個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~ 作:復活のB
黒霧が黒斗とトガの前に現れた日の数日前……
某所
薄暗い部屋の中、大型モニターの光だけが室内を照らしていた
そこに、二人の人物がいた
一人は、病的なまでに細身な体格をした青年
首元まで伸びた、白と水色の中間のような色合いの髪
そして何より特徴的なのは、その全身に身に着けている人の手を模した装飾だった
顔
首
肩
腕
各所に手を取り付けている、異様な姿をした青年ーーーヴィラン連合の首領“死柄木弔,,
もう一人は、全身が黒い霧で包まれた、バーテンダーのような格好をした男
ヴィラン連合の幹部であり、死柄木弔のお目付け役でもある“黒霧,,である
死柄木弔は苛立ったように首を掻きながら、モニターへ視線を向ける
そこには、一人の少年の写真が映し出されていた
綾瀬黒斗
敵名『スペースビースト』
最近裏社会で急速にその名を広げつつあるヴィランだった
「……最近よく聞くな」
死柄木が呟く
「スペースビースト」
その隣では黒霧が静かに頷いた
「はい」
「情報収集に護衛、潜入、運搬、回収、始末と…仕事内容は多岐に渡ります」
モニターに次々と資料が表示される
依頼成功率
目撃証言
そして、ヒーローとの交戦記録
「何なんだよコイツ」
死柄木は不機嫌そうに言った
「便利屋か?それとも戦闘屋か?どっちなんだ?」
「両方でしょう」
黒霧は即答した
「少なくとも、確認されているだけで複数回ヒーローとの交戦記録があります」
「その全てで逃走に成功し、撃退事例も複数。現在に至るまで、身柄の確保には至っていません」
死柄木は舌打ちした
ヒーローを相手にしながらも、何度も逃げ続ける
それだけでも十分厄介だ
だが
本当に異常なのは別の部分だった
「連続失血死事件」
死柄木が資料を見ながら呟く
「主犯はトガヒミコで、その共犯が綾瀬黒斗」
「そうなっています」
黒霧が答える
死柄木は少し考え込む
連続失血死事件
世間では二人まとめて、非常に危険なヴィランとして扱われている
だが、調査を進めれば進めるほど違和感があった
「……変だな」
「変、ですか」
「トガヒミコは分かる」
死柄木は言う
「欲望で動いてる」
「衝動で動いてる」
「だから分かりやすい」
そう
トガヒミコは理解できる
好きなものの為に暴走した少女
ヴィランとしてはさほど珍しくはない
しかし、綾瀬黒斗は違う
あまりにも冷静だった
あまりにも合理的だった
「コイツ」
死柄木が資料を指差す
「何がしたいんだ?」
その問いに
別の声が答えた
『面白い質問だね』
穏やかな男の声
室内の大型モニターが切り替わる
黒いシルエット
人工呼吸器のような装置
圧倒的な存在感
死柄木が顔を上げる。
「先生」
『やあ、弔』
オール・フォー・ワン※以降AFO
ヴィラン連合の支援者にして、実質的な支配者にあたる人物である
『だが、その答えは簡単だよ』
モニター越しに笑う
『彼の目的は一つだ』
『トガヒミコを守ること』
部屋が静まり返る
死柄木は眉をひそめた
「は?」
『資料を読めば分かる』
『彼の行動原理は一貫している』
『彼自身の利益ではなく、思想でもなく、ましてや金でも名誉でもない』
『全てが一人の少女…トガヒミコへ収束している』
黒霧も静かに頷いた
確かにその通りだった
便利屋として稼ぐのも
拠点を転々とするのも
ヒーローと戦うのも
全て
最終的にはトガヒミコの存在へと繋がっている
『興味深い少年だ』
AFOは続ける
『個性も非常に優秀だ』
『だが本当に危険なのはそこではない』
『彼自身だよ』
死柄木が黙る
AFOは楽しそうだった
『高い知能と身体能力』
『優れた観察眼』
『冷静な判断力』
『状況分析能力』
『そして、恐ろしく強い執着心』
『これだけでも十分脅威だ』
『そこにあの個性が加わる』
『だから彼は危険なんだ』
黒霧が資料を切り替える
画面にはスペースビーストの写真が並ぶ
いずれも、異様な姿をしていた
『それにしても…』
AFOがふと呟く
『
『召喚に変身、そして自己再生…本来ならそれぞれ別々の個性として成立していてもおかしくない複数の能力が、一つの個性に纏まっている』
死柄木は興味なさそうに肩を竦める
「で?どうするんだ先生」
AFOは少しだけ笑った
『勧誘しよう』
即答だった
『優秀な人材は歓迎すべきだ』
『それに、私自身も彼に少し興味がある』
死柄木が鼻を鳴らす
「断られたら?」
『その時はその時さ』
AFOは穏やかに答える
『まずは会ってみなければ始まらない』
そして、モニター越しに黒霧を見る
『黒霧』
「はい」
『彼らに接触してくれ』
『綾瀬黒斗、そしてトガヒミコに』
黒霧は静かに頭を下げた
「承知しました」
その返答を聞き、魔王は静かに微笑んだ
まだ誰も知らない
この接触が
後に大きな変化をもたらすことになることを
いかがでしたでしょうか?今後も度々(展開がグダらない程度に)閉話を入れる予定です