退廃的な主人公はプロジェクトセカイの夢を見るか? 作:針が11を指している
11時00分
景「・・・」
自室で『シン』先生が書いた文体の編集をしていた
景「・・・」
そして、机の下に置いてあった箱から
カロリーメイトを取り出し、口に含む
景「・・・(モグモグ)」
カタカタと編集を黙々とする
視点変更…杉原小春
12時00分
小春「・・・お腹すいた」
ベッドで横向きになりながらスマホを弄っていた私は、空腹を催していた
起き上がり、花里様のポスターを視界に入れる
小春「・・・はぁ、何か作るか」
そうやって、リビングへと向かう
小春「・・・そういえば、勝手に冷蔵庫を漁っていいのかな」
小春「・・・流石に聞くか」
そう思い、景の自室に赴く
小春「・・・やっぱり、開いてる」
半開きになっているドアを見ながら、そう呟く
小春「・・・本当に警戒心ないなぁ...」
そう思いながら、ドアを叩く
小春「・・・」
もう一度、ドアを叩く
小春「やっぱり出ない...」
小春「失礼します」
そう言って、ドアを開ける
景「・・・(ちゅ~)」
小春「・・・」
ヘットフォンをし、ゼリー飲料片手にパソコンを弄る景の姿がそこにあった
景「ん?」
私に気が付いた景は、ヘットフォンを外し、ゼリー飲料を机の上に置いた
景「どうかしましたか、杉原小春さん」
小春「えっと...冷蔵庫の中を使っていいですか?」
景「え...あぁ、いいですよ」
時計を見た景は、今が何時かを知ったようだ
小春「・・・景さんって、いつもそれを口にしているんですか」
景「それって、ゼリー飲料のことですか」
小春「そうです で、どうなんですか」
景「・・・えぇ、まぁ...よく口にしますね」
小春「ッ...」
景「えっと、それがどうかしましたか」
小春「・・・本当に」
景「え?」
小春「本当に何でもないって思っているんですか」
私は、怒っていた
ゼリー飲料を取っていること自体ではない
自分の身体を大切にしていない事に怒っているのである
景「あ...ミルにご飯を出さなきゃ」
そう言って、景は立ち上がりリビングへと向かう
小春「待って 話はまだ終わっていない...」
景「ミルにご飯を出した後にして下さい」
そう言って、景は進んでいった
小春「・・・」
私は、無言で景についていく
景「はい、ミル ご飯だよ」
ミル「みぃ」
モグモグと猫が餌を食べ始める
小春「・・・もう話していいですよね?」
景「はい それで、なんですか?」
小春「・・・本当に何も分かっていないの?」
景「えぇ、まぁ...」
小春「・・・」
言葉を失った
本当に何も分かっていない表情をしていた
景「えっと、自室に戻っていいですか?」
小春「待って」
景を腕を掴んで静止させる
小春「・・・どうして?」
景「・・・?」
小春「どうして、そんなに自分を無下にするの?」
景「無下?」
小春「そうですよ!だって...」
小春「猫や他人当然の私にはちゃんと、ご飯を出しているのに」
小春「なんで自分には、ゼリー飲料だけなんですか」
景「なんでって...どうしてそのようなことを?」
小春「自分の行動を顧みれば、すぐにわかるでしょう!?」
景「・・・?」
小春「料理スキルはあるのに、ゼリー飲料を口にして」
小春「貴方の父さんは何も言わないの」
景「・・・そもそも知らないと思うよ、お父さんは」
小春「・・・知らないって...」
景「お父さんはずっとドイツにいたし、一々食べた物を報告しないし」
小春「それは、そうなんだろうけど...」
景「・・・そう言えば、杉原小春さん」
小春「なに?」
景「どうして、そう言うんですか」
景「他人当然なのに...」
小春「それは...似ているから」
景「似ている?」
小春「そうよ、似ているの!母さんに!!」
小春「父さんが亡くなってから、私を養う為に朝早くから夜遅くまで働き詰めて」
小春「それなのに、疲れた様子を悟られないように笑顔で振る舞って」
小春「そんなの見せられたら...」
小春「・・・寂しいなんて言えなかった」
ポツリと呟いた
そして、押し殺していた思いが濁流の如く溢れ出す
小春「母さんの方がずっと苦しんでいる ずっと悲しんでる」
小春「私が我儘なんか言える立場なんかじゃないって」
小春「私の我儘でこれ以上、母さんを困らせたくなくて」
小春「私は...私は...どうしたらいいの?」
景に寄っかかり、そう問う
視点変更…足立景
景「・・・」
小春「・・・」
杉原小春が胸の中ですすり泣いていた
景「・・・」
杉原小春をそっと優しく抱きしめる
小春「え?...」
景「・・・大丈夫です、大丈夫ですよ...」
背中をさすり、頭を撫でる
小春「うぅ...景さん...」
杉原小春は声を押し殺して、すすり泣く
景「・・・」
泣き止むまで、杉原小春を抱きしめ続けた
数十分後
小春「スゥ...スゥ...」
泣き疲れたのか、寝息を立てて寝てしまった
景「・・・」
ソファーに寝かせて離れようと動く
小春「ひとりに...しないで...」
そう寝言を呟く
景「・・・」
ソファーに座る
小春「スゥ...スゥ...」
景「・・・」
気持ち良さそうに寝ていた
景「・・・」
どうして、杉原小春に『大丈夫』って言ったんだろうか
いや、本当は分かっている
・・・似ていたんだ、昔の自分に
物心付いた頃から、“母親”という存在がどういうものか分からなかった
お父さんの思い出話やアルバムの写真、ビデオカメラで撮られた姿でしか
“母親”という存在に触れることが出来なかった
景「・・・」
どうして、杉原小春は怒っていたんだろうか
景「・・・自分を無下に...」
言われた言葉を反芻する
そう考え込んでいると
凜「ただいま~ いや~、もうお昼だよ」
凜「小春ちゃんと景ちゃんはもうお昼食べた~?」
杉原凜がこちらを視認した
凜「えっと...何をしているの?」
景「・・・杉原凜さん、杉原小春さんの傍にいてあげて下さい」
凜「え?」
景「お願いします」
凜「・・・お願いされなくても、そのつもりよ」
景「・・・そうですか」
凜「それで、どうしてそんなことを?」
景「・・・それは...」
そして、さっきの出来事を話す
凜「・・・そっか...そう、だったんだね」
杉原凜は、静かに寝息を立てている杉原小春をゆっくりと撫でる
凜「ずっと、我慢させていたんだね」
凜「ははは、これじゃあ母親失格だね」
乾いた笑顔で自虐的に言う
景「・・・何か言えた立場では、ありませんが...」
景「・・・想い合っていたんだと思います、お互いを」
凜「・・・そっか、そうだね」
凜「ありがとう、景ちゃん」
景「いえ...」
凜「フフッ あぁ、それと...」
景「?」
凜「景ちゃんの食生活、改めてようね」
景「・・・やっぱり、おかしいですかね」
凜「うん、バッチリ」
そうして、杉原小春と杉原凜は話し合い
夕方に帰っていないきたお父さんが杉原凜の話を聞いて
泣いているお父さんに抱き締められたりして
一日が終わった