退廃的な主人公はプロジェクトセカイの夢を見るか?   作:針が11を指している

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フタゴムシ

 

翌日、日曜日

 

視点変更…足立景

 

10時00分 スクランブル交差点にて

 

景「・・・」

 

四季「お~い、少年~!」

 

景「来ましたか、天野川四季先輩」

 

四季「おや、少し待たせてしまったかな」

 

景「いえ、時間通りなので問題ないです」

 

四季「フフ、少年らしい返答だね」

 

景「・・・天野川四季先輩、そろそろ電車の出発時間ですよ」

 

四季「あぁ、そうだったね じゃあ、行こうか」

 

景「えぇ」

 

そうして、シブヤ駅へと向かい

数十分間電車に揺らえ、メグロ駅西口で降車した

 

景「・・・電車に乗るとしか、伝えられていませんでしたが...」

 

四季「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪ もう気づいたか」

 

四季「流石、私の編集者だね」

 

そうやって、十二分程歩いて

 

景「・・・まぁ、ですよね」

 

目の前には、メグロ寄生虫館がそびえ立っていた

 

四季「少年が勧めてくれた『恋する寄生虫』に出てきたメグロ寄生虫館だ」

 

景「見れば分かりますよ」

 

四季「ま、そうだろうね」

 

景「それで、どうしてここに来たんですか」

 

景「まぁ、天野川四季先輩のことですし」

 

景「新しいプロットの参考を探しているんですよね」

 

四季「半分正解だね」

 

景「残りの半分は、なんですか」

 

四季「ただ単に、少年と行きたかっただけだよ」

 

景「そうなんですか」

 

四季「反応薄いな~」

 

景「・・・天野川四季先輩は、どのような反応を求められていたんですか」

 

四季「オーバーリアクション」

 

景「今からすればいいですか」

 

四季「いや、いいよ」

 

景「そうですか」

 

四季「ま、細かいことはいいよ!」

 

四季「さぁ、メグロ寄生虫館へ入ろう!」

 

景「えぇ、そうですね」

 

そうして、メグロ寄生虫館へと入った

待合室程度の空間に、寄生虫に関する資料や標本が展示されていた

 

四季「いやはや、実に素晴らしいね」

 

ガラスケースの中にずらりと並んだ標本瓶には様々な寄生虫が漬けられており

中には寄生虫を体内に宿した生物やその臓器などもあった

一部の寄生虫は、麵類や野菜を思わせる外形をしていた

有鉤条虫と無鉤条虫は縮れたきしめん、回虫は絡み合ったモヤシ

ギロコチレはキクラゲのようだ

もちろん中には、エキノコックス症に罹り巨大な腫瘍のできたハタネズミ

ウミエラビルに寄生されたアオウミガメの頭部など

目を背けたくなるようなグロテスクな標本もいくつかあったが

天野川四季は平然とそれらを鑑賞していた

 

四季「小説の描写そのまんまではないか(;^ω^)⤴」

 

景「・・・」

 

四季「ふっふん~」

 

それまで淡々と標本を眺めていたが、あるものに反応する

視線の先には、「フタゴムシ」とだけ書かれたシールの貼られた標本瓶があった

それは、蝶のような姿をしていた 白っぽい色をした、後翅の小さな蝶だ

しばらくのあいだフタゴムシの標本に見入っていた

 

四季「おや、少年 どうしたんだい」

 

天野川四季がフタゴムシの標本を覗き込む

 

四季「あぁ、フタゴムシか...なるほど、これが、か...」

 

四季「・・・ねぇ、少年」

 

景「なんですか、天野川四季先輩」

 

四季「・・・フタゴムシが気になるのかい?」

 

景「えぇ、まぁ...」

 

四季「そうなんだ...なんか、意外だな~」

 

景「そうでしょうか」

 

四季「うん、少年はロマンティックなこととは、縁がないって思っていたからね~」

 

景「そうなんですか」

 

四季「あぁ、そうだよ だって見てご覧よ、その標本説明を」

 

天野川四季先輩は指先で

標本ケースに貼られた小さな解説プレートをコンコンと突つく

そこには、淡々とした学術的な文章で書かれていた

『幼虫期に出会った二匹のフタゴムシは、互いの腹部にある吸盤で融合し、一生を

ひとつの体として過ごす 一度結合したフタゴムシが離れることは二度とない』

 

四季「“二匹で生まれて、一つになって死んでいく”」

 

四季「まさに、太古の神話に出てくるアンドロギュノスの解釈そのものではないか」

 

四季「・・・少年 君は、誰かに自分という存在を」

 

四季「そこまで深く侵食されてみたいと願っているのかな?」

 

景「・・・他“人”にそのようなことは求めませんよ」

 

四季「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪ そうかい」

 

四季「さぁ、最高のプロットの種は拾えた! 少年、昼飯を食べようか」

 

景「昼飯ですか?」

 

四季「あぁ、もう13時になるからね」

 

景「もう、そんな時間なんですか」

 

景「・・・そうですね、何処かで食べましょうか」

 

四季「そうだね、だったら————」

 

数十分後、メグロ駅西口のジャンクフードショップにて

Wバーガーを頬張る

 

景「・・・はむ...もきゅもきゅ...」

 

四季「ふふ、少年 随分と可愛らしい咀嚼音だね」

 

片手にチキンを挟んだバーガーを持ち、そう言う

 

景「・・・そうですか」

 

気にせずに、もきゅもきゅと食べ続ける

 

四季「・・・ねぇ、少年」

 

景「なんですか、天野川四季先輩」

 

四季「この前、部室にきた子たち 憶えてる?」

 

景「・・・えぇ、暁山瑞希さん、白石杏さん、東雲彰人さん、ですよね」

 

景「それが、どうかしたんですか」

 

四季「東雲って、少年が気に入っている『東雲慎英』て言う画家と同じ苗字だよね」

 

景「そうですが...単なる偶然の一致でしょう」

 

景「珍しい苗字ではありますが、いない訳ではないので」

 

四季「まぁ、そうだね だけど、そう言って可能性を切り捨てるのは」

 

四季「惜しいとは、思わないかい?」

 

景「可能性、ですか...」

 

景「万が一にあったとしても、東雲彰人さんがあれこれする理由は一切ありません」

 

四季「ふふ、少年がそう言うとはね」

 

景「・・・」

 

沈黙のまま、Wバーガーの最後の一口を口に運ぶ

ごくりと飲み込み、紙ナプキンで丁寧に口元を拭う

 

景「・・・ご馳走様でした」

 

四季「おや、もう食べ終わったのかい?」

 

天野川四季先輩はまだ半分ほど残っているバーガーを見つめながら言う

 

景「別に焦らなくてもいいですよ」

 

景「少し早食いなだけですから」

 

四季「ふふ、そうだね じゃあ、もう少しゆっくり味わわせてもらうよ」

 

天野川四季先輩は楽しそうに微笑むと、残りのバーガーをゆっくりと

文字通り味わうように頬張り始めた

 

景「・・・」

 

テーブルの上のグラスに手を伸ばし、冷たい水を一口含んで喉の渇きを潤す

冷たい感触が喉を通って、胃に落ちる

 

四季「・・・よし、ご馳走様!」

 

しばらくして、天野川四季先輩が満足げに息をつき

紙ナプキンで丁寧に口元を拭いた

 

景「食べ終わりましたか」

 

四季「うん、美味しかったね」

 

四季「さて、美味しいご飯も食べたし...どうしようか、少年?」

 

景「どうしようか、とは? この後は解散するのではないのですか?」

 

四季「えぇ~?せっかくの日曜日なのに、そんな素っ気ないこと言わないでよ」

 

天野川四季先輩は不満そうに頬を膨らませるが、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべる

 

四季「そうだ、せっかくメグロまで来たんだし、古本屋でも巡っていかないかい?」

 

景「・・・古本屋、ですか」

 

四季「そう! 小説の資料探しを手伝ってくれるお礼と言ってはなんだけど」

 

景「少年の好きな本も探していいよ」

 

景「・・・分かりました」

 

四季「じゃあ、決定!」

 

そうして二人は席を立ち、ジャンクフードショップを後にする

 

四季「あ、そうだ! 少年...」

 

景「なんですか」

 

四季「私のことは、『四季先輩』と呼びたまえ!」

 

景「・・・今更ですか...」

 

景「はぁ...分かりましたよ、四季先輩」

 

四季「ふふ、よろしい」

 

そして、初夏の午後の柔らかな陽射しの下、メグロの街並みへと足を踏み出していく

 





少しばかし、こちらの都合で忙しくなるんですよね
ですから、投稿期間が数週間から最悪、数ヶ月開くことになります
ご理解の程、よろしくお願いいたします

今回も、ご愛読ありがとうございました
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