

雄英高校

 

日本最高峰のヒーロー育成機関であり、その警備体制も国内最高水準

 

大人数とはいえ、そんな場所へ真正面から襲撃を仕掛けてくるなど、常識では考えられなかった

 

「先生、侵入者用センサーは……!?」

 

生徒の一人・八百万百の問い掛けに、13号が視線を巡らせながら答える

 

「勿論、ありますが……」

 

その言葉を遮るように、右が白髪で左が赤髪といった、左右非対称な姿が特徴の轟焦凍が静かに口を開いた

 

「現れたのはここだけか、学校全体か……なんにせよ、センサーが反応しねえなら、向こうにそういうことができる奴がいるってことだ」

 

冷静な分析だった

 

慌てるでもなく、恐怖に飲まれるでもない

 

ただ、目の前の状況を整理し、敵の能力を推測する

 

「バカだがアホじゃねえ…これはなんらかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」

 

その言葉に、生徒達の間へ再び緊張が走る

 

もし轟の推測が正しいのであれば、敵はただ力任せに突っ込んできた集団ではない

 

何らかの目的を持ち、なおかつ雄英の警備網を潜り抜けるだけの周到な準備と、それを可能にする者が存在するということになる

 

何より、目の前に広がる四百を超えるヴィランと、異形の怪物(スペースビースト)達がその事実を雄弁に物語っていた

 

一方、その様子を眺めていた黒斗は、静かに一年A組へ視線を向ける

 

(混乱していますが、統率は崩れていない…)

 

(教師が優秀だからか、生徒達自身の資質か…それとも、その両方でしょうか)

 

彼の視線は、一人ひとりを値踏みするように移っていく

 

(なるほど…これが雄英高校ヒーロー科)

 

その隣では、トガが小さく笑みを浮かべていた。

 

「ねぇ、黒斗くん」

 

「なんですか?」

 

「なんだか楽しそうな子がいっぱいいますねぇ」

 

「……そうですね」

 

黒斗は短く答えながらも、その目だけは一瞬たりとも教師陣から逸らさなかった

 

この場で最も警戒すべき相手

 

それは二人

 

凝視した相手の個性を、異形系の個性を除いて‘‘抹消,,できる個性『抹消』を持つイレイザーヘッドこと相澤消太

 

そして、指先からいかなるものも吸い込み、分子レベルで崩壊させる個性『ブラックホール』を持つ13号

 

彼は既に戦闘ではなく、‘‘戦場,,そのものを分析し始めていた

 

 

「13号!避難開始!学校に電話を通せ!」

 

相澤は13号へ振り返ることなく指示を飛ばす

 

「センサーの対策も頭にあるヴィランだ……電波系の奴が妨害してる可能性がある。上鳴、お前も個性で連絡を試せ!」

 

「っす!」

 

稲妻模様の黒いメッシュが入った金髪の少年ーーー上鳴電気が頷く

 

その一方で、緑谷は思わず一歩前へ出た

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?」

 

視線の先には、数百人のヴィラン

 

そして、そのヴィランに混じって蠢く異形の怪物達(スペースビースト)

 

「あの数じゃ……!いくら個性を消せるって言っても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を封じてからの捕縛です!それに……!」

 

緑谷の瞳が怪物達(ビースト)へ向く

 

「あの怪物達が個性で生み出された存在だとしても、もう実体化している以上、先生の個性で全部止められる保証なんてありません!正面戦闘じゃ……!」

 

緑谷の声には焦りが滲んでいた

 

ヴィランだけでも異常な戦力

 

そこへ加えて、あの得体の知れない怪物達

 

いくらプロヒーローである相澤でも、一人で相手にするにはあまりにも荷が重すぎる

 

しかしーーー

 

相澤は敵から一瞬たりとも視線を逸らさない

 

「……一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」

 

その一言だけを残し、そしてーーー

 

「任せた、13号」

 

それだけを言い残すと、相澤は大きく跳躍した

 

広場に着地すると、そのまま一直線にヴィランの群れへ飛び込んでいく

 

「射撃隊!行くぞ!」

 

「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかった!?誰よ!」

 

「知らねぇ!だが、一人で突っ込んでくるとはーーー」

 

「「「大間抜けぇ!!」」」

 

三人のヴィランが一斉に個性を発動する。

 

それぞれの射撃系の個性(攻撃)が相澤へ向けて放たれようとしたーーーその瞬間

 

カチッ

 

相澤の‘‘個性,,が発動した

 

「あれ?個性が…」

 

「うわっ!?」

 

「あ!?出ねえ!?」

 

突如として個性が使えなくなったことに狼狽するヴィラン達

 

その一瞬の隙を、相澤は見逃さない

 

捕縛布が蛇のように唸り、三人の身体を一瞬で拘束する

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

そのまま勢いよく互いの身体をぶつけ合わせる

 

鈍い衝突音が響き、三人はその場で意識を失った

 

「バカ野郎!あいつは視ただけで個性を消すっつーイレイザーヘッドだ!」

 

後方のヴィランが叫ぶ

 

「消すぅ?」

 

四本腕の異形型ヴィランが、獰猛な笑みを浮かべる

 

「俺らみてぇな、異形型のも消してくれるのかぁ!?」

 

雄叫びを上げながら四本の拳を振り上げ、一気に距離を詰める

 

しかし

 

「……いや、無理だ」

 

相澤は冷静に、四本の拳を紙一重で躱し続ける

 

 

 

上段

 

下段

 

まるで攻撃を見切っていたかのように全てを避け切るとーーー

 

バキッ!!

 

鋭い拳がヴィランの顔面を打ち抜いた

 

「ぐぁっ!?」

 

身体が大きく仰け反り、宙に浮かぶ

 

さらに相澤は捕縛布を放ち、宙に浮いたその足首へ巻き付けた

 

「だがお前らみたいな奴の強みはーーー」

 

そこへ背後から別のヴィランが襲いかかる

 

「ヌゥン!」

 

だが

 

「統計的に、近接格闘で発揮されることが多い」

 

身を沈めて攻撃を躱し、そのまま鋭い蹴りを腹部へ叩き込む

 

「がっ……!」

 

吹き飛ばされたヴィランは後方のヴィラン二人を巻き込み、まとめて地面へ転がった

 

その直後

 

捕縛布を強く引く

 

宙吊りになっていた四本腕のヴィランが勢いよく叩き付けられ、先ほど倒れた三人へ激突する

 

轟音

 

四人まとめて、その場で意識を失った

 

相澤は静かに捕縛布を引き戻す

 

「……だから、その辺の対策はしてある」

 

相澤は静かにそう言い放つ

 

その後も相澤は捕縛布を翻しながら、次々とヴィランを戦闘不能へ追い込んでいく

 

まるで長年積み重ねてきた経験そのものが動いているかのようだった

 

無駄な動きは一切ない

 

個性を封じて隙を作り、一撃で無力化する

 

それを機械のような正確さで繰り返していく

 

「肉弾戦も強く…その上、ゴーグルで目線を隠されていては誰を消しているか分からない……集団戦においては、そのせいで連携が遅れを取る……」

 

相澤の戦闘を見た死柄木は小さく呟く

 

「なるほど……嫌だな、プロヒーロー。有象無象じゃ歯が立たない」

 

その言葉には、苛立ちよりも純粋な評価が含まれていた

 

一方、その隣では黒斗も静かに戦況を見つめている

 

(抹消と体術を組み合わせた制圧型……)

 

(敵の個性に依存した戦術を根本から崩すタイプですか……確かに厄介ですね)

 

冷静な分析。その表情に焦りはない

 

むしろ、相澤の実力を確認できたことに納得しているようですらあった

 

その横で、トガは目を輝かせる

 

「わぁ……イレイザーヘッド、思ってたよりずーっと強いですね!」

 

「ええ」

 

黒斗は小さく頷く

 

「さすがはプロヒーローです。正面から相手をするには、少々骨が折れそうですね」

 

その言葉を聞いた死柄木が、二人へ視線を向ける

 

「……どうする?お前らの怪物(スペースビースト)もあいつに突っ込ませるか?」

 

黒斗は一瞬だけ相澤へ視線を向け、そして静かに首を横へ振った

 

「いえ、まだです」

 

「彼の個性では、召喚したビーストそのものは消せません」

 

「ですが、今は相手の出方を見ます。まだ焦る必要はありません」

 

その落ち着き払った返答に、黒霧は小さく感心したように目を細める

 

「……なるほど。敵を知ってから動く、と」

 

黒斗は短く答える

 

「はい。勝つためには、それが一番合理的です」

 

その頃もなお、相澤はヴィラン達を次々と制圧し続けていた

 

しかしーーー

 

彼自身はまだ気付いていなかった

 

自分を静かに観察し、その戦い方すら分析している‘‘もう一人の脅威(綾瀬黒斗),,の存在に

 

 

(……やはり)

 

黒斗は相澤の一挙手一投足から視線を外さない

 

捕縛布の軌道

 

体重移動

 

視線の動き

 

そして、‘‘抹消,,を使用するタイミング

 

(個性を消してから接近戦で制圧する……)

 

(戦闘能力も非常に高いですが、一番厄介なのはあの判断力ですね)

 

ヴィランがどこから現れようと、一切慌てない

 

誰を優先して制圧すべきか

 

どの攻撃を避け、どの攻撃を受け流すべきか

 

その全てを一瞬で、尚且つ合理的に判断している

 

だからこそ、有象無象では勝てない

 

(ですが……)

 

黒斗の視線が、相澤のゴーグルへ向く

 

(弱点がない訳ではありません)

 

抹消を維持する為には、目を開け続けなければならない

 

逆に言えばーーー

 

一瞬でも目を閉じれば、その‘‘個性,,は途切れる

 

黒斗は静かに息を吐いた。

 

「……アラクネア」

 

ただ、それだけを呟く

 

命令というより、合図だった

 

その瞬間

 

ヴィラン達の足元ーーー地中深く

 

既に潜伏していた、昆虫を思わせる顔に体毛で覆われた胴体を持つビーストーーーインセクティボラタイプビースト アラクネアが、音もなく土を掘り進み始める

 

さらに別方向では、バグバズンブルードが身を低くして移動を開始

 

その後方には、サンショウウオ等の大型両生類を彷彿とさせる外見(フォルム)のビーストーーーアンフィビアタイプビースト フログロスが静かに口内へ熱を溜めていた

 

三体とも、黒斗から細かな指示は受けていない

 

互いに発するビースト振動波によって情報を共有し、自律的に連携を組み立てている

 

黒斗が与えたのは、たった一つ

 

動けという、単純な合図だけ

 

そしてーーー

 

ドゴッ!!

 

相澤のすぐ脇の地面が突然盛り上がり、砕け散った

 

「!」

 

土煙を突き破り、アラクネアが飛び出す

 

鋭い鋏が相澤へ迫る

 

「……!」

 

相澤は即座に後方へ跳び、その一撃をかわす

 

だが、それこそが狙いだった

 

アラクネアの掘った穴から、別な影が勢いよく飛び出す

 

バグバズンブルード

 

「……っ!」

 

ブシュゥゥッ!!

 

バグバズンブルードの口から吐き出された紫色のガスーーーバグバズンブルードの武器である催涙ガスが、一瞬で相澤の周囲を包み込む

 

甘ったるい匂いが鼻を突く

 

「ぐっ……!」

 

咄嗟に距離を取る相澤

 

しかし、完全には避けきれない

 

ゴーグルの覗き穴の隙間から、ガスが入り込む

 

目に鋭い刺激が走った

 

「……っ!」

 

涙が滲み、視界が霞む

 

反射的にーーーほんの一瞬だけ、目を閉じてしまう

 

その瞬間、黒斗が静かに呟いた

 

「今です」

 

地中から、さらにもう一体

 

フログロスが飛び出し、大きく口を開く

 

フログロスの体内の油が気化され、オレンジ色の火球が形成されーーー

 

「ーーーッ!」

 

ドゴォォォンッ!!

 

轟音と共に火球が相澤へ向かって放たれた

 

「ッ!!」

 

相澤の耳はその轟音を捉え、反射的に身体を捻る

 

直後

 

ドオォォォォンッ!!

 

フログロスの放った巨大な火球が炸裂した

 

爆炎が一気に広がり、凄まじい熱風がUSJ中央広場を駆け抜ける

 

爆風によって瓦礫や砂埃が巻き上がり、視界は瞬く間に炎と煙に飲み込まれた

 

「や、やったか……?」

 

一人のヴィランが思わず呟く

 

死柄木は首元を掻きながら、立ち上る黒煙をじっと見つめていた

 

黒斗もまた、その煙の奥から視線を逸らさない

 

(……)

 

まだ何も言わない

 

まだ、結果を判断するには早い

 

その頃ーーー

 

「みんな急いでください!」

 

13号に誘導されながら、一年A組は出口へ向かって走っていた

 

しかし、その時だった

 

ドオォォォォンッ!!

 

背後から響いた凄まじい爆発音に、生徒達の足が思わず止まる

 

「なっ……!?」

 

「今の音……!」

 

全員が一斉に振り返る

 

立ち上る巨大な黒煙

 

燃え上がる炎

 

爆炎がUSJ中央広場を覆っていた

 

その光景を目にした緑谷の表情が凍り付く

 

「ーーーッ!イレイザーヘッドォォォッ!!」

 

悲鳴にも似た叫びが、USJ中へ響き渡った

 

立ち込める黒煙の向こう側

 

そこにいるはずの一人の教師(プロヒーロー)の姿は、まだ誰にも見えなかった

 

To be continued……




いかがでしたでしょうか?今回も若干中途半端でしたかね?あっ、あらかじめ言っておきますけど、火球を喰らった(推定)相澤先生はちゃんと生きてますよ(え?ネタバレやめて?いやだって相澤先生殺したと勘違いされて感想欄荒れるの嫌だし…)
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