最高傑作、野球をする。   作:苦茶。

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アイディアが沢山思い浮かんだので本日2話目です


最高傑作の価値の証明

 

 

青道高校の1年B組の教室は、5月の爽やかな風が窓から吹き込んでいるにもかかわらず、どこか落ち着かない空気に満ちていた。

 

休み時間のチャイムが鳴ると同時に、教室内の一角から、ひときわ大きな声が上がる。

 

「おい、沢村! お前また授業中に寝てただろ! 英語のノート、全然進んでねぇじゃねえか!」

 

「ぬおっ!? 金丸ぅ! 静かにしろ! オレは寝ていたわけではない! 脳内で次の試合のシミュレーションを……」

 

「嘘つけ! よだれ垂らしてただろ!」

 

金丸信二。

 

松方シニア出身の内野手で、このクラスのリーダー格としてのポジションを早くも確立しつつある男だ。その面倒見の良さと、野球部外の生徒とも器用にコミュニケーションを取る姿は、典型的な社会適応能力の高さを物語っている。

 

オレは窓際の最後列の席から、その騒ぎをただ静かに眺めていた。

 

(なるほど。金丸は自己の立ち位置を把握し、周囲を統率するためのハブとして機能しようとしている。野球の実力だけでなく、集団における政治的な価値を高める方法としては極めて真っ当だ。一方の沢村は、相変わらずその計算をすべて無に還すノイズとして機能しているな)

 

ホワイトルームでは、個人のコミュニケーション能力など、測定される1つの項目に過ぎなかった。

 

そこでは、他者と良好な関係を築くことよりも、提示された課題に対してどれだけ完璧な数値を叩き出すかだけが求められた。

 

だからこそ、この「普通の高校の教室」という空間は、オレにとって奇妙な観察対象でしかなかった。

 

「……隣、いいか?」

 

不意にかけられた穏やかな声に、オレは視線を動かした。

 

整った顔立ちに、どこか育ちの良さを感じさせる佇まいの少年――東条秀明が、空いている隣の席の椅子を指差していた。

 

彼も金丸と同じ松方シニア出身で、中学時代は全国ベスト4のピッチャーとして名を馳せた特待生だ。

 

「ああ、構わない」

 

「ありがとう。……君、野球部の綾小路……だよな? 昨日の新入生テスト、バックネット裏から見てたよ。すごく綺麗なストレートを投げてたな」

 

東条はそう言って、人当たりの良い笑みを浮かべた。

 

彼の言葉には、沢村のような剥き出しの敵意や、金丸のような品評の目は含まれていない。

 

しかし、その瞳の奥には、同じピッチャーとしての鋭い観察眼が確かに宿っていた。

 

「ただのストレートだ。一般組としての最低限のノルマをこなしたに過ぎない」

 

「ノルマ、か。面白い表現をするなぁ……でも、いきなり投球テストを行ってあんなにインコースを突ける一般組なんて、今までいなかったと思う。俺もシニアの時はそれなりに自信があったけど……綾小路や降谷のピッチングを見て、正直少し焦ってるんだ」

 

東条は自嘲気味に肩をすくめた。

 

 

 

彼は優秀だ。

 

自己の能力を客観的に把握し、周囲のライバルとの実力差を正確に計算できている。

 

だが、それゆえに、降谷の圧倒的な『才能』や、オレが意図的に提示した『不気味な正確性』に対して、精神的な揺らぎを起こしやすいタイプかもしれない。

 

「焦る必要はない。システムが求める役割は、決して1つではないはずだ。お前の能力値なら、別の形での生存戦略も十分に機能する」

 

「生存戦略? ……本当に綾小路の話し方は独特だな。でも、なんだか少し気が楽になったわ、ありがとな」

 

「おい、東条! 何その一般組の奴と話し込んでんだよ!」

 

沢村を叱り飛ばし終えた金丸が、こちらに歩み寄ってきた。彼はオレの顔を不躾に見つめ、腕を組む。

 

「お前が昨日の綾小路か。まぁ、一般組にしちゃあ上出来のピッチングだったけどな。だけどな、ここは青道だ。スカウト組だろうが一般組だろうが、結果を出せない奴から落とされていく。足元掬われないように気をつけな」

 

「忠告感謝する、金丸。オレも自分のポジションを失うつもりはない」

 

「ふん、ならいいけどよ……」

 

金丸は少し拍子抜けしたような顔をして、沢村の方へと戻っていった。

 

彼らはオレの過去も、本性も、何一つ知らない。

 

ただの『野球部の1年生、一般組の綾小路』として認識している。その完全な匿名性こそが、オレにとって最高の防空壕だった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

放課後。

 

 

グラウンドから響く激しい掛け声を余所に、オレは制服のまま、Aグラウンドの奥にある室内練習場へと向かっていた。

 

周囲の部員たちは全員ジャージやユニフォームに着替えてグラウンドへ走っていく中、オレだけが逆方向へと歩いている。

 

この行動自体が周囲に不審な目で見られるリスクはあったが、御幸先輩からの『放課後、室内練習場に来い』という指示を無視する方が、今後のシステム内での生存において不利益が大きいと判断した。

 

室内練習場の厚い扉を開けると、中には独特の人工芝の香りと、薄暗い空間が広がっていた。

 

 

照明は半分ほどしか点いていない。その薄暗がりの奥、バッティングゲージの前に、すでにその男はいた。

 

「遅かったじゃねぇか、綾小路」

 

御幸先輩はスポーツ眼鏡の位置を指で直しながら、不敵な笑みを浮かべてオレを見た。彼の足元には、1箱の硬式球と、何本かのバットが転がっている。

 

「制服から着替える時間を考慮すれば、これが最短の移動時間です、御幸先輩。それで、オレに面白いもんを見せてくれるというのは?」

 

「お前、本当に相変わらず冷めてるな。まぁ、焦るなって。お前が昨日見せたあの『140km/hジャスト』のコントロール、あれが本物かどうか、俺なりに確かめたくてさ」

 

御幸先輩は足元の箱からボールを1個拾い上げ、オレに放り投げてきた。

 

オレはそれを右手で正確にキャッチする。145グラムの重量が、再び手のひらに馴染む。

 

「確かめる、とは?」

 

「簡単なテストだよ。昨日のマウンドじゃ、高島副部長や監督の目もあったろ? お前、あそこじゃ絶対に『全力』を出してない。140km/hって数字も、新入生の合格ラインを計算して、わざとそこに合わせたろ?」

 

御幸先輩の言葉には、確信が籠っていた。

 

 

やはり、この男の捕手としての洞察力は群を抜いている。オレの微細な筋肉の弛緩や、球速の段階的なビルドアップから、意図的な出力をコントロールしていることを見抜いていたわけだ。

 

「買い被りです。オレの実力は、昨日お見せしたものがすべてです」

 

「口では何とでも言えるわな。だからさ――環境を変えてみようと思って」

 

御幸はそう言うと、バッティングゲージの奥にある、1台のピッチングマシンの方へと歩いていった。

 

だが、彼が操作パネルを弄り始めたのではない。

 

マシンの影から、もう1人の人影がゆっくりと姿を現した。

 

背番号のない、しかし圧倒的な威圧感を放つユニフォーム姿の男。

 

 

太い体幹、鋭い眼光。青道高校野球部のキャプテンであり、高校野球界屈指の怪物スラッガー――結城哲也

 

「……」

 

結城…先輩は何も言わず、ただ手にした黒い木製バットを軽くベースの上に置き、オレをじっと見つめていた。その佇まいだけで、周囲の空気の密度が一段と重くなったかのような錯覚を覚える。

 

「紹介するわ。うちのキャプテンの結城さんだ。昨日、俺が『面白い1年生が入ってきた』って話したらさ、是非自分の目で確かめたいって言ってくれてね」

 

御幸先輩は楽しそうに、しかしその目は完全に獲物を狙う猛獣のそれで、オレの反応を窺っていた。

 

「綾小路。お前のその『嘘のつけないストレート』が、高校トップレベルのバッターにどこまで通用するか。……3球勝負、付き合ってもらうぜ?」

 

(御幸先輩はオレの『底』を見極めようとしている。ここで平凡なボールを投げれば、彼の不信感は決定的なものになり、今後の観察対象としてマークされ続ける。逆に、結城先輩を完璧に抑え込めば、オレの存在は『隠れた怪物』として片岡監督の耳に入り、目立ちすぎる結果を生む。……最適な着地点は、結城先輩の実力を認めさせつつ、御幸先輩に対して『利用価値のある精密な駒』としての印象を植え付けることだ)

 

オレは制服のネクタイを緩め、ジャケットを近くのパイプ椅子に掛けた。

 

ワイシャツの袖を肘まで捲り上げる。

 

「3球ですね。条件は?」 

 

「結城先輩は木製バットを使う。お前は昨日と同じストレートだけ。コースは俺が要求する。……それでいいですよね、結城さん?」

 

「ああ。構わない。全力で来い、綾小路」

 

結城の声は、低く、重かった。

 

彼はバッターボックスへと入り、ゆっくりとバットを構えた。その構えには隙が一切ない。

 

どのコース、どの高さに対しても、最短距離でバットを振り抜くための完璧なトップの位置が形成されている。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

御幸が防具をつけ、キャッチャーボックスへと入る。

 

室内練習場の特有の狭さが、マウンドからホームベースまでの18.44メートルの距離を、実際のグラウンドよりも遥かに短く感じさせた。

 

オレはマウンドの代わりとなるゴム製のプレートに右足をかけた。

 

ワイシャツの胸元が、風もないのに微かに揺れる。

 

脳内のライブラリから、再びあの伝説的右腕のフォームを呼び出す。

 

結城哲也というバッターのプロファイリングデータはまだ少ないが、彼のスイングスピードと動体視力は、並の高校生の数値を遥かに凌駕している。ただの140km/hのストレートでは、コースがどれだけ正確でも、2球目には完璧に捉えられるだろう。

 

(1球目は外角低めのギリギリ。球速は140km/hに固定。ただし、バックスピンの回転数を昨日よりさらに『3%』引き上げる。ホップ成分を増やすことで、結城先輩にバットの上っ面を叩かせる)

 

御幸先輩のミットが、外角低めの、ベースの角ギリギリのラインに構えられた。

 

セットポジション。

 

左足を高く、美しく引き上げる。軸足の縦回転への連動を開始。

 

テイクバックからトップへの移行。ワイシャツの生地が突っ張る感触を、筋肉の収縮で相殺する。

 

そして、右腕を天から地へと引き裂くように、縦に振り下ろした。

 

 

――ビュシッッ!!!

 

 

狭い室内練習場に、昨日以上の凄まじい風切り音が轟いた。

 

放たれた白球は、御幸先輩の構えた外角低めへと一直線に突き進む。

 

「……!」

 

結城の目が、一瞬だけ鋭く見開かれた。

 

凄まじい風圧とともに、黒い木製バットが電閃のごとく振り抜かれる。

 

そのスイングの軌道は、まさに芸術的なまでの最短距離。

 

――ギィィンッ!

 

木製バット特有の鈍い破壊音が響き、ボールはバックネットへと叩きつけられた。ファウル。

 

「ほう……」

 

御幸がミットを戻しながら、感嘆の声を漏らした。

 

今のは完璧に結城の芯を外していた。結城のスイング軌道よりも、ボールがコンマ数センチだけ『垂れずに』高い位置を通過した証拠だ。

 

「今のストレート、昨日より伸びてんな。球速は140km/hそこそこなのに、手元でボールが浮き上がって見える。……なぁ、結城さん?」

 

「ああ。素晴らしいキレだ。手元でボールが加速したように感じた」

 

結城はバットを構え直した。その表情には、微塵の動揺もない。

 

むしろ、強敵に出会った時の純粋な歓喜のようなものが、その冷徹な瞳の奥にメラメラと燃え盛っている。

 

(恐らく結城先輩の修正能力は極めて高いな……今の1球で、オレのボールの回転数とホップ成分のデータを頭の中にインプットしたはずだ。同じ軌道、同じ球速で投げれば、次は確実にアジャストされる。……ならば、2球目は逆の錯覚を利用する)

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

御幸先輩の次のサインは、インコース高め。

 

バッターが最も嫌がる、胸元を突く厳しいコースだ。

 

(2球目、コースはインハイ。球速はあえて『137km/h』に落とす。ただし、フォームの鋭さと腕の振りは140km/h以上の出力を偽装する。結城先輩の感覚をコンマ数秒、前方へ引きずり出す)

 

オレは再び、プレートを強く踏み込んだ。

 

左足を引き上げ、前方へスライドする。

 

腕の振り、胸の張り、すべての予備動作は『全力の140km/h』を完璧にトレース。

 

リリースの瞬間だけ、指先の力を僅かに抜き、ボールを押し出すようにしてバックスピンの回転数を意図的に減らした。

 

――ビュウッ!

 

放たれた白球は、結城先輩の胸元へと向かう。

 

「ふんっ!」

 

結城の身体が、インコースを捌くために鋭く回転した。バットが凄まじいスピードでしなる。

 

だが、彼のバットは、ボールがホームベースに到達するよりも、ほんのコンマ数秒早く、その空間を切り裂いた。

 

 

――空振り。

 

 

バットが空気を切る強烈な音が響いた後、遅れてボールが御幸先輩のミットに収まった。

 

 

――パンッ。

 

 

「マジかよ……」

 

御幸先輩の声が、驚きで僅かに震えていた。

 

今のは、結城哲也という怪物を、純粋なストレートの緩急だけで完全にタイミングを外して見せたのだ。

 

変化球を一切使わず、ストレートの回転数と腕の振りの『偽装』だけで、高校トップのバッターを翻弄する。

 

それがどれほど異常な技術であるか、捕手である御幸には痛いほど理解できていた。

 

「腕の振りが、さっきの140km/hと全く同じだった。だから結城さんは身体を開かされたんだ。お前、本当にストレートだけで組み立ててやがる……!」

 

「……見事な緩急のあるストレートだな。完全にタイミングを外された」

 

結城先輩はそう言うと、静かに息を吐き、バットを再び構えた。

 

彼の纏うオーラが、一瞬にして変わった。

 

これまでは『新入生をテストする先輩』としての余裕があったが、今の結城先輩の目は、完全に甲子園の決勝マウンドに立つライバルを睨みつけるそれへと変貌していた。彼の全神経が、オレの次の1球を捉えるためだけに研ぎ澄まされていく。

 

(ラスト、3球目。結城先輩はオレの『ホップするストレート』と『失速するストレート』の両方を頭に入れた。彼ほどのバッターなら、その中間の軌道を予測し、どちらに来ても対応できるような極限の集中状態に入っている。……ならば、最後の選択肢は1つしかない)

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

御幸先輩が次のサインを出す。

 

彼のミットは、ど真ん中。――ベースの真上、最もバッターが打ちやすい、しかし最も投手の『球威』が試される座標だ。

 

「さぁ、綾小路。ラストだ。お前の本当の最高出力を、ここに叩き込んでみろ!」

 

御幸先輩の目が、眼鏡の奥で狂気じみた歓喜に染まっている。

 

オレは静かに目を閉じ、脳内のリミッターを僅かに解除した。

 

目立ちすぎるのは本意ではない。だが、結城哲也という男をここで中途半端に抑えることも、中途半端に打たれることも、今後のオレの生存戦略においてはノイズになる。彼らの予測の、さらに1歩先にある『完璧な計算』を提示する。

 

(3球目:コースはど真ん中。球速は『140km/h』。ど真ん中ならコントロールなんて関係ない。回転数を極限まで高め、重力による落下を完全に相殺する。結城のバットの、わずか5ミリ上を通過させる)

 

オレは目を開け、プレートを爆発させるような勢いで蹴り出した。

 

左足が高く掲げられ、体幹の骨格が完璧な縦回転の軌道を形成する。

 

ワイシャツの袖が風圧で激しく羽ばたき、トップの位置から振り下ろされた右腕が、室内練習場の空気を一瞬にして圧縮した。

 

 

 

――ビュウウウウッッッッ!!!!

 

 

 

これまでの2球とは、音の次元が違った。 

 

放たれた白球は、まるで白い閃光となって、ど真ん中の軌道を一直線に突き進む。

 

「おおおおおッ!」

 

結城の咆哮が響いた。

 

彼の肉体が、高校生のものとは思えない爆発的なヘッドスピードでバットを振り抜く。

 

完璧なタイミング、完璧な軌道。結城のバットは、確実にボールの芯を捉えるはずだった。

 

 

―――しかし。

 

 

 

――バチィィィィィンッッッッ!!!!

 

 

 

室内練習場のコンクリート壁が激しく振動するような、凄まじい衝撃音が響き渡った。

 

結城のバットは、ボールの下、わずか数ミリの空間を虚しく切り裂いていた。

 

御幸先輩のミットの中で、ボールはまだ回転をしようと暴れている。

 

結城先輩はバットを振り切った姿勢のまま、完全に静止していた。

 

彼の目は、自分が空振りしたという事実を、そしてそのボールが自分の予測した軌道よりも『全く落ちずに』ど真ん中を通過したという現実を、冷徹に受け止めようとしていた。

 

「……信じられん」

 

御幸先輩が、呆然とした声で呟いた。彼のミットを持つ右手は、ボールの衝撃で微かに震えている。

 

「ど真ん中だぞ……。結城さんが、ど真ん中のストレートを、完璧なスイングで空振りした……。140km/h……いや、体感は150km/h以上だ。お前、なんなんだよ一体……!」

 

「そこまでだ」

 

 結城先輩がゆっくりとバットを降ろし、直立の姿勢に戻った。彼の顔には、驚きを通り越した、深い感銘の表情が浮かんでいた。

 

「素晴らしいピッチングだった、綾小路。まさか、これほどのピッチャーが一般組に隠れていたとはな。青道の未来は明るい」

 

「……買い被りです。結城先輩のスイングの風圧に、オレのボールが僅かに押し上げられただけです」

 

オレはそう言って、椅子にかけていたジャケットを手に取り、ネクタイを締め直した。

 

これ以上のデータの開示は不要だ。御幸先輩には十分すぎるほどの『価値』を示した。これで彼は、オレをただの一般組として切り捨てることは絶対にしないだろう。同時に、結城先輩という絶対的な存在に対して、オレの『計算の正確さ』を刻み込むことにも成功した。

 

「じゃあ、オレはこれで失礼します。放課後の自主練のノルマがありますので」

 

「おい、綾小路!」

 

御幸先輩の制止の声を背中で受け流しながら、オレは室内練習場の重い扉を開け、外へと出た。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

外に出ると、5月の夕日がグラウンドを赤く染め上げていた。

 

遠くでは、沢村がタイヤを引きずりながら大声を上げて走っているのが見える。その向こうでは、降谷が黙々とキャッチボールを行い、その剛速球で周囲を威圧していた。

 

(御幸一也は、これからオレをどうシステムの中に組み込もうとするか。片岡監督に報告するか、あるいは自分だけの『切り札』として隠し持つか……。どちらにせよ、オレの『防空壕』としての価値はこれで担保された)

 

ポケットの中で、オレは自分の右手のひらを軽く握り締めた。

 

ホワイトルームで培われたこの肉体と技術は、自由を掴むための道具に過ぎない。

 

この青道高校という新たな実験室で、オレが静かに、しかし確実に生き残り続けるための計算は、まだ始まったばかりだった。

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます!!

まだ2話しか出してませんが、ルール・口調が間違ってないか不安でいっぱいです!!!

次回まで気長にお待ちください
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