個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~   作:復活のB

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第5話です


第5話『ヴィラン連合加入』

国立雄英高校

 

数多くの名だたるヒーロー達を輩出した、日本有数のエリート高校

 

現役のプロヒーローによる実践的な授業を受けられるだけでなく、数多くのトップヒーローを輩出してきた名門校であり、「ヒーローを目指す者なら誰もが憧れる学校」と言っても過言ではない

 

毎年、全国から優秀な人材が集まり、その競争率は極めて高い

 

当然、ヒーロー育成機関なだけあってその警備体制も国内最高水準

 

現役プロヒーローが校内に常駐し、最新鋭の防犯設備が敷き詰められている

 

並のヴィランならば、侵入することすら叶わないだろう

 

だがーーー

 

「……その雄英高校を襲撃する、と」

 

BARの静かな空間で、黒斗は淡々とそう呟いた

 

死柄木は首元を掻きながら、不敵に笑う

 

「ああ、そうだ」

 

「あそこはヒーロー社会の象徴だ。だから壊す価値がある」

 

黒斗は静かに死柄木を見つめる

 

(目的は理解できます。ですが……)

 

(それだけでは、あまりにも情報が少ない)

 

「一つ、お聞きしても?」

 

「何だ」

 

「具体的な作戦は」

 

その問いを待っていたかのように、黒霧が静かに一歩前へ出た

 

「それでは、ご説明いたしましょう」

 

BARに流れるジャズだけが、僅かに音量を上げたように感じられた

 

黒霧はカウンターの上に一枚の資料を置く

 

そこには雄英高校の見取り図と、一つの巨大な施設の写真が載っていた

 

「今回の標的となるのは、雄英高校内に存在する演習施設ーーーUSJです」

 

「USJ?」

 

その単語を聞いた瞬間だった

 

トガの脳裏に、とある光景が浮かぶ

 

大きなジェットコースター

 

派手なパレード

 

映画やゲームのキャラクター達

 

そして

 

(遊園地……?)

 

有名な遊園地を思い浮かべた

 

黒霧はそんな彼女の様子を見て一瞬だけ沈黙した後、小さく咳払いを一つ

 

「……あらかじめ申し上げておきますが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの略ではありません」

 

「あちらではなく、正式名称は『ウソの災害や事故ルーム』。スペースヒーロー『13号』が設計した、様々な災害や事故を想定した救助訓練用の実践演習施設です」

 

「あっ、そっちでしたか!」

 

トガは納得したように手を叩いた

 

その隣で、黒斗は

 

(…誰ですかその略称思いついたの)

 

心の中でそうツッコミを入れながらも、すぐに切り替え、静かに資料へ視線を落とした

 

「……なるほど…救助訓練施設」

 

「つまり、施設内部は災害ごとにエリア分けされている可能性が高い、ということですね」

 

「ええ」

 

黒霧は満足そうに頷く

 

「流石ですね。その通りです」

 

そう言うと、黒霧は資料の一枚をめくる

 

そこには施設内部を上空から見た図面が描かれていた

 

「では、ここから今回の作戦について詳しくご説明いたします」

 

黒霧は資料をもう一枚広げる

 

そこにはUSJ内部の簡易見取り図と、その日の時間割が記されていた

 

「現在、雄英高校一年A組は、平和の象徴ーーーオールマイトによる救助訓練をUSJにて行う予定です」

 

「この情報は既に確認済みです。授業日程についても、裏は取れております」

 

黒斗は資料へ視線を落とす

 

(内部の時間割まで把握している……情報収集能力は想像以上ですね)

 

黒霧は続ける。

 

「我々の目的は、その授業中にUSJへ侵入しーーーオールマイトを殺害することです」

 

その場の空気が僅かに重くなる

 

だが、黒斗の表情は変わらない

 

「……なるほど。だから標的が雄英ではなく、USJだった訳ですか」

 

「ええ」

 

黒霧は頷いた

 

「USJは校舎から独立した演習施設です。閉鎖空間でもあり、戦闘を行うには適しています」

 

その横で死柄木が首を掻く

 

「ヒーロー社会ってのは、オールマイト一人でもってるようなもんだ」

 

「だったら、最初にあいつを壊す。それだけだ」

 

黒斗は数秒間、資料を見つめる

 

やがて静かに口を開いた

 

「一つ、気になる点があります」

 

「……何だ」

 

「オールマイトは授業開始から終了まで、常にUSJに滞在しているのでしょうか」

 

黒霧は僅かに目を細めた

 

「と言いますと?」

 

「もし授業開始前から現地入りしているのであれば問題ありません。ですが…」

 

黒斗は資料の時刻表を指先で軽く叩く

 

「プロヒーローである以上、急な事件や要請が入る可能性もあります」

 

「到着が遅れる可能性は考慮されていますか」

 

その一言に、死柄木の手が止まり、黒霧も僅かに押し黙った

 

数秒の沈黙

 

先に口を開いたのは黒霧だった

 

「……確かに、その可能性は否定できません」

 

「現時点では、当日はオールマイトが授業を担当するという情報までは掴めています」

 

「ですが、到着時刻までは断定できません」

 

黒斗は静かに頷く

 

「そうですか」

 

「でしたら、オールマイトが現場に到着していない場合を想定した第二案も用意しておくべきでしょう」

 

「予定通り現れれば第一案、現れなければ即座に第二案へ移行する。作戦というものは、想定外が起きることを前提に組むべきですから」

 

その言葉に、BARの空気が一瞬静まり返る

 

死柄木は黒斗を見つめる

 

そして、ゆっくりと口角を吊り上げた

 

(……なるほど。先生が面白いって言う訳だ)

 

初めてだった

 

死柄木が黒斗に対して、僅かながらも興味を示したのは

 

黒斗の言葉を聞き終えた後、BARには再び静かな時間が流れた

 

ジャズだけが静かに店内へ響く

 

死柄木は黒斗を見つめたまま、ゆっくりと首元を掻く

 

「……なるほどな。確かに、その方が成功率は上がるか」

 

その口調には、先程までの苛立ちとは違う色が混じっていた

 

それは、相手の実力を認め始めた者の声音だった

 

一方、黒斗は資料を閉じる

 

「以上です。現時点で気になった点は」

 

黒霧は穏やかに微笑んだ

 

「流石ですね。私達があなた方をお招きした理由がお分かりいただけたでしょう」

 

「……ええ」

 

黒斗は小さく頷く

 

「情報収集能力、組織力、行動力…どれも単独では得難いものです」

 

そして、静かに続ける

 

「少なくとも、敵対するよりは協力関係を築いた方が合理的でしょう」

 

その言葉に、死柄木が僅かに笑った

 

「つまり、入るのか」

 

黒斗は一度だけ隣を見る

 

そこには、いつものように自分を見上げるトガヒミコがいた

 

目が合うと、トガは嬉しそうに笑う

 

「黒斗くん」

 

「私は黒斗くんが決めたことなら、何でもいいですよ」

 

その笑顔を見て、黒斗は小さく息を吐いた

 

(…結局、僕はトガちゃんを守れる環境を選ぶだけです)

 

彼にとって最優先なのは、世界ではない

 

思想でもなければ、ヒーロー社会への復讐でもない

 

目の前の少女(トガヒミコ)が、今日も笑っていられること

 

そのために利用できるものは利用する。

 

ただ、それだけだった

 

黒斗は死柄木へ視線を戻す

 

「ただ、条件があります」

 

「……条件?」

 

「僕達は僕達の判断で動きます。無意味な殺戮には付き合いません」

 

「そして」

 

一拍置く

 

「ーーートガちゃんを捨て駒のように扱う命令には、従いません」

 

その場の空気が少しだけ張り詰めた

 

黒霧は静かに死柄木を見る

 

判断を委ねるように

 

死柄木は数秒間黙ったまま黒斗を見つめていた

 

やがて

 

「好きにしろ」

 

ぶっきらぼうにそう言った

 

「最初から、お前を便利な駒として使うつもりはねぇ。戦力として欲しかっただけだ」

 

「……それなら問題ありません」

 

黒斗は静かに答える

 

そして

 

「綾瀬黒斗。本日より、ヴィラン連合に協力させていただきます」

 

その言葉に続くように、トガも満面の笑みで前へ出た。

 

「トガヒミコです!よろしくお願いしまーす!」

 

黒霧はどこか安堵したように一礼する

 

「ありがとうございます」

 

「お二人の加入を、心より歓迎いたします」

 

死柄木は首元を掻きながら立ち上がると、二人へ背を向けた

 

「歓迎会なんて気の利いたもんはねぇ。その代わり…」

 

「お前達には、早速働いてもらう」

 

黒斗は静かに頷く

 

「構いません。元より、そのつもりです」

 

こうしてーーー逃亡生活を続けていた二人は、新たな居場所を手に入れた

 

それは安息の地ではない

 

善意で結ばれた組織でもない

 

利害と目的によって集まった、ヴィラン達の集団

 

『ヴィラン連合』

 

この日

 

綾瀬黒斗とトガヒミコは、その一員となった

 

そして、この選択が

 

やがてヒーロー社会そのものを大きく揺るがす一歩となることを、この時の二人はまだ知らなかった

 

To be continued……




いかがでしたでしょうか?次回からUSJ襲撃編編開始です
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