個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~ 作:復活のB
あとお気に入りが300件以上になってて驚きました!お気に入り登録してくれた方々、ありがとうございます!にしてもAIって凄いですよね…
──────時は、少し遡る
黒霧の個性によってUSJ各地へと分断された一年A組
緑谷出久、峰田実、そして蛙吹梅雨の三人は、水難ゾーンへと転送されていた
水中へ放り出された緑谷は直後、水中系個性を持つサメ型ヴィランの襲撃を受ける
しかし、その危機を救ったのは蛙吹梅雨だった
水中での活動を得意とする個性『蛙』を活かし、峰田を抱えながら緑谷を救助
三人は辛うじて近くに浮かぶ救助船へ避難することに成功する
だが、安心する暇はなかった
船の周囲には、緑谷を襲ったサメ型ヴィランを含めた水中系の個性を持つヴィラン達が次々と集まり、三人の乗る船を取り囲んでいた
もっとも、彼らは船へ飛び乗って来ようとはしない
その様子を見た緑谷は、一つの仮説へと思い至る
──敵は、自分達の個性を把握していない
もし蛙吹の個性が水中戦を得意とする『蛙』であることを知っていれば、彼女の能力を発揮できる水難ゾーンではなく、火災ゾーンに送っていた筈だ
加えて、船へ攻め込まず、水中から様子を窺っていることからも、こちらの個性を警戒していることが窺える
その考えを二人へ伝えた緑谷は、互いの個性を改めて確認し合い、この状況を突破する方法を考え始めていた
───その時だった
「……?」
蛙吹がふと水面へ視線を向ける
静まり返っていた、水面の下
その奥から、何かの‘‘影,,がこちらへ近づいてくる
その影は、最初は一つだけだった
だが、二つ…三つ…五つ…十と、数はだんだんと増えていき、やがてこの場にいるヴィランを軽く上回る程の数となる
その異様な光景に、緑谷達は勿論、ヴィラン達までもが思わず息を呑む
「な…なんだ…?」
一人のヴィランが思わずそう呟いた──次の瞬間だった
ザバァッ!!
轟音と共に水柱を上げながら、一体の異形が姿を現す
両生類を思わせる頭部
ぬめりを帯びた、灰褐色の皮膚
全身へ不規則に浮かぶ黒い斑点
口に並ぶ、短くも鋭い牙
そして、発達した太い四肢
スペースビーストの一体──フログロスだった
しかも、一体だけではない
ザバァッ!!
ザバアァァッ!!
次々と水面を割り、フログロス達が次から次へと顔を出していく
十体…二十体…三十体
やがて、この場にいるヴィランをも上回る程の数のフログロスが、三人の乗る船を取り囲むように静かに泳ぎ始めた
ヴィラン達の後方で、まるで獲物を追い詰める捕食者の群れのように
「…っ!」
瞬く間に自分達を取り囲む敵が増えたその光景を目の当たりにし、緑谷は思わず絶句する
「な…なん…なんなんだよアレェ!?」
峰田は顔を真っ青にしながら、悲鳴にも似た声を上げる
その反応も無理はない
目の前には水中系ヴィラン達
そして、そのさらに向こうには、それをも上回る数の怪物
逃げ場など、どこにも存在しなかった
そんな中、フログロス達は一斉にその双眸を三人へ向ける
まるで獲物を値踏みするように
水難ゾーンの空気が、一瞬にして張り詰めた
その緊張を破ったのは、意外にもヴィラン達の方だった
「ハハッ、なんだあいつらか……ビビったぜ」
一人のヴィランが胸を撫で下ろすように笑う
その言葉を聞いた周囲のヴィラン達も、張り詰めていた空気を緩めた
「にしても、こんだけのバケモンを生み出して操れるだなんてとんでもねえ個性だよなぁ……」
「2年も警察やヒーローから逃げ続けられる訳だぜ」
「まったくだ。あの『スペースビースト』って奴、化け物なのは本人だけじゃねぇってことか」
口々にそんな会話を交わすヴィラン達
その様子を、救助船の上から緑谷はじっと見つめていた
(やっぱりだ……!)
緑谷の胸中で、抱いていた一つの推測が確信へと変わる
(最初にあの怪物達を見た時から違和感はあった)
USJへヴィラン達と共に現れた、およそ二百体もの異形の怪物
そのどれもが生物としてあまりにも異質でありながら、決して無秩序には動いていなかった
自然発生した存在とは、とても思えない
だからこそ緑谷は、あれらは誰かの個性によって生み出された存在なのではないかと考えていた
そして今、その推測はヴィラン達自身の会話によって裏付けられた
(あの怪物達は……やっぱり個性によって生み出された存在なんだ)
だが、本当に驚くべきなのはそこではない
(あれだけの数を……
二百体…いや、それ以上かもしれない程の数に加え、同じ怪物だけではない
USJ中央広場で見た、巨大な軟体動物のような怪物
昆虫のような頭部をし、胴体には毛を持つ怪物
まるでサナギのような姿の怪物
そして今、自分達の目の前にいる両生類型の怪物
複数種類の異形の生物を、一人の人間が生み出し、なおかつ同時に操っている
(そんな個性……聞いたことがない……!)
ヒーローを目指してきた緑谷は、これまで数え切れないほどの個性を研究し、分析してきた
だが、それらの常識へ真正面から挑戦するような能力だった
それぞれが異なる生態を持つ怪物を大量に生み出し、それら全てを操り、戦力として運用する個性
その規模は、もはや一人の人間が持つ個性という枠を大きく超えている
(これが……スペースビースト……)
相澤の口にしていたその敵名を、緑谷は心の中で静かに
一方、その間にもフログロス達は動かない
船へ飛び掛かることもなければ、周囲にいるヴィラン達へ牙を剥くこともない
静かに水面を漂いながら、ただ三人を見据えている
その様子を見た緑谷は、さらに一つの事実へ気付く
(襲わない……?)
フログロス達とヴィラン達との距離は、ほんの数メートル
少し身体を動かせば飛び掛かれる距離だ
それにもかかわらず、フログロス達は一体としてヴィランには一切敵意を向けていない
(敵味方を識別してる……?)
その可能性に思い至った瞬間、緑谷の背筋を冷たいものが走る
もし単純に暴れ回るだけの怪物なら、敵味方の区別などつかないはずだ
だが、目の前の
それだけではない
すぐに襲い掛かってこない
距離を保ちながら自分達の様子をじっと観察し、最適なタイミングを窺っているようにすら見える
それは、本能だけで動く獣の行動ではなかった
獲物を観察し、状況を判断し、味方と連携して行動する
そこには、明確な‘‘知性,,が存在していた
(高い知能まで持ってるのか……!)
緑谷は思わず息を呑む
ただ強いだけでなければ、ただ数が多いだけでもない
この怪物達は自ら考え、判断し、まるで統率された兵士のように行動している
そんな存在が、USJ全域に数百体も投入されている
その事実の重さを理解した瞬間、緑谷は改めて、自分達が想像以上に危険な相手と戦っていることを痛感するのだった
──────その直後だった
ズドオオオオンッ!!
「「「っ!?」」」
轟音と共に、水面が大きく盛り上がる
次の瞬間
激流が一本の巨大な腕を形作り、そのまま救助船へと叩きつけられた
バギィィンッ!!
救助船は為す術もなく真っ二つにへし折られ、そのまま大きく傾いた
「じれったいだけだ。さっさと終わらせよう」
低い声が水面へ響く
その水の腕を生み出したのは、水難ゾーンにいたヴィランの一人だった
どうやら、周囲の水を自在に操る個性の持ち主らしい
「なんて力……船が割れたわ」
表情こそ変わらないものの、蛙吹はわずかに感嘆の色を滲ませた声で呟く
「うぅ……うわああああ!!」
「峰田くん!ヤケはダメだ!」
極限状態に陥った峰田は緑谷の制止も聞かず、半ば自暴自棄になって頭から個性『もぎもぎ』を次々ともぎ取り、水面に浮かぶヴィランやフログロス達へ向かって投げつける
──だが
ボッ! ボッ!
何体かのフログロスが即座に口から火球を放つ
火球が命中したもぎもぎは一瞬で燃え尽き、水面へ届く前に灰となって消えた
火球を免れた僅かなもぎもぎもヴィラン達へ届くことはなく、水面に浮かび、ぷかぷかと漂うだけだった
「あぁ、なんてことを……!敵に個性が……」
峰田の行動で能力を知られてしまった
そう考えた緑谷は思わず顔を青ざめさせる
しかし、その直後
「なんだこれ?キメェ……」
ヴィラン達は誰一人としてもぎもぎに触れようとはせず、手で水面を叩き、自分達から遠ざけ始めた
それはフログロス達も同じだった
火球で焼き払えなかったもぎもぎには決して触れず、一定の距離を保ったまま静かに様子を窺っている
(警戒して触らない…?)
その様子を見た緑谷は、かつてオールマイトの言った‘‘ある言葉,,を思い出した
その言葉とは───敵が勝利を確信した時が、大きなチャンス
というもの
かつてオールマイトが、情熱大陸で口にしていた言葉であった
───その瞬間
ドォン!!
「っ!?」
真っ二つに割れた船体に、前後から飛来した二つの火球がほぼ同時に直撃した
放ったのは、船を取り囲むフログロスのうちの二体
轟音と共に爆炎が上がり、ひび割れていた船体はさらに大きく砕け散る
メキ……
メキメキメキッ!!
焼け焦げた船底から鈍い軋みが響き、水が勢いよく流れ込んでいく
傾きはさらに激しくなり、もはや沈むのは時間の問題だった
(クッ…考えてる暇はない…やるしかない!)
しかし、その極限の状況が───緑谷出久に決意させた
ダァン!!
「うわあああああーッ!!」
緑谷は船縁へ片足を乗せると、そのまま勢いよく踏み切った
「死ぃねえぇぇぇぇっ!!」
雄叫びと共に、緑谷の身体が大きく宙へと跳び上がる
「ヘッ、やっぱりガキだな!」
ヴィラン達は、その行動を自暴自棄になったものだと判断した
水中へ飛び込めば最後、着水した瞬間を狙って袋叩きにする
そんな邪悪な笑みを浮かべながら、ヴィラン達は一斉に身構える
しかし──
その中で、フログロス達だけは違った
宙へ跳び上がった緑谷を見上げる無数の瞳
その動き
その視線
そして、船から飛び出す直前に見せた僅かな挙動
それらを観察したフログロス達は、ただの自暴自棄ではないと察した
奴は何かをするつもりだ
そう判断したかのように、複数のフログロスが一斉に口を開く
その口腔へ、赤々とした光が集束していく
緑谷へ狙いを定める
逃げ場のない空中
身動きの取れない無防備な身体
まさに格好の的だった
しかし──
フログロス達の推測の通り、緑谷は自暴自棄になったわけではなかった
ましてや、何の策もなく船から飛び出したわけでもない
彼の脳内では、周囲の光景がまるでスローモーションになったかのように、凄まじい速度で思考が巡っていた
(いくらスマッシュでも、円形で陣を取られてちゃ一掃は無理だ!そもそも、この水難ゾーンを突破してもまだ敵はいる……!腕は犠牲にできない!)
緑谷は空中で、左腕を前へ突き出した
中指を内側へ曲げて親指で押さえ、いわゆる‘‘デコピン,,の形にして
(卵が……爆発しないイメージ……!)
左手の指先へ、自身の個性───ワン・フォー・オール※以降OFAの力を集中させる
その一瞬
その間にも、フログロス達の口から火球が放たれた
ボッ!!
ボボッ!!
複数の火球が、緑谷へ向かって一直線に飛来する
だが───
「
緑谷の指先へ、さらに力が集中する
火球が迫り、距離が縮まる
そして───
「
バチィンッ!!
指が弾かれた
その瞬間
凄まじい風圧が一点から爆発的に放たれた
ドォオオオオオオオオオオオオオッ!!
空気そのものが震える
猛烈な衝撃波が円状に広がり、緑谷へ向かっていた火球を真正面から吹き飛ばす
ボシュッ!!
ボシュウッ!!
火球は衝撃波に飲み込まれ、そのまま跡形もなく掻き消された
そして、その余波は緑谷の眼下に広がる巨大な人工湖へと叩きつけられる
ズドォオオオオオオンッ!!
水面が爆発した
巨大な水柱が天高く噴き上がると同時に、人工湖の水面が大きく抉れ───
まるで湖そのものを穿ったかのような巨大な空間が、一瞬にして水中へと開け放たれた
大量の水が左右へ押し退けられ、ヴィラン達、そして無数のフログロス達が、その衝撃に巻き込まれて吹き飛ばされる
水面に展開していたヴィラン達もまた、突然発生した暴風と水圧に煽られ、体勢を崩した
そして、その中心
緑谷出久は、宙にいた
自ら作り出した道を見下ろしながら──次の行動へ移る
「蛙吹さん! 峰田くん!」
緑谷は宙で身体を捻り、救助船に残る二人へ向かって叫んだ。
「っ!そういうことね……行くわよ、峰田ちゃん!」
その意図を即座に理解した蛙吹は、峰田を抱え上げる
そして──
ダンッ!!
救助船の縁を強く蹴り、峰田を抱えたまま大きく宙へ跳躍した
「ケロォ!」
直後、蛙吹の口から長い舌が伸びる
ヒュッ!!
空中を走った舌は、緑谷の身体へと巻き付き――
パシッ!
確実に彼を捉えた
そのまま蛙吹は舌を引き戻し、緑谷の身体を自分達のもとへ引き寄せる
しかし──
「……っ!」
回収された緑谷の左手の中指と親指は、デラウェア・スマッシュを放った反動によって大きく腫れ上がり、紫色に変色していた
それでも
緑谷は痛みに耐えながら、未だ水面を見つめていた
そんな彼の姿を見ていた峰田が、ぽつりと呟く
「ちっくしょう……なんだ緑谷、オメェ……」
そして──
「かっけえことばっかしやがって……!」
恐怖に震えていたのは、何も自分だけではない。緑谷も同じだった筈だ
それでも緑谷は、自分達を助けるために動いた
その事実が、峰田の中にあった恐怖を押し退けていく
「うおおおおお!!」
峰田は顔を上げる
「オイラだって!!オイラだってええぇぇ!!!」
両手を頭へ伸ばし、自身の個性──『もぎもぎ』を次々と引き剥がしていく
そして、大量の『もぎもぎ』を水面へ向かって投げつけた
一方の人工湖の水面では、大きな異変が起こっていた
先程、緑谷が放ったデラウェア・スマッシュ
その衝撃によって水面へ開けられた巨大な穴を中心に、周囲の水が凄まじい勢いで引き寄せられていく
まるで巨大な排水口へ吸い込まれていくかのように、大量の水が一箇所へ集中していく
そして──水面そのものが大きく渦を巻き始めた
「ぐっ!?引き摺り込まれる……!」
水中にいたヴィラン達が必死に抵抗する
だが、あまりにも強烈な水流の前に、その抵抗は無駄に終わってしまった
その力は、彼らだけではない
「ギュルルルル……!」
フログロス達までもが激流に巻き込まれ、次々と渦の中心へ引き寄せられていく
そして、峰田が投げた大量の『もぎもぎ』もまた、水流によってヴィラン達やフログロス達のもとへ運ばれていった。
ペトッ!
「んあ?」
ヴィラン達の身体に、『もぎもぎ』が付着する
「なんだこれ!?取れねえ!」
必死に引き剥がそうとする
しかし、強烈な粘着力によって簡単には剥がれない
さらには、フログロス達の身体にも、次々と『もぎもぎ』が付着していく
やがて、ヴィラン達とフログロス達は、激しい水流によって一箇所へと押し集められていく
互いに身体をぶつけ合い、身動きすら取れなくなったところへ、さらに『もぎもぎ』が絡みつく
その粘着力によって、まるで巨大な一つの塊のようにまとまっていく
「な、なんだこりゃあ!?」
「離れろ!離れろぉ!!」
しかし、もはやどうすることもできない
ゴォォォォォォッ!!
巨大な渦はさらに勢いを増す
ヴィラン達も
フログロス達も
そして、彼らをまとめ上げた『もぎもぎ』も
全てが渦の中心へと吸い込まれていく
「……水面に強い衝撃を与えたら……」
緑谷は、流れを見つめながら呟く
「広がって……また中心に、収束するから……!」
その直後──
ザッバアァァァァァン!!
轟音
巨大な水流が、逃げ場を失ったかのように一気に上空へと噴き上がった
巨大な水柱
その中心から
ヴィラン達とフログロス達が一つの塊となったまま、凄まじい勢いで空中へと弾き飛ばされ、吹き飛ばされていった
─────緑谷ら三人が水難ゾーンでの窮地を脱した頃
他のゾーンでも、他の一年A組の生徒達が、それぞれの場所でヴィラン達との戦闘を繰り広げていた
火災ゾーン───
火災の発生した町の中が再現された、建物や炎が立ち並ぶこのゾーンには
尾白猿夫
砂藤力道
瀬呂範太
そして、麗日お茶子
この四人が飛ばされていた
「そっち行ったぞ!」
「任せろ!」
「はあっ!!」
ドゴッ!!
砂藤の拳がヴィランの腹部へ叩き込まれる
吹き飛ばされたヴィランは、そのまま瓦礫の山へと突っ込んだ
「次!」
尾白が叫ぶ
「おう!」
砂藤が振り返った瞬間──
バチィッ!!
「っ!?」
突如として、頭上から赤色の電撃が降り注いだ
「うわっ!?」
四人は咄嗟に散開する
ドォン!!
電撃が地面を打ち抜き、火災で焼け焦げたアスファルトが大きく弾け飛ぶ
「な、なんだ!?」
「上だ!」
尾白の声に、全員が一斉に空を見上げる
そこにいたのは──
「……なに、あれ……?」
麗日が呆然と呟く
炎と煙の向こう
そこから、ゆっくりと姿を現した異形の怪物
人間の二倍ほどもある巨体
逆さまになった巻貝のような体型
その殻から覗く、異様な頭部
そして、全身から放たれる不気味な威圧感
「まさか……」
尾白が構える
「中央広場にいた、あの怪物達の仲間か!?」
「ってことは……」
瀬呂が額に冷や汗を浮かべる。
「こいつもスペースビーストって奴かよ!?」
その怪物──ノーチラスタイプビースト メガフラシは、四人を見下ろしていた
その巨体が、ゆっくりと動く
「来るぞ!」
尾白が叫んだ
しかし──
メガフラシの頭部の左右に備わったオウムガイかアンモナイトのような殻から、虹色の
「っ!?」
四人はその場で散会して避けようとする───が、
「しまっ!?」
砂藤は避けきれず、虹色の波動を浴びてしまう
───その次の瞬間
砂藤の身体が、ふわりと浮き上がった
「うおっ!?」
「砂藤くん!?」
足が地面から離れる
身体が宙へ浮かび上がり、そのままゆっくりとメガフラシの方へ引き寄せられていく
「な、なんだこれ!?」
「無重力……!?」
麗日が目を見開く
だが、砂藤を包む異常な浮遊は止まらない
「うわあああっ!!」
砂藤の身体が、さらに高く持ち上げられる
そして──
メガフラシが、その口を大きく開いた
「……!」
尾白の表情が強張る
「砂藤!」
砂藤の身体が、メガフラシへと引き寄せられていく
このままでは──
「させない!!」
麗日が地面を蹴った
ダッ!!
空中へ浮かぶ砂藤へ向かって、麗日自身も跳躍し、自身の個性『
「砂藤くん!」
「麗日!?」
伸ばした手が、砂藤の腕を掴む
「捕まえた!」
しかし、麗日の身体にもメガフラシの放った虹色の波動───無重力光線の影響が及び、二人の身体が同時に宙へ浮かび上がる
「……っ!」
だが、それでも麗日は砂藤の腕を離さない
「絶対、離さないから!」
二人が宙を漂う
その先には、こちらへ迫るメガフラシ
「まずい!」
尾白が叫ぶ
しかし──
バチィィッ!!
再び、メガフラシから電撃が放たれた
「っ!?」
麗日と砂藤へ向かって、メガフラシの放った電撃が一直線に迫る
その瞬間──
「取ったぁ!!」
シュバッ!!
瀬呂の肘から放たれたテープが空中を走った
それは麗日の身体へ巻き付き、続けざまに砂藤の身体にも絡みつく
「こっち来い!!」
グイッ!!
瀬呂が全力でテープを引く
「わっ!?」
「うおっ!?」
二人の身体が一気に引き寄せられる。
直後──
バチィィィン!!
二人がいた場所を、電撃が通過した
「間一髪……!」
瀬呂が息を呑む
引き寄せられた麗日と砂藤は、そのまま地面へ転がるように着地した
「麗日!砂藤!」
尾白が二人へ駆け寄る
その一方で──
メガフラシは、逃げた獲物を追うようにその巨体をゆっくりとこちらへ向けていた
四人は揃ってその怪物を見上げる
炎に照らされたその異形の姿が、再びこちらを見据えていた
─────場面は変わり、暴風大雨ゾーン
強風や大雨等の悪天候の発生した街が再現されたこのゾーンにも、四人の生徒達が飛ばされていた
常闇踏陰
口田甲司
障子目蔵
そして、芦戸三奈
この四人だ
「こっちだ!!逃げんな!!」
「ひっ……!」
口田は建物の壁際まで追い詰められていた
背後には逃げ場がない
目の前には、拳を振り上げたヴィラン
「終わりだァ!!」
「……!」
口田が身を縮めた───その瞬間だった
ドゴォッ!!
「ぐはっ!?」
ヴィランの身体が横から飛んできた何かに吹き飛ばされる
ヴィランはそのまま壁へ叩きつけられ、動かなくなった
「…………」
口田が呆然と前を見る
そこにいたのは───黒い影
異形の巨大な腕を持つ、口田にとって見慣れた存在
常闇の個性である、伸縮自在の影のようなモンスター『
その鋭い眼光が、壁に叩きつけられたヴィランを見下ろしている
そして───
「大丈夫か?」
常闇がその背後から姿を現した
「……!」
口田は何度も頷く
その直後だった
「うわあああああっ!!」
「ちょっ……待って待って待ってぇ!!」
「───!?」
突然、少し離れた場所から二つの人影が転がってきた
ドサッ!!
地面を転がったのは、障子と芦戸だった
「いったぁ……!」
「大丈夫か!?」
常闇が二人へ駆け寄ろうとする
だが───
『待テ』
黒影が低く唸った
「……?」
常闇が足を止める
その直後
ズル……
ズルズルズル……
雨に濡れた路面の向こうから、何かが這いずるような音が響いた
「……またか」
常闇が呟く
視界の向こう
大雨に霞む街路から、いくつもの異形が姿を現す
不定形の身体
その身体から伸びる触手
ペドレオン クライン
一体
二体
三体
そして───瞬く間に、四人は囲まれてしまった
「……またあいつらか!」
芦戸が立ち上がる
これまでの戦闘で、四人はすでに何度かこの異形の怪物達と遭遇していた
口田も、常闇も
そして、今しがた吹き飛ばされた障子と芦戸も
その戦いの中で、彼らはすでに理解していた
こいつらは、ただ身体が大きいだけの怪物ではない
「来るぞ!」
常闇の声と同時に、ペドレオン クライン達が一斉に触手を伸ばした
ビュンッ!!
「っ!」
常闇は黒影を前方へ突き出す
バシィッ!!
迫ってきた触手を黒影が弾き飛ばす
「この程度……!」
障子も複数の腕を展開し、迫る触手を次々と受け流す
「うわっ!」
芦戸は身体を捻り、頭上から振り下ろされた触手を紙一重で回避する
「こいつら……!」
口田も必死に距離を取る
だが、一体を避ければ別の一体が襲い掛かってくる
前方から
側面から
そして頭上から
まるで四人を逃がすつもりがないかのように、次々と攻撃が飛んでくる
「こいつら……思ってたより手数が多い!」
芦戸が叫ぶ
事実、彼女の言う通り、黒斗の操るビーストの一種であるペドレオンは、触手による打撃と可燃性ガスの噴出能力に加え
頭部の触角から放つ火球
触手からの電撃
口を発光させて放つ衝撃波等、意外にも武器が多いのだ
そして、芦戸が叫んだ──その直後だった
「───!」
常闇の視界の端を、何かが横切った
ペドレオン・クラインの群れ
その間を縫うように───
ズルルルルッ!!
一本の太い触手が伸びてくる
「何っ!?」
常闇は咄嗟に黒影を動かした
ドゴンッ!!
黒影の腕が触手を横から弾き飛ばす
しかし
「……何だ?」
常闇が触手の伸びてきた方向へ視線を向ける
そこには───何もない
ただ、激しい雨が降り続けているだけだった
「……?」
だが
次の瞬間
空間そのものが、歪んだ
グニャリ……
まるで水面を無理やり捻じ曲げたかのように、何もない空間が大きく波打つ
「な……」
障子が息を呑む
「空間が……?」
歪みの向こう側
そこに、何かがいる
何か巨大な存在が、こちらを覗いている
そして───歪んだ空間が、ゆっくりと開いた
その向こうに広がっていたのは、この世界とは明らかに異なる空間───異形の海
そして
その中心から、巨大な影がゆっくりと姿を現した
「…………ッ」
四人の身体が、凍りつく
それは、彼らがこれまで見てきたどのスペースビーストとも違っていた
珊瑚を思わせる無数の突起
タコやイカを思わせる異形の触手
海洋生物を無理やり混ぜ合わせたかのような、極めて歪な肉体
そして───その
まるで人間の苦痛そのものを刻み込んだかのような、異様に引き伸ばされた表情
目を疑うほど不気味で、生物としての形を保っていることすら疑いたくなる
「…………」
誰も声を発することができない
ただ、その存在を見つめる
その巨大な怪物は、四人を見下ろしていた。
まるで───彼らの恐怖を確かめるかのように
「…………っ」
芦戸の身体が僅かに震える
口田も息を呑み、障子は無意識に身構える
そして常闇ですら、目の前の存在に対して本能的な警戒を覚えていた
黒影が低く唸る
「……何だ……こいつは……」
常闇が呟く
しかし、答えは返ってこない
ただ
怪物───フィンディッシュタイプビースト クトゥーラは、その悍ましい姿をほんの僅かな時間だけ晒すと───
ズズズズズ……
再び、その巨体を異形の海の奥へと沈めていく
歪んでいた空間が閉じる
そして
何事もなかったかのように、そこには激しい雨だけが残された
「…………」
四人はしばらく動けなかった
だが
その直後
ズル……
背後から、何かを引きずる音が聞こえた
「───!」
全員が振り返る
そこには、先ほどまで戦っていたペドレオン クライン達
そして
その背後に広がる、暗い雨の街
そのどこかから───
ズルルルル……
また、何かが這うような音が響いた
「……?」
四人が周囲を見回す
姿は見えない
だが──確かにいる
この空間のどこかに
あの怪物が
その瞬間だった
「っ!?」
突如、四人の背後にあった空間が
まるで水面のように景色が波打ち、その歪みの向こう側から──
ヌルリ
一本の太い触手が姿を現した。
「危ない!」
常闇が叫ぶ
次の瞬間、触手が凄まじい速度で四人へ襲い掛かった
ブォンッ!!
「うわっ!?」
「きゃあっ!」
四人は咄嗟にその場から飛び退く
触手は彼らのすぐ目の前を通過し、そのまま建物の壁へ叩きつけられた
ドゴォン!!
コンクリートの壁が大きく抉れる
「……!」
全員の顔から血の気が引く
‘‘もし、あと一瞬でも回避が遅れていたら…,,
そう考えただけで、身体が強張る
しかも──
ズル……ズルル……
触手は壁からゆっくりと離れると、まるで意思を持っているかのように蠢き始めた
そして
シュルルル……
空間の歪みの中へ、再び引きずり込まれていく
姿は見えない
だが、確かにいる
この空間のどこかに
あの怪物が、自分達を狙っている
「……」
常闇は周囲を警戒しながら、拳を強く握り締める
どこから来る
次は、どこからだ
その答えを知る術はない
ズルルルル……
また、何かが這うような音が響いた
姿は見えない
だが、確かにいる
この空間のどこかに
あの怪物が
彼らの恐怖を、静かに
───再び場面は変わり、倒壊ゾーン
崩壊したビルや瓦礫が無数に積み重なり、まるで大規模な災害に見舞われた都市の一角を再現したこのゾーンそこへ飛ばされていたのは――
爆豪勝己
切島鋭児郎
この二人だった
「……ったく、一体どうなってやがんだ……!」
爆豪が苛立たしげに周囲を見回す
周囲を覆っているのは、異様なほど濃い霧
数メートル先の景色すら霞んで見えるほどで、崩れた建物や瓦礫の輪郭さえ、ぼんやりとしか確認できない
「……なあ、爆豪」
隣にいた切島も、霧の向こうを警戒するように見つめる
「この霧……おかしくねえか?」
「あァ?」
「だってよ……俺達がここに飛ばされた時から、ずっとこんな状態だっただろ?」
「……」
爆豪は無言で周囲を見渡す
確かにそうだった
二人が黒霧のワープゲートによってこの場所へ飛ばされた時点で、すでにこの倒壊ゾーンはこの濃霧に包まれていた
そして、ここへ飛ばされてから二人は何体ものヴィランを倒している
さらには、あの異形の怪物──スペースビーストとも何度か交戦していた
にもかかわらず、この霧は一向に晴れる気配がない
そもそも倒壊ゾーンは、火災ゾーンや暴風大雨ゾーンのように巨大なドーム内部に設けられたエリアではない
外気に晒された、開放された空間
だからこそ
「……ここだけ霧が出てんのは、どう考えてもおかしいだろ」
切島が呟く
「ああ」
爆豪も短く答える
自然現象にしては不自然すぎる
この一帯だけを覆う濃霧
しかも、発生したのは自分達が来るより前
そして──
「……チッ」
爆豪が舌打ちする
「誰かがやってやがる」
その瞬間だった
「──!」
切島の背後…霧の奥で
四つの赤い光が、ゆっくりと浮かび上がった
ギラッ
「切島ァ!!避けろ!!」
「なにっ!?」
直後──
シュバッ!!
霧の向こうから、何かが飛来した
それは一本の白い糸だった
ただの糸ではない
白く発光しながら空中を走るそれは、まるで生き物のように軌道を変えながら切島へ迫る
「うおっ!?」
糸が切島の身体へ巻き付こうとした、その瞬間──
ダッ!!
爆豪が地面を蹴った
「させっかァ!!」
掌から放たれた爆発が、迫り来る糸を正面から捉える
BOOOOOM!!
爆炎が弾け、白く発光していた糸が焼き切られた
切断された糸の一部が地面へ落ち、白い光を失いながら消えていく
「……っ!」
切島は咄嗟に後方へ飛び退き、爆豪と背中合わせになる
「今の……なんだ!?」
「知るか!」
爆豪は霧の向こうを睨みつける
姿は見えない
だが──確実に、
「この霧の中に何かいやがる」
「……!」
「しかも、そいつがこの霧を出してる可能性が高ぇ」
爆豪の言葉に、切島も表情を引き締める
「じゃあ、この霧そのものが敵の個性ってことか……?」
「たぶんな」
爆豪は拳を握り締める
視界は悪く、敵の姿も見えない
それでも
「だったら、こっちから探し出してやる」
爆豪の眼光が鋭くなる
「どこの誰だか知らねぇが──隠れてるつもりなら、引きずり出してやらァ!!」
その叫びが、濃霧に包まれた倒壊ゾーンへ響き渡った
しかし
二人はまだ知らない
この濃霧を生み出している存在が、すぐ近くに潜んでいることを
そして先程、切島へ襲い掛かった白く発光する糸もまた──
スペースビーストの一体───バンピーラの能力によって生み出されたものだということを。
アースロポッドタイプビースト バンピーラ
それは、蜘蛛のような異形の姿を持ったビースト
口と尻尾から出す糸を自在に操り、獲物を捕らえるだけではない
体から霧を発生させ、自らの姿を隠蔽して活動する
つまり、この倒壊ゾーンを覆っている濃霧そのものが──既に敵の支配領域だった
一方、山岳ゾーンでも戦闘が続いていた
八百万百
耳郎響香
上鳴電気ら三人は、襲い掛かってくるヴィラン達を相手に応戦していた
そして、その周囲には複数のスペースビースト──アラクネアとペドレオン クラインの姿もあった
三人はヴィラン達への対処に加え、これまで遭遇したことのない異形の怪物達にも警戒しながら戦い続けることになる
もっとも、彼らが置かれていた状況そのものは、他のゾーンと同じだった
USJ各地へ分断された一年A組の生徒達は、それぞれの場所でヴィラン達との戦闘を余儀なくされていた
そして、ここ───
土砂崩れの発生した環境が再現された、土砂ゾーンでは
「……散らして殺す……か。言っちゃ悪いがアンタら……どう見ても個性を持て余した輩以上には見受けられねえよ」
轟焦凍は、目の前で氷漬けとなったヴィラン達を見据えながら、淡々とそう言い放った
その周囲には、同じく氷によって動きを封じられたヴィランが何人も転がっている
いずれも、轟がこの場所へ飛ばされた直後に襲い掛かってきた者達だった
しかし───
彼らには、轟と、このゾーンに飛ばされてきた‘‘もう一人,,へ攻撃を仕掛ける暇すら与えられなかった
轟が放った氷によって、一瞬にしてその場を制圧されたのである
「……!」
その光景を目の当たりにし、飯田天哉は思わず息を呑む
(飛ばされた瞬間に、待ち伏せをしていたヴィランを……!)
あまりにも鮮やかな制圧
飯田は改めて、轟の実力を思い知らされていた
そんな中、轟はふと、先程聞いた死柄木の言葉を思い出していた
『どこだよ……せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさぁ……』
「……」
轟は周囲へ視線を巡らせる
(オールマイトを殺す……初見じゃ精鋭を揃えて、数で圧倒するのかと思ったが……蓋を開けてみりゃ、俺達用のコマ…チンピラの寄せ集めじゃねえか)
少なくとも、自分達が遭遇したヴィランのほとんどは、プロヒーローと正面から渡り合えるような精鋭には見えない
数こそ多い
だが、それだけだ
(……何かがおかしい)
そう考えながら、轟は氷漬けにしたヴィランの一人へ向かって歩き出す
「おい」
轟はそのヴィランの前で足を止める
「一つ聞く」
「……?」
氷の隙間から、ヴィランが轟を睨み返す
「お前ら、本当にオールマイトを殺すつもりなのか?」
その問いに、ヴィランは答えようとした
だが───
「……?」
轟の足元
その地面が、僅かに揺れた
「轟くん!」
飯田が叫ぶ
「後ろだ!!」
轟が振り返った、その瞬間───
ズドォンッ!!
地面が大きく隆起した
土砂を弾き飛ばしながら、その下から一体の異形が姿を現す
「……!」
轟の目が細められる
土砂を掻き分けるように現れたのは、蜘蛛を思わせる異形の怪物
人間とはかけ離れたその姿
両腕の鋏
異様な身体
そして、こちらへ向けられた不気味な眼差し
スペースビースト───アラクネア
「また、あの怪物か……!」
飯田が身構える
轟は一切動じなかった
「……そういうことか」
次の瞬間───
パキパキパキパキッ!!
轟の足元から猛烈な勢いで氷が広がる
「……!」
アラクネアが動くよりも早く、その全身が氷に包まれていく
一瞬
そして───
バキィッ!!
完全に氷結したアラクネアが、その場へと倒れ込んだ
「……!」
飯田は再び驚愕する
しかし
「……終わりじゃねえな」
轟は周囲を見回す
その直後だった
ズズ……
遠くの土砂が動く
そして、その奥から───
ザッ
ザザッ
───複数の異形が姿を現す
「……!」
一体ではない。
二体。
三体。
それどころか───
次々と地面から這い出してくるアラクネア
さらに、その後方からは別の異形───ペドレオン クラインまでもが姿を現した
「なっ……!」
飯田が息を呑む
いくら何でも数が多すぎる
轟は迫り来る
「……キリがねえな」
「轟くん!」
飯田が叫ぶ
「ここは僕も戦う!二人でなら───」
「いや」
轟は飯田の言葉を遮った
「お前は外へ出ろ」
「……!」
飯田の目が見開かれる
「外へ……?」
「助けを呼べ」
轟は迫り来るビーストから視線を逸らさない
「誰かが助けを呼ばなきゃ、この状況は変わらねえ」
「しかし、轟くん一人では……!」
飯田は即座に反論する
「これだけの敵を相手にするなど、いくら君でも───」
「ここは俺一人で大丈夫だ」
轟は淡々と言った
「それに、お前の脚なら間に合う」
「……!」
飯田は言葉を失う
轟の言っていることは分かる
自分がここに残れば、二人ともこの場から動けなくなる
ならば───
誰か一人でも外へ出て、助けを呼ぶべきだ
「……分かった」
飯田は拳を握り締める
「必ず、助けを呼んでくる!」
その瞬間
ズドォン!!
再びアラクネアが地面を突き破って現れる
さらに───
ザッ!!
ペドレオン クラインが土砂を蹴散らしながら姿を現した
「……!」
轟は周囲を見渡す
敵の数は、さらに増えている
ならば───
「行け」
轟が右手を地面へ向ける
次の瞬間
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
猛烈な勢いで氷が地面を覆い始めた
氷の道は土砂ゾーンの中を一直線に伸びていき、やがてゾーンの外へ向かう巨大な坂道を形成していく
「轟くん……!」
「今だ」
飯田は一瞬だけ轟を見る
そして───
「……任せた!」
ダンッ!!
地面を蹴った
飯田は全力で氷の坂道を駆け上がる
「……!」
彼の個性『エンジン』の出力が一気に上昇する
さらに氷による滑走が加わり、飯田の身体は凄まじい勢いで坂道を駆け抜けていく
その速度は、もはや走るというより───飛んでいるに近かった
背後では轟が迫り来るアラクネアやペドレオン・クラインを迎え撃っている
だが、飯田は振り返らない
振り返るわけにはいかなかった
自分には、やるべきことがある
助けを呼ぶ
そのために───
「うおおおおおおおおおっ!!」
飯田は最後の加速をかける
氷の坂道の終端が迫る
「行けぇぇぇぇぇぇっ!!」
ダンッ!!
飯田の身体が、大きく宙へ跳び上がった
そして───
───そのまま飯田は土砂ゾーンの外へと飛び出していった
いかがでしたでしょうか?ゴルゴレムの他にもビーストを登場させてみました。それと今回は長くなりそうだったので、13号VS黒霧&ゴルゴレム戦は次回に持ち越すことにしました
※山岳ゾーンのシーンは原作とそう大差ないので割愛しました。ご了承ください。