個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~ 作:復活のB
「くたばれやぁっ!!」
「──っ!」
黒斗とトガヒミコを睨み据えていた相澤の死角から、一人のヴィランが鉄パイプを振り上げながら飛び掛かった
だが───
「遅い」
相澤は振り返ることすらせず、一歩だけ身体をずらす
ブォンッ!
鉄パイプは空を切る
次の瞬間
ドゴッ!!
「がふっ!?」
踏み込んだ勢いそのままに放たれた膝蹴りがヴィランの腹部へ深々と突き刺さる。
白目を剥いたヴィランはその場へ崩れ落ち、動かなくなった
しかし───
「囲めぇ!!」
「一斉に行くぞ!」
「今なら押し切れる!」
一人が倒れても止まらない
まるで堰を切ったかのように、次々とヴィラン達が相澤へ襲い掛かる
「……」
その光景を見つめながら、黒斗は小さく目を細めた
(なるほど…死柄木さんが圧を掛けましたか)
先程まで戦意を失い、様子を窺っていたヴィラン達
そんな彼らがここへ来て一斉に動き出した理由は一つしかない
(ですが……)
黒斗は冷静に戦況を分析する
ヴィラン達が加勢したことで相澤の負担は確実に増えた
しかし、それ以上に重要なのは──
(視線が散る)
これまで相澤の意識は、常に自分達二人へ向けられていた
だが今は違う
周囲から襲い来るヴィラン達への対処を強いられ、一瞬、一瞬ではあるが注意が分散している
その僅かな綻びを、黒斗は見逃さなかった
そして
その隣で
トガもまた、口元へ小さな笑みを浮かべていた
「黒斗くん」
「はい」
言葉は、それだけ
互いに何を狙うかなど説明する必要はない
幼い頃から積み重ねてきた時間が、その全てを共有していた
次の瞬間
ダッ!!
二人はほぼ同時に地面を蹴り、ヴィラン達の隙間を縫うように相澤へと迫った
「っ!」
ヴィランの一人を殴り飛ばし制圧した直後、気配を殺して自身に迫る黒斗とトガに、相澤は気付いた
(狙いは……右腕かっ!?)
トガのナイフが一直線に相澤の右腕へと走る
その鋭い軌道を見た瞬間、相澤は即座に判断した
自身の腕の腱を断ち、捕縛布を封じるつもりだ
「……!」
迷わず後方へ跳ぶ
シュッ!!
ナイフは相澤の目前を掠め、そのまま空を切った
(読んだ……!)
そう確信した──その瞬間だった
「──そこです」
「っ!?」
黒斗が踏み込む
トガの攻撃に意識を向けた、その一瞬の隙
黒斗はそれを待っていた
身体を大きく捻り、腰の回転を乗せた右回し蹴りを放つ
「ぐっ……!」
ドゴォッ!!
重い衝撃音がUSJへ響き渡る
トガの一撃を躱した直後だったが為、防御姿勢を立て直す暇もない
相澤は咄嗟に右腕を差し出し、蹴りを受け止めた
次の瞬間
───ボギィッ!!
鈍く、嫌な音が響き渡った
「ぐぅっ……!」
凄まじい衝撃に相澤の身体が数メートル吹き飛び、地面を滑る
(土壇場で腕を合わせたか……!)
黒斗は表情一つ変えない
一方の相澤は、痛みに顔を歪めながらもすぐに立ち上がる
(ぐっ……!?腕を持っていかれたか……っ!)
右腕全体に激痛が走り、力が入らない
骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる
「へぇ~…」
少し離れた場所で、その様子を見ていた死柄木が口元を歪める
「本当にやるじゃねぇか…
当初、死柄木が戦力として見ていたのは綾瀬黒斗だけだった
トガヒミコについては、黒斗に付き従う‘‘おまけ,,程度にしか認識していなかった
だが、今は違う
片方が相手の意識を奪い、もう片方が、その僅かな隙を逃さず仕留める
互いが互いの動きを理解し切っているからこそ成立する連携
「……面白ぇ」
死柄木は首を掻きながら、不気味に笑う。
その赤い瞳は、なおも立ち続けるイレイザーヘッドだけを見据えていた。
(黒斗達だけでも十分戦えてる)
(……けど)
口元がゆっくりと吊り上がる。
(そろそろ俺も遊ぶか)
ダンッ!!
死柄木は地面を蹴り、一直線に相澤へ向かって駆け出した
「……!」
その接近を察知した相澤は即座に反応する
右腕は黒斗の蹴りによって折れ、だらりと垂れている
ならば
残る左腕だけで迎え撃つ
ビュオッ!!
捕縛布が一直線に死柄木へ伸びる
狙いは拘束
ほんの一瞬でも動きを止められれば十分だった
だが──
「甘ぇよ」
バシッ!!
死柄木は飛来した捕縛布を左手で掴み取る
そのまま勢いを殺すことなく、一気に距離を詰める
「っ!」
相澤は迎え撃つように左肘を引き、最短距離で死柄木の腹へ肘打ちを放った
ゴッ!!
確かな手応え
しかし
「捕まえた」
「……!」
ガシッ!!
死柄木の五本の指が、相澤の左肘を掴む
その瞬間だった
ジュリ……
ジュリジュリ……
肘へ触れられた部分から、皮膚が崩れ落ち始める
「なっ……!?」
見たことのない現象だった
まるで砂となって崩れていくように、自分の腕が少しずつ壊れて…否、
(こいつの個性か……!?)
相澤は咄嗟に身体を引く
強引に腕を振り払い、バックステップで死柄木から距離を取る
だが
左肘は既に肘の部分の筋肉が剥き出しになり、大きく損傷していた
右腕は黒斗との戦闘で深刻なダメージ
左腕も今の一撃で満足に使えない
(両腕が……)
それでも
「まだだ……!」
相澤は止まらない
蹴り
体当たり
肩による打撃
腕を使えないなら、それ以外で戦えばいい
ドゴッ!!
「ぐあっ!」
バキッ!!
「がはっ!」
ヴィラン達を次々と戦闘不能へ追い込んでいく
その執念に、一瞬だけ周囲のヴィラン達の足が止まった
しかし
ドン──ッ
不意に背中へ硬い感触が伝わる
硬い
まるで壁へぶつかったような違和感
「……?」
相澤は反射的に振り返る
そこに立っていたのは──‘‘異形,,
筋骨隆々の巨体
感情のない瞳
そして───露出した
「……!」
ヴィラン達が現れた際、死柄木の隣に立っていた存在───
対オールマイト用として作られた‘‘改人,,──脳無だった
(しまっ───)
相澤が気付き、咄嗟に距離を取ろうとした時には、もう遅かった
ガシッ!!
巨大な手が相澤の頭部を鷲掴みにし───
ズドォォォォンッ!!
そのまま頭から地面へと叩きつけた
コンクリートが砕け、破片が宙へ舞う
「がっ…!?」
さらに
ズガンッ!!
ズガンッ!!
ズガァァンッ!!
まるで人形でも扱うかのように、何度も、何度も
容赦なく地面へ叩きつけられる
その度に骨が軋み、頭からは血が流れる
やがて───相澤は、完全に意識を手放した
ぐったりと全身から力が抜け、その瞳からも光が消える
「終わったか」
死柄木が興味なさそうに呟く
USJ中央広場に、一瞬の静寂が訪れた───その時だった
「相澤先生……!」
かすかな声
ほんの呟きにも等しい、あまりにも小さなその声を、黒斗の耳だけは聞き逃さなかった
「……?」
黒斗は静かに、声のした方向へと視線だけを向ける
そこには、三つの人影があった
緑谷出久
峰田実
そして、蛙を思わせる顔立ちをした少女──蛙吹梅雨
三人の一年A組の生徒が、息を呑みながら中央広場の光景を見つめていた
いかがでしたでしょうか?次回は場面が変わり
・各エリアに飛ばされたA組の戦闘
・13号VS黒霧&ゴルゴレム
になる予定です
……………あっ、ちなみに相澤先生は死んでませんよ!?気絶しただけですからね!?