退廃的な主人公はプロジェクトセカイの夢を見るか? 作:針が11を指している
数日後、土曜日
10時00分 スクランブル交差点にて
景「・・・」
小春「お~い!、景さん~!」
景「・・・小春 一つだけ、聞いていいですか?」
小春「なんですか?景さん」
景「どうして、待ち合わせをするんですか?」
景「一緒に住んでいるんですから、一緒に出れば...」
小春「それじゃあ、ダメなの! なんというか、お出掛けって感じがしないの!」
景「そうですか では、立ち話はこの位にして、行きましょうか」
小春「うん...行こっか」
そうして、歩き始める
景「・・・それで、どこか行きたい場所はありますか、小春」
小春「ふっふーん!」
小春「やっぱり、シブヤと言えば、MORE MORE JUMP!の聖地巡礼でしょ!」
景「MORE MORE JUMP?...」
小春「え!?もしかして、ご存知ない!?」
景「えぇ、名前程度しか...」
小春「そ、そんな...! 同じシブヤに住んでいながら」
小春「花里様御一行を知らないなんて...」
小春「いいですか、景さん? MORE MORE JUMP!というのは」
小春「どんなに否定されようと、アイドルを目指していた花里様と」
小春「一度はアイドルの夢を諦めかけた少女たちと一緒に」
小春「もう一度自分たちの足で立ち上がって」
小春「世界中に希望を届けている、まさに現人神...」
小春「いえ、生きる希望そのものなんです!特に花里みのり様はですね...」
景「・・・」
センター街に差し掛かるころ
数刻ごとに頷きながら、小春の話を聞いていると
みのり「————————」
帽子やサングラス、マスクをした花里みのりと誰か三人が話しをしながら歩いてきた
そして、花里みのり達とすれ違う
景「お久しぶりです、花里みのりさん」
みのり「うん、久しぶり」
景「・・・」
みのり「・・・ん?」
小春「え?花里様?」
遥「え?」
雫「あら?」
愛莉「ちょっと!?」
一斉にこちらに視線が集まる
景「・・・どうかしましたか、小春」
みのり「ええええっ!? あ、足立さん!?」
小春「ちょっと待ってください!?」
愛莉「ちょっと待ちなさいよ!」
雫「少しいいかしら?」
遥「少し、お話をしましょうか」
景「・・・はぁ?」
そうして、五人に連れられて
近くのカフェに入店した
景「・・・」
各々自己紹介をし
六人席のテーブルで、手前には囲まれるように桃井愛莉、桐谷遥、日野森雫
こちら側には、小春、花里みのりが座っていた
愛莉「・・・(ジト目)」
遥「・・・(ジト目)」
雫「・・・(ニコニコ)」
みのり「・・・(あわあわ)」
小春「・・・(ドキドキ)」
五者五様の視線が様々な思惑を載せて、入り乱れていた
景「・・・それで、お話とはなんですか 桐谷遥さん」
飲んでいたアイスティーを置き、桐谷遥はこちらを見据える
遥「色々と聞きたいことがあるのだけれども、まずは...」
遥「あなた、みのりと会った時に、アイドルだと気付かなかったの?」
景「はい」
愛莉「即答なのが、非常に腹が立つわね」
珈琲を飲んでいると、桃井愛莉がそう呟く
景「・・・(熱い)」
珈琲をテーブルに置き、次にくる質問に備える
遥「まぁ、それはいいわ 問題なのは次...」
遥「みのり含め、私達は変装をしていた それをどう見破ったのかしら?」
遥「これに関しては、誤魔化そうとしても無駄だから」
景「見破ったもどうもないですけども...」
景「・・・そもそも、変装を見破って声をかけたわけではありません」
景「と、いうよりかは...『変装をしていた』という認識を持っていませんでした」
雫「足立さん それは、一体どういう...」
持っていた抹茶を置き、そう問いてくる
景「そのままの意味です」
愛莉「説明になっていないわよ」
景「と、言われましても...」
遥「抽象的でいいから、教えてくれる?」
景「・・・」
顎に手を置き、行動の言語化に勤しむ
小春「景さん?」
みのり「足立さん?」
小春が、アイスココア置き
花里みのりが、アイスティー置き、こちらを見る
景「・・・違和感、ですかね」
雫「違和感?」
景「そうです 周りの人々と歩き方...と、いうよりかは体の使い方が違ったので」
みのり「体の使い方?」
景「えぇ、どの方向から見られても、映えるような動き方をしていたので」
景「花里みのりさんはその動き方が、以前とほぼ同じだったので」
遥「——フフ、そういうことね あなた、中々見る目あるじゃない」
景「・・・はて、何のことやら」
愛莉「待って、どういうこと」
みのり「そうだよ、遥ちゃん!」
遥「そのままの意味だよ みのりの変装がばれたのは、服や小物のせいじゃない」
遥「私たちが意識的にも無意識にもやっていた『アイドルとしての身のこなし』を」
遥「彼の目が正確に捉えたから」
遥「私達は、ステージの上やレッスン場だけじゃなくて」
遥「普段の歩き方から『魅せる動き』になっちゃってたんだよ」
遥「どこから見られてもシルエットが崩れないような動き方が」
遥「彼はそれを『周りの人間との違和感』として見抜いたの」
遥「そうでしょう?」
景「・・・抽象的なものなので、なんとも」
遥「フフ、はぐらかさなくていいのに」
愛莉「ちょっと、それってつまり、私たちは変装して隠れてるつもりで」
愛莉「実は四人揃って『私たちがモモジャンです!』って」
愛莉「体中でアピールしながら歩いてたってこと!?」
愛莉「・・・うわ、なんか急に恥ずかしくなってきたわね...」
景「・・・まぁ、過度に警戒しなくてもいいと思いますよ」
景「歩行者の身のこなしを区別出来る人など、そうそういませんから」
みのり「そう...なのかな?」
愛莉「いや、でも、あんたには一発でバレたじゃない!」
景「それはそうですが...」
景「それは、日常的に編集をしているからです」
景「文法や仮名遣い、誤字脱字などを事細かに精査しているので」
景「一般大衆には気付かない違和感に気づけた、というだけです」
小春「景さんって編集をしているんですか!?」
みのり「足立さんって編集をしているんですか!?」
景「そう言えば、言っていませんでしたね まぁ、それは兎も角」
景「まだ、質問はありますか 桐谷遥さん」
遥「・・・じゃあ、最後に一つ」
遥「あなたは、小春ちゃんにシブヤを案内していたのよね」
小春「こ、小春ちゃん!? 遥ちゃんに小春ちゃんって呼ばれた!?」
景「えぇ、そうですが それがなにか」
遥「それって...私達の聖地巡礼かしら?」
景「えぇ、そうです ですよね、小春」
小春「え!?そこで、私に振る!?」
小春「えぇっと...はい、そうです」
タジタジとしながら、応える
遥「フフ、緊張しているね」
小春「うぅ...す、すみません...」
遥「ううん、そう謝らないで」
みのり「そうだよ、小春ちゃん!」
小春「花里様に小春ちゃんって呼ばれた!?!?!?!?!?!?」
小春「キュゥ...」
小春は、奇怪な音を立てながらこちらに倒れる
景「・・・倒れましたね」
愛莉「倒れましたね、じゃないわよ! 大丈夫なの!?」
景「小春、大丈夫ですか」
小春「景さん...私、幸せです」
景「そうですか」
愛莉「そうですか、じゃないわよ! 何度言わせるの!?」
みのり「愛莉先輩、落ち着いて~」
雫「・・・(小春ちゃん なんだか、みのりちゃんに似ているわ~)」
遥「・・・(小春ちゃん なんだか、みのりに似ているなぁ)」
愛莉「・・・(小春ちゃん なんだか、みのりに似ているわね)」
景「収集が付かなくなってきましたね」
冷めた珈琲を啜りながら、そう呟く
愛莉「ちょっと、なんでそんなに落ち着いているのよ」
景「騒いでも仕方ないですし」
遥「彼の言う通りね」
雫「そうねぇ~ これ以上はお店の迷惑になってしまうし...」
みのり「うんうん」
愛莉「それはそうだけど、その子はどうするの」
小春「~~~」
満面の笑みで気絶している小春を横目に、そう桃井愛莉は呟く
景「小春のことは、心配ご無用です 責任を持って対処しますので」
そう言いながら、小春をおんぶする
愛莉「なんか、手慣れているわね」
景「そんなことはありません」
景「小春がこうなってしましましたし、お開きにしましょう」
景「代金はこちらが払うので」
そう言って、伝票を手に取る
遥「それは悪いよ 私に払いさせて」
景「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます」
遥「そっか...じゃあ、今回は、あなたのご厚意に甘えさせてもらうわね」
景「えぇ、そうして下さい」
そうして、小春をおんぶしたまま会計を済ませ
そのまま、カフェから出た
景「・・・本日はありがとうございました こちらに付き合って頂き」
遥「うんん、気にしないで 私も、貴方や小春ちゃんと話せて楽しかったわ」
景「・・・左様ですか」
みのり「そうだよ、足立さん!」
雫「えぇ、私も楽しかったわよ」
愛莉「まぁ、そうね 悪くはなかったわよ」
景「そうですか」
景「それでは、また、どこかで」
遥「うん、またね」
みのり「バイバイ~!」
雫「またね~、足立さん」
愛莉「じゃあ、また」
そうして、MORE MORE JUMPの皆と別れた
視点変更…足立小春
小春「・・・」
ゆさゆさと揺られる感覚を覚える
小春「ん...」
私、なにしてたっけ?
確か、景さんと一緒にシブヤに出かけて
それから、花里様達と出会って
花里様に小春ちゃんって呼ばれて
あまりの嬉しさに気を失って...
小春「ん?...」
半目を開けて周囲を確認する
景「・・・」
そこには、私の体をしっかりと支えてくれている、少し骨張った
だけど不思議と大きな安心感のある背中があった
小春「・・・(いい匂い...)」
そうウトウトしていると
景「・・・小春、起きていますか」
小春「けい、さん?...」
景「はい、そうですよ」
小春「・・・え?」
意識がハッキリとしてきた
今、私は景さんにおんぶされていた
景「・・・降りますか」
小春「は、はい...」
顔が熱くなっているのを感じながら、そっと降ろされる
小春「・・・/////」
景「・・・それでは、行きましょうか」
小春「う、うん...」
そうして、景さんは歩き出す
速くなった鼓動をバレないように抑えながら
私も、景さんに続く